#国連安全保障理事会

☆「おそい、まずい、高くつく」国連事務総長のプーチン直談判

☆「おそい、まずい、高くつく」国連事務総長のプーチン直談判

   けさこのニュースに触れた多くの人は、「おそい、まずい、高くつく」と感じたのではないだろうか。NHKニュースWeb版(23日付)によると、国連は、グテーレス事務総長が今月26日にロシアの首都モスクワを訪問し、プーチン大統領と面会すると発表した。報道官は「グテーレス事務総長は、プーチン大統領とラブロフ外相の双方と話をする。銃声をやませ市民を助けるために、いま、どのような措置がとれるのか、議論したいと考えている」と述べた。ウクライナ側ともゼレンスキー大統領との個別会談を調整している。 

   国連のグテーレス事務総長がモスクワに行くべき時期は遅きに失しているのではないか。ロシアが軍事侵攻に踏み切った翌日の2月25日の安全保障理事会で、ロシアのウクライナ侵攻を非難する決議案を採決したが、ロシアが拒否権を行使したため否決された。本来ならば、この時点で行くべきではなかったか。首都キーウ近郊ブチャなどで多数の市民の遺体が見つかり、また、東部ドネツク州クラマトルスクの鉄道駅が弾道ミサイルで攻撃され、避難民ら50人が死亡するなど、多数の民間人が犠牲になっている。このような事態に、むしろ国連の存在意義が問われている。

   「まずい」のは、ロシアとウクライナの停戦交渉が難航する中で、国連トップによる仲介が入ったとしても、ロシア側は優位な条件でないと認められないだろう。プーチン大統領は国連がすでに機能不全の状態に陥っていることを理解している。グテーレス氏がロシア寄りの仲裁案を出さない限り、譲歩は引き出せないだろう。おそらくグテーレス氏のモスクワ滞在中もロシア側の軍事攻撃は止まない。

   グテーレス氏はこれまで、ロシアの軍事侵攻は一方的な措置で国連憲章に反している繰り返し述べてきた。ならばなぜ、国連はウクライナに平和維持軍を派遣しないのか。安保理理事国15ヵ国のうち9ヵ国が賛成すれば、平和維持軍の創設は可能だが、常任理事国5ヵ国(中国、ロシア、アメリカ、フランス、イギリス)の1ヵ国が反対すれば否決される(国連広報センター公式サイト日本語)。つまり、グテーレス氏はプーチン氏に「お願いします」としか言えないのだ。

   仮にグテーレス氏の仲介で停戦協定が結ばれたとしても、問題はウクライナの復興だろう。BloombergニュースWeb版日本語(4月22日付)によると、キーウ経済大学の推計では戦争によるウクライナのインフラ損害額は4月11日時点で800億㌦に達し、経済的損失の総額は5640-6000億㌦と見積もっている。アメリカやヨーロッパはロシア制裁の一環として、ロシア中央銀行の外貨準備6400億㌦の半分程度を凍結しており、これを復興費用に充てるべきという意見もある。

   ウクライナの復興コストはそれを使えばよいと思うが、おそらくロシアは停戦の条件として制裁解除を盛り込んでくるだろう。結局、ロシアは復興には手を出さない。そのコストはアメリカやヨーロッパ、日本が負うことになる。「高くつく」とはこのことだ。

   話は冒頭に戻る。NHKニュースWeb版によると、国連はグテーレス事務総長が26日にモスクワを訪問し、ラブロフ外相と会談するほか、プーチン大統領が開くレセプションに出席すると発表している。つい、そのレセプションそのものにリスクはないのかと勘繰ってしまう。

(※写真は、国連安全保障理事会の会議室。バックの壁画はノルウェーの画家ペール・クロフが描いた「灰から飛び立つ不死鳥」=国連広報センター公式サイト日本語より)

⇒23日(土)午後・金沢の天気   くもり

☆国連安保理の機能不全を問いただしたゼレンスキー演説

☆国連安保理の機能不全を問いただしたゼレンスキー演説

   ついに、ウクライナのゼレンスキー大統領が国連安保理でオンライン演説を行った。メディア各社の報道によると、安保理に対して強烈なメッセージを発した。「”Are you ready to close the UN? And the time of international law is gone? If your answer is no, then you need to act immediately,” he said, adding that “accountability must be inevitable”.」「”We are dealing with a state that turns its veto at the UN Security Council into the right to [cause] death,” he said.」(6日付・BBCニュースWeb版)=写真=。

   国連の果たす役割は終わってしまったのか、国際法の時代は終わったのか、もし答えがノーなら、直ちに行動をとってほしいとゼレンスキー氏は述べた。安保理の拒否権が『死の権利』とならないよう、国連のシステムは直ちに改革されなければならないと語った。

   国際法や国連憲章の違反を無視してウクライナ侵攻を続けるロシアだけでなく、香港やウイグルにおける人権弾圧問題で国際批判を浴びている中国も常任理事国だ。常任理事国の座にあれば問題を起こしても国連では問われない。拒否権を発動すればよいだけだ。これが「世界平和の番人」安保理の現実の姿だ。

   機能不全に陥っている国連安保理を痛烈に批判したゼレンスキー氏に対し、拍手を送った日本人も多かったのではないだろうか。ウクライナ侵攻以前の調査だが、アメリカの世論調査機関「ピュー・リサーチ・センター」は、創設75年の国連の実績について世論調査(2020年6-8月)を行った。調査対象国は日本、韓国、オーストラリア、アメリカ、カナダ、デンマーク、ドイツ、オランダ、イタリア、スウェ―デン、ベルギー、フランス、スペイン、イギリスの14ヵ国で、その中で日本は国連に対する好感度が最も低かった。「好感を持つ」は29%で、「好感を持たない」が55%と半数を占めた。CNNは「Americans think the UN is doing a good job. Japanese people disagree.」と伝えた(2020年9月22日付・Web版)。

