#岩のり

☆震度7・記録的大雨・最強寒波 3災の能登冬路をめぐる~1~

☆震度7・記録的大雨・最強寒波 3災の能登冬路をめぐる~1~

  去年元日の震度7の地震、48時間で498㍉という9月の記録的な大雨、そして今月4日から北陸に吹き荒れる最強・最長の寒波。 「3災」ともいえる能登半島を3日間(今月6-8日)かけて一周した。 被災地や観光名所などの冬の現場で気が付いたことなどまとみてみる。

  隆起した岩ノリ畑 『ゼロの焦点』ヤセの断崖

  先日、能登の知り合いから「岩のり」が届いた。 お礼の電話をすると、「地震で海岸が隆起したのでことしは採れるか心配したが、隆起した岩場でも採れました」とのこと。 そこで、海岸が隆起した能登の北側の外浦をめぐった。 岩のりは外浦の岩場で採れた天然のノリで、干したもの=写真・上=。 養殖のノリに比べて厚みがあり、さっとあぶると磯の香りが広がる。 ノリが採れる海沿いの家々では、波が穏やかな冬の日を見計らって海岸に出かける。 手で摘み、竹かごに入れて塩分を洗い流して水切りした後、自宅の軒下などで竹かごの上に乗せて陰干しする。 

  地域によっては「岩ノリ畑」を造ってところもある。 岩場を利用して平海面すれすれのところでコンクリート面を造成すると、冬の波で覆われた岩ノリ畑にノリが繁殖する。 ところが、地震で数㍍隆起した海岸では岩ノリ畑が干上がって使えなくなった畑もある。 一方で海底から隆起した岩場でノリが採れるようなったところもある。 知人は「シケの日が続き収穫は少なかったが、ノリの出来は上々」とのこと。 岩ノリ採りは今月中旬まで続く。 (※写真・中は、地震で隆起した「岩ノリ畑」=輪島市門前町の海岸)

  能登の現場を訪ねるとダイナミックな光景を目にすることがある。 震度7の揺れがあった志賀町香能の近くにあり、松本清張の推理小説『ゼロの焦点』で登場する名勝「ヤセの断崖」。 1961年に初めて映画化され、観光名所となった。 日本海からの強烈な波と風によって形成された断崖絶壁で、訪れた日も台風を思わせる暴風が吹いて、白波が打ち寄せていた=写真・下=。

  海面からの高さが35㍍から55㍍もある、断崖を眺めると、海の向こうの暗い雲の切れ間から光りが指している。 まるで映画のシーンのような光景だった。 もう少し近づいて撮影しようとした瞬間、強烈な風が吹いてきて、身の危険を感じて現場を離れた。

⇒7日(金)夜・金沢の天気     雪

★能登半島地震 干上がった岩ノリ畑、海岸にも近寄れず

★能登半島地震 干上がった岩ノリ畑、海岸にも近寄れず

           毎年この時節に能登の知人から「季節のものです」と一筆添えて「岩のり」が送られてくる。岩のりは半島の北側の外浦の岩場で採れた天然のノリで、干したもの。養殖のノリに比べて厚みがあり、食感はやや硬めだが、磯の香りが広がり食欲がわいてくる。(※写真・上は、赤い丸盆に乗せた岩のり)

   この冬の季節のノリを「寒ノリ」と言って、能登の海沿いの家々では、波が穏やかな天気を見計らって海岸の岩場に出かける。手で摘み、竹かごに入れて塩分を洗い流して水切りした後、自宅の軒下などで竹かごの上に乗せて陰干しする。干しかごが並ぶ様子は季節の風物詩でもある。

   その岩のりの作業はことしは大丈夫なのかと案じる。今回の地震で海岸が隆起して、これまで海藻が採れていた岩場などの状況が一変したからだ。先日(今月5日)撮影に行った志賀町の海岸沿いでは、岩のりの原藻であるウップルイノリを繁殖させるためにコンクリートで造られた「岩ノリ畑」が隆起して干し上がっていた=写真・下=。もちろん、ノリが採れる場所は岩ノリ畑に限られているわけではない。

