#和倉温泉

★観光列車「花嫁のれん」運行再開 当面は団体ツアー専用も能登の観光復興に弾み

★観光列車「花嫁のれん」運行再開 当面は団体ツアー専用も能登の観光復興に弾み

  「花嫁のれん」という、かつての加賀藩独特の婚礼行事がいまも能登半島の七尾市に伝わっている。花嫁が持参したのれんを嫁ぎ先の家の仏間の入り口に掛けてくぐる。花嫁のれんをくぐることで、嫁ぎ先の家族一員となる証(あかし)とされる。この風習が全国的に知られるようになったのはフジテレビ番組で嫁と姑の確執を描いたドラマ『花嫁のれん』(2011年)だった。JR西日本では2015年3月の北陸新幹線金沢開業をきっかけにJR七尾線の金沢駅から和倉温泉駅の区間で観光列車「花嫁のれん」を走らせた。土日を中心に1日2往復、全車指定席の特急列車。列車に描かれているのは輪島塗や加賀友禅の花鳥風月をイメージした模様だ=写真、JR公式サイト「JRおでかけネット」より=。

  その観光列車「花嫁のれん」は去年元旦の能登半島地震で運行を見合わせた。JR西日本は七尾線の線路の復旧作業などを終えて2月15日から列車の運行を再開したものの、「花嫁のれん」の運行休止は続いていた。和倉温泉の旅館やホテルが震災で損傷し、ほとんどが休館となっていたからだ。その観光列車「花嫁のれん」が今月7日、1年3ヵ月ぶりに運行を再開した。JR公式サイト「JRおでかけネット」によると、貸切乗車ツアーなどの団体専用臨時列車としての運転再開で、7日は日本旅行による関西発の旅行ツアー、8日はJR東日本による東京・上野発の団体ツアーとある。

  地元メディア各社の報道によると、運行再開の初日はツアー客50人余りが午前11時に金沢駅を出発し、午後0時半ごろに和倉温泉駅に到着。 駅構内では運転再開の祝いの太鼓が鳴り響く中、観光協会や旅館組合の関係者らが出迎えた。ツアー客は駅ホームに掛けられた花嫁のれんをくぐり、駅前で待機していた観光バスに乗り込んだ。JR西日本によると、観光列車「花嫁のれん」は当面の間は団体専用の貸切列車としての運行となるが、 今後は一般客利用についても検討していくという。

  地元和倉温泉では組合加盟旅館21軒のうち一般客を受け入れているのはまだ4軒だが、老舗旅館「加賀屋」は来年2026年中に本館ならびにグループ旅館合わせて4軒の営業再開を目指している(12月25日付・日経新聞Web版)。「花嫁のれん」の運行再開が、能登の観光産業の復興の弾みとなることに期待したい。

⇒9日(日)午後・金沢の天気     はれ

★能登半島地震 危機に瀕する観光、一次産業、伝統工芸

★能登半島地震 危機に瀕する観光、一次産業、伝統工芸

  元旦の地震が能登の経済に与える影響は計り知れない。その大きな一つは観光産業だろう。七尾市の和倉温泉は年間宿泊客数が90 万人とされるが、震災で22の旅館(収容人数6600人)すべてが休業に追い込まれている。元湯は復活したものの、断水が続いていて旅館営業の再開には困難な状況が続いている。

  和倉温泉観光協会の推計によると、1月と2月で7万7000人の予約が入っていたが、震災ですべてキャンセルとなり、これだけで20億円の売上損失となった。さらに、旅館や温泉施設などの建物・施設損害などで1000億円以上の被害が出ている。(※写真・上は、液状化現象で盛り上がった和倉温泉街の歩道)

