#外交的ボイコット

☆北の五輪不参加と極超音速ミサイルは何を潰したのか

☆北の五輪不参加と極超音速ミサイルは何を潰したのか

   きのう11日に北朝鮮が発射した極超音速ミサイルについて防衛省は公式ホームページで落下地点を推定した図=写真・上=を掲載し、「詳細については現在分析中ですが、通常の弾道軌道だとすれば約700km未満飛翔し、落下したのは我が国の排他的経済水域(EEZ)外と推定されます」とコメントを書いている。この図を見て、ミサイルの発射角度を東南に25度ほど変更すれば、間違いなく能登半島に落下する。さらに、朝鮮新報(12日付)は「発射されたミサイルから分離された極超音速滑空飛行戦闘部は、距離600km辺りから滑空再跳躍し、初期発射方位角から目標点方位角へ240km旋回機動を遂行して1000km水域の設定標的を命中した」と記載している=写真・下=。この記載通りならば、北陸がすっぽり射程に入る。

   さらに、朝鮮新報の記事は金正恩朝鮮労働党総書記が発射を視察し、「国の戦略的な軍事力を質量共に、持続的に強化し、わが軍隊の近代性を向上させるための闘いにいっそう拍車をかけなければならない」と述べと伝えている。

   NHKニュース(12日付)によると、岸防衛大臣はきょう12日午前、記者団に対し、11日に北朝鮮が発射した弾道ミサイルについて、通常よりも低い最高高度およそ50㌖、最大速度およそマッハ10で飛しょうしたと分析していると説明した。今月5日に発射した極超音速ミサイルはマッハ5の速さで飛行したと報じられていた。去年9月28日の「火星-8」はマッハ3とされていたので、ミサイル技術が格段に高まっていると言える。

   そして、岸大臣が述べたように、今回の弾道ミサイルは通常より低く飛び、最高高度およそ50kmだった、非常に速く低く飛ぶ弾道ミサイルに日本は対応できるのだろうか。これまで北朝鮮のミサイル発射は、アメリカを相手に駆け引きの材料だと思い込んでいた。どうやらそうではないようだ。日本やアメリカの迎撃ミサイルなどはまったく寄せ付けない、圧倒的な優位性を誇る弾道ミサイルの開発にすべてを集中する。国際的な経済封鎖下でも、東京オリンピックと北京オリンピックをボイコットしてでも開発を急ぐ。そして、ダメージを受けたのは韓国だった。

   韓国の大統領府関係者は、北京オリンピックについて「慣例を参考にして、適切な代表団が派遣されるよう検討中」と語り、文在寅大統領の出席は検討していないと明らかにした(12日付・時事通信Web版)。文氏は「外交的ボイコット」を検討していないと訪問中のオーストラリアでの首脳会談後の記者会見で表明していた(12月13日付・朝日新聞Web版)。

   以下裏読みだ。文氏は北京オリンピック期間中に中国の仲立ちで北京での南北首脳会談を構想し、水面下で交渉していた。ところが、北朝鮮は今月5日に極超音速ミサイルを発射。同じ日に「敵対勢力の策動と世界的な感染症の大流行」を理由にオリンピックに参加しないことを中国側に通知した。そして11日にマッハ10の極超音速ミサイルを発射した。これで文氏の「北京での南北首脳会談」の構想は完全に潰えてしまった。というより、ひょっとして、北朝鮮は文氏の夢を潰すためにあえて発射と不参加をセットにしたのか。「敵対勢力の策動」とはこのことを指すのか。

⇒12日(水)夜・金沢の天気      あめ

★騒々しい3連休明け 弾道ミサイルどこに向けているのか

★騒々しい3連休明け 弾道ミサイルどこに向けているのか

   海上保安庁公式ホームページは11日7時29分の「【緊急情報】ミサイル発射情報」で、「北朝鮮から、弾道ミサイルの可能性があるものが発射されました。船舶は、今後の情報に留意するとともに、落下物を認めた場合は、近づくことなく、関連情報を海上保安庁に通報してください」と伝えた。同じく防衛省公式ホームページは7時35分の「お知らせ(速報)」で、「北朝鮮から弾道ミサイルの可能性があるものが発射されました」と伝えている。総理官邸公式ホームページでは、「総理指示(7:33)」として、「情報収集・分析に全力を挙げ、国民に対して、迅速・的確な情報提供を行うこと」「航空機、船舶等の安全確認を徹底すること」「不測の事態に備え、万全の態勢をとること」を出している。騒々しい連休明けだ。

