#北朝鮮

★北朝鮮はICBMの核搭載を急ぐのか

★北朝鮮はICBMの核搭載を急ぐのか

    北朝鮮がまた日本海に向けて弾道ミサイルを発射した。ミサイルの発射はことしに入って13回目だ。防衛省公式サイト「報道資料」(4日付)によると、「北朝鮮は、本日12時2分頃、北朝鮮西岸付近から、1発の弾道ミサイルを、東方向に向けて発射しました。詳細については現在分析中ですが、最高高度約800km程度で、距離は約500km程度飛翔し、落下したのは、北朝鮮東岸の日本海であり、我が国の排他的経済水域(EEZ)外と推定されます」。

    また、防衛大臣のコメントも添えている。「これまでの弾道ミサイル等の度重なる発射も含め、一連の北朝鮮の行動は、我が国、地域及び国際社会の平和と安全を脅かすものです。また、ウクライナへの侵略が発生している中で、ミサイルを発射したことは許されない旨、大臣からコメントがありました。さらに、このような弾道ミサイル発射は、関連する安保理決議に違反するものであり、強く非難します」

   注視するのは、発射された場所だ。防衛省公式サイトのイメージ図にあるように、発射は首都平壌の郊外の国際空港で行われたのだろう。ここからは、3月24日に「モンスター・ミサイル」と報じられた全長23㍍にも及ぶ大陸間弾道ミサイル「火星17型」(ICBM)が発射されている。このときは、71分飛翔し、北海道の渡島半島の西方約150㌔の日本海(EEZ内)に落下した。飛翔距離は約1100㌔、最高高度は6000㌔を超えると推定されている。射程距離は首都ワシントンほかアメリカ全土がほぼ入るとされた。

    今回は最高高度は800㌔とされるので火星17型に比べれば、規模が小さいのかもしれない。ただ、4月25日に「朝鮮人民革命軍」創設90年にあわせて軍事パレードを開催した金正恩総書記は「核戦力を最速ペースで強化・開発するため、措置を取り続ける」と表明し、核戦力について、いつでも行使できるよう「準備が欠かせない」と述べている(4月26日付・BBCニュースWeb版日本語)。アメリカ全土を射程距離に入れるICBMの発射実験には成功したので、次は核弾道の搭載に向けて準備を進めているのではないかと懸念する。

   北朝鮮だけではない。ロシア太平洋艦隊の潜水艦2隻が4月14日、日本海で巡航ミサイルの発射演習をした。ミサイルは敵の船を模した海上の標的に命中したとしている(4月14日付・共同通信ニュースWeb版)。また、同じ4月20日には、10以上の核弾頭の搭載が可能な新型の大陸間弾道ミサイル「サルマト」をカムチャッカ半島の標的地に落としている。CNNニュースWeb版日本語(4月21日付)によると、「サルマト」についてはプーチン大統領が2018年の演説で新型兵器として言及し、これでNATOの防衛は「完全に使い物にならなくなる」と誇示していた。日本海周辺にさらなる緊張感が漂う。

⇒4日(水)夜・金沢の天気      くもり

☆ICBMをぶっ放す「悪の枢軸」

☆ICBMをぶっ放す「悪の枢軸」

   まさに「悪の枢軸」とはこのことだ。NHKやCNNニュースWeb版(21日付)によると、ロシア国防省は日本時間の20日午後9時すぎ、北部アルハンゲリスク州にあるプレセツク宇宙基地の発射場から新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「サルマト」を発射し、およそ5700㌔東のカムチャツカ半島にあるクーラ試験場に向けて目標に命中したと発表した。BBCニュースWeb版は「Russia releases video of intercontinental ballistic missile launch」と題して、ロシア国防省が撮影した「サルマト」の発射映像(43秒)を公開している=写真=。

