#地球温暖化

★「2023 アレどうなった」⑤ 地球の沸騰化 対策の道筋

★「2023 アレどうなった」⑤ 地球の沸騰化 対策の道筋

   さきほど菩提寺で除夜の鐘をついてきた。寺では去年前から門徒や近所の人たちが自由に参加できる「プレ除夜の鐘」というイベントを行っている。勢いをつけて鐘をつくと、鐘の響きが全身を包むように伝わってきて、欲望や執念にかられた煩悩が払われたような気持ちになる=写真・上=。このプレ除夜の鐘は午後2時から2時間ほど行われた。そして本番の除夜の鐘は午後11時半から。大晦日の昼夜に2度鐘が鳴る。

   COP28「化石燃料からの脱却」は合意されたものの

   この1年を振り返ると、まずイメージするのは地球温暖化だ。ことしの夏は異常な暑さだった。8月31日、自宅近くの街路の温度計は37度だった=写真・下=。街を歩くと熱風に煽られた。金沢市の南に位置する小松市では8月10日に観測史上最高の40度を記録した。この日の気象台の石川県内11の観測地点がすべて35度以上の猛暑日となり、「熱中症警戒アラート」が飛び交った。体感したこの猛暑は石川だけでなく、日本全体、そして世界的な傾向だった。

   熱波が世界を襲っている様子をBBCニュースWeb版(7月16日付)は「Europe heatwave: No respite in sight for heat-stricken southern Europe」(ヨーロッパの熱波、暑さに苦しむ南欧にもう猶予はない)の見出しで伝えた。ギリシャでは7月14日に気温が40度以上となり、遺跡「パルテノン神殿」がある観光名所アクロポリスが一時閉鎖された。また、イタリアでは週末にローマ、ボローニャ、フィレンツェを含む16都市にレッドアラート(「死の危険」を意味する)が発令された。イタリアでは去年も熱波が原因で1万8000人の死者が出て、ヨーロッパでは最多だった。

   猛暑や豪雨などの異常気象をもらたしているのが地球温暖化だ。地球環境学者のレスター・ブラウンは著書『プランB3.0』(2008)で警告している。「温暖化がもたらす脅威は何も海面の上昇だけではない。海面温度が上昇すれば、より多くのエネルギーが大気中に広がり、暴風雨の破壊力が増すことになる。破壊力を増した強力な暴風雨と海面の上昇が組み合わされば、大災害につながる恐れがある」

   レスター・ブラウンの警鐘は現実となった。7月の暑さが記録的だったことから、国連のグレーテス事務総長は「the planet is entering an “era of global boiling”」(地球は沸騰化の時代に入った)と述べた。地球温暖化対策や温室効果ガスの削減に向けて世界は動き始めている。「国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)」が11月30日から今月13日までアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催され、「化石燃料からの脱却」という対策の方向性が初めて合意文書に明記された。「脱化石燃料」の実現に向け、各国がどのような目標を作成し、具体策を示すかがこれから焦点になる。

   COP28に出席した岸田総理は、2030年に温室効果ガスの46%削減、2050年までに大気中に排出される二酸化炭素を実質ゼロとするカーボンニュートラルの実現など日本の取り組みについて演説した。岸田政権が打ち出しているのは原発の活用だ。ことし5月に築60年を超える原発の運転を可能とする法律「GX(グリーン・トランスフォーメーション)脱炭素電源法」を成立させている。そして、日本と真逆の政策に舵を切ったのがドイツ。原発をすべて停止し、風力や太陽光、そして石炭火力にシフトしている。

   来年も猛暑になるのか、二酸化炭素の排出は人類の煩悩の象徴ではないのか、などとつらつらと思いのままブログをしたため、2023年は暮れていく。

⇒31日(日)夕・金沢の天気     あめ

★渡り鳥シギが舞い降りる千里浜の風景

★渡り鳥シギが舞い降りる千里浜の風景

   きのう能登半島の「千里浜なぎさドライブウェイ」を久しぶりに車で走行した。波打ち際を車で走ると爽快な気分になる。乗用車やバスで走行できる海岸は世界で3ヵ所と言われる。アメリカ(フロリダ半島)のデイトナビーチ、ニュージーランド(北島)のワイタレレビーチ、そして能登半島の千里浜だ。砂のきめの細かさと、適度に海水を含んで引き締まっていることでビーチが道路のようになる。

