#岸田政権

☆「負のスパイラル」に陥った どうする岸田内閣

☆「負のスパイラル」に陥った どうする岸田内閣

   岸田政権が発足したのは令和3年10月4日。初出廷のときは、メディア各社のカメラのフラッシュを浴びながら堂々と歩いていた=写真、総理官邸公式サイト=。あれから2年と1ヵ月、「辞任ドミノ」が吹き荒れている。今年9月の内閣改造で、岸田総理が「適材適所」で人事を決めた副大臣・政務官がこの3週間足らずで立て続けに3人辞任した。中でも有権者が憤りを高めたのが、所有する不動産の固定資産税などを滞納し、4回も土地と建物が差し押さえられていた神田憲次・財務副大臣だった。

   メディアの取材に、滞納の理由について神田氏は「事務所スタッフに任せていた」「議員の仕事で多忙になった」などと釈明していた。税理士資格を持ちながら4回も差し押さえを受けたことは、まさに確信犯ではないのかと有権者は感じたのではないか。そんな人物に財務副大臣を任せてよいのか、と。ほかにも、女性との不倫で文部科学兼復興政務官を辞任した山田太郎氏、公職選挙法で禁じられている有料ネットの広告利用を勧めていたことが分かり、法務政務官を辞任した柿沢未途氏。国会議員のモラルなどどうでもよいとばかりの行為だ。

   岸田内閣では去年8月の内閣改造後にも、辞任ドミノがあった。旧統一教会との関係をめぐり国会で野党の追及を受けていた山際大志郎氏が経済再生担当大臣を、死刑執行をめぐる失言をした葉梨康弘氏が法務大臣を、「政治とカネ」が取りざたされた寺田稔氏が総務大臣を、公選法違反の疑いが指摘されていた秋葉賢也氏が復興大臣をそれぞれ辞任している。この年の12月までに4人だ。

   辞任ドミノへの有権者の憤りは世論調査でも浮き出ている。直近のNHKの世論調査結果(11月13日)によると、岸田内閣の支持率は29%、前回の10月調査より7ポイントも下がった。内閣発足以降、初めて30%を下回った。不支持は8ポイント上がって52%だった。去年の辞任ドミノでは支持率が33%(11月調査)にまで落ちていたが、ことし5月に開催したG7広島サミットで主役を演じたことで支持率を46%(5月調査)に盛り返した。その後は再びじり貧で、ついに30%を割った。世論調査で支持率20%台は政権の「危険水域」とされる。

   岸田内閣は「負のスパイラル」に陥った。ただ、不思議なことに解散風が吹き荒れてもよいはずなのに、それもない。有権者の憤りだけがふつふつと煮えたぎっている。

⇒15日(水)午前・金沢の天気  くもり時々あめ

★改造内閣と大谷翔平の快挙、どれが一面トップなのか

★改造内閣と大谷翔平の快挙、どれが一面トップなのか

   きょうの朝刊各紙の一面はニュースが二つあった。一つは岸田政権の第2次改造内閣について、もう一つがアメリカ・大リーグの大谷翔平が今季で10勝目を挙げて、ベーブ・ルース以来で104年ぶりとなる「2ケタ勝利、2ケタ本塁打」の偉業を成し遂げたというニュース。面白いのはそのニュースの扱いだ。

   各紙の扱いを比べてみる。ほとんどの紙面が一面トップで改造内閣を取り上げている。「有事に対応 政策断行」(読売新聞)、「首相、守りの内閣改造」(朝日新聞)、「岸田首相『政策断行』」(毎日新聞)、「首相『防衛力強化が最重要』」(日経新聞)など。見出しに各社のポリシーが浮かぶ。ただ、正直言って、トップではあるものの、政治ものなので仕方なく優先的に据えたという印象を受ける。読売は大谷翔平の快挙を一面で準トップ、ほかスポーツ面、そして社会面でも大々的に取り上げている。改造内閣と日がずれていれば、おそらく紙面は大谷翔平一色だったかもしれない。

