#安倍晋三

★安倍事件から1年 モラル崩壊の世の中に

★安倍事件から1年 モラル崩壊の世の中に

   安倍元総理が奈良市で選挙応援演説中に銃撃され死亡してから、きょう8日で1年になる。この銃殺は回避できなかったのかと思うことがある。それは警察が襲撃のとき何をしていたのか、という点だ。

   奈良市の大和西大寺駅前の交差点で安倍氏は候補者とともに立っていた。この場所はガードレールに囲まれていて、警視庁のSP1人を含む4人の警察官が警備にあたっていた。SPは安倍氏を見ながら、前方の大勢の聴衆を警戒していた。2人の警察官は安倍氏の目線と同じ方向にいる聴衆を警戒していた。つまり、傍らにいた3人が会場前方を中心に警備していたことになる。そしてもう1人の警察官は主に安倍氏の後方の警戒にあたっていた。

   最初、容疑者と安倍氏の直線距離は約15㍍だった。その後、安倍氏の背後に回り込むように歩いて車道を横断。ショルダーバッグの中から手製の銃を取りだし、約8㍍の距離から発砲した。周囲の人たちが大きな音に身をすくめる中、容疑者は白煙の上がる銃を手にし、さらに5歩前進。2.7秒後に、背後約5㍍から2発目を撃った。音の方を振り向くような動きを見せていた安倍氏は身をかがめるようにして倒れた。容疑者は直後、車道上で取り押さえられた。(※写真は、安倍氏銃撃事件を伝える、7月8日付の地元紙の夕刊) 

   ここで理解できないのは、背後8㍍まで近づいて発砲し、さらに5歩進み2.7秒後に2発目を発射している点だ。その間、SPと警察官の4人は何をしていたのか。ネットに上がっている関連動画などを見ると、一発目の後、安倍氏に覆いかぶさるなど警護対象者の身を守るような行動は確認できない。警察は常に容疑者の身柄の確保を最優先に考えていて、一発目の砲音と同時に犯人捜しに視線が注がれ、安倍氏をガードする行動が遅れた。5歩、2.7秒の二発目はその警備の死角を突いたのだろうか。

   銃規制がきびしい日本の社会にあって、専門知識があれば銃や弾を自作できる。それも無尽蔵にだ。これから銃がはびこるのではないか。そして、ことし4月には和歌山市で岸田総理の演説会場で爆発物が投げ込まれる事件もあった。世の中ではモラルの崩壊が起きているように思えてならない。

⇒8日(土)午後・金沢の天気   あめ

★安倍事件まもなく1年 明文化されない国葬の開催基準

★安倍事件まもなく1年 明文化されない国葬の開催基準

   安倍晋三氏が凶弾に倒れ亡くなり、去年9月27日に日本武道館で国葬が営まれた。中継番組をNHKなどで視聴していた=写真=。昭恵夫人が遺骨を抱いて車から降りて会場に入る。開式の辞で始まり、国歌演奏、黙とう、政府が制作した生前の安倍氏の映像を映写、追悼の辞(三権の長がそれぞれ、友人代表)、皇族による供花、献花(海外参列者、駐日大使ら)など淡々と進んだ。むしろ目立ったのは、きびきびとした動きの自衛隊の儀杖隊だった。

   追悼の辞で、友人代表として菅前総理が興味深いエピソードを紹介していた。平成12年(2000年)、日本政府は北朝鮮にコメを送ろうとしていた。当選2回目だった菅氏は「草の根の国民に届くのならよいが、その保証がない限り、軍部を肥やすようなことはすべきでない」と自民党総務会で反対意見を述べた。これが紙面で掲載され、記事を見た安倍氏が「会いたい」と電話をかけてきた。このことが、安倍氏と菅氏が北朝鮮の拉致問題にタッグを組んで取り組むきっかけとなった。当時の森喜朗内閣や外務省は日朝正常化交渉を優先していて、拉致問題はむしろ交渉の阻害要因というスタンスだった。

