#国連安保理

★「まるで独裁者の宴」詭弁を弄するロシア大統領

★「まるで独裁者の宴」詭弁を弄するロシア大統領

    ロシアがまた詭弁を弄している。イスラエルとパレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスの戦闘激化を受け、国連安全保障理事会は今月13日、非公開で対応を協議した。 会合ではロシアが人道的停戦を要求する決議案を配布。ロシアのネベンジャ国連大使は会合後、報道陣を前に「安保理はこの流血に終止符を打つため行動しなくてはならない」と主張。決議案は全ての暴力とテロ行為を非難し、人道支援の円滑な提供を求める内容で、ネベンジャ国連大使は全国連加盟国に対し共同提案国になるよう呼び掛けた(14日付・時事通信Web版)。

   ロシアが国連安保理で他国の停戦を呼びかけ、一方で自国はウクライナへの侵略行為を続けている。まったく説得力のない決議案で、共同提案国になる必要はない。以下、憶測だが、ネベンジャ国連大使の決議案はウクライナ侵攻から他国の目を逸らし、自らを正当化する策ではないか。おそらくこの決議案はプーチン大統領の命令によるものだろう。

   ウクライナのゼレンスキー政権をネオナチ政権と呼び、その侵攻を「祖国の未来のため、ナチスを復活させないための戦い」と強調し、侵攻を始めた。相手をナチス呼ばわりすれば、武力侵攻などすべてのことが正当化されるとの詭弁だ。国連安保理での決議案も、自ら始めた戦争を棚に上げて他国の戦争を非難する。まさに、プーチン大統領の「独裁者の宴」のようだ。    

  ICC(国際刑事裁判所)はことし3月、プーチン大統領とマリヤ・リボワベロワ大統領全権代表について、ウクライナ侵攻で占領した地域の児童養護施設などから少なくとも何百人もの子どもたちロシアに連れ去ったとして、国際法上の戦争犯罪の疑いで逮捕状を出した(3月18日付・NHKニュースWeb版)。同日のCNNニュースWeb版日本語によると、ゼレンスキー大統領はICCの逮捕状について、「我が国の法執行当局で進行中の刑事手続きでは、ウクライナの子ども1万6000人以上が占領者(ロシア)によって強制連行されたことが既に確認されている」と述べている。   

   一方、ロシア側は戦闘地域から子どもを「保護している」と主張している。保護を理由に子どもたちをロシアに連れて行く行為。まるで、子どもたちを「戦利品」のように扱っている。

(※写真は、第二次世界大戦での対ドイツ戦勝記念日式典で演説を行ったプーチン大統領。相手をナチス呼ばわりして武力侵攻を正当化した=2022年5月9日付・BBCニュースWeb版)

⇒14日(土)夜・能登の天気    くもり

★中国の不動産危機という時限爆弾 日米韓はどう対応

★中国の不動産危機という時限爆弾 日米韓はどう対応

    「中国の時限爆弾」が爆発した。メディア各社の報道によると、2年連続の巨額な赤字で経営危機に陥っている中国の不動産大手「恒大グループ」は17日、アメリカ・ニューヨーク州のマンハッタン地区連邦破産裁判所に連邦破産法15条の適用を申請した。連邦破産法15条は、再建をめざす外国籍の企業が申請する条項で、資産の強制的な差し押さえなどを回避でき、難航している外貨建て債務の再編協議の前進を狙っているものと見られる。ロイター通信Web版日本語(18日付)によると、恒大の負債額は先月末基準で3300億㌦(48兆円)にのぼっている。

   バイデン大統領が「中国は時限爆弾だ」と述べてニュース(今月12日付・読売新聞Web版)となっていたが、今回の恒大グループの破産申請を念頭に置いた発言だったのかもしれない。あくまでも憶測だ。恒大グループだけでなく、中国では不動産大手の経営危機が相次いで表面化していて資金繰りが悪化している中国最大級の不動産会社「碧桂園(カントリー・ガーデン)」に対しても市場の不安が高まっている。次なる時限爆弾なのか。