   近くに住む人に話を聴くと、冬場に入った12月末まではノリがよく採れたそうだ。しかし、元旦の地震以降は誰も海岸には近寄ろうとはしない。それは、「津波は3分後に来る」という恐怖を今回の地震で共有したからだ、という。

   能登半島ではきょう10日午前中で震度1から2の揺れが4回観測されている。気象庁によると、地震の回数は増減を繰り返しながら緩やかに減少してはいるものの、地震活動は依然として活発な状態が続いている。日本海沿岸で発生した日本海中部地震(1983年5月26日)や北海道南西沖地震(1993年7月12日)では地震発生のおよそ1ヵ月後に規模の大きな地震が発生していることから、震度5弱以上の揺れに注意を呼びかけている。 

          能登の海岸では海藻がよく採れる。岩ノリのほかにも、この地方で「カジメ」と称されるツルアラメやモズク、ワカメ、ウスバアオノリ(あおさ)、ハバノリ、アカモク(ぎばさ)、ウミゾウメン、マクサ(てんぐさ)、ホンダワラなど。そして海藻ごとにそれぞれ料理があり、海藻は能登の食文化でもある。ところが、海岸にも近づけないような現状がいまも続いている。

⇒10日(土)午後・金沢の天気   くもり時々あめ

☆能登の「岩のり」とユネスコ無形文化遺産のこと

☆能登の「岩のり」とユネスコ無形文化遺産のこと

   先日、能登の知人から「岩のり」が届いた。この時節に「季節のものです」と一筆添えて送られてくる。岩のりは能登の福浦海岸べりの岩場で採れた天然のノリで、送られてきたものは干したもの。さっそくうどんをつくり、岩ノリをさっとあぶって、うどんに入れる。磯の香りが広がり食欲がわいてくる。

   能登には海藻の食文化がある。とくにかく海藻の種類が多い。半島の尖端の珠洲市でいまでも採れている海藻は10種類ほどある。地元ではカジメと呼ぶツルアラメやモズク、ワカメ、ウスバアオノリ(あおさ)、ウップルイノリ(岩のり)、ハバノリ、アカモク(ぎばさ)、ウミゾウメン、マクサ(てんぐさ)、ホンダワラなど。海藻ごとにそれぞれ料理がある。

   能登で精進料理(お講料理)としてよく出されるのが「カジメの煮物」だ。冬場に海がシケると、翌日は海岸に打ち上げられる。これを刻んで乾燥させる。油揚げと炊き合わせる。それぞれ家庭の味があり、能登で代表的なゴッツオ(ごちそう)でもある。また、生のカジメを刻んで味噌汁や納豆汁に入れて食する。ねばねば感と独特の風味がある。カジメはヨード分が多く滋養豊富なことから、「海の野菜」と言われ、血圧の高い人や冷え性の人に重宝がられてきた。能登では古くから産後のうるち(古血)おろしにカジメを食べるという風習もあった。

   能登では夏には貝類を、冬には海藻類を多く採っている。また、こうした海産物を加工保存することにより、年間を通して海の恵みにあずかる。塩漬け、乾燥、粕漬け、味噌漬け、発酵などにより食材を保存し、素材に応じて様々な料理の工夫を凝らしている。まさに、食文化がここにある。

   2013年12月にユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に「和食:日本人の伝統的な食文化」が登録されている。自然を尊び活かした食文化が国際評価を受けている。ただ、「和食文化」は分かりにくい。能登の海の恵みを活かした食文化をアピールしてはどうかと思ったりもする。能登では田の神をもてなす農耕儀礼「あえのこと」が2009年9月にユネスコ無形文化遺産に登録されていて、相乗効果も生まれるのではないだろうか。いただいた岩のりからふと浮かんだ思いつきではある。

⇒18日(金)午前・金沢の天気    あめ時々あられ