   安倍政権の官房長官として苦楽を共にした菅氏は、明治の政治家・山県有朋が長年の盟友・伊藤博文に先立たれて故人をしのんだ歌を詠んで追悼の辞を締めくくった。「かたりあひて 尽しゝ人は 先立ちぬ 今より後の 世をいかにせむ」。追悼の辞で拍手があったのは菅氏だけだったことを覚えている。

   安倍氏の国葬は議論を呼んだ。戦後の総理経験者としては1967年の吉田茂氏以来で戦後2人目だった。安倍氏の国葬の理由の一つに挙げられたのが、通算在職日数が3188日と歴代総理の中でトップ(総理官邸公式サイト)だったことだ。ちなみに、戦後政治を立て直した吉田氏は同2616日で5位だった。ならば、同2798日で3位、ノーベル平和賞受賞者でもある佐藤栄作氏はなぜ国葬にならなかったのか、と素人ながら考えてしまう。

   国葬に関しては一定のルールを設けるようにとの意見があり、政府は去年12月に国葬を検証する有識者ヒアリングの結果を公表したものの、明文化には至っていない。これについて記者会見(きのう3日)で問いただされた松野官房長官は「国葬の検討に当たっては、時の内閣において責任を持って判断する」と述べている(3日付・共同通信Web版)。はたして国葬の開催基準をめぐっての問題にけじめはつくのか。菅氏が詠んだ山県有朋の歌「今より後の 世をいかにせむ」を、問題を棚ざらしにすべきではないと解釈すれば、まさにこのことだ。

⇒4日(火)夜・金沢の天気     くもり

☆安倍事件まもなく1年 旧統一教会の「献金の闇」

☆安倍事件まもなく1年 旧統一教会の「献金の闇」

   これを宗教というのだろうか。宗教の名を借りた集金システムではないのか。3日付の共同通信Web版によると、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の教団トップの韓鶴子総裁が6月末、教団内部の集会で「日本は第2次世界大戦の戦犯国家で、罪を犯した国だ。賠償をしないといけない」「日本の政治は滅ぶしかないだろう」と発言していたことが3日、関係者への取材や音声データで分かった。教団側は6月中旬までに、年間数百億円にも上るとされる日本から韓国への送金を今後も取りやめると説明していたが、トップが依然、韓国への経済的な見返りを正当化したことになる。

   あれから間もなく1年になる。2022年7月8日、奈良市で街頭演説中の安倍元総理が銃で殺害された。同市に住む山上徹也容疑者が殺人と銃刀法違反の罪で逮捕された。これから裁判員裁判で審理されることになるが、殺害の動機とされるのが、母親が旧統一教会へ高額な献金をしたことから家庭が崩壊し、恨みを募らせたことが事件の発端とされる。安倍氏は祖父・岸信介の代から三代にわたって旧統一教会と深いつながりがあり、山上被告は安倍氏にも恨みを抱いていた。   

   さらに、2022年12月9日の参院消費者問題特別委員会で、いわゆる「宗教2世」の女性が訴えた。「これだけ悪質な団体が活動の一時停止もなく、税制優遇を受けていることはあってはならない」「両親が親戚中を勧誘したり、お金を要求したり、そのことで怒られているところも見てきました。また、高校生から始めた5年間のアルバイト代200万円ほどの給与も没収され、一度も返ってきませんでした」(同日付・朝日新聞Web版の意見陳述)

   多額の献金は韓国の本部に集められた。それはどこに流れたのか。「文藝春秋」(2023年1月号)は「北朝鮮ミサイル開発を支える旧統一教会マネー4500億円」の見出しで報じている。旧統一教会と北朝鮮の接近を観察していたアメリカ国防総省の情報局(DIA)のリポートの一部が機密解除され、韓国在住ジャーナリストの柳錫氏が記事を書いている。旧統一教会の文鮮明教祖は1991年12月に北朝鮮を訪れ、金日成主席とトップ会談をした見返りとして4500億円を寄贈していた、と。

