#外交的なボイコット

★雪桜のような冬季五輪だったが

★雪桜のような冬季五輪だったが

   ふと見ると、満開のヨメイヨシノのようにも見える。落葉した桜の木に雪が降り積もり、まるで満開の桜のようだ=写真=。北陸では「雪桜(ゆきざらく)」と言ったりする。ネットで調べると、「雪降桜(ゆきふりのさくら)」という言葉もあった。雪が桜の枝に積もり、風が吹くとまるで桜が舞い散るように雪が舞う。さらに、「桜隠し(さくらかくし)」という言葉もある。桜の咲く頃に雪が降ることを表現する。風流な言葉ではある。

            雪桜のように冬に「満開の花」を咲かせたのが、北京オリンピックでの日本勢の活躍ではなかっただろうか。冬のオリンピックで最多となる18個のメダルを獲得した。金が3個、銀6個、銅が9個で、これまで最多だった平昌大会の13個を上回った。カーリング女子の決勝はイギリスに3対10で敗れ、銀メダルだったが、「氷上のチェス」とも称される理詰めの試合展開にはテレビで観戦する側も息をのんだ。そして、スノーボード男子ハーフパイプで金メダルを獲得した平野歩夢選手は難度の高い大技「1440(斜め軸に縦3回転、横4回転)」を披露した。実況アナが「人類初めての公式戦での演技」と称賛していたのにも納得した。

   北京オリンピックをテレビで観戦していて、今ごろ気がついたことがある。それは、テレビのCMがなかったことだ。「がんばれニッポン」のCMを見かけなかった。平昌大会ではコカ・コーラやJALなどがCMを流していた。去年の東京オリンピックのとき、オリンピックの大口スポンサーでもあるトヨタは新型コロナウイルスの感染拡大が収束しない中での開催の是非について世論が割れていることを理由にテレビCMを見送り、今回の北京オリンピックでもCMを流していない。ウイグル族への強制労働など、中国の人権状況に対して「外交的なボイコット」を展開したことも背景にあるのだろうか。逆にCMを流せば、「東京で流さなかったに、なぜ北京で」とバッシングが起きたかもしれない。

   ともあれ、北京冬季五輪の17日間は幕を閉じた。開催国の中国は大会を盛り上げようと努力したが、前述の「外交的なボイコット」や新型コロナウイルスによる選手の「バブル」隔離、スーツ規定違反やドーピング問題や、ウクライナ有事などが複雑に絡んでいつの間にか幕を閉じた。次回オリンピックは2024年夏のパリ、26年冬のミラノ・コルティナダンペッツォだ。ここでも、「Baron Von Ripper-off(ぼったくり男爵)」こと、IOCのバッハ会長がしゃしゃり出て来るのだろう。IOCは公的な国際組織ではなく、非政府組織 (NGO) の非営利団体 (NPO)だ。そろそろ国連機関に所管を委ねるべきではないだろうか。

⇒21日(月)夜・金沢の天気      くもり時々ゆき

★「キシダクーポン」に時間かけすぎ

★「キシダクーポン」に時間かけすぎ

   このような単純な施策に時間のかけすぎだ。18歳以下に10万円相当を給付する政府の指針が揺れている。政府が5万円分を子育て関連に使途を限定した期限付きのクーポン給付とする方針にしたのは、全額現金だと貯蓄に回り、経済対策につながらないという問題意識からだろう。しかし、クーポンが消費に使われても、それによって浮いた金額が逆に貯蓄に回るであろうことは誰もが考える。消費刺激の効果は限定的にならざるを得ない。むしろ、このクーポン給付の必要経費に900億円もかかることを国民は問題視した。

   きょう政府が新たに示した方針は、3パターンの給付方法だ。一つめが現金10万円を一括給付する。二つめが現金5万円を2回給付、そして三つめが現金5万円とクーポン5万円分を2回に分けて給付する。15日までに自治体に通知する(14日付・毎日新聞Web版)。この政府の方針を受けて、松井大阪市長は18歳以下への10万円相当の給付について、今月27日に現金で一括支給すると発表した(14日付・時事通信Web版)。

   しかし、この3パターンの給付方式は何も新しいことではない。そもそも、一つめの現金10万円の一括給付は大阪市だけではなく、多くの自治体が求めてきたものだ。二つの現金5万円の2回給付は、三つめと一つめの折衷案であり、三つめはそもそも政府の原案である。ここまで来るの一体どれだけ時間がかかったことか。時間がかかり過ぎだ。

   自治体はもっと現実的だ。すでに大阪の箕面市は8日、迅速な給付の実現や事務費の削減などの観点から、10万円を全額現金で給付する方針を決めている。同市の上島市長は「市民の使い勝手やクーポンの準備にかかる時間などを考慮すると全額現金で給付するのが市民のニーズに適している」とコメントした(9日付・NHKニュースWeb版)。

   もたついている政府だが、急ぐべきは来年2月の北京オリンピックについて、「外交的なボイコット」をどうするかの議論だ。日本政府は中国からの招待の有無にかかわらず、政府代表団の派遣をどうするのか。時間をかけて議論すべきはこの問題ではないだろうか。

⇒14日(火)夜・金沢の天気       あめ