   読売新聞Web版によると、このICBMは射程1万1000㌔以上、重量200㌧を超える重量があり、10以上の核弾頭の搭載が可能とされる。弾頭部分をマッハ20(時速約2万4500㌔)で滑空飛行させ、既存のアメリカのミサイル防衛網での迎撃は困難とも指摘される。ロシア大統領府の発表として、プーチン大統領は「ロシアの安全を確保し、攻撃的な言動でロシアを脅かす人々に再考を迫るだろう」と述べ、ウクライナ侵攻を受けて対露制裁を科している米欧をけん制した。

   CNNニュースWeb版日本語によると、「サルマト」についてはプーチン大統領が2018年の演説で新型兵器として言及し、これでNATOの防衛は「完全に使い物にならなくなる」と誇示していた。

   NATOだけでなく、東京も射程距離に入る。さらに、この射程1万1000㌔以上のICBMをロシア極東に配備すればほぼアメリカ全土が射程距離ではないだろうか。北朝鮮が3月24日に発射したICBM「火星17型」も首都ワシントンほかアメリカ全土がほぼ射程距離内とされる。北朝鮮の労働新聞Web版(3月25日付)は、金正恩総書記が「もし誰かがわが国家の安全を侵害しようとするなら、彼らはその代償を払うこと、そして我々の国防能力はアメリカ帝国主義との長期的対決に徹底的に備える強力な軍事技術を持っていることを明確にしなければならない」(意訳)と述べたと伝えている。

   「悪の枢軸」を最初に唱えたのは、アメリカの第43代大統領のジョージ・W・ブッシュ氏だった。2002年1月の一般教書演説で、「States like these, and their terrorist allies, constitute an axis of evil, arming to threaten the peace of the world. 」と激しく、当時、アメリカがテロ支援国家と呼んでいたイランとイラク、北朝鮮を名指しした。

   そして今、「悪の枢軸はどこの国」と世界の人に問えば、多くはロシアと北朝鮮と答えるのはないだろうか。ウクライナを侵攻して、ICBMをぶっ放すロシア、アメリカを標的にICBMを繰り返す北朝鮮。この先の世界の歴史はICBMが飛び交う悲劇なのか、和平の落としどころあるのか。

⇒21日(木)夜・金沢の天気    あめ

★Jアラート訓練再開へ 日本海「今そこにある危機」

★Jアラート訓練再開へ 日本海「今そこにある危機」

   ことし1月4日に能登半島の尖端、珠洲の海岸に船体の全長が50㍍ほどある鉄製の船が海岸に流れ着いているのを住民が見つけ、海上保安庁に連絡した。船体にはロシア語が書かれていて、海上保安庁では、ロシアで射撃訓練の際に「標的船」として使われる船に似ていると公表した(1月4日付・朝日新聞ニュースWeb版)。このニュースは今にして思えば、ロシアが日本海で軍事訓練を繰り返していることの証左なのだろう。

   共同通信ニュースWeb版(4月14日付)によると、ロシア太平洋艦隊の潜水艦2隻が14日、日本海で巡航ミサイル「カリブル」の発射演習をした。2隻は最新ディーゼル潜水艦の「ペトロパブロフスクカムチャツキー」と「ウォルホフ」で、ミサイルは敵の船を模した海上の標的に命中したとしている。

   日本海では今月11日からアメリカ海軍の原子力空母「エイブラハム・リンカーン」と駆逐艦「スプルーアンス」、海上自衛隊の護衛艦「いなづま」などが共同訓練を行っている。日本海での共同訓練は、北朝鮮が核実験やICBMの発射を繰り返した2017年11月以来のこと(13日付・NHKニュースWeb版)。そうした日米の動きを牽制するかのように、ロシアの潜水艦による巡航ミサイルの発射演習を行った。日本海に緊張感が漂う。  