   さらにDIA報告書では、1994年1月にロシアから北朝鮮にミサイル発射装置が付いたままの潜水艦が売却された事例がある。売却を仲介したのが東京・杉並区にあった貿易会社だった。潜水艦を「鉄くず」と偽って申告して取引を成立させていた。韓国の国防部は2016年8月の国会報告で、北朝鮮が打ち上げたSLBM潜水艦発射型弾道ミサイルは北朝鮮に渡った「鉄くず」潜水艦が開発の元になっていたと明かした。この貿易会社の従業員は全員が旧統一教会の合同結婚式に出席した信者だった。

   高額献金をめぐる旧統一教会の「深い闇」をどう断罪するのか。断罪がなければまた繰り返される。

⇒3日(月)夜・金沢の天気     くもり

★安倍国葬後の課題 「今より後の 世をいかにせむ」

★安倍国葬後の課題 「今より後の 世をいかにせむ」

   きょう日本武道館で営まれた安倍元総理の国葬の中継番組をNHKなどで視聴した=写真=。見ていた時間は午後1時50分から午後3時50分ごろまで2時間。この間、安倍氏の昭恵夫人が遺骨を抱いて車から降りて会場に入る。開式の辞で始まり、国歌演奏、黙とう、政府が制作した生前の安倍氏の映像を映写、追悼の辞(三権の長がそれぞれ、友人代表)、皇族による供花、献花(海外参列者、駐日大使ら)までを視聴した。

   あくまでもテレビ視聴での感想だが、めりはりのない形式的な追悼式というイメージだった。目立ったのはきびきびとした動きの自衛隊の儀杖隊だった。そもそも、10分にも及ぶ生前の安倍氏の映像を流す必要性が一体どこにあったのか。故人の功績や人柄をしのぶのは追悼の辞で十分ではなかったか。追悼式は追想の場であり、映像シーンを次々見せてしのぶものではない。

   追悼の辞で、友人代表として菅前総理が興味深いエピソードを紹介していた。平成12年(2000年)、日本政府は北朝鮮にコメを送ろうとしていた。当選2回目だった菅氏は「草の根の国民に届くのならよいが、その保証がない限り、軍部を肥やすようなことはすべきでない」と自民党総務会で反対意見を大々的に述べた。紙面で掲載され、記事を見た安倍氏が「会いたい」と電話をかけてきた。これが、安倍氏と菅氏が北朝鮮の拉致問題にタッグを組んで取り組むきっかけだった。当時の森喜朗内閣や外務省などは日朝正常化交渉を優先していて、拉致問題はむしろ交渉の阻害要因というスタンスだった。

   安倍政権の7年8ヵ月、官房長官として苦楽を共にした菅氏は、明治の政治家・山県有朋が長年の盟友、伊藤博文に先立たれて故人をしのんだ歌を一首詠んで追悼の辞を締めくくった。「かたりあひて 尽しゝ人は 先立ちぬ 今より後の 世をいかにせむ」。追悼の辞で拍手があったのは菅氏だけだった。

   民放チャンネルも中継番組を流していた。横並びの中継には当初、総務省からの圧力かと違和感があった。日本テレビ系とテレビ朝日系は海外参列者の献花のタイミングで、安倍氏と世界平和統一家庭連合(旧「統一教会」)の関係や、いわゆるモリカケ問題など取り上げ、安倍長期政権の光と陰にスポットを当てていた。日テレ系は、この国葬を統一教会がプロパガンダとして使っていく可能性があると、霊感商法対策弁護士連絡会の弁護士のコメントを中継で紹介していた。

