#大陸間弾道ミサイル

★ウクライナ侵攻1年 世界の流れをどう読む=上

★ウクライナ侵攻1年 世界の流れをどう読む=上

   ロシアによるウクライナへの侵攻は今月24日で1年を経過することになる。終わりの兆しが見えない。そして、世界はいったいどこに向かって流れていくのか、和平なのか大戦なのか、不透明な潮流を読んでみる。

   ~国連安保理は機能不全 ロシアは核兵器かざし孤立深める~

   このテーマを描いたとき、「国連安全保障理事会は機能しているのか、なぜその役割を果たさないのか」という素朴な疑問が浮かぶ。ロイター通信Web版日本語(23日付)によると、 国連のグレテス事務総長は22日に開催された国連総会緊急特別会合で、ロシアによるウクライナ侵攻は国連憲章および国際法に違反していると述べた上で、「核兵器を使用するという暗黙の脅迫を耳にしている。いわゆる核兵器の戦術的使用は全く容認できない。今こそ瀬戸際から退くべきだ」とロシアの脅迫を非難した。

   23日に開催される緊急特別会合では、決議案を採択する予定で、ロシアに対し軍の撤退および敵対行為の停止を再び求めるとみられる。国連総会での決議に法的拘束力はないが政治的な影響は大きい(同)。では、国連の安全保障理事会はどう機能しているのか。(※写真・上は国連安全保障理事会の会議室=国連広報センター公式サイトより)

   国連安保理は日本時間21日午前、北朝鮮の相次ぐミサイル発射を受けた緊急会合を開いた。日米欧などは北朝鮮の安保理決議違反を厳しく非難したが、中国とロシアは米韓の軍事演習などが緊張を高めていると北朝鮮を擁護。安保理として一致した対応は取れなかった(21日付・東京新聞Web版)。ロシアによるウクライナ侵攻も同様で、ロシアは常任理事国で拒否権があるため、安保理は法的な拘束力がある決議を何一つ成立させていない。

   国連に対する評価は世界的に低下している。ピュー・リサーチ・センターが去年6月に発表したアメリカ国内の調査で、「国連の影響は弱まっている」が39%だった。「変わらない」が46%、「強まってる」が16%だった。ウクライナ侵攻を仕掛けたロシアに非難声明すら出せない国連安保理への憤り、そして無力感ではないだろうか。

   ロシアのプーチン大統領はさらに戦況を煽る宣言を出した。NHKニュースWeb版(23日付)によると、ロシア大統領府は「祖国防衛の日」と呼ばれる軍人をたたえるロシアの祝日にあわせて、プーチン大統領の動画のメッセージを公開。この中で、「ことし、大陸間弾道ミサイル『サルマト』の実戦配備を行う。また極超音速ミサイル『キンジャール』の大量製造を継続していく。そして、海上発射型の極超音速ミサイル『ツィルコン』の大量供給を始める」と述べ、ロシア軍が保有する陸や海そして空軍の核戦力を増強していくと宣言した。

   プーチン大統領は21日に行った年次教書演説でも、アメリカとの核軍縮条約「新START」の履行停止を表明。ウクライナへの軍事支援を強めるアメリカなどを牽制する狙いとみられる(同)。ロシアは核兵器をかざし、国際的にますます孤立を深めている。

⇒23日(木)午後・金沢の天気      はれ

★北朝鮮はICBMの核搭載を急ぐのか

★北朝鮮はICBMの核搭載を急ぐのか

    北朝鮮がまた日本海に向けて弾道ミサイルを発射した。ミサイルの発射はことしに入って13回目だ。防衛省公式サイト「報道資料」(4日付)によると、「北朝鮮は、本日12時2分頃、北朝鮮西岸付近から、1発の弾道ミサイルを、東方向に向けて発射しました。詳細については現在分析中ですが、最高高度約800km程度で、距離は約500km程度飛翔し、落下したのは、北朝鮮東岸の日本海であり、我が国の排他的経済水域(EEZ)外と推定されます」。

    また、防衛大臣のコメントも添えている。「これまでの弾道ミサイル等の度重なる発射も含め、一連の北朝鮮の行動は、我が国、地域及び国際社会の平和と安全を脅かすものです。また、ウクライナへの侵略が発生している中で、ミサイルを発射したことは許されない旨、大臣からコメントがありました。さらに、このような弾道ミサイル発射は、関連する安保理決議に違反するものであり、強く非難します」

