#天日陰比咩神社

★愛犬と詣でる神社 人にも動物にも「能登はやさしや」の土地柄

★愛犬と詣でる神社 人にも動物にも「能登はやさしや」の土地柄

能登半島の中ほどに位置する中能登町では、神酒として「どぶろく」を造り続けている神社が3社ある。3社は延喜式内の古社でもあり、酒造りの長い歴史を有する。能登半島は国連の食糧農業機関(FAO)から「世界農業遺産」(GIAHS)に認定されているが、まさに稲作と神への感謝の祈り、酒造りの三位一体の原点がここにあるのではないか、この地を訪れるたびにそう感じる。3社の一つである天日陰比咩(あめひかげひめ)神社で面白いイベントが開催されるとニュースで知って、きょう見学に行ってきた。

イベント名は「神社でオフ会 WANだフル ㏌ 天日陰比咩神社」。各地から愛犬家がペットと同伴で集まり、ワークショップに参加し、さらにお祓いも受けることができるという催し。拝殿に上がると、小松市から訪れたという男性が秋田犬とともにお祓いを受けていた。男性は「(ペットは)家族の一員なので、健康と無事を願ってお祓いをお願いしました」と話し、お祓いの後、愛犬とともに玉串を捧げていた=写真=。社務所では犬と子どもたちが触れ合う場や、専門家による愛犬の困りごと相談の場も設けられていた。イベントはあす23日まで。

イベント会場を眺めていて、飼い主と愛犬のほんのりとした雰囲気が漂い、「能登はやさしや土までも」という言葉を思い出した。天日陰比咩神社は石動山(せきどうざん、標高565㍍)のふもとにある神社である。石動山は古来の山岳信仰の霊場でもあった。いまも伊須流岐比古(いするぎひこ)神社の社殿や堂塔伽藍が建ち並ぶ。

「能登はやさしや土まで」という言葉が文献で出てくるのは、元禄9年(1696)に加賀藩の武士、浅加久敬が書いた日記『三日月の日記』だった。浅加は馬に乗って、当時は「御山」と呼ばれていた石動山へ参拝に上った。七曲がりという険しい山道を、道案内をする地元の馬子(少年)が馬をなだめながら、そして自分も笑顔を絶やさずに一生懸命に上った。武士は馬にムチ打ちながら上るものだが、少年は馬を励まし、やさしく接する姿に感心し、日記に「されば・・・能登はやさしや土までも、とうたうも、これならんとおかし」と綴った。「能登はやさしや」はもともと加賀に伝わる杵歌(労働歌)に出てくる言葉だった。

そもそも天日陰比咩神社では、高齢や身体に障害があり階段を登れない人や砂利道が歩きにくい参拝者に配慮して、拝殿の直前まで乗用車で行ける、「ドライブスルー神社」として知られる。慌ただしい日常とは別世界の、人にも動物にもやさしい雰囲気がこの地から漂ってくる。

⇒22日(土)夜・金沢の天気    はれ

★日本酒を極めて行きつく酒「どぶろく」の価値

★日本酒を極めて行きつく酒「どぶろく」の価値

   能登半島の中ほどに位置する中能登町には、連綿と「どぶろく」を造り続けている神社が3社ある。五穀豊穣を祈願する新嘗祭に供えるお神酒で、お下がりとして氏子に振る舞われる。同町ではこの伝統を活かして2014年に「どぶろく特区」の認定を受け、いまでは農家レストランなど営む農業者が税務署の製造免許を得て醸造している。きょう同町で、どぶろくの研究をしている金沢工業大学の尾関健二教授(応用バイオ学)の講演会があった。どぶろくの驚くべき効能についてだった。

   どぶろくは、蒸した酒米に麹(こうじ)、水を混ぜ、熟成するのを待つ。ろ過はしないため白く濁り、「濁り酒」とも呼ばれる。そのどぶろくが大ブレークするかもしれない。以下、尾関教授の講演から。金沢工大学と酒造会社との共同研究で、日本酒の旨み成分「α-EG(アルファーイージー)」が皮膚真皮層のコラーゲン量を増やすことが学術的に実証された。さらに、どぶろくにはコメ由来のレジスタントプロテイン(RP)が濃縮されており、α-EGとRPが合わさることで、適量で数週間にわたって肌にはりやつやが高まる。とくに、年配層の女性の美容効果が大きいことも判明した。これはどぶろくの付加価値といえる。

   どぶろくの歴史は古い。中能登町は能登における稲作文化の発祥の地でもある。1987年に「杉谷チャノバ タケ遺跡」の竪穴式住居跡から、黒く炭化したおにぎりが発掘された。化石は約2000年前の弥生時代のものと推定され、日本最古のおにぎりと話題になった。毎年8月に営まれる「鎌打ち神事」は、鎌で平野を開墾し、田んぼの害虫などが退散することを願った神事とされる。どぶろくを造り、収穫を神々に感謝する祭りがこの地の3つの神社で脈々と続いている。

   そうしたどぶろくの歴史と付加価値をもっとPRしようと、同町の観光協会が中心となって、12月12日を「どぶろく宣言」の日と定めてキャンペーンを行っている。尾関教授の講演もそのプログラムの一つだった。肌の美容効果という付加価値もさることながら、日本酒を極めて行くと、最終的に行きつく酒、それが「どぶろく」ではないかと、講演を聴いて思った次第。(※写真は、中能登町の天日陰比咩神社でつくられているどぶろく)

⇒4日(土)夜・金沢の天気     あめ時々あられ