   来週3日から秋の臨時国会が始まる。自民党は旧統一教会と絶縁宣言(今月8日)をする一方で、安倍氏と教団の関係を調査することについては「本人が亡くなった今、限界がある」(岸田総理)として否定している。国葬をプロパガンダにさせないためにも、この問題にけじめをつけてもらいたい。まさに、菅氏が詠んだ山県有朋の歌、「今より後の 世をいかにせむ」だ。

⇒27日(火)夜・金沢の天気    くもり時々あめ

☆安倍氏銃撃から1ヵ月 さりげなく哀悼の意を

☆安倍氏銃撃から1ヵ月 さりげなく哀悼の意を

   安倍元総理が奈良市で銃撃され死亡し、きょうで1ヵ月。メディア各社は、殺人で逮捕・送検された容疑者41歳について、検察は11月29日までの4ヵ月の鑑定留置を実施して、刑事責任能力の有無を見極めた上で起訴するかどうか決めるようだ、と報じている。

   4ヵ月もの鑑定留置をするということは、容疑者の供述に論理の飛躍や矛盾点がかなり見受けられるとの判断なのだろう。容疑者は母親が入信する「世界平和統一家庭連合」(旧「統一教会」)に恨みがあり、教団とつながりがある安倍氏の殺害に至ったと供述。さらに、統一教会と国会議員との癒着の実態が次々と明らかになっていることから、検察側もかなり慎重に捜査を進めているようだ。

   きょうの夕刊紙面で見つけた記事。安倍氏の銃撃事件後に広告主であるCMスポンサー企業がテレビCMを相次いで自粛したため、民放各社のCM枠は公共広告機構「ACジャパン」のCMが平時の50倍に増加した。CM自粛が相次いだ東日本大震災以来で最多となった(8日付・北陸中日新聞夕刊)。

   記事によると、CM総合研究所がまとめた数字で、在京キー局5局のACジャパンの放送回数は銃撃事件前日の7月7日は9回だったが、当日8日は241回、9日は472回、10日は462回、11日には509回に達した。CM全体に占める割合も7日の0.2%から11日は12.5%に上昇した。ただ、5日目の12日には39回に減り、ACジャパンへのCM差し替えは4日間で収束したことになる。

   東日本大震災のときは、2011年3月17日に3557回に達し、さらにこの傾向が1ヵ月以上にわたり続いた。それに比べれば、安倍氏の襲撃事件の衝撃波は短期間で治まったと言える。企業のテレビCMのイメージは明るさが売りでもあり、一時的にしろCMを控える動きはあってしかるべきだったろう。

   事件の2日後に行われた参院選挙。石川選挙区で立候補した岡田直樹氏は安倍氏の側近だった。当選確実のときの様子をテレビで見ていたが、万歳をせずに4期目の抱負を語っていた。さりげなく哀悼の意を示す、そのような心遣いが見て取れた。

   あれから1ヵ月。NHKが毎月行っている世論調査(8月5-7日)では、岸田内閣を「支持する」は前回調査より13ポイント下がって46%、「支持しない」は7ポイント上がって28%だった。安倍氏の「国葬」については「評価する」が36%、「評価しない」が50%だった。国葬と内閣支持率が微妙に絡まっている。

   この事件で誰もが感じたことは、一国の元総理が凶弾に倒れたという歴史的な出来事を肌で知った、ということではないだろうか。

⇒8日(月)夜・金沢の天気    はれ

★安倍元総理国葬にプーチンは顔を出す、出さないの論点

★安倍元総理国葬にプーチンは顔を出す、出さないの論点

   前回ブログの続き。安倍元総理の国葬がきょう閣議決定して、9月27日に日本武道館(東京・千代田区)で執り行われることになった。通算8年8ヵ月の総理在任中はとくに外交分野で存在感を示してきた安倍氏だけに、すでに世界各国から弔問希望の問い合わせが外務省に寄せられているのではないだろうか。