   総理官邸公式サイトによると、松野官房長官は14日の記者会見で、読売新聞の記者が15日に北朝鮮の金日成主席生誕110周年にあたる「太陽節」を迎えることについて質問した。それに松野氏はこのように返答している。「北朝鮮は、国際社会に背を向けて、核・弾道ミサイル開発のための活動を継続する姿勢を依然として崩していない。今後もさらなる挑発活動に出る可能性も考えられる」。(※写真は3月24日に北朝鮮が打ち上げた新型ICBM=同月25日付・労働新聞Web版)

   こうした政府の見解がベースにあるのだろう、きょうのNHKニュースWeb版(15日付)によると、政府は北朝鮮の弾道ミサイルの発射を想定して、国民保護法に基づいて、自治体と共同で住民も参加して実施する避難訓練を4年ぶりに再開させる方向で調整を進めるという。この避難訓練とは、北朝鮮からミサイルが発射され、日本の国土に到達することを想定し、政府が全国瞬時警報システム(Jアラート)で速報する。それを受けて住民がコンクリの建物などに避難する訓練だ。2017年から日本海側などの自治体で行われていたが、2018年6月に米朝首脳会談が行われて以来、実施されていなかった。

   自身もこの「Jアラート」訓練に参加したことがある。2017年8月30日に能登半島の輪島市で実施された。この年の3月6日、北朝鮮は弾道ミサイルを4発発射し、うち1発を輪島市の北200㌔の海上に着弾させた。同市には航空自衛隊の監視レーダーサイトがある。避難訓練はリアリティがあった。9時ちょうどに防災行政無線の屋外スピーカーから「これは防災訓練です」と前置きして、Jアラートの鈍い警報音が流れた。その後「ミサイルが発射された模様です」「ただちに頑丈な建物や地下に避難してください」とアナウンスが流れた。防災行政無線による避難の呼びかけは10分間ほど続いた。輪島市文化会館では住民による避難訓練や、市内の小学校では机の下に入り、身をかがめて頭を守る訓練も行われた。

   ロシア潜水艦によるミサイル発射、北朝鮮のICBMなどはまさに「今そこにある危機」でもある。危機のステージが日本海側にシフトしている。

⇒15日(金)午後・金沢の天気    くもり

★日本海で日米共同訓練 地政学的リスクはないのか

★日本海で日米共同訓練 地政学的リスクはないのか

   防衛省・自衛隊の公式ツイッターによると、ことし1月17日から5日間、沖縄南方の海空域でアメリカ軍の原子力空母などを交えて日米共同訓練を展開していた。2021年度で8回の共同訓練のようだ。では、この共同訓練は今年度初めてとなるのだろうか。

   きょう13日付のNHKニュースWeb版によると、NHKはアメリカ海軍の原子力空母「エイブラハム・リンカーン」が11日正午ごろ、対馬海峡を東の方向に通過する様子を上空のヘリコプターから確認した。空母周辺では、アメリカの駆逐艦「スプルーアンス」や自衛隊の護衛艦「いなづま」が航行していた。アメリカ海軍の空母が日本海に展開したことが明らかになったのは、北朝鮮が核実験やICBMの発射を繰り返した2017年11月以来のこと(同)。

   日本海側に住む一人として、このようなニュースに接するとそれなりに緊張する。北朝鮮は先月3月24日に新型のICBMを発射し、北海道の渡島半島の西方約150㌔の日本海(EEZ内)に落下させている。全長23㍍と推測されるこの大型化したICBMを「モンスター・ミサイル」とメディア各社は報じた。このとき、岸防衛大臣は記者会見で「アメリカの東海岸を含む全土が射程内ではないか」「我が国、そして国際社会の平和と安全に対する深刻な脅威だ」と語った。ホワイトハウスの報道官も国連決議に反する「brazen violation」(恥知らずな違反)と不快感をあらわにした(3月25日付・BBCニュースWeb版)。

   日米のこの憤りが北朝鮮に対する強いメッセージとして、日本海での共同訓練になったことは想像に難くない。さらに、北朝鮮にとって今月15日は「建国の父」である金日成主席の生誕110周年の節目にあたることから、国威発揚を目指してのICBMの発射や、7回目となる核実験につながる可能性も想定されるのだ。日米の軍事情報筋は衛星画像などを解析して北朝鮮の軍事的な動きを読み取ったのかもしれない。