   北朝鮮は今月5日の午前8時7分ごろにも、内陸部から「極超音速ミサイル」を日本海に向けて発射している=写真、1月6日付・朝鮮新報Web版=。落下地点は日本の排他的経済水域(EEZ)外と推定される。航空機や船舶からの被害報告などは確認されていない。去年10月19日にも北朝鮮は潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)を、9月には11・12日に長距離巡航ミサイル、15日に鉄道線路での移動式ミサイル、28日に極超音速ミサイルを発射している。

   NHKニュースWeb版によると、岸田総理は午前9時前、総理大臣官邸で記者団に対し、「先日、北朝鮮は弾道ミサイルを発射し、国連安全保障理事会で対応が協議されたところだ。こうした事態に北朝鮮が継続してミサイルを発射していることは極めて遺憾なことだ。政府としては、これまで以上に警戒監視を進めているが、発射の詳細は早急に分析を行っている」と述べた。また、岸防衛大臣は記者会見で、北朝鮮から発射された弾道ミサイルの可能性があるものは、通常の軌道であれば、日本のEEZの外側に落下したと推定されることを明らかにした。

   それにしても、この騒々しさは北京オリンピック・パラリンピックに影響をもたらさないのだろうか。弾道ミサイルを打ち上げている国がオリンピック開催国の隣国にあることに、各国のオリンピック選手団はどう思っているだろうか。そして、北朝鮮は北京オリ・パラに参加しない方針を明らかにしている(1月7日付・NHKニュースWeb版)。その理由に、アメリカなどの「外交的ボイコット」に関連して、「アメリカと追従勢力の中国への陰謀がより悪質になっている。中国の国際的なイメージを傷つけようとする卑劣な行為で排撃する」としている(同)。この言葉を真に受けると、「アメリカと追従勢力」を「排撃する」ことと、弾道ミサイルを関連づけて考えてしまう。

⇒11日(火)午前・金沢の天気      あめ

★2021 バズった人、コト~その7

★2021 バズった人、コト~その7

   136年も前、隣国に対する憤りの念を持った人物がいた。福沢諭吉だ。主宰する日刊紙「時事新報」(明治18年3月16日付)の1面社説にこう記した。「我れは心に於て亜細亜東方の悪友を謝絶するものなり」と。社説は福沢の「脱亜論」で知られる。福沢の執筆の背景は、当時の清国、李氏朝鮮は近代化を拒否して儒教などの旧態依然とした体制に固執していた。そこで福沢は政治的な縁切り(国交断絶)ではなく、「謝絶」と表現した。要求には謝りつつ応じない、と。当時の福沢の気持ちが現代にもによく通じる。

      ~福沢諭吉「悪友を謝絶する」 いまに通じる言葉~

   香港では言論の自由への締め付けが止まない。香港の警察は、政府に批判的な論調で知られ抗議活動の記事などを数多く配信してきたネットメディア「立場新聞」の幹部7人を、憎悪をあおる出版物を発行した疑いで逮捕した。これを受けて「立場新聞」は記事配信を停止し、過去の記事も削除、すべての社員の契約を解除することを明らかにした(12月29日付・NHKニュースWeb版)。ことし6月、中国政府への批判を続けてきた香港の新聞「蘋果日報(アップル・デイリー)」の紙面の主筆や中国問題を担当する論説委員も逮捕され、発行停止に追い込まれている。

   香港問題だけではない。ウイグル族への強制労働や、女子プロテニスの選手が前の副首相から性的関係を迫られたと告白した後に一時行方がわからなくなった問題など中国の人権状況に対して国際的な批判も強く、北京オリンピックへの「外交的ボイコット」などに展開している。

   日本に対しては尖閣諸島周辺での領海侵犯を執拗に続けている。ことし3月、中国海警局の船2隻が尖閣の沖合で操業していた日本漁船2隻に接近する動きを見せ、海上保安本部が巡視船が割って入るなど緊張感が高まっている。「ここは我が国の領海だ」と主張して、南シナ海でもベトナムやフィリピンの漁船を追いかけ回している。八重山日報Web版(12月30日付)によると、きのう29日も尖閣周辺の領海外側にある接続水域に、中国海警局の艦船4隻が航行。機関砲らしきものを搭載していた。海上保安庁の巡視船が領海に侵入しないよう警告している。

   領海侵犯だけではない。日本海のスルメイカの漁場は大和堆だ。日本のEEZ(排他的経済水域)なのだが、中国漁船が大挙押しかけ、能登半島などから出漁する日本漁船に打撃を与えている。日本側はスルメイカのイカ釣り漁の漁期を6月から12月と定めているが、日本の漁船に先回りして、中国漁船は4月から大和堆などに入り込んで漁場を荒らしているのだ。