   見方を変えれば、岸田総理にとっては外交力を強化するチャンスとも言える。岸田氏はすでに積極的な外交を展開している。先月下旬にドイツで開催されたG7サミットに出席した後、スペインでのNATO首脳会議に日本の総理として初めて出席した。さらに、岸田氏はアメリカのバイデン大統領との共同記者会見で、来年のG7サミットをアメリカの原爆投下地である広島市で開催すると発表した。その「広島G7サミット」は5月19-21日の開催が正式に決まった。

   岸田氏が初めてNATO首脳会議に参加した大義は、自由主義圏という共有概念のもとで、アメリカやヨーロッパ諸国と軍事的にも連携を強めたいということだろう。ロシアによる偽旗を掲げてのウクライナ侵攻、さらに中国による強引な南シナ海の実効支配と尖閣諸島への領海侵犯を重ねて念頭に置いている。岸田氏は、国葬を外交の舞台として繰り広げることで、安倍氏の遺志を引き継ぐことになると「弔問外交」に意義を見出しているに違いない。

   では、このケースはどうかとふと考えてしまうのは、国葬にプーチン大統領が参列したいと申し込んできた場合、政府はどう対応するのだろうか。報道によると、プーチン氏は今月8日、安倍氏の母、洋子さんと妻の昭恵さん宛てに、「息子であり、夫である安倍晋三氏のご逝去にお悔やみを申し上げます」と弔電を送り、「この素晴らしい人物の記憶は、彼を知るすべての人の心に永遠に残る」と述べた(8日付・朝日新聞Web版)。   

   ロシアのウクライナ侵攻後、日本政府はプーチン氏や親戚、ロシアの富裕層ら507人の資産を凍結。在日ロシア大使館の外交官ら8人を国外追放した。これに対して、ロシア側も、同国に駐在する日本外交官8人を国外退去させ、日本の国会議員384人に入国禁止措置を取った。まさに、日本とロシアは絶縁状態となっている。

   この状況の中で、プーチン氏が「彼を知るすべての人の心に永遠に残る」と参列を希望した場合、日本政府は受け入れるのだろうか。もし受ければ、国際世論は相当ぎくしゃくするに違いない。香港問題やウイグル族への強制労働など中国の人権状況に対する批判から北京オリンピックには主要国の政府関係者が出席しない「外交的ボイコット」が繰り広げられたが、国葬にプーチン氏出席となると、それどころではないだろう。

   逆に受け入れて、ウクライナ侵攻の決着を導き出すという「サプライズ外交」を密かに描いているかもしれない。今後、国葬をめぐる論議はこの点にフォーカスしていくだろう。プーチン氏は顔を出すのか、出さないのか。

(※写真は、2016年12月16日、日露首脳会談後に行われた安倍総理とプーチン大統領による共同記者会見。このとき、安倍氏は「95分間、2人だけで会談を行った」と語っていた=総理官邸、テレビ中継画像)

⇒22日(金)午後・金沢の天気   くもり時々はれ

☆そもそもなぜ「国葬」、されど「国葬」

☆そもそもなぜ「国葬」、されど「国葬」

   銃弾で死去した安倍元総理を国葬とする件は、あす22日に閣議決定するようだ。戦後、総理経験者の国葬は1967年の吉田茂氏以来で戦後2例目となる。同じく国葬となる人物でも、吉田氏と安倍氏のイメージはわれわれシアニ世代では異なる。

   吉田氏は戦後の混乱のただ中で、日本国憲法の公布(1946年)やサンフランシスコ平和条約の締結(1951年)、日米安全保障条約の発効(1952年)にこぎつけた。ひとことで言うならば「戦後日本の礎を築いた政治家」、というイメージが脳裏に刷り込まれている。では、安倍氏のイメージはどうか。「アベノミクス」「憲政史上最長の通算8年8ヵ月」「日米外交の円滑化」だろうか。