   朝鮮半島のある意味で時限爆弾と言えるのが北朝鮮問題ではないだろうか。読売新聞Web版(18日付)によると、国連安全保障理事会は17日、北朝鮮の人権問題に関する公開会合を開いた。ボルカー・ターク国連人権高等弁務官は会合冒頭に「北朝鮮で数十年にわたって人権侵害が続いている」と指摘し、子供を含む強制労働などが軍事機構と武器製造能力を支えていると強調した。11年に脱北した男性28歳が会合に出席し、「政府は私たちの血と汗を指導者のぜいたくな生活とミサイルに変えてしまう」と語った。日本と米欧各国も核・ミサイル開発を優先する北朝鮮の姿勢を強く非難した。北朝鮮の人権に関する安保理会合が公開で行われたのは2017年以来で6年ぶり。

   アメリカのワシントン郊外にあるキャンプ・デービッド山荘で、日本時間のあす19日未明、岸田総理とバイデン大統領、尹大統領との日米韓3か国の首脳会談が行われる(18日付・NHKニュースWeb版)。中国や北朝鮮の動向などを踏まえて、安全保障協力の強化を確認する見通し。また、日米韓国による半導体などのサプライチェーンの強靭化といった経済安全保障分野での連携などでも一致するものとみられる。さらに、時限爆弾となっている中国の不動産危機が3か国や世界に及ぼす影響などについても議論するに違いない。その意味で実にタイムリーな首脳会談なのかもしれない。

(※写真は、ことし5月21日、広島市でのG7サミット後に行われた日米韓首脳間の意見交換=外務省公式サイト「日米韓首脳間の意見交換」より)

⇒18日(金)午後・金沢の天気   くもり時々はれ

★ウクライナ侵攻1年 世界の流れをどう読む=上

★ウクライナ侵攻1年 世界の流れをどう読む=上

   ロシアによるウクライナへの侵攻は今月24日で1年を経過することになる。終わりの兆しが見えない。そして、世界はいったいどこに向かって流れていくのか、和平なのか大戦なのか、不透明な潮流を読んでみる。

   ~国連安保理は機能不全 ロシアは核兵器かざし孤立深める~

   このテーマを描いたとき、「国連安全保障理事会は機能しているのか、なぜその役割を果たさないのか」という素朴な疑問が浮かぶ。ロイター通信Web版日本語(23日付)によると、 国連のグレテス事務総長は22日に開催された国連総会緊急特別会合で、ロシアによるウクライナ侵攻は国連憲章および国際法に違反していると述べた上で、「核兵器を使用するという暗黙の脅迫を耳にしている。いわゆる核兵器の戦術的使用は全く容認できない。今こそ瀬戸際から退くべきだ」とロシアの脅迫を非難した。

   23日に開催される緊急特別会合では、決議案を採択する予定で、ロシアに対し軍の撤退および敵対行為の停止を再び求めるとみられる。国連総会での決議に法的拘束力はないが政治的な影響は大きい(同)。では、国連の安全保障理事会はどう機能しているのか。(※写真・上は国連安全保障理事会の会議室=国連広報センター公式サイトより)

   国連安保理は日本時間21日午前、北朝鮮の相次ぐミサイル発射を受けた緊急会合を開いた。日米欧などは北朝鮮の安保理決議違反を厳しく非難したが、中国とロシアは米韓の軍事演習などが緊張を高めていると北朝鮮を擁護。安保理として一致した対応は取れなかった(21日付・東京新聞Web版)。ロシアによるウクライナ侵攻も同様で、ロシアは常任理事国で拒否権があるため、安保理は法的な拘束力がある決議を何一つ成立させていない。

   国連に対する評価は世界的に低下している。ピュー・リサーチ・センターが去年6月に発表したアメリカ国内の調査で、「国連の影響は弱まっている」が39%だった。「変わらない」が46%、「強まってる」が16%だった。ウクライナ侵攻を仕掛けたロシアに非難声明すら出せない国連安保理への憤り、そして無力感ではないだろうか。