    ここで気がかりなことがある。2022年は日中国交回復50年周年にあたる。1972年9月29日に当時の田中角栄と周恩来の両総理が日中共同声明の調印式に臨み、日本はそれまで対立関係にあった中華人民共和国と関係を取り戻し、それまで国交のあった中華民国との断交を通告した。50周年を機に中国との関係や台湾との関係はこのままでよいのか見直す議論をすべきではないだろうか。そして、友好記念の行事は民間ベースにとどめ、外交は自粛すべきだ。

   気がかりというのは、中国の習近平国家主席を国賓として2020年4月に招請する予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大を理由にいまも延期の状態となっている。もともとは、2019年6月、大阪での「G20 サミット」に出席のため訪れた習氏に当時の安倍総理が国賓としての再来日を招請したものだった。50周年を機に、自民党や公明党などから国賓招請が頭をもたげてくるのではないか、ということだ。

   冒頭の福沢諭吉の社説にあるように、「悪友を謝絶する」べきだろう。岸田総理が北京オリンピックに事実上の「外交的ボイコット」に踏み込んだのは賢明な政治判断だった。もう一つの意図を感じる。それは、与党内の国賓招請論を封じ込める伏線ではないのか。あくまでも憶測だが。

⇒30日(木)午後・金沢の天気   あめ時々ゆき

☆2021 バズった人、コト~その3

☆2021 バズった人、コト~その3

   来年2月の北京オリンピックについて、アメリカが問題を提起した「外交的なボイコット」。中国・ウイグル族への強制労働や、女子プロテニスの選手が前の副首相から性的関係を迫られたと告白した後に行方がわからなくなった問題、香港における政治的自由や民主化デモへの弾圧など、中国の人権状況に対して国際的な批判は強い。オーストラリア、イギリス、カナダが同じように政府関係者を送らないと表明し、アメリカに同調している。

       ~北京オリ・パラの外交的ボイコットには日本流で参加~

   日本政府はどうなのか。岸田総理は第2次内閣の発足に合わせて新たに国際人権問題担当の総理補佐官を置き、中谷元・元防衛大臣を起用。また、来年から外務省に国際的な人権問題を担当する企画官を設置することを決めている。中国を念頭に、政府として人権問題に厳しい対応をとる方向性を示したと言える。北京オリンピックについて、岸田総理は「国益の観点からみずから判断していきたい」と繰り返すだけだった。が、ようやく態度を決めたようだ。

   総理官邸公式ホームページに松野官房長官のきょうの記者会見(24日)の動画が掲載されている。それによると、来年の北京オリンピック・パラリンピックへの対応については、閣僚など政府関係者の派遣を見送り、オリンピックには東京大会の組織委員会の橋本聖子会長とJOCの山下泰裕会長、そしてパラリンピックにはJPCの森和之会長がそれぞれ出席すると述べている。事実上の外交的ボイコットだ。

   記者団から質問が浴びせられる。「アメリカなどが行う外交的ボイコットに当たるのか」と。これに対し、松野官房長官は「政府として日本からの出席の在り方について特定の名称を用いることは考えていない」と述べ、別の質問でも、「アメリカ政府も外交的ボイコットという言葉は用いていない」と答えていた。
 
   記者団から中国の人権問題を問われ、松野官房長官は「わが国としては国際社会における普遍的価値である、自由、基本的人権の尊重、法の支配が、中国でも保障されることが重要だと考えており、わが国の立場については、さまざまなレベルで中国側に直接働きかけている。オリンピック・パラリンピックは世界に勇気を与える平和・スポーツの祭典だ。北京冬季大会への日本政府の対応はこれらの点も総合的に勘案してみずから判断を行った」と述べていた。北京オリンピックを外交的にボイコットするまっとうな理由だろう。

   このニュースを海外メディアも伝えている。CNNニュースWeb版は「Japan says it won’t send government officials to Beijing 2022 Winter Olympics」との見出し=写真=で、官房長官による日本政府の方針を報じている。本文では、岸田総理は与党内で中国に対してより厳しい姿勢を取る圧力の高まりに直面しており、アメリカの緊密なパートナーであるが、アジアの隣国とも強い経済的関係を持つ日本にとってデリケートな問題だと日本メディアの論調として伝えている。また、韓国の中央日報Web版日本語も「中国の北京オリンピックに対する米国・英国などの『外交的ボイコット』が広がる中、日本もこれに加わった」と報道している。

   2024年夏にパリオリンピックを開催するフランスは外交的ボイコットには同調しないとし、韓国も検討しないとしている。来年は日中国交正常化50周年に当たるが、ようやく日本は中国に「No」を言える国になったのか。

⇒24日(金)夜・金沢の天気    くもり