   今回の日本海での日米の共同訓練は北朝鮮への牽制となりうるのかどうか、突発的な紛争は起こらないだろうか。対岸のことなので気にかかる。自身のこの妙な緊張感は地政学的なリスク感覚なのかもしれない。

(※写真は空母「エイブラハム・リンカーン」、Wikipedia「エイブラハム・リンカーン(空母)」より)

⇒13日(水)午後・金沢の天気     くもり

★吹き荒れる春の嵐と「モンスター・ミサイル」

★吹き荒れる春の嵐と「モンスター・ミサイル」

   きょう午後から強風が吹き荒れている。しかも、25度超える温かい風。時折、突風となって樹木を大きく揺らしている。気象台によると、最大瞬間風速は加賀地方、能登地方ともに陸上で30㍍の予想され、きょう夕方までに暴風警報を発表する可能性もあると伝えている(金沢地方気象台公式ホームページ)。北陸新幹線は強風の影響で、午後から長野駅と富山駅の間の上下線で運転を見合わせている。また、北陸本線は強風で小松駅から粟津間の架線に障害物が引っかり、特急「サンダーバード」や「しらさぎ」の上下14本が運休と午後のニュース番組で報じていた。まさに春の嵐だ。

   北朝鮮が24日に発射した新型ICBMは、日本にとって、そしてアメリカにとっても春の嵐だった。岸防衛大臣はきのう25日の閣議の記者会見で、「弾道の重さにもよるが、1万5000㌔を超える射程となりうる。アメリカの東海岸を含む全土が射程内ではないか」「我が国、そして国際社会の平和と安全に対する深刻な脅威だ」と語った。

   BBCニュースWeb版(25日付)は「N Korea claims successful launch of ‘monster missile’ Hwasong-17」=写真=の見出しで、大型化し全長23㍍と推測されるこの大陸間弾道ミサイルを「モンスター・ミサイル」と表現し、各国の反応を伝えている。ホワイトハウスの報道官は国連決議に反する「brazen violation」(恥知らずな違反)と述べ、国連のグテーレス事務総長も「地域における緊張の著しいエスカレーション」と述べたと伝えている。

   その国連では、25日に北朝鮮のICBM発射について安保理の緊急会合が開催された。アメリカ、イギリス、フランス、アルバニア、アイルランド、ノルウェーなど欧米の加盟国は安保理の決議違反として非難。アメリカは制裁を強化する決議を提案する方針を打ち出した。しかし、常任理事国の中国とロシアは追加制裁に反対し、中国は「むしろアメリカと北朝鮮は直接対話をすべきだ」と述べた。追加制裁の実現は難しい(26日付・テレビ朝日ニュースWeb版)。

   ICBMに不可欠なのは核弾頭だ。今後、核実験もICBMの発射実験と並行して繰り返していくだろう。さらに、これまでの日本海への着弾だけではなく、日本列島を飛び越えて太平洋への撃ち込みも狙っているのではないか。どんどんエスカレートしそうな気配が漂う。前述のグテーレス氏が危惧している「エスカレーション」はこの意味ではないかと解釈している。

⇒26日(土)午後・金沢の天気    くもり時々あめ

☆隣国の理不尽さ 北のICBM、露のウクライナ侵攻

☆隣国の理不尽さ 北のICBM、露のウクライナ侵攻

   これまでの北朝鮮の弾道ミサイルは日本海側に住む日本人の脅威だったが、今回のICBM発射実験は世界を巻き込んで脅威が共有されたのではないか。けさの北朝鮮の労働新聞Web版(25日付)をチェックすると、「주체조선의 절대적힘, 군사적강세 힘있게 과시 신형대륙간탄도미싸일시험발사 단행 경애하는 김정은동지께서 대륙간탄도미싸일 《화성포-17》형시험발사를 지도하시였다 」(意訳:金正恩総書記の立ち会いのもと、新しい大陸間弾道ミサイル「火星17型」の発射実験は成功した)の見出しで報じている。