   日本人には解せないもう一つ国連の姿がある。国連憲章(第53、107条)の「敵国条項」だ。日本はいまだに第二次世界大戦の「敵国」だ。ある国を攻撃する場合は国連安保理の承認が必要だが、「敵国」に再侵略の企てがあるとみなせば先制攻撃が可能で、安保理の承認は不要という規定だ。ロシアや中国はいつでも日本に対する先制攻撃が可能なのだ。 

   ゼレンスキー氏の演説に戻る。ロシアに対して猛烈に非難した。前日にみずから訪れた首都キーウの北西の町ブチャについて、「ロシアが犯した第2次世界大戦後、最も恐ろしい戦争犯罪だ。ロシア軍と彼らに命令を下した者に直ちに法の裁きを下さなければならない」。そして市民の遺体だとするおよそ1分間の映像が、スクリーンに映し出された(6日付・NHKニュースWeb版)。

  このあと各国からもロシアの責任を厳しく問う声が相次ぎ、このうちアメリカの国連大使は「ロシアがいかに人権を尊重していないかが日々明らかになっている」と述べ、ロシアの国連人権理事会の理事国としての資格を停止すべきだと呼びかけた(同)。さらなる制裁の発動が重要だ。

⇒6日(水)午後・中能登町の天気   くもり

★国連安保理はドロ沼状態から這い出せるのか

★国連安保理はドロ沼状態から這い出せるのか

   今月11日にロシアの要請で国連安全保障理事会の緊急会合が開かれ、ロシアの国連大使は「ウクライナで渡り鳥やコウモリ、シラミなどを利用した生物兵器開発計画があり、テロリストに盗まれ使われる危険性が非常に高い」「生物兵器の開発にはアメリカが関与している」「同様の研究は悪名高い旧日本軍731部隊も行った」と一方的に主張した(12日付・時事通信Web版)

   写真は国連安全保障理事会の会議室(国連広報センター公式ホーページ日本語より)。バックの壁画はノルウェーの画家、ペール・クロフが描いた「灰から飛び立つ不死鳥(Phoenix aus der Asche)」。大戦の焼け跡から抜け出して飛び立つ不死鳥が描かれている。よりよい未来への希望を象徴した絵とされる。果たして現代のドロ沼状態から世界はいつ這い出せるのか。

★騒々しい3連休明け 弾道ミサイルどこに向けているのか

★騒々しい3連休明け 弾道ミサイルどこに向けているのか

   海上保安庁公式ホームページは11日7時29分の「【緊急情報】ミサイル発射情報」で、「北朝鮮から、弾道ミサイルの可能性があるものが発射されました。船舶は、今後の情報に留意するとともに、落下物を認めた場合は、近づくことなく、関連情報を海上保安庁に通報してください」と伝えた。同じく防衛省公式ホームページは7時35分の「お知らせ(速報)」で、「北朝鮮から弾道ミサイルの可能性があるものが発射されました」と伝えている。総理官邸公式ホームページでは、「総理指示(7:33)」として、「情報収集・分析に全力を挙げ、国民に対して、迅速・的確な情報提供を行うこと」「航空機、船舶等の安全確認を徹底すること」「不測の事態に備え、万全の態勢をとること」を出している。騒々しい連休明けだ。

   北朝鮮は今月5日の午前8時7分ごろにも、内陸部から「極超音速ミサイル」を日本海に向けて発射している=写真、1月6日付・朝鮮新報Web版=。落下地点は日本の排他的経済水域(EEZ)外と推定される。航空機や船舶からの被害報告などは確認されていない。去年10月19日にも北朝鮮は潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)を、9月には11・12日に長距離巡航ミサイル、15日に鉄道線路での移動式ミサイル、28日に極超音速ミサイルを発射している。

   NHKニュースWeb版によると、岸田総理は午前9時前、総理大臣官邸で記者団に対し、「先日、北朝鮮は弾道ミサイルを発射し、国連安全保障理事会で対応が協議されたところだ。こうした事態に北朝鮮が継続してミサイルを発射していることは極めて遺憾なことだ。政府としては、これまで以上に警戒監視を進めているが、発射の詳細は早急に分析を行っている」と述べた。また、岸防衛大臣は記者会見で、北朝鮮から発射された弾道ミサイルの可能性があるものは、通常の軌道であれば、日本のEEZの外側に落下したと推定されることを明らかにした。

   それにしても、この騒々しさは北京オリンピック・パラリンピックに影響をもたらさないのだろうか。弾道ミサイルを打ち上げている国がオリンピック開催国の隣国にあることに、各国のオリンピック選手団はどう思っているだろうか。そして、北朝鮮は北京オリ・パラに参加しない方針を明らかにしている(1月7日付・NHKニュースWeb版)。その理由に、アメリカなどの「外交的ボイコット」に関連して、「アメリカと追従勢力の中国への陰謀がより悪質になっている。中国の国際的なイメージを傷つけようとする卑劣な行為で排撃する」としている(同)。この言葉を真に受けると、「アメリカと追従勢力」を「排撃する」ことと、弾道ミサイルを関連づけて考えてしまう。

⇒11日(火)午前・金沢の天気      あめ