  農林漁業などの第一次産業にも影響が大きい。農水省によると、石川県内の69漁港のうち60港が損壊や地盤隆起の被害を受けた。転覆や沈没、座礁などの被害を受けた漁船は230隻以上。荷さばきなどを行う水産業共同利用施設や漁業用施設は50カ所以上で損壊が確認された。ことしの冬はブリが豊漁で、地震後の1月10日に七尾市で、11日には能登町でブリの定置網漁が再開された。しかし、地震で製氷機が破損し、競り場も壊れ、水道などのインフラ整備が追い付かず、流通が一部滞った。

  200隻の漁船が湾内の海底の隆起で船が出せない状態だった輪島漁港では湾内の底ざらえをする浚渫(しゅんせつ)作業が行われているが、まだ漁の再開のめどはたっていない。本来なら、ノドグロやアマダイ、メバルのシーズンだ。同じ輪島市門前町の鹿磯漁港では海底が最大4㍍隆起して港そのものが使えなくなっている=写真・中=。このほか隆起があった3市町(輪島市、珠洲市、志賀町)の22漁港の漁協組合員は2640人、年間漁獲高は69億円(2022年実績)になる。そして、農業も水田の耕作時期を迎えるが、ひび割れが入った田んぼが目に付く。

  伝統産業の輪島塗も苦境に陥っている。輪島市は大規模な火災に見舞われ、国土交通省の発表(1月15日付)によると、焼失面積約5万800平方㍍、焼失家屋約300棟におよぶ。輪島塗は漆器の代名詞にもなっている。職人技によってその作業工程が積み上げられていく。木地、下地、研ぎ、上塗り、蒔絵といった分業体制で一つの漆器がつくられる。ただ、同じテーブルで作業をするわけではなく、それそれが工房を持っている場合が多い。火災と震災でそのかなりの工房が被災した。さらに、1000人ともいわれる職人の多くが避難所などに身を寄せている。(※写真・下は、輪島朝市通りに軒を並べていた漆器販売店など商店が火災で焼失した)

  輪島塗の作製は再開できるのだろうか。作業をする場と職人技に欠かせない道具(蒔絵の筆など)の確保が難しい。バルブ経済絶頂のころは年間生産額180億円(1991年)もあったが、このところ28億円に落ち込んでいる(令和3年版輪島市統計書)。かつて、「ジャパン(japan)は漆器、チャイナ(china)は陶磁器」と習った。日本を代表する伝統工芸、その輪島塗がいま危機に瀕している。

⇒13日(水)夜・金沢の天気   くもり時々あめ

★能登半島地震  復旧に向けた動きも徐々に

★能登半島地震  復旧に向けた動きも徐々に

   能登半島地震の発生からきょうで4週間が経った。半島の中ほどに位置し、人口4万7千人と能登で最も大きな自治体である七尾市を訪ねた。同市での最大の震度は6強、中心市街地は6弱の揺れに見舞われ、犠牲者は5人、住宅や店舗の全壊・半壊など被害は1万550棟に及んだ。

   中心街の老舗が並ぶ一本杉商店街を歩くと無残にも倒壊した店も。創業130年の和ろうそくの店で知られる「高澤ろうそく」は、建物が国の有形文化財に登録されているが、今回の地震で軒先が倒壊し、母屋も傾くなど大きな被害を受けた=写真・上=。同店はそれにもめげず、フランス・パリで開かれた世界最大規模のインテリアとデザイン関連の国際見本市「メゾン・エ・オブジェ」(今月18-22日)に出品し注目を集めたようだ(29日付・NHKニュースWeb版)。復興へのともし火のようなニュースだ。

   七尾市の中心街から北側にある和倉温泉に車で移動した。途中でJR七尾線の線路の修復工事が行われていた=写真・中=。金沢駅から七尾駅は今月22日に運転を再開したものの、七尾駅から和倉温泉駅の間は終日運転を取り止めている。レールのゆがみや架線柱が傾斜している箇所もあり、JRは2月中旬の運転再開を目指して復旧作業を進めている。