   ロシアのプーチン大統領はさらに戦況を煽る宣言を出した。NHKニュースWeb版(23日付)によると、ロシア大統領府は「祖国防衛の日」と呼ばれる軍人をたたえるロシアの祝日にあわせて、プーチン大統領の動画のメッセージを公開。この中で、「ことし、大陸間弾道ミサイル『サルマト』の実戦配備を行う。また極超音速ミサイル『キンジャール』の大量製造を継続していく。そして、海上発射型の極超音速ミサイル『ツィルコン』の大量供給を始める」と述べ、ロシア軍が保有する陸や海そして空軍の核戦力を増強していくと宣言した。

   プーチン大統領は21日に行った年次教書演説でも、アメリカとの核軍縮条約「新START」の履行停止を表明。ウクライナへの軍事支援を強めるアメリカなどを牽制する狙いとみられる(同)。ロシアは核兵器をかざし、国際的にますます孤立を深めている。

⇒23日(木)午後・金沢の天気      はれ

★黄海に向け弾道ミサイルを発射した北朝鮮の意図は

★黄海に向け弾道ミサイルを発射した北朝鮮の意図は

    NHKニュースWeb版(5日付)によると、国連安保理の緊急会合は4日(日本時間5日午前4時すぎ)から始まり、北朝鮮による相次ぐ弾道ミサイルの発射について、各国からは、安保理決議の違反であり、地域の安全を脅かす危険な行為だと北朝鮮を非難する意見が相次いだ。北朝鮮の弾道ミサイル発射をめぐり安保理の緊急会合が開かれるのは10月5日以来。

   このうち、アメリカの国連大使は「意図的に緊張を高める北朝鮮の行動は責任ある国家の行動ではない」と非難した上で「2つの理事国は、北朝鮮のたび重なる決議違反を正当化するために力を注ぎ、北朝鮮を増長させた」と中国とロシアも非難した。

   これに対して中国とロシアの国連大使は、アメリカ軍が韓国軍とともに共同訓練を実施するなど地域の緊張を高めていると改めて主張した。今回も欧米各国と中国やロシアが対立し、安保理として一致した対応はとれなかった。まさに、安保理そのものの信頼性が危険にさらされている。

   安保理の緊急会合が終了したタイミングを見計らってなのか、北朝鮮は弾道ミサイルを発射した。韓国の聯合ニュースWeb版日本語(5日付)によると、韓国軍合同参謀本部の情報として、北朝鮮は同日午前11時32分ごろから同59分ごろにかけて、黄海に向けて短距離弾道ミサイル(SRBM)4発を発射したと報じている。ミサイルの飛行距離は約130㌔で、高度は約20㌔、速度は約マッハ5と推定される。

   発射地点となった北朝鮮の東林は中国・丹東から約20㌔の中朝国境地域。こうした黄海側からの中朝国境近くからこれまで日本海に向けて発射したことはあるものの、黄海に発射するのは極めて異例。韓国軍はその意図を分析している、と伝えている。

   アメリカと韓国が大規模空軍合同訓練「ビジラントストーム(Vigilant Storm)」を5日まで延長して行ったことに対する、北朝鮮の反発とみられる。が、なぜ黄海に向けて4発の弾道ミサイルを発射したのか。中国とすれば、「安保理でオマエのことを配慮してやったのに、なぜ、オレの方に向けて撃つんだ」と言いたいだろう。韓国軍による意図分析を待ちたい。

(※写真・上は国連安全保障理事会の会議室=国連広報センター公式サイトより、写真・下は北朝鮮の短距離弾道ミサイル=防衛省資料「北朝鮮による核・弾道ミサイル開発について」より)

⇒6日(日)午前・金沢の天気    はれ

★国連安保理は機能不全 付け込む弾道ミサイル

★国連安保理は機能不全 付け込む弾道ミサイル

   国連安保理が事実上の機能不全に陥っているが、きのう6日朝の北朝鮮の弾道ミサイルの発射はそれに付け込んだかのようなタイミングだった。国連安保理は、北朝鮮が4日に日本列島を通過する中距離弾道ミサイルを発射したことを受けて緊急会合を開いた。その会合の終了間際に、北朝鮮が日本海に向けて発射したのだ(6日付・NHKニュースWeb版)。

