#土砂崩れ

☆能登の震度6強 目にした崩落の現場

☆能登の震度6強 目にした崩落の現場

          能登半島の尖端で震度6強の地震が発生してきのう15日で10日目。恐る恐るだが午後に現地を訪ねた。恐る恐るというのも、きのう午前中も震度2が1回、そして昼過ぎに震度1が2回あった。揺れは続いているのだ。ただ、現地をこの目で確かめないことには気持ちが納まらないという想いもあり、エイッ、ヤッーと車のアクセルを踏んだ。

   金沢から2時間ほどで珠洲市に着いた。今回の地震では同市を中心に1人が亡くなり、40人がけが。住宅被害は全壊が16棟、半壊15棟、部分損壊が706棟となっている。また、住宅以外でも蔵や納屋など62棟に被害が及んでいる(石川県危機管理監室まとめ)。被害が大きかった同市正院町に入ると、全半壊の家屋や、土蔵の白壁が落ちる=写真・上=などの被害があちらこちらにあった。

   これまでの何度か購入したことがある酒造メーカー「櫻田酒造」を訪ねた。酒の貯蔵庫では屋根の落下や辻壁の剥がれ落ち、貯蔵タンクの一部が傾くなどしていた。震度6強の揺れでは、棚から出荷前の一升瓶が200本落ちて割れた。冬季の酒の仕込みに間に合うように酒蔵の改修工事を予定しているが、社長は「さらに強い地震が来るのではないかと不安もよぎる」と話した。   

   海岸沿いにある「須須(すず)神社」では鳥居が倒壊していた=写真・中=。この神社は、国指定重要文化財の「木造男神像」や、この地を訪れた源義経が海難を免れたお礼にと奉納した「蝉折の笛」や「弁慶の守刀」が収められていることで知られる由緒ある社だ。鳥居は花崗岩でできており、高さ9㍍もある大鳥居だった。近くを歩いていたシニアの男性に尋ねると、去年6月の地震6弱の揺れで鳥居が一部壊れ、修復工事を終えたばかりだったという。「また鳥居が崩れるなんて、残念です」と肩を落とした。

   山沿いに入ると裏山が崩れている民家があった。家まであと数㍍のところで土石流が止まっていた=写真・下=。揺れだけでなく、今後、大雨に見舞われたらさらに二次災害が起きるのではないかとつい不安がよぎった。

⇒16日(火)夜・金沢の天気    はれ

★現場を行く~金沢の団地の下で土砂崩れ

★現場を行く~金沢の団地の下で土砂崩れ

   この現場の様子を見て、昨年7月3日に静岡県熱海市で起きた土石流を思い起こした。濁流が住宅地を飲み込み23人の死亡が確認された。金沢のこの現場では家屋や人的被害は出ていないが、土砂崩れ現場の上の住宅地の人々は眠れない日々を送っているに違いない。

   報道によると、今月1日午前2時10分ごろ、金沢市東長江町の団地の下の斜面が高さ40㍍、幅20㍍で崩落した=写真、撮影2日午後4時16分=。市は近くのおよそ30世帯に避難指示を出していたが、2日午後4時に解除した。また、斜面の崩落の影響で周辺の206世帯が断水していたが、2日午前7時までに解消した。

   現場は急斜面で2008年に石川県の土砂災害特別警戒区域に指定され、金沢市がハザードマップで注意を呼びかけていた。金沢の外環状道路山側幹線という国道159号の道路沿い。自身も乗用車で能登へ行く際によく利用する道路でもあり、ニュースを知って現場がイメージできた。

   この地域の地層は「大桑層(おんまそう)」と呼ばれる砂が固まってできた地盤で、貝の化石などが出土することで知られるが、一方で水を含むと緩みやすい。2017年7月1日に県内に大雨洪水警報が出されたときも、この近くで土砂崩れがあったと記憶している。

   では、今回は大雨もなかったのになぜ土砂崩れが起きたのか。地盤を専門とする大学の研究者がテレビ局のインタビューに答えていた。1月中旬に降った雪が解けて土が水を含んだ、あるいは、宅地造成からおよそ50年経ていて、団地の上の貯水施設からの配水管パイプが老朽化して水が漏れている可能性があると指摘だった。これを裏付けるように、別のテレビ局のインタビューに住民が土砂崩れの前日、現場周辺の道路を通った際にへこみを感じていたこと、以前、現場付近の配管から水が漏れていたことなどを証言していた。

   「災難の先触れはない」とよく言われるが、今回は予兆があった。国道沿いでもあり、行政には早期の復旧を願いたい。

⇒3日(木)午前・金沢の天気    くもり時々みぞれ