   国葬には吉田氏がふさわしく、安倍氏は物足りないと言っているのではない。戦前は「国家に偉功ある者」など対象者を定めた「国葬令」があったものの、戦後は国葬の対象者などを明文化した法令はない。つまり、国葬の是非については国民はイメージで語るしかないのだ。岸田総理は国の儀式を所掌するとした内閣府設置法があり、閣議決定により国葬をすると表明した。国葬の基準もないのに、行政府だけの判断でいいのだろうか。

   NHKの世論調査(今月16-18日)よると、岸田内閣を「支持する」は59%、「支持しない」は21%だった。しかし、岸田内閣が安倍氏の国葬を行うことについては、「評価する」が49%、「評価しない」が38%だった。つまり、安倍元総理の国葬の評価については世論は分かれている。この背景にあるのは、安倍氏への政治的評価ではあることは言うまでもない。「憲政史上最長の8年8ヵ月」の重責を担ったが、一方で、長期政権の歪みも目立った。「忖度」という言葉が盛んに報じられた加計学園問題や森友問題などはその事例だろう。

   あすの閣議決定では国葬は9月27日に執り行うようだ。ただ、ここにきて新型コロナウイルス感染の第7波が襲来している。きょうは全国で18万6246人、これで2日連続で過去最多となった(21日付・NHKニュースWeb版)。地元石川県でも1628人とケタ違いの増え方だ。これに対して、政府は行動制限などを行う必要はないとしている。

   しかし、国葬となれば、弔問外交も活発化するが、コロナ禍の第7波がどのような影響をもたらすのか。かつての盟友だったアメリカのトランプ元大統領は弔問に訪れることができるのだろうか。そもそも「国葬」、されど「国葬」だ。

(※写真は2017年11月、日本を初めて訪れたトランプ大統領と安倍総理が「霞ケ関カンツリー倶楽部」でゴルフを行う様子=総理官邸ホームページ)

⇒21日(木)夜・金沢の天気     あめ

☆警備の死角はどこにあったのか

☆警備の死角はどこにあったのか

        安倍元総理が銃撃され死亡した事件からきょうで9日経ったが、解明されていないことがある。それは警察が襲撃のとき何をしていたのか、という点だ。

   テレビ・新聞メディア各社の記事などによると、奈良市の大和西大寺駅前の交差点で安倍氏は候補者とともに立っていた。この場所はガードレールに囲まれていて、警視庁のSP1人を含む4人の警察官が警備にあたっていた。SPは安倍氏を見ながら、前方の大勢の聴衆を警戒していた。2人の警察官は安倍氏の目線と同じ方向にいる聴衆を警戒していた。つまり、傍らにいた3人が会場前方を中心に警備していたことになる。そしてもう1人の警察官は主に安倍氏の後方の警戒にあたっていた。

   以下は朝日新聞社会面(17日付)の記事から。最初、容疑者と安倍氏の直線距離は約15㍍だった。その後、安倍氏の背後に回り込むように歩いて車道を横断。ショルダーバッグの中から手製の銃を取りだし、約8㍍の距離から発砲した。周囲の人たちが大きな音に身をすくめる中、容疑者は白煙の上がる銃を手にし、さらに5歩前進。2.7秒後に、背後約5㍍から2発目を撃った。音の方を振り向くような動きを見せていた安倍氏は身をかがめるようにして倒れた。容疑者は直後、車道上で取り押さえられた。

   ここで理解できないのは、背後8㍍まで近づいて発砲し、さらに5歩進み2.7秒後に2発目を発射している点だ。その間、SPと警察官の4人は何をしていたのか。NHKニュースWeb版(17日付)によると、二之湯国家公安委員長がきょう奈良市の現場を視察。今回の事件の警備をめぐっては、警察庁が立ち上げたチームが検証を進めていて、後方の警備が不十分となり襲撃を防げなかったことなど、当時の問題点を明らかにした上で、体制や配置など要人の警備を見直す方針という。ならば、どのような点が不十分だったのか、とくに一発目と二発目の2.7秒で何をしていたのか。

