#尹錫悦

☆「人に忠誠を尽くさない」新韓国大統領の法治国家への道

☆「人に忠誠を尽くさない」新韓国大統領の法治国家への道

   韓国の新しい大統領に野党「国民の力」の前検事総長、尹錫悦(ユン・ソギョル)氏が選ばれた。韓国・中央日報Web版(10日付)=写真=によると、得票率は尹氏が48.56%、与党候補が47.83%で文字通りの僅差だ。票差にして24万7千票余り。投票率は、連日30万人の新型コロナウイルス感染者が出ているにもかかわらず、77.1%と高い。韓国の有権者はなぜ政権交代を選択したのか。そして、政治経験がまったくない尹氏に何を委ねたのか。
 
   メディア各社のこれまでの報道から印象的な尹氏のイメージは、権力に遠慮することなく司法の刃(やいば)を向けてきたことだ。朴槿恵(パク・クネ)政権下での「崔順実(チェ・スンシル)ゲート」では朴前大統領を拘束起訴(2017年3月)。この実績により、文在寅(ムン・ジェイン)大統領によってソウル中央地検長に抜擢された尹氏はさらに李明博(イ・ミョンバク)元大統領も拘束起訴した。2019年6月に検事総長に任命されてから、矛先は文大統領の側近にも向けられた。曺国(チョ・グク)前法務部長官の捜査を手初めに、蔚山市長選挙介入疑惑、月城原発経済性ねつ造疑惑など次々と捜査のメスを入れた。曺氏の後任の秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官と対立して去年3月に辞職した。
 
   大統領から任命を受けても、権力と対峙した尹氏は「私は人(権力)に忠誠を尽くさない」という言葉を放って国民に知られるようなった。尹氏が大統領になることで期待されるのは、「法治国家」という共有の概念ではないだろうか。権力の不正や腐敗を正す法治である。司法、行政、立法の三権分立は日本では中学の公民の教科書にも出て来る。ところが韓国では大統領に権力が集中している。時々の政権の都合により法解釈が曲げられたりすることのない国であること、これこそ政治経験のない尹氏に国民が委ねたことはではないか。
 
   尹氏は選挙期間中、国際法や国際協定なども遵守する姿勢を打ち出した。とくに日米韓の安全保障の協力強化は、北朝鮮の核ミサイルに対する協調態勢を念頭に置いてのことだろう。さらに、冷え込んだ日韓関係の修復を図っていくと述べている。日本とすれば、日韓の戦後補償問題は「完全かつ最終的に解決された」と規定した1965年の日韓請求権・経済協力協定で解決済みとの立場であることに変わりないが、「シャトル外交」を進めながら相互理解を再構築することはマストだろう。
 
   油断ならないのは北朝鮮の動きだ。文大統領の任期は5月7日までだが、政権運営としては実質的に何もできない「レームダック状態」に陥る。「日米より、こっちを向け」と韓国に何か仕掛けて来るかもしれない。そして、ことしに入って弾道ミサイルを9回発射している北朝鮮は新大統領めがけてどのような難題を放つのか。
 
⇒10日(木)夕方・金沢の天気      はれ

★「反日」でも「親日」でもない、「愛国」というステージ

★「反日」でも「親日」でもない、「愛国」というステージ

           来年3月の韓国の大統領選に関心があり、NHKニュースWeb版(6月29日付)を読むと、文在寅政権と対立して辞任した前検事総長の尹錫悦(ユン・ソギョル)氏が政界入りする意向を明らかにし、事実上の立候補表明をしたと報じていた。さらに詳細を知りたく韓国のメディアWeb版を検索する。

   中央日報Web版日本語(6月29日付)によると、尹錫悦国前検察総長が20代大統領選挙への出馬を公式宣言した。 この日(29日)、尹氏はソウル瑞草区良才洞の「尹奉吉義士記念館」で開かれた記者会見で「産業化と民主化で今の大韓民国を作った偉大な国民、その国民の常識から出発する」と話した。 尹氏は「その常識を武器に、崩壊した自由民主主義と法治、時代と世代を貫く公正の価値を必ず再建する」とし「正義が何か悩む前に、誰でも正しいことが日常で感じられるようにする。これが私の胸に刻んだ使命だ」と話した。

   尹氏が出馬表明の舞台に選んだのが尹奉吉記念館だったことに注目した。朝鮮独立運動家、尹奉吉(ユン・ボンギル)の碑が金沢市の野田山墓地にある。尹奉吉は日本が朝鮮半島を統治していた1932年4月29日、中国・上海の日本人街で行われていた天長節(天皇誕生日)の行事に、手榴弾を投げ込んで、日本軍の首脳らを死傷させ、軍法会議で死刑判決となった。その後、陸軍第9師団の駐屯地(金沢市)に身柄が移管され、その年の12月19日に銃殺刑に処せられた(Wikipedia「尹奉吉」)。戦後、韓国では「尹奉吉義士」と称され、野田山には在日韓国民団県本部が建立した記念碑がある=写真=。

   韓国人にとっては「義士」なのだが、日本人にとっては「テロリスト」でもある。尹錫悦氏が同記念館で記者会見したことの想いはどこにあるのか。同じ「苗字」という単純な理由ではないだろう。産経新聞ニュースWeb版(6月29日付)によると、尹氏は同記念館で記者会見したことについて、「尹奉吉の愛国精神をたたえる場所で、私たちの先祖が命をささげた韓国建国の土台である憲法精神を受け継ぐ意思を国民に示すためだ」と説明した。一方で、日本との関係では、文政権の「反日」外交を批判しつつ、「親日」とも一線を画す立場を示唆した(同)。

   尹氏は韓国の世論調査でも大統領候補として支持率がもっとも高いとされる。「反日」でも「親日」でもなく、「愛国」を前面に掲げ政権交代に向けて現政権に「手榴弾」を投げ込むのだろうか。

⇒1日(木)夜、金沢の天気    くもり