   会合そのものも、常任理事国である中国とロシアが「朝鮮半島周辺でアメリカが日本や韓国と軍事演習を行い緊張を高めた結果だ」と反発したことから、アメリカやヨーロッパの各国と一致して安保理決議違反であるとの声明を出すことはできなかった(同)。ロシアによるウクライナ侵攻も同様で、ロシアは常任理事国で拒否権があるため、安保理は法的な拘束力がある決議を何一つ成立させていない。

   そもそも、中国とロシアがなぜ国連安保理の常任理事国なのか。中国の場合。もともと常任理事国は第2次世界大戦の戦勝国である国民党の中華民国だった。それが中国共産党に追われ台湾に逃れる。アメリカのニクソン大統領の中華人民共和国への訪問が公表され、国際社会がにわかに動いた。1971年10月のいわゆる「アルバニア決議」によって、国連における中国代表権は中華人民共和国にあると可決され、中華民国は常任理事国の座から外され、国連を脱退することになる。代わって中国が国連に加盟し、台湾の常任理事国を引き継ぐことになった。では、常任理事国として相応しいとする正当性はどこにあったのだろうか。

   ロシアも同じだ。もともと、戦勝国であるソビエトが崩壊した。それを、ロシアが常任理事国として拒否権を持ったまま引き継いでいる。それが、ウクライナ侵攻やウクライナ4州併合という行為があっても国連安保理は機能不全、という現実問題を生み出している。

   解せないもう一つの国連の姿がある。国連憲章(第53、107条)の「敵国条項」だ。日本はいまだに第二次世界大戦の「敵国」だ。ある国を攻撃する場合は国連安保理の承認が必要だが、「敵国」に再侵略の企てがあるとみなせば先制攻撃が可能で、安保理の承認は不要という規定だ。北朝鮮やロシア、中国はいつでも日本に対する先制攻撃が可能なのだ。

   日本人にはある意味で「国連離れ」という現象が起きている。データは少々古いが、アメリカの世論調査機関「ピュー・リサーチ・センター」は2020年10月、国連の実績について先進14ヵ国で実施した世論調査を発表している。その中で、日本は国連に対する好感度は14ヵ国中で最も低く、「好感を持つ」29%、「好感を持たない」55%だった。

   アメリカでも国連に対する評価は低下している。ピュー・リサーチ・センターがことし6月に発表したアメリカ国内調査では、「国連の影響は弱まっている」が39%だった。「変わらない」が46%、「強まってる」が16%だった。ウクライナ侵攻を仕掛けたロシアに非難声明すら出せない国連安保理への憤り、そして無力感ではないだろうか。

(※写真は、国連安全保障理事会の会議室。バックの壁画はノルウェーの画家ペール・クロフが描いた「灰から飛び立つ不死鳥」=国連広報センター公式サイト)

⇒7日(金)夜・金沢の天気     くもり時々あめ

★「針のむしろ」国連軍縮会議の議長国は北朝鮮

★「針のむしろ」国連軍縮会議の議長国は北朝鮮

        国連の会議がまた大荒れに。NHKニュースWeb版(3日付)によると、国連軍縮会議が2日、スイス・ジュネーブで開かれ、その議長国に北朝鮮が就いた。65ヵ国が参加して核軍縮などについて話し合う軍縮会議は、各国がアルファベット順に毎年6ヵ国が会期中持ち回りで4週ずつ議長国を務めていて、11年ぶりに北朝鮮が議長国となった。

   会議の冒頭、G7を含む48ヵ国を代表してオーストラリアの代表が発言し、北朝鮮が核・ミサイル開発を加速させていることについて「軍縮会議の価値を著しくおとしめる無謀な行動に深い懸念を抱く」と批判。日本の梅津公使参事官も「北朝鮮は大量破壊兵器や弾道ミサイル計画に資金を充てることで、すでに悲惨な人道状況をさらに悪化させている」と非難した。これに対して議長を務める北朝鮮の大使は「いかなる国も他国の政策を批判し、干渉する権利はない」と反発した。また、中国やロシアなどは北朝鮮を擁護する発言を行い、欧米や日本などとの間で非難の応酬となって、実質的な議論は行われなかった(同)。