   ネットに上がっている関連動画やテレビを見ると、一発目の後、安倍氏に覆いかぶさるなど警護対象者の身を守るような行動は確認できない。警察は常に容疑者の身柄の確保を最優先に考えていて、一発目の砲音と同時に犯人捜しに視線が注がれ、安倍氏をガードする行動が遅れた。5歩、2.7秒の二発目はその警備の死角を突いたのだろうか。

⇒17日(日)午後・金沢の天気     はれ

★安倍氏国葬の前に自民党がなすべきこと

★安倍氏国葬の前に自民党がなすべきこと

   素朴な疑問だ。見かけは宗教法人だが内実は集金マシーン、ならばなぜ国税当局が入らなのか。宗教法人は治外法権なのか。安倍元総理の射殺事件で、犯人が恨みを持っていたという「世界平和統一家庭連合」(旧「統一教会」)について、ネット上で元信者の生々しい証言が数々上がっている。

   以下は富山県の民放「チューリップテレビ」による、かつて統一教会におよそ10年間入信していたという女性の証言と教団の内部資料についての報道(7月14日付)。

記者 : Kっていうのは何ですか ?    元信者の女性 : 「献金、お金のことだと思います。はっきり献金とかお金っていうのは露骨に出せなかったのかな」 「K」は献金を示す隠語で「61億K」と記されていました。 元信者の女性 :「ヨイド(韓国の本部所在地)を守るために61億献金が必要」「献金がない、と嘆く人は問題。もうここでお金がないと嘆く人は問題だと。乞食をしてでもやらなければならない。今は超非常緊急事態である」  内部資料には61億円もの献金が必要だと書かれていました。 さらに、別の隠語も。その名も、「M作戦」。 記者 : Mっていうのは ?      元信者の女性 : 「マナのM。高麗人参のことをマナって呼んでいたので。売るための作戦ですね」 「M」は教団が売る1瓶7万円の高麗人参の濃縮液を指します。「M作戦」と題して、それを全国で毎月2万個、富山地区だけで192個を売るノルマなのです。

          この証言にあるように、61億円は「献金」という名のノルマだ。富山地区の 信者が毎月192個のマナを7万円で販売すれば1344万円。年間で1億6128万円となる。これが宗教活動なのだろうか。年間61億円の「献金」は韓国のヨイドにすべて上納したのだろう。霊感商法が社会問題となった1980年代から続いているとすれば、これまでざっと2500億円ほどが貢がれていることになる。その上納方法(送金)も金の流れが分からないような工夫がされている可能性がある。

   集金マシーンだけではない、集票マシーンでもある。自民党と統一教会の癒着だ。反共産主義の立場を共有していて、教会側が10万人ともいわれる信者を動員して選挙支援などを行っていた。先の参院選で、自民党の全国比例で出馬し当選した元総理秘書官は統一教会の関連団体の集会に参加して支援を求めていたと報じられている(15日付・TBSニュースWeb版)。また、自民議員には無償で公設秘書や私設秘書をしている信者がいるということも以前から指摘されていた。

   借金をさせて自己破産、そして高額な物品販売、実に巧妙な手口だ。これは憶測だが、無職あるいは高齢の信者から生活保護費や年金を、零細企業の事業者の信者に申請させた持続化給付金などの公費を献金として巻き上げていることも想像がつく。徹底的に税務調査を入れるべきだろう。岸田内閣が安倍元総理の国葬を今秋に営むと発表したが、その前にやるべきことは自民党と統一教会の癒着を断ち切って、国民の信頼を得ることだ。

⇒15日(金)午後・金沢の天気    はれ

★乱世に突入するのか日本

★乱世に突入するのか日本

   安倍元総理が射殺されて世の中が騒然となって、そして一夜が明けた。ブログで振り返ってみると、安倍氏の写真で印象に残っているのはこれかもしれない(2020年8月31日付)。 