   それによると、発射は首都平壌の郊外の国際空港で行われた。最高高度は6248.5㌔に達し、1090㌔の距離を67分32秒飛行、「朝鮮東海公海の予定海域に正確に着弾した」と伝えている。そして、金氏は「もし誰かがわが国家の安全を侵害しようとするなら、彼らはその代償を払うこと、そして我々の国防能力はアメリカ帝国主義との長期的対決に徹底的に備える強力な軍事技術を持っていることを明確にしなければならない」(意訳)と述べたと伝えている。写真では、オレンジ色の炎を吹き出しながら上昇していくICBMの様子を掲載している=写真・上=。

   防衛省公式ホームページ(24日付)によると、北朝鮮は24日14時33分ごろ、朝鮮半島西岸付近から1発の弾道ミサイルを東方向に発射した。約71分飛翔し、15時44分ごろ、北海道の渡島半島の西方約150㌔の日本海(EEZ内)に落下したものと推定。飛翔距離は約1100㌔、最高高度は6000㌔を超えると推定される。また、今回の弾道ミサイルが2017年11月のICBM級弾道ミサイル「火星15型」の発射時を大きく超える約6000㌔以上の高度で飛翔しており、今回発射のものは新型のICBM級弾道ミサイルであると考えられる。

   では、新型ICBMはどのくらいの射程距離があるのか。防衛省の「北朝鮮による核・弾道ミサイル開発について」(2022年1月)によると、上記の火星15型ではアメリカのロサンゼルスやサンフランシスコが射程に入っている=写真・下=。今回のものはさらに射程距離が長いので、ニューヨークやワシントンDCも入るだろう。

   さらに、日本のEEZ内に落としたにもかかわらず、「朝鮮東海公海の予定海域に正確に着弾した」と表現している。領海の基線から200㌋(370㌔)までのEEZでは、水産資源は沿岸国に管理権があると国連海洋法条約で定められている。ところが、北朝鮮は条約に加盟していないし、日本と漁業協定も結んでいないことを盾に、自国の領海であると以前から主張している。

   ふと不安がよぎる。北朝鮮のこの「論法」で言えば、EEZ内で6月から始まる日本漁船のイカ釣り漁も無視されるのではないか。日本漁船の拿捕だ。1984年7月、北朝鮮が一方的に引いた「軍事境界線」の内に侵入したとして、能登半島の小木漁協所属のイカ釣り漁船「第36八千代丸」が北朝鮮の警備艇に銃撃され、船長が死亡、乗組員4人が拿捕された。1ヵ月後に「罰金」1951万円を払わされ4人は帰国した。これを「非友好国」日本を相手に北朝鮮とロシアがタッグを組んでやるのではないか。想像するだけで身の毛がよだつ。

   ロシアによるウクライナ侵攻や北朝鮮のICBMなど空、海、領土などさまざまなところで理不尽な動きがまかり通る。

⇒25日(金)午後・金沢の天気   はれ

★大陸間弾道ミサイル発射再開の地ならしか

★大陸間弾道ミサイル発射再開の地ならしか

    ことしに入って7回目のミサイル発射だ。松野官房長官はきょう午前9時、臨時会見を行った。総理官邸公式ホームページに掲載された会見動画によると、北朝鮮はきょう7時52分ごろ、北朝鮮内陸部から弾道ミサイル1発を東方向に発射。最高高度はおよそ2000㌔、飛しょう時間は30分、およそ800㌔を飛しょうし、日本海側のEEZ外に落下したものと推定される。付近を航行する航空機や船舶および関係機関への被害などは確認されていない。

