☆「石川県知事選」「金沢市長選」で何が変わるのか
前回ブログの続き。NHK金沢はきょう午前1時43分のWeb版で石川県知事選で馳浩氏の当選を伝えている。馳浩氏(無所属・新)19万6432票、山野之義氏(無所属・新)18万8450票、山田修路氏(無所属・新)17万2381票となっている。そして、同4時21分に全国ニュースWeb版で当選のニュースを流している。「保守分裂の構図となった石川県知事選挙は、元文部科学大臣の馳浩氏が、初めての当選を果たしました。石川県では、28年ぶりに知事が交代することになります」
地元紙など各紙も大見出しで報じている。「新知事に馳氏 山野氏と7982票差」(北國新聞)、「知事に馳氏 保守分裂大接戦制す」(読売新聞・号外)、「馳氏知事当選 大激戦 山野氏、山田氏抑え」(北陸中日新聞)=写真=。もともときょうは新聞休刊日だった。全国紙は号外、地元紙は特別発行というカタチで取り上げている。では、28年ぶりの知事交代でどのような変化が起こるのだろう。
谷本知事は多選批判もあったが、逆に言えば28年間にわたって信任を受けて、ロングランのプロジェクトを展開してきた。「能登と金沢・加賀の格差是正」をスローガンに能登半島の道路や空路などインフラ整備を積極的に進めてきた。さらに、金沢城の復元は史実を尊重することで価値を高めると同時に、伝統工芸の技を継承するという絶妙なコンセプトに取り組んできた。なので、旧・自治省出身の政策立案に長けた知事というイメージが谷本氏にはある。中央政界ともつかず離れずバランスをとってきた。
では、馳氏はそれを継承できるのか、できないのか、しないのか、するのか。そこがよく分からない。他の候補に圧倒的な大差ならば、「あなたにお任せ」というのが民意かもしれないが、これだけ僅差だと、谷本路線をひっくり返すことはできるのだろうか。問われているのは、行政経験のない馳氏が行政マンをどううまく使い回し、新たなコンセプトを創り上げていくか、だろう。
馳氏を応援した能登のある首長は「馳氏の面倒見のよさにはとても感謝している」と話した。ほかの人からも同じ話を聞いた。おそらく面倒見のよさは根っからのキャラなのだろう。それだけに地元の信頼を裏切らない県政運営が問われる。一方で、選挙期間中は安倍元総理ら自民党幹部らが続々と応援に入った。けさの地元民放のインタビューに応じた馳氏は「朝一番で森元総理に選挙結果を報告した」と答えていた。番組を見ていて、中央政界に寄り添った県政運営になるのではないかとも気になった。基地や原発問題などをめぐっては、地元と中央の間に立って県政が揺れることもしばしばある。
今回の知事選の県全体の投票率は61.8%だ。トリプル選挙の金沢よりさらに高い。能登・金沢・加賀でさまざまな課題解決への政治手腕がこれから問われる。同時に軋轢も出て来るだろう。「気に入らない、面倒なことにはチョップ」、これだけは勘弁願いたい。任期は今月27日から4年間となる。
⇒14日(月)夜・金沢の天気 くもり
きょうは石川県知事選ならびに金沢市長選、そして同市議補選のいわゆる「トリプル選挙」の投開票日。午後2時すぎ、一票を投じるため出かけた。くもり空だったが、外は暖かさを感じた。自家用車で外気温を見ると20度だ。投票場は小中学校の体育館=写真・上=。ひっきりなしに人が行き交っていた。投票率は高いのではないかと想像した。知事と市長という首長ダブル選挙の相乗効果もあるだろう。何しろ、前回の知事選(2018年3月)では金沢市の投票率は30.6%、金沢市長選は(2018年11月)は24.9%とそれぞれ最低を記録していた。投票を終えて再び外に出る。心地よい風が吹いている。この陽気が人々を投票に誘っているのかもしれないとふと思った。
午後8時00分、NHKの大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の冒頭で速報が流れた。「金沢市長選 新人・村山卓氏 当選確実」=写真・中上=。投票が終わった途端に当確の速報を流すということは、NHKの出口調査でトップと2番目の差が少なくとも10ポイント以上ついていたということだ。NHKは「選挙のNHK」と呼ばれるほど、出口調査や開披台調査などを独自で実施して「当確」を出している。なので、候補者は民放の当確ではななく、NHKの当確を確認して初めて万歳をするのが習わしになっているほどだ。それにしても、投票終了直後での当確はちょっと速すぎる。本人も選挙事務所に現れてはいないだろう。
その開票作業を取材するために、メディア各社の記者やカメラマンがすでに集まっていた。同時に開披台調査をするスタッフも集まっていた。開披台調査は開票作業をする職員の手元を双眼鏡で覗き込んで、投票に書いてある候補者の名前を読んで発声する。この声が口元のマイクから無線でメディア各社の選挙報道フロアに届き、受信したスタッフが数値化していく。金沢の開票場のほかに県内の主な自治体の開票場にスタッフを張り付けているだろう。
ノ、ハセ、ハセ、ヤマダ、ヤマダ」と名前を発している=写真・下=。数分経つと、場所を移り別人の手元をのぞく。こうすることで、市内の地域の偏りがなくなる。NHKの腕章をした開披台調査スタッフを数えると10数人いた。
それ以降、石川1区では馳氏が独走態勢に入るが、投票率は下がった。2014年12月は全国は52.6%だったが、石川1区は43.1%と極端に低かった。2017年10月も全国53.6%、石川1区は51.9%だった。知事選に出馬表明した馳氏が後継の小森卓朗氏を立てた去年10月も全国55.9%だが、石川1区は52.2%と低調だった。この投票率の低さは、有権者の立場から両氏を支援してきた人たちの「森奥戦争のロス状態」ではないかとも推測した。
ただ、これまで2回のまん延防止等重点措置と異なるのは、対象地域はこれまで金沢市だったが、今回は県内全域を対象としている。というのも、県の発表によると、感染者数が今月21日は229人、22日は過去最多の263人、23日も226人と3日連続で200人以上、そしてきょう24日は193人だ。金沢市を中心に県内全域に感染が広がっていて、きょうだけで高齢者施設や保育園、幼稚園などで8つのクラスターが新たに発生している。
石川の知事選で、知名度がある保守系の政治家3人が争う構図は初めてだ。現職の谷本正憲氏(76)は自治省の元官僚で副知事に就任し、1994年3月の知事選で元農水事務次官の候補を破り、以降7期28年になる。去年11月に今期限りでの退任を表明した。その前の中西陽一氏も自治省の元官僚で副知事に就任し、1963年の知事選で当選、以降8期31年その任に当たった(76歳で在職中死亡)。自身は石川で生まれたシニア世代で、物心がついて覚えた知事の名前は「中西」「谷本」の2人しか知らない。なので「国会議員は政治家」「知事はキャリア官僚」というイメージがこびりついてしまっている。