   千里浜はもう一つの名所でも知られる。春と秋の波打ち際にシギやチドリといった渡り鳥の群れが次々と降りてきて、人々を和ませる。この日は、シギの一群が舞い降りていた=写真=。渡り鳥はオーストラリアから日本を経由してシベリアを往復する。この季節は、冬場をオーストラリア周辺で過ごした渡り鳥が夏場の産卵のためにシベリアで行うに向かう。その途中に能登半島に立ち寄る。

   シギのお目当ては全長5㍉ほどの小さなエビ、ナミノリソコエビだ。波が引いた砂の上に残るナミノリソコエビを次の波が打ち寄せるまでのごくわずかな時間でついばむ。このエビは環境に敏感なことでも知られる。砂質が粗くなり汚泥がたまると生息できなくなる。逆な言い方をすれば、シギやチドリが舞い降りる海岸はきれいな海のバロメーターでもある。

   いつまでも渡り鳥が舞い降りる千里浜であってほしいと願うが、難題もいくつかある。砂浜の浸食は以前から問題となっている。河川災害を予防するためにつくられた砂防ダムや、コンクリートの護岸が設置されて、陸からの砂が海岸に運ばれなくなった。とくに、金沢港に建設された長い堤防の影響で、砂を含んだ加賀地方からの海流がせき止められて、千里浜への流れが少なくなってしまった。県や関係自治体では2011年に「千里浜再生プロジェクト」を設置して対策を講じてはいる。

   砂浜の浸食だけでなく、能登半島の対岸の国で捨てられたポリタンクやペットボトル、食品トレー、医療系廃棄物(注射器、薬瓶、プラスチック容器など)の漂着が相次ぐ。海洋プラスティックごみによって、海岸の汚染が懸念される。さらに、地球温暖化による海面の上昇も気懸りだ。気象庁の調べによると、1960年から2020年までの海面水位の変化を海域別に見た場合、北陸から九州の東シナ海側で他の海域に比べ大きな上昇傾向がみられる(気象庁公式ホームページ「日本沿岸の海面水位の長期変化傾向」)。

   海岸の浸食や漂着物、海面上昇によって、ナミノリソコエビの生息環境が失われつつあるのではないか。そんなことを案じながらの、なぎさのドライブだった。

⇒17日(火)夜・金沢の天気     はれ 

☆ぱっと咲いて見事に散る桜の美意識

☆ぱっと咲いて見事に散る桜の美意識

    金沢地方気象台による「桜の開花宣言」がきのう23日発表された。同気象台の敷地にあるソメイヨシノが5、6輪以上の花をつけるのが開花宣言の基準になっている。リリース文によると、平年(4月4日)よりも12日早く、統計を開始した昭和28年(1953)以来、最も早い開花という。でも、なぜこんなに早咲きになるのか。地球温暖化が加速しているのだろうか。むしろ不気味に感じる。

   地球温暖化が桜の開花にどのような影響を与えるのか、ネットでチェックすると、ウエザーニューズ公式ホームページに興味深い記事(2020年4月12日付)があった。桜の花芽の成長には気温3-10度前後の低温による「休眠打破」(※園芸用語:寒気などの刺激により植物が活動に入ること)が必要となるが、暖冬だと休眠打破が行われず、成長が遅れる場合がある。開花しても満開にならない場合がある。

   上記のことから考えると、ことしの早咲きの原因には確かに理由がありそうだ。昨年12月と今年1月に強烈な寒波が北陸を襲った。とくに1月9、10日の寒波では自宅周辺でも70㌢ほど雪が積もって、市街地全体も「ホワイトロックダウン」状態だった。その後、2月に入ってからは雪もそれほど降らず、3月早々から春めいた天気が続いた。この寒暖の差が、金沢のソメイヨシノを刺激して早く咲かせたのだろうか。