   気になるのは、最高高度が2000㌔ということは、打ち上げ角度を高くする、いわゆる「ロフテッド軌道」型の弾道ミサイルということだ。2017年5月14日に発射した中距離弾道ミサイル(IRBM)級の新型弾道ミサイルは、2000㌔を超える高度に達した上で800㌔飛しょうさせている。さらに、同じ年の11月29日に発射した大陸間弾道ミサイル(ICBM)級新型弾道ミサイルは4000㌔を超える高度に達し、1000㌔を飛しょうした。ここから推測できることは、北朝鮮はICBMの発射の地ならしを始めたのではないか、ということだ。

   北朝鮮は今月19日に開いた朝鮮労働党の政治局会議で「アメリカ帝国主義との長期的な対決に徹底して準備しなければならない」とする方針を決定し、2018年に中止を表明していたICBMの発射実験や核実験については見直しを検討するとしている(1月27日付・NHKニュースWeb版)。

   このブログでは日本海側に住む者の一人の危機感として、北朝鮮のミサイル発射の動向をその都度記している。この1ヵ月で7回の発射は異常で、ミサイルの多様化には異様さを感じる。今月5日は極超音速の弾道ミサイルだった。11日の弾道ミサイルも極超音速型で、ミサイルから分離された弾頭が1000㌔先の目標に命中した。14日には鉄道から短距離弾道ミサイル2発を発射。17日に戦術誘導弾として弾道ミサイル2発を日本海上の島に「精密に打撃」した。25日にも長距離巡航ミサイル2発を「9137秒飛行し1800㌔先の島に命中」させている。6回目の27日は2発の戦術誘導弾を標的の島に「精密に打撃」、爆発威力は「設計上の要求を満たした」ものだった。

   そしていよいよ大陸間弾道ミサイル発射を再開させ、「ロケットマンが自殺行為の任務を進めている」(2017年9月、アメリカのトランプ大統領の国連総会演説)のステージに逆戻りするのか。

(※写真は、2020年10月の北朝鮮軍事パレードで登場した新型ICBMと見られる弾道ミサイル、令和4年1月・防衛省発表資料「北朝鮮による核・弾道ミサイル開発について」より)

⇒30日(日)午後・金沢の天気    くもり時々はれ

★狙い撃ちの北朝鮮ミサイルに「遺憾」で済むのか

★狙い撃ちの北朝鮮ミサイルに「遺憾」で済むのか

   大寒のこのごろは、「水沢あつく堅し」の言葉をあいさつ文で使ったりする。沢の水も暑く堅く凍ってしまうほど冷え込みが厳しいという季節の表現だ。きのう27日、北朝鮮から弾道ミサイルが日本海に発射されたことを受けて、岸田総理は会見を行ったが=写真・上=、その言葉も厚く堅くフリーズ状態だった。

   以下、総理官邸公式ホームページから引用。記者から「北朝鮮から弾道ミサイルの可能性のあるものが発射されたとの情報について」と問われ、「まず、韓国の報道については承知しております。政府としては引き続き情報収集に努めてまいります。今、確認できているのはそこまでです。そして6度目となる発射についてですが、これは弾道ミサイル等の発射が含まれておりますので、これは国連決議違反であり、これは抗議もいたしましたし、大変遺憾なことであると思っております」と。

   さらに記者から「今回日本側からミサイルの発射の速報がなかった理由について」と問われ、「それも含めて今確認をいたします。情報収集中であります」と。最後に、記者から「航空機や船舶の被害などについて」と問われ、「少なくとも私のところには、そうした被害の報告は届いておりません。それも含めて、今情報収集中であると認識しております」と。

   これは一国の総理が発する言葉だろうか。「大変遺憾」と「情報収集中」としか言っていないのだ。「6度目の発射」「国連決議違反」と言うのであれば、その異常事態にどう対応するのか、為政者としての矜持が感じられない。