   注視するのは、発射された場所だ。防衛省公式サイトのイメージ図にあるように、発射は首都平壌の郊外の国際空港で行われたのだろう。ここからは、3月24日に「モンスター・ミサイル」と報じられた全長23㍍にも及ぶ大陸間弾道ミサイル「火星17型」(ICBM)が発射されている。このときは、71分飛翔し、北海道の渡島半島の西方約150㌔の日本海(EEZ内)に落下した。飛翔距離は約1100㌔、最高高度は6000㌔を超えると推定されている。射程距離は首都ワシントンほかアメリカ全土がほぼ入るとされた。

    今回は最高高度は800㌔とされるので火星17型に比べれば、規模が小さいのかもしれない。ただ、4月25日に「朝鮮人民革命軍」創設90年にあわせて軍事パレードを開催した金正恩総書記は「核戦力を最速ペースで強化・開発するため、措置を取り続ける」と表明し、核戦力について、いつでも行使できるよう「準備が欠かせない」と述べている(4月26日付・BBCニュースWeb版日本語)。アメリカ全土を射程距離に入れるICBMの発射実験には成功したので、次は核弾道の搭載に向けて準備を進めているのではないかと懸念する。

   北朝鮮だけではない。ロシア太平洋艦隊の潜水艦2隻が4月14日、日本海で巡航ミサイルの発射演習をした。ミサイルは敵の船を模した海上の標的に命中したとしている(4月14日付・共同通信ニュースWeb版)。また、同じ4月20日には、10以上の核弾頭の搭載が可能な新型の大陸間弾道ミサイル「サルマト」をカムチャッカ半島の標的地に落としている。CNNニュースWeb版日本語(4月21日付)によると、「サルマト」についてはプーチン大統領が2018年の演説で新型兵器として言及し、これでNATOの防衛は「完全に使い物にならなくなる」と誇示していた。日本海周辺にさらなる緊張感が漂う。

⇒4日(水)夜・金沢の天気      くもり

★大陸間弾道ミサイル発射再開の地ならしか

★大陸間弾道ミサイル発射再開の地ならしか

    ことしに入って7回目のミサイル発射だ。松野官房長官はきょう午前9時、臨時会見を行った。総理官邸公式ホームページに掲載された会見動画によると、北朝鮮はきょう7時52分ごろ、北朝鮮内陸部から弾道ミサイル1発を東方向に発射。最高高度はおよそ2000㌔、飛しょう時間は30分、およそ800㌔を飛しょうし、日本海側のEEZ外に落下したものと推定される。付近を航行する航空機や船舶および関係機関への被害などは確認されていない。

   気になるのは、最高高度が2000㌔ということは、打ち上げ角度を高くする、いわゆる「ロフテッド軌道」型の弾道ミサイルということだ。2017年5月14日に発射した中距離弾道ミサイル(IRBM)級の新型弾道ミサイルは、2000㌔を超える高度に達した上で800㌔飛しょうさせている。さらに、同じ年の11月29日に発射した大陸間弾道ミサイル(ICBM)級新型弾道ミサイルは4000㌔を超える高度に達し、1000㌔を飛しょうした。ここから推測できることは、北朝鮮はICBMの発射の地ならしを始めたのではないか、ということだ。

   北朝鮮は今月19日に開いた朝鮮労働党の政治局会議で「アメリカ帝国主義との長期的な対決に徹底して準備しなければならない」とする方針を決定し、2018年に中止を表明していたICBMの発射実験や核実験については見直しを検討するとしている(1月27日付・NHKニュースWeb版)。

   このブログでは日本海側に住む者の一人の危機感として、北朝鮮のミサイル発射の動向をその都度記している。この1ヵ月で7回の発射は異常で、ミサイルの多様化には異様さを感じる。今月5日は極超音速の弾道ミサイルだった。11日の弾道ミサイルも極超音速型で、ミサイルから分離された弾頭が1000㌔先の目標に命中した。14日には鉄道から短距離弾道ミサイル2発を発射。17日に戦術誘導弾として弾道ミサイル2発を日本海上の島に「精密に打撃」した。25日にも長距離巡航ミサイル2発を「9137秒飛行し1800㌔先の島に命中」させている。6回目の27日は2発の戦術誘導弾を標的の島に「精密に打撃」、爆発威力は「設計上の要求を満たした」ものだった。

   そしていよいよ大陸間弾道ミサイル発射を再開させ、「ロケットマンが自殺行為の任務を進めている」(2017年9月、アメリカのトランプ大統領の国連総会演説)のステージに逆戻りするのか。

(※写真は、2020年10月の北朝鮮軍事パレードで登場した新型ICBMと見られる弾道ミサイル、令和4年1月・防衛省発表資料「北朝鮮による核・弾道ミサイル開発について」より)

⇒30日(日)午後・金沢の天気    くもり時々はれ