#唐土の鳥

☆季節外れの黄砂がやって来る

☆季節外れの黄砂がやって来る

   きょうも線状降水帯が九州地方にはびこるなど、異常気象ともいえる状況が続いている。そして、これも異常な空だ。気象庁公式サイト「黄砂情報」によると、あす6日は大陸から黄砂が飛んでくる可能性がある。これまで7月から9月かけて黄砂が観測されたことはなく、もし観測された場合、統計が始まった1967年以来初めてのこととなる。季節外れの黄砂だ。   

   日本から4000㌔も離れた中国大陸のタクラマカン砂漠やゴビ砂漠から偏西風に乗って黄砂はやって来る。ただ、この時期に黄砂が来るということは、中国北部が高温少雨の干ばつに見舞われていて、砂が巻き上げられやすくなっているのではないか、と憶測してしまう。北京などでは猛暑が続き、観測史上初めて6月に3日連続で40度を超え、22日には過去最高の41度を記録したと報じれらている(6月25日付・AFP通信Web版日本語)。

   黄砂の日に外出すると、目がかゆくなる。黄砂そのものはアレルギー物質になりにくいとされているが、黄砂に付着した微生物や大気汚染物質がアレルギーの原因となり、鼻炎など引き起こすようだ。さらに、黄砂の粒子が鼻や口から体の奥の方まで入り、気管支喘息を起こす人もいる。日本海側の黄砂のルートにもなっている金沢では古くから「唐土の鳥」がまき散らす悪疫として、黄砂を忌み嫌ってきた。

   厄介もの扱いの黄砂だが、日本海に恵みをもたらすともいわれている。大量の黄砂が日本海に注ぐ3月と4月には、「ブルーミング」と呼ばれる、海の表面が白くなるほど植物プランクトンが大発生する。黄砂の成分といえるケイ酸が海水表面で溶出し、植物プランクトンの発生が促される。それを動物プランクトンが食べ、さらに魚が食べるという海の食物連鎖があるとの研究がある。確かに、地球規模から見れば、「小さな生け簀(す)」のような日本海になぜクジラやサメ、ブリ、サバ、フグ、イカ、カニなど魚介類が豊富に獲れるのか、いろいろ要因もあるが、黄砂もその役割を担っているのかもしれない。

   気象庁「黄砂情報」=予想図=によると、北陸地方にはあす6日午後3時ごろからが黄砂のピークだ。

⇒5日(水)夜・金沢の天気    くもり   

☆「厄介もの」黄砂 「恵みもたらす」黄砂

☆「厄介もの」黄砂 「恵みもたらす」黄砂

   きょう12日は朝から雨模様だったが、午後には雨があがり、そしてどんよりとした「黄砂の空」になった=写真、午後3時35分ごろ、金沢市の野田山から市内中心部を撮影=。きょう夜にかけて、北陸や北日本、北海道はさらに濃度の高い黄砂に覆われるようだ(気象庁公式サイト「黄砂情報」)。

   日本から4000㌔も離れた中国大陸のタクラマカン砂漠やゴビ砂漠から偏西風に乗って黄砂はやってくる。きょうのような日に外出すると、目がかゆくなる。黄砂そのものはアレルギー物質になりにくいとされているが、黄砂に付着した微生物や大気汚染物質がアレルギーの原因となり、鼻炎など引き起こすようだ。さらに、黄砂の粒子が鼻や口から体の奥の方まで入り、気管支喘息を起こす人もいる。

   金沢では古くから「唐土の鳥」がまき散らす悪疫として、黄砂を忌み嫌った。加賀藩主の御膳所を代々勤めた市内の料亭では七草粥をつくる際に、台所の七つ道具で音を立てて病魔をはらう春の行事がある。そのときの掛け声は「ナンナン、七草、なずな、唐土の鳥が日本の土地に渡らぬ先にかち合せてボートボト」と。春になると、唐の国(中国)から海を渡って来る鳥が空から悪疫のもとを降らすというのだ。現代風に解釈すれば、肺がんやぜんそくなどを引き起こすとされる微小粒子状物質「PM2.5」が黄砂とともに飛来するとの意味だろうか。

   まさに黄砂は「厄介もの」だが、日本海に恵みをもたらすともいわれている。大量の黄砂が日本海に注ぐ3月と4月には、「ブルーミング」と呼ばれる、海一面が白くなるほど植物プランクトンが大発生する。黄砂の成分といえるケイ酸が海水表面で溶出し、植物プランクトンの発生が促されるのだ。それを動物プランクトンが食べ、さらに魚が食べるという海の食物連鎖があるとの研究がある。確かに、地球規模から見れば、「小さな生け簀(す)」のような日本海になぜクジラやサメ、ブリ、サバ、フグ、イカ、カニなど魚介類が豊富に獲れるのか、いろいろ要因もあるが、黄砂もその役割を担っているのかもしれない。

   また、黄砂研究から商品化されたものもある。黄砂に乗って浮遊する微生物、花粉、有機粉塵などは「黄砂バイオエアロゾル」と呼ばれる。金沢大学のある研究者は発酵に関連する微生物がいることに気づき、採取したバチルス菌で実際に納豆をつくり、商品化した。空から採取したので商品名は「そらなっとう」。納豆特有の匂いが薄いことから、機内食としても使われている。日本の納豆文化はひょっとして黄砂が運んできたのではないかとの研究者の解説を聞いて、妙に納得した。

⇒12日(水)午後・金沢の天気   くもり