   軍縮は国連の役割そのものだ。国連憲章は、総会と安全保障理事会の双方に具体的な責任を委託している。そして、軍縮条例をまとめるのが軍縮会議だ。これまで、核兵器不拡散条約(NPT、1968年)、生物兵器禁止条約(BWC、1972年)、化学兵器禁止条約(CWC、1993年)、包括的核実験禁止条約(CTBT、1996年)などの重要な軍縮関連条約を作成。国連総会で採択された。各国による署名と批准で発効するが、CTBTについては核兵器保有国を含む44ヵ国の批准が完了していないため、26年経ったいまでも未発効の状態だ。

   さらに、CTBT以降、軍縮会議は機能不全に陥っている。外務省公式サイト「ジュネーブ軍縮会議の概要」によると、軍縮会議の議題は「核軍備競争停止及び核軍縮」「核戦争防止(核兵器用核分裂性物質生産禁止条約を想定)」「宇宙における軍備競争の防止」など8つあるものの、実質的交渉や議論をほとんど行っていないのが現状だ。

   条例を作成し、総会で採択されたものの、核保有国などが批准しないため未発効の状態が続いているが、北朝鮮は批准の前段階である署名すらしていない。さらに、ミサイル発射と核実験で国連安保理から制裁措置を受けていても、ICBMの発射を繰り返している。4週間の議長国とは言え、北朝鮮は今後も各国から突き上げられ、針のむしろだろう。

(※写真は、現地時間6月2日にスイス・ジュネーブで開催された国連軍縮会議。天井画はスペインを代表する現代芸術家ミケル・バルセロの作品「Room XX」=国連本部公式サイトより)

⇒3日(金)午後・金沢の天気   くもり時々はれ

★「弾道」から「巡航」に 核ミサイルの戦略転換なのか

★「弾道」から「巡航」に 核ミサイルの戦略転換なのか

   日本海側に住んでいると、北朝鮮の動向が気になってしまう。けさのテレビメディア各社のニュースによると、北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」(13日付)は、新たに開発した長距離巡航ミサイルの発射実験に成功したと伝えている。NHKニュースWeb版(同)によると、ミサイルが落下した場所は不明だが、労働新聞は「わが国の領土と領海の上空に設定された、楕円や8の字の軌道に沿って、2時間6分20秒飛行し、1500㌔先の目標に命中した」と報じている。

   ニュースを視聴して意外だったのは、労働新聞の記事は一面ではなく、いわゆる中面の記事だ。つまり、それほど大きな扱いではない。また、今回の発射実験に金正恩総書記が立ち会ったという記述もない。それにしても「1500㌔先の目標に命中」とは場所はどこだろうか。加藤官房長官はきょう午前中の会見で、日本の排他的経済水域(EEZ)などへの飛来は確認されていないと説明している(NHKニュースWeb版)。「1500㌔先の目標に命中」という表現は、明らかに日本を射程内に入れているという意図を込めていて不気味だが、本当に発射実験が行われたのだろうか。

   連想することがある。今月9日未明に北朝鮮建国73周年のパレードがピョンヤンで行われ、閲兵式の映像は国営の朝鮮中央テレビを通じて公開された。NHKニュースWeb版(9日付)によると、参加したのは民兵組織の「労農赤衛軍」や国営企業の労働者などで、正規軍である朝鮮人民軍の参加は伝えられていない。また、弾道ミサイルなどの大型の兵器は登場しなかった。閲兵式での金総書記の発言も伝えられていない。

   イギリスのBBCニュースWeb版(同)は「North Korea tests new long-range cruise missile」の見出しで論評している=写真=。要約すると、弾道ミサイルは国連安保理の制裁対象となっているが、巡航ミサイルはその対象ではない。巡行ミサイルは低空飛行するためレーダーで捉えること難しい。北の国営メディアは、巡航ミサイルの開発を「戦略的」と表現している。つまり、核弾頭を小型化して巡航ミサイルに搭載できるように今後実験を重ねるかもしれない。先月、IAEAは北が核兵器用プルトニウムを生産できる原子炉を再稼働させたようだと述べ、「深く厄介な」開発と呼んだ。