   和倉温泉街に入ると、いつものにぎわいはなく、閑散としていた。開湯1200年の歴史がある和倉温泉。建物の損壊などで22の旅館すべてが休業に追い込まれている。「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」(旅行新聞社主催)で通算40回総合1位に輝くなど、「おもてなし日本一」の旅館として知られる「加賀屋」でも入り口に立ち入り禁止の規制線がはられていた=写真・下=。入り口には歪んでいるところもあり、建物を眺めると外壁の一部が落ちてる。内部は揺れで食器なども相当に散乱したに違いない。

   ただ、復旧に向けた動きも始まる。七尾市では1万5100戸が断水となっていたが、水道の送水は順次復旧しており、和倉温泉地区への送水は3月中頃の見通しだ(28日付・七尾市役所公式サイト「水道 県・自エリア別一覧及び復旧状況確認表」)。電気はすでに復旧しており、水道の復旧で温泉街に一日も早く活気が戻ることを祈る。

⇒29日(月)夜・金沢の天気   くもり

☆北陸新幹線の敦賀延伸 どうする「乗り換え」ストレス

☆北陸新幹線の敦賀延伸 どうする「乗り換え」ストレス

   時間をうまく短縮することを「タイパ」、タイム・パフォーマンスとよく言われる。移動手段での最高のタイパは新幹線だろう。北陸新幹線の金沢・敦賀間が来年3月16日に開業する。ところが、金沢に住む一人として、関西と中京が少々遠くなった気もする。それは「乗り換え」という煩わしさ、ストレスだ。

   北陸新幹線の金沢・敦賀間の開業によるJR西日本の運行計画概要(8月30日付ニュースリリース)=図=によると、金沢と大阪方面を結ぶ特急「サンダーバード」、そして、名古屋方面を結ぶ特急「しらさぎ」は敦賀止まりとなる。金沢から北陸新幹線に乗って大阪に行く際は敦賀でサンダーバードに乗り換え、名古屋に行く際も敦賀でしらさぎに乗り換えになる。時間は短縮されるだろうが、これまで直行だった列車が、乗り換えとなると不便さを感じるのではないだろうか。もちろん、当初から予定されていたことであり、いまさら言うのも適切ではないかもしれない。

   この乗り換えによって、戸惑っているのは関西や中京の客が多い北陸の温泉街ではないだろうか。「関西の奥座敷」とも呼ばれる加賀温泉郷(山中、山代、片山津)へはサンダーバードやしらさぎで関西や中京と直行列車で結ばれているが、来年からは乗り換えの手間が客に煩わしさを感じさせるのではないだろうか。(※イラストは、敦賀市役所公式サイト「新幹線敦賀駅前広場のイメージ図を作成しました!」より)

   懸念を深めているのは能登半島の代表的な温泉地である七尾市の和倉温泉かもしれない。現在、1日1往復だけだが、サンダーバードが大阪駅から乗り入れている。来年3月からは、関西の客は敦賀で新幹線「つるぎ」に、金沢で特急「能登かがり火」にと2度の乗り換えとなる。JRでは能登かがり火について、1往復増やして5往復で対応するとしているものの、2度乗り換えで客側に時間や不便さを感じさせるのではないだろうか。一方で、温泉への旅の感覚では乗り換えはそれほど苦にはならないかもしれない。

   この乗り換え問題にJRはどう対処するのか。地元メディアによると、金沢駅では新幹線ホームに向かって横に移動する必要があるが、敦賀駅では3階にある新幹線駅の真下、1階に在来線特急が到着する。上下の移動だけでホームを移動できるため、乗り換え時間は5分ほど。この仕組みの実現のため、敦賀駅舎は整備新幹線では最も高い37㍍となった(2023年3月16日付・北陸中日新聞)。まさに12階建てのビルに匹敵する。
 
   京都・大阪方面への北陸新幹線の延伸計画は、2046年度に新大阪開業が予定されている。それまで、敦賀乗り換えは、出張するサラリーマンにストレスを与え続けることになるに違いない。折に触れて、このテーマを検証してみたい。
 
⇒21日(木)夜・金沢の天気    くもり