#報道特集

☆ジャニー問題で露見した報道姿勢と企業ガバナンス

☆ジャニー問題で露見した報道姿勢と企業ガバナンス

   ジャニー喜多川の性加害の問題が連日報道されている。ジャニーズ事務所本社では、61年の歴史に幕を下ろすため、看板の撤去が行われたようだ。事務所側はこれまで「ジャニー喜多川の痕跡をこの世から一切なくしたい」とコメントしていたので、社名変更と看板撤去はその手始めなのだろう。

    きょうのTBS番組「報道特集」もジャニーズとテレビ局、広告代理店、そしてスポンサーの相関関係を報じていた。その中で、TBSの報道や制作、編成の担当者80人におよぶ社内調査の結果を公表した。そのポイントの一つだったのがこの問題だった。

   週刊誌「週刊文春」は1999年10月から14週にわたってジャニー喜多川社長の性加害問題を告発する連載キャンペーンを張った。記事に対して、ジャニーズ事務所とジャニー社長は発行元の文藝春秋社を名誉毀損で提訴。二審の東京高裁は2003年5月、性加害を認定。ジャニーズ側は上告したが、最高裁は2004年に上告を退け、記事の真実性を認める東京高裁の判決が確定した。ところが、TBSなどマスメディアは判決を報道せず、判決後もジャニー社長による性的搾取が続いていた。報道しなかったことは、ジャニーズ事務所とジャニー社長への忖度だったのか。

   TBSの社内調査では、「忖度があったという証言は出てこなかった」とした。報道しなかった理由として、報道目線では、週刊誌ネタや芸能ネタを軽んじる傾向があり、ニュースとして取り上げる判断をしなかったのだ。当時の社会部デスクだった番組のキャスターは「伝えるべき事を伝えなかったのは一種の職務怠慢で、その結果、人権被害が広がったことを忘れてはならない」と話していた。「ビジネスと人権」の報道目線が欠如していた。さらに、編成の目線では、「圧力を感じたことは一度もない。忖度を強要されたこともない」との証言がある一方、「なぜ、忖度するかというと番組出演をなくされるのを恐れていたから」という現場の生々しい声が紹介された。

   番組の中で、スポンサー企業の事例も紹介していた。日本の企業はこの性加害をなぜ長年放置してきたのか。利益追求を優先するメディアと広告代理店、スポンサー企業が一体化して、売上げ至上主義にまい進していた。その中で、ネスレ日本はジャニーズ喜多川の性加害の噂を耳にした段階で、所属タレントを起用しない判断をした。ネスレ日本の前社長は「企業のガバナンス」という言葉を使い、取引先のグレーな噂や情報を得た段階で動くことが、「転ばぬ先の杖」として企業には大切、ネットの時代だからなおさら、とコメントしていたのが印象的だった。

   スピード感をもった企業のガバナンスが問われている。「君子(企業のガバナンス)危うきに近寄らず」のことわざを思い浮かべた。

(※写真は、ことし3月7日に放送されたBBCのドキュメンター番組「Predator: The Secret Scandal of J-Pop 」の紹介記事。この放送がなければ、ジャニー問題は日本で白日の下にさらされることはなかった)

⇒7日(土)夜・金沢の天気     くもり 

☆アサリ、ウナギ産地偽装は日本版「毒菜」「下水油」

☆アサリ、ウナギ産地偽装は日本版「毒菜」「下水油」

            中国産の食品を避けるようになったのは、中国人の言葉からだった。金沢大学にきていた中国人留学生が「毒菜」の話をしてくれた。「毒菜」は姿やカタチはよいが、使用が禁止されている毒性の強い農薬(有機リン系殺虫剤など)を使って栽培された野菜だ。さらに、「下水油」の話も。残飯や汚水に浮かぶ油をくみ取って精製した油、あるいは劣化した油を処理して見栄えをよくした油のこと。「同年代の若い人たちは屋台の食堂には行かなくなりましたよ。なんだか怖くて」と。11年も前の話だが、それ以来「毒菜」と「下水油」が頭から離れない。

   先月のTBS番組『報道特集』(1月22日放送)で「輸入アサリが国産に アサリ産地偽装の実態は」を視聴した。3年をかけた調査報道で、中国産アサリが巧妙に産地偽装され、国産として全国に広く流通している実態をカメラが追いかけた。夜の熊本の干潟にばら撒かれる中国産のアサリ。1週間ほど寝かせて国産に化けさせる。そして、スーパーの店頭では熊本産という国産品で並んでいく。

   業界内部の闇も浮かび上がる。かつて、この干潟で産地偽装をして脱税の罪で執行猶予付きの有罪判決を受けた元業者は現在は偽装をなくすための活動をしている。しかし、現地では相手にされなくなった。その背後にある「同調圧力」はすさまじい。業者の一人一人は「いけないことと理解はするが、仕方なく」に陥っている。その負のスパイラルをカメラは丁寧に追っていた。この報道の後、農水省は、熊本産として販売されているアサリの97%に「外国産が混入している可能性が高い」と調査結果を発表した。

   見かけはブランドもの、そして得体の知れないものを売る。この報道を見て、この産地偽装は日本版の「毒菜」「下水油」だと感じた。ウナギの産地偽装も問題になった。うなぎ料理専門店を経営する奈良県大和高田市の食品販売会社「うな源」は中国産ウナギを国産と偽って、ネット通販やふるさと納税の返礼品として2020年4月1日から同11月30日の間に15万8873個を販売していた。近畿農政局により、食品表示法に基づく立入検査が行われていた。うな源はことし1月下旬から各店舗を閉店・休業していたが、信用も失墜。事業再開のめどが立たず、今月8日までに破産手続きに入った(9日付・東京商工リサーチWeb版)。

   今回明るみになった一連の産地偽装問題は氷山の一角ではないだろうか。産地偽装と合わせて、監督官庁には中国の汚染水で育ったであろうアサリやウナギの安全性も追及してほしい。

(※写真は、アサリの産地偽装問題を受けて2月1日に緊急記者を行った熊本県知事=熊本県庁公式ホームページより)

⇒10日(木)夜・金沢の天気    くもり