   この写真を見て感じたことは、お笑いコンビのようだ、と。写真は総理官邸のツイッター(2019年5月26日付)で公開している。安倍氏(右)とトランプ大統領(左)が千葉県のゴルフ場で自撮りした写真だ。とくに、安倍氏の顔がなんとなく、芸能人っぽく見える。アメリカのCNNニュース(日本版)は「外務省によれば、昼食は米国産の牛肉のダブルチーズバーガーだった。トランプ大統領は相撲観戦も行った。優勝した力士にはトロフィーの上部に翼を広げたワシをあしらった『トランプ杯』も贈呈した」と。安倍氏のきめの細かな外交のテクニックが懐かしく思える。

   不謹慎な表現かもしれないが、今回の事件で日本は乱世の様相を呈してきたのではないかと、ふと思った。銃規制がきびしい日本の社会にあって、専門知識があれば銃や弾を自作できる。それも無尽蔵にだ。これから銃がはびこるのではないか。そして、世の中ではモラルの崩壊が起きている。税金を役人が詐取する事件が横行する。東京国税局の職員が国の持続化給付金をだまし取ったとして6月に詐欺罪で逮捕・起訴されている。去年7月には経産省のキャリア官僚2人が国の家賃支援給付金を詐取して逮捕・起訴されている。学校の教師が児童・生徒に猥褻な行為するという不適切な事象が後を絶たない。

   そして天変地異だ。「いつ起きてもおかしくない」と言われ続けている巨大地震がある。南海トラフ地震だ。四国や近畿、東海地方の広い範囲でマグニチュード8から9クラスで震度6強や6弱の激しい揺れが生じ、死者32万人、負傷者62万と想定されている。この30年の間に70%から80%の確率で起きる(国の地震調査研究推進本部)。さらに、東京の都心南部でマグニチュード7.3の地震が起きた場合、死者は最大で6100人、負傷者は同じく9万3400人、帰宅困難者は453万人、揺れや火災による建物被害は19万4400棟に上ると推計されている(5月25日・東京都防災会議)。

   地震はいつやってくるか分からない。80%の確率だとしても30年後も地震は起きない可能性もある。20%の確率だとしても、あすやってくるかもしれない。

   リアリティがあるのは隣国のリスクだ。ロシア流強奪の論理は日本でもまかり通る。極東の石油天然ガス開発事業「サハリン2」の運営をロシアが新たに設立する法人に移管し、現在の運営会社の資産を無償譲渡するよう命じる大統領令が下された。この事業に参画している三井物産や三菱商事などは経営の枠組みから排除されることになるだろう。そして、ロシア政府は6月7日、北方四島周辺水域での日本漁船の安全操業に関する日ロ政府間協定の停止を表明し、スケソウダラやホッケの刺し網漁ができなくなる。

   さらに、ロシアの政党「公正ロシア」のミロノフ党首が4月1日に「一部の専門家によると、ロシアは北海道にすべての権利を有している」と党公式サイトを通じて見解を述べた(4月8日付・時事通信Web版)。さまざまな憶測を呼んでいる。中国は尖閣諸島は中国の領土として主張し続けている。8日未明にも、中国海警局の船2隻が尖閣諸島の沖合で、日本の漁船を追いかけるように日本の領海に侵入。7日夜にも64時間余りにわたって領海に侵入した(8日付・NHKニュースWeb版)。

   大量の難民問題も起こりうる。北朝鮮に有事が起これば、大量の難民が発生し、船に乗って逃げるだろう。リマン海流に乗って日本海側に漂着する。そうした難民をどう受け入れるのか、中には武装難民もいるだろう。

   乱世というさまざまなリスクを抱えた時代にこのまま突入するのか。世の中の乱れ、天変地異、隣国のさまざまなリスク・ファクターが集中する日本。安倍氏だったら、どう乗り切るだろうか。

⇒9日(土)夜・金沢の天気    あめ