   朝鮮新報Web版(28日付)=写真・下=は、27日の短距離弾道ミサイルについて、「地対地戦術誘導弾通常戦闘部の威力を実証するための試射を行った。発射された2発の戦術誘導弾は、標的の島を精密に打撃し、通常戦闘部の爆発威力が設計上の要求を満たしたことが実証された」と記載している。また、25日に発射した巡航ミサイル2発についても、「発射された2発の長距離巡航ミサイルは、朝鮮東海上の設定された飛行軌道に沿って9137秒を飛行して、1800㌔界線の標的の島を命中した」と報じている。

   25日と27日の発射は島を狙い撃ちしたもので、それぞれ「命中」そして「精密に打撃」したと記載している。その島は同じ島なのかはわからないが、これまで日本海に向けての打ち放しの「誘導」から、一点を狙撃する「戦術誘導」へと転換している。これは何を意味するのか。発射地点から東京は1300㌔の範囲だ。「大変遺憾」「情報収集中」で済む話なのか。

⇒28日(金)午後・金沢の天気    くもり

☆先が読めないニュースあれこれ

☆先が読めないニュースあれこれ

   日々のニュースに接していて、この先どうなるのだろうかと考え込んでしまうことがある。きょうもふとそのような心境に陥った。NHKニュースWeb版(27日付)によると、北朝鮮はきょう午前8時ごろ、南道ハムン(咸興)周辺から日本海に向けて短距離弾道ミサイルと推定される飛しょう体2発を発射した。北朝鮮は、ことしに入ってからミサイルの発射を極めて高い頻度で繰り返していて、5日と11日に飛しょう体を1発ずつ発射し、その翌日に「極超音速ミサイル」の発射実験を行ったと発表したほか、今月14日と17日にも日本海に向けて短距離弾道ミサイルと推定される飛しょう体を2発ずつ発射している=写真・上は1月6日付・朝鮮新報Web版=。

   直近では25日午前に巡航ミサイルを2発したと報じられていた。射程距離が2000-1万3000㌔の弾道ミサイルに比べ、巡行ミサイルは1500㌔と射程は狭く速度も遅いが、日本や韓国では脅威だ。北朝鮮は今月19日に開かれた朝鮮労働党の政治局会議で「アメリカ帝国主義との長期的な対決に徹底して準備しなければならない」とする方針を決定し、2018年に中止を表明していた大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験や核実験については見直しを検討するとしている(同)。ICBMが発射されれば、アメリカ西海岸のロサンゼルスなどが射程に入る。かつて、アメリカのトランプ大統領が国連総会(2017年9月)で「ロケットマンが自殺行為の任務を進めている」と演説したが、その状況が蘇ってきた。

   新型コロナウイルスの感染拡大が止まない。全国で7万人の新規感染者(26日)が出て、石川県内でも一日の新規感染がついに500人を超えた(504人)。ここまで人数が増えてくると感染経路そのものが多様化して、防ぎようがない。県内の504人のうち感染経路調査中が337人、感染者の濃厚接触者などが122人、残りがクラスター関係で7件45人だ(県発表)。 また、入院や宿泊療養などの療養先が決まっていない人は1000人を超えて1013人となっている。感染者が確認された保育園や小学校など学校では臨時休校が相次いでいる。中学では高校受験を控えた3年生はオンライン授業に切り替えているが、生徒たちは感染と受験の「二重苦」にさいなまれているに違いない。県内ではきょうから「まん延防止等重点措置」の適用に全県域が入る(2月20日まで)=写真・下=。

   もう一つ先が読めないニュース。きょうの東京株式市場は、日経平均が午前中、一時700円を超える値下がりとなった。午前の終値は前日の終値より690円安い2万6321円。アメリカのパウエルFRB議長がきのう理事会でインフレ抑制を優先する姿勢を打ち出し、量的緩和の3月終了を決定したことで金融引き締めへの警戒感、それに伴う経済の回復傾向にマイナスになるという懸念が広がった。ダウ平均もこのところ一時800㌦を超える大幅な値下げがあるなど乱高下が続いている。