   そんな中で、堂々と一面トップで大谷を取り上げているのが北陸中日新聞だ。名古屋圏を中心としたブロック紙。「大谷 2桁勝利2桁本塁打」と5段見出しだ。それに比べ、改造内閣は3段見出し。国内の政治ものに「忖度」せずに、国際的にもインパクトがある大谷を一面で飾った。

   そもそも、旧盆を前に駆け込みのようにして今回の組閣人事が行われた。霊感商法や献金強要など反社会的行動を取ってきた「世界平和統一家庭連合」(旧「統一教会」)と自民党などの国会議員の癒着が明らかになっていることから、人事によってケジメをつける狙いがあったのだろう。内閣支持率も下落している。ところが改造内閣でも総務大臣、厚労大臣、経済再生大臣らが統一教会とこれまで関係があったことが次々と報道されている。ケジメをつけたつもりが、この教団とのズブズブの関係がさらに露呈される結果になった。

   地元石川県選出の岡田直樹・参院議員も地方創生兼沖縄北方担当大臣として初入閣を果たした。統一教会との関係については、地元秘書が教団の関連団体主催のイベントに代理出席したことがあると釈明している(11日付・北國新聞)。

   霊感商法や献金強要によって巨額な金が集められ、1987年から2021年に全国霊感商法対策弁護士連絡会に寄せられた被害件数は約3万4500件、被害金額は計約1237億円に上る。すさまじい被害があるにもかかわらず、「何が問題か、僕はよく分からない」(7月29日・福田達夫議員の発言)といった能天気なコメントが出たことに、有権者は憤っている。

   政治が反社会的な宗教団体との関係性を絶つには、税務調査や警察による情報収集など実態解明が必要だろう。それを受けて、今後、問題がある教団への非課税など優遇措置の解除、場合によっては解散命令(宗教法人法第81条)を検討するなど、法的なケジメを打ち出さない限り、このままズルズルと再び癒着が始まる。

⇒11日(木・祝)夜・金沢の天気   くもり時々はれ

★岸田政権のこれから 「黄金の3年」か「乱世」か

★岸田政権のこれから 「黄金の3年」か「乱世」か

  今回の参院選で自民党が単独で63議席を確保して、改選125議席のうち過半数を占めた。メディア各社の事前の世論調査でも報じられていたように、自民の大勝は予想された。NHKの世論調査(7月1-3日)で、岸田内閣を「支持する」は54%だったのに対し、「支持しない」は27%と政権支持は盤石だった。選挙でもそのまま数字で表れた。

  ただ、投票率は低い。共同通信ニュースWeb版によると、全都道府県選管の確定投票率がけさ午前6時半までに出そろい、集計すると全国の投票率は52.05%だった。2回連続の50%割れは回避したが、過去4番目の低さだった。地域でバラつきがある。北陸中日新聞(11日付)によると、石川県では46.41%と全国より5.6ポイント低く、補選4回を含め過去30回行われた参院選で最低の数字となった。

   政府は投票率向上のため、期日前投票制度の導入や、選挙権年齢の18歳以上への引き下げなど制度改正が行ってきたが、1990年代以降は一度も投票率は60%を上回っておらず、低水準にとどまっている。参院の有り様が問われているのではないか。

   今回の選挙結果を受けた報道で気になるのは「黄金の3年」という言葉だ。岸田総理は衆参両院で過半数を維持し、さらに今後3年間、衆院の任期満了を含めて国政選挙をしなくてもよいことから、「黄金の3年」という期間を手にした、という意味のようだ。とくに、衆参両院の3分の2の賛成が必要になる憲法改正案について着手するタイミングではないのかという意味が込められている。憲法9条への自衛隊明記や緊急事態条項の盛り込みなど徹底的に議論するにはタイムリーなのかもしれない。

   ただ、岸田政権はこれから先も安泰が続くのか。ロシアや中国、北朝鮮という厄介な隣国との厄介な問題(サハリン2・北方領土、尖閣諸島、核実験など)があり、さらに南海トラフの巨大地震や首都直下地震など天災、そして安倍元総理の狙撃事件が公衆の目前で起きたように、いわゆる乱世に入ったのではないか。そして、世界経済がインフレで混乱している中で、いつまで「異次元の金融緩和」が続くのだろうか。

⇒11日(月)午前・金沢の天気      くもり