   逆に言えば、このまま地球温暖化が進めば、冬場にシベリアから寒気団が来ない限り桜の開花は楽しめないということにある。仮に咲いたとしても、だらだらと咲くと満開にならない。楽しみにしているのは、桜の花のうつくしさだけではない。満開の桜だ。「ぱっと咲いて、見事に散る」、我々の心の中には桜に見る美意識というものがある。これが、人々に春の季節感や人生のモチベーションを高めてくれる。

   例年だと開花宣言後の週末、兼六園周辺の平地ではブルーシートを広げて宴会を楽しむ花見客の姿があちこちに見受けられ、季節の風物詩ともなっていたが、昨年はコロナ禍で閑散としていた。おそらく今年も感染防止で自粛だろう。金沢の満開は27、28日の週末だ。自粛ムードが漂う時代ではあるが、せめて桜の咲き乱れる兼六園の散策を楽しみたい。

⇒24日(水)午後・金沢の天気     はれ

☆能登・千里浜から見える海の問題の数々

☆能登・千里浜から見える海の問題の数々

   波打ち際を乗用車やバスで走行できる海岸は世界で3ヵ所と言われる。アメリカ(フロリダ半島)のデイトナビーチ、ニュージーランド(北島)のワイタレレビーチ、そして能登半島の千里浜(ちりはま)海岸だ。全長8㌔だが、うち6㌔を車で走行することが可能で「千里浜なぎさドライブウェイ」とも呼ばれる。砂のきめの細かさと、適度に海水を含んで引き締まっていることでビーチが道路のようになる。観光バスでも走ることができ、能登半島の観光名所としても知られる=写真・上=。

        車だけではない。人も違和感なく走ることができる。 5月21日と6月1日には東京五輪・パラリンピックの聖火ランナーが石川県を走るが、このビーチもそのルートに入っている。ところが、この名所が危機に瀕している。このところ、地元メディアでも大きく報じられているが、波による砂浜の浸食で幅が狭まっている、うち300㍍ほどが消滅した状態になっている。

   浸食は以前から問題となっていた。河川災害を予防するためにつくられた砂防ダムや、コンクリートの護岸が設置されて、陸からの砂が海岸に運ばれなくなった。とくに、金沢港に建設された長い堤防の影響で、砂を含んだ加賀地方からの海流がせき止められて、千里浜海岸への流れが少なくなってしまった。波による砂浜の浸食は常に起こるが、それを補給する砂の海流が細ってしまったということだ。県や関係自治体では2011年に「千里浜再生プロジェクト」を設置して対策を検討している。

   さらに不安をかき立てるのが、地球温暖化による海面上昇だ。気象庁の調べによると、昨年の日本沿岸の平均の海面水位は、平年と比べて8㌢余り高く、統計を取り始めてから最も高くなった。地球温暖化の影響で海面上昇が進展していることに加え、特に昨年は周囲より暖かい黒潮が日本の沿岸付近を通ったことが背景にあると指摘している(2月28日付・NHKニュースWeb版)。1960年から2020年までの海面水位の変化を海域別に見た場合、北陸から九州の東シナ海側で他の海域に比べ大きな上昇傾向がみられる(気象庁公式ホームページ「日本沿岸の海面水位の長期変化傾向」)

   千里浜はもう一つの名所でも知られる。春や秋の波打ち際にシギやチドリといった渡り鳥の群れが次々と降りてきて、人々を和ませる=写真・下=。渡り鳥はオーストラリアから日本を経由してシベリアを往復する。その途中で、能登半島の千里浜海岸に立ち寄る。お目当ては全長数㍉から1㌢ほどの小さなエビ、ナミノリソコエビだ。鳥たちは波が引いた砂の上に残るナミノリソコエビを次の波が打ち寄せるまでのごくわずかな時間でついばむ。

   ただ、このエビは砂質が粗くなり汚泥がたまると生息できなくなる。つまり、シギやチドリが降りる海岸はきれいな海のバロメーターでもある。しかし、砂浜の浸食によって波打ち際の生態系も危うくなっているのではないだろうか。

   砂浜の浸食だけでなく、能登半島の対岸からはポリタンクやペットボトル、食品トレー、医療系廃棄物(注射器、薬瓶、プラスチック容器など)の漂着がある。海洋プラスティックごみ、そして海中のマイクプラスティックと海のめぐる問題は複雑化している。

⇒28日(日)午後・金沢の天気     はれ