   では日銀はどうか。黒田総裁が2013年に就任以降、2%の消費者物価指数を政策目標に掲げて大規模な金融緩和策を粘り強く続けている。ここにきて、物価上昇が顕著になってきた。これに賃上げが加われば、ひょっとして「金融政策の正常化」へと回帰するのではないかとも考えたりする。ただ、中国不動産開発の中国恒大のデフォルト問題が象徴するように中国経済が今後どうなるかによって暗雲が漂うかもしれない。経済の先も読めない。

⇒27日(木)午後・金沢の天気     はれ

★「敵基地攻撃能力」は無力化するのか

★「敵基地攻撃能力」は無力化するのか

   正気の沙汰ではない。また、きのう(14日)北朝鮮が弾道ミサイルを打ち上げた。ことしに入って3回目だ。防衛省公式ホームページには、「北朝鮮は、本日(14日)14時50分頃、北朝鮮北西部から弾道ミサイルを少なくとも1発、東方向に発射しました。詳細については現在分析中ですが、最高高度約50km程度で、距離は通常の弾道軌道だとすれば、約400km程度飛翔し、落下したのは、北朝鮮東岸付近であり、我が国の排他的経済水域(EEZ)外と推定されます」と記載されている。

   NHKニュースWeb版(15日付)は、朝鮮労働党機関紙「労働新聞」を引用してして以下報じている。「鉄道機動ミサイル連隊が14日、発射訓練を行い、2発の戦術誘導弾が日本海に設定された目標に命中した」と発表した。公開された写真ではミサイルが、線路上の列車からオレンジ色の炎を吹き出しながら上昇していく様子が写っている。また発射訓練について、「任務の遂行能力を高めることを目的に行われた」としていて、国防科学院の幹部らが立ち会い、「全国的な鉄道機動ミサイルの運用システムを整えるための課題が議論された」としている。

   当初、アメリカへの威嚇を込めた発射だと思った。北朝鮮外務省報道官はこの日午前6時、国営の朝鮮中央通信を通じて談話を発表し、「アメリカがわが国の合法的な自衛権行使を問題視するのは明らかな挑発であり、強盗的な論理だ」「アメリカはわが国の正当な活動を国連安保理に引き込んで非難騒動を起こせなかったので、単独制裁まで発動しながら情勢を意図的に激化させている」と述べていた(15日付・朝鮮日報Web版日本語)。

   ところが、先のNHKニュースからは、鉄道機動ミサイルを戦略兵器として着々と開発を進めていることが分かる。鉄道機動ミサイルが初めて確認されたのは、2021年9月15日に発射した弾道ミサイルだ=写真、2021年9月17日付・朝鮮中央テレビ動画から=。このときは、能登半島沖350㌔のEEZ内に着弾した。あれから4ヵ月で戦術誘導弾を搭載した鉄道機動ミサイルを開発したことが分かる。戦術誘導弾は弾頭の重量を2.5㌧に改良した兵器システムで、核弾頭の搭載が可能となる。これを「全国的な鉄道機動ミサイルの運用システム」へと展開したらどうなるか。つまり、移動式ミサイル発射システムが完成すれば、北朝鮮のいたるところから発射が可能で、日本で議論されている「敵基地攻撃能力」そのものが意味をなさなくなってくる。

   北朝鮮の弾道ミサイル開発はすでに完成形に近いのではないか。去年9月28日発射した極超音速ミサイルはマッハ3とされていたが、今月11日に発射したものはマッハ10と推定されている(12日・岸防衛大臣の記者会見)。日本の弾道ミサイルへの防衛は、イージス艦の迎撃ミサイルで敵のミサイルを大気圏外で撃ち落とし、撃ち漏らしたものを地対空誘導弾「PAC3」で迎撃するという二段構えの防備体制といわれる。日々進化していると思われる北朝鮮の弾道ミサイルにまともに向き合えるのか。日本海側に住む一人としての懸念だ。

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