   もし、北が従来の弾道ミサイルではなく、巡航ミサイルに核弾頭を搭載して発射させる戦略的な開発を行っているとすれば新たな脅威だ。金氏がことし1月5-7日に開催した党大会で、アメリカを「最大の主敵」「戦争モンスター」と呼び、より高度な核技術の追求などを通じて、アメリカの脅威に対する防衛力を絶えず強化する必要があると述べた。核兵器の小型・軽量化と大型核弾頭の製造推進、1万5000㌔射程内の戦略的目標に命中させ破壊する能力の向上を目指す方針も表明。固体燃料を用いるICBMと原子力潜水艦の開発、衛星による情報収集能力強化にも言及した(2021年1月9日付・BloombergニュースWeb版日本語)。

   今回の巡航ミサイル発射実験は、核兵器の小型・軽量化を目指しているのかもしれない。さらに気になるのは、これまでの人民軍のパレードを民兵組織のパレードに切り替えている。その意図はどこにあるのだろうか。国民総動員の戦闘態勢に入るという意思表示なのか。そして、金氏はアメリカのバイデン大統領との対話を求めているのだろうか。

⇒13日(月)午後・金沢の天気     はれ時々くもり

☆4月1日「中国ディストピア物語」

☆4月1日「中国ディストピア物語」

           今の中国の動きをメディアを通じてウオッチしていると「歴史ドキュメンタリー映画」を鑑賞しているようで、実に緊張感がある。あえてタイトルを付すれば、「中国ディストピア物語」だろうか。この場合のディストピア(dystopia)は自由が奪われる世界のたとえで、ユートピアと真逆な意味を込めている。

   最近のディストピア・ストーリーをいくつか。沖縄県の尖閣諸島の沖合で、中国海警局の船2隻が3月29日午前4時すぎ、日本の領海に侵入した。2隻は南小島の沖合で操業していた日本漁船2隻に接近する動きを見せたため、海上保安本部が巡視船を周囲に配備し漁船の安全を確保した。2隻は9時間にわたり領海内を航行したあと午後1時すぎに領海から出た。尖閣諸島の沖合で中国海警局の船が領海に侵入したのは、今年に入って11件目(3月29日付・NHKニュースWeb版)。

   「ここは我が国の領海だ」と主張して、漁船を追いかけ回す。南シナ海でもベトナムやフィリピンの漁船に対して同じことをしている。そのうち、民兵が乗った何百隻という「漁船」が尖閣諸島に来て上陸。小屋など建て居座る。漁民を守るためと称して海警局も上陸し灯台など造る。これを機に尖閣の実効支配に入る。見事なストーリーだ。

   ミャンマー国軍による弾圧強化で週末に市民100人以上が死亡した事態を受け、国連安全保障理事会は31日、イギリスの要請で緊急会合を開いた。ブルゲナー国連事務総長特使(ミャンマー担当)は、国境付近で国軍と武装勢力の戦闘が激化しており、「前例なき規模の内戦に陥る可能性が高まっている」と警告。「多重の破滅的状況」を回避するため共同行動を安保理に促した。一方、中国の国連大使は声明で、民主主義への移行を促しつつ、「一方的な圧力や制裁の訴えは緊張や対立を深め、状況を複雑化させるだけだ。建設的ではない」と主張した。安保理が今後、新たな声明を出す可能性はあるが、制裁など強力な措置で一致するのは難しいのが現状だ(4月1日付・時事通信Web版)。

   香港やウイグルにおける人権弾圧問題で国際批判を浴びている中国は国連の常任理事国の座にある。常任理事国であれば問題を起こしても国連では問われない。2020年5月、アメリカは中国による香港国家安全維持法(国安法)は人権侵害にあたるとして安保理の開催を提案したが、中国は「純然たる中国の内政問題だ」として拒否した。仮に安保理で決議がされても、拒否権を発動すれば成立しない。

   中国のディストピア・ストーリーは国連に関与を強めることだ。WHOのテドロス事務局長の有り様をウオッチすれば一目瞭然だ。さらにその先に描く夢は「国連本部を北京に」だろう。チャンスが到来した。「アジア系住民人へのヘイトクライムが多発するニューヨークを脱出しよう」と運動を起こす。

   4月1日、今年は自粛気味だがエイプリルフールの日。「中国ディストピア物語」を夢想してみた。(※写真は国連本部公式ホームページより)

⇒1日(木)午前・金沢の天気      はれ