#北朝鮮

☆日本の「反撃能力」と北朝鮮の「固体燃料ロケット」

☆日本の「反撃能力」と北朝鮮の「固体燃料ロケット」

   日本海側に住んでいると、北朝鮮の動きが気になる。先月18日に平壌近郊から、1発のICBM級弾道ミサイルを発射し、北海道の渡島大島の西方約200㌔の日本海、EEZ内に着弾させている。飛翔距離は約1000㌔、また最高高度は約6000㌔で、弾頭の重さによっては、射程は1万5000㌔を超えてアメリカ全土に届くと推定されている。

   CNNニュースWeb版日本語(16日付)によると、北朝鮮はきょう新型の固体燃料ロケットエンジンのテストに成功したと発表した。これにより金正恩総書記は将来、より迅速かつ確実にICBMを発射できるようになる可能性がある、と報じている。固体燃料ロケットは、北朝鮮がこれまでのICBM発射実験で使用した液体燃料ロケットよりも安定性に優れ、ICBMをより容易に移動させられるうえに、打ち上げにかかる時間も短縮できるとされる。

   北朝鮮は2021年からの「国防5ヵ年計画」で固体燃料のICBM開発を重点目標に掲げており、金総書記は今回の実験で「優先課題実現に向けた重大問題を解決した」と強調した(16日付・産経新聞Web版)。

   政府はきょうの臨時閣議で「国家安全保障戦略」など新たな防衛3文書を決定した。敵の弾道ミサイル攻撃に対処するため、発射基地などをたたく「反撃能力」の保有が明記され、日本の安全保障政策の大きな転換となる(NHKニュースWeb版)。「反撃能力」は「敵基地攻撃能力」とも呼ばれる。このため、国産ミサイル「12式地対艦誘導弾」の改良型の開発・量産や、アメリカの巡航ミサイル「トマホーク」の取得など、防衛力の抜本的な強化策を盛り込んでいる。

   先の北朝鮮のニュースと照らし合わせすると、反撃能力はどこまで効果があるのか。固体燃料ロケットの開発でICBMをより容易に移動することができるとなれば、敵基地攻撃は意味を成すのだろうか。分かりやすく言えば、移動したICBMを追尾し、発射前にたたくことはできるのだろうか。

(※写真はことし3月24日に北朝鮮が打ち上げた新型ICBM「火星17型」=同月25日付・労働新聞Web版)

⇒16日(金)夜・金沢の天気    くもり

☆高額献金、ミサイル、防衛増税という負のスパイラル

☆高額献金、ミサイル、防衛増税という負のスパイラル

   『週刊文春』(11月10日号)による、世界平和統一家庭連合(旧「統一教会」)の韓鶴子総裁と教団幹部らが2008年から11年にかけてアメリカ・ラスベガスのカジノを訪れ、日本円に換算して64億円もの金をギャンブルに注ぎ込んで、9億円の損失を出していた疑いとの記事は衝撃的だった。さらに、『文藝春秋』(2023年1月号)の記事は衝撃を超えて怒りがこみ上げてくる。「北朝鮮ミサイル開発を支える旧統一教会マネー4500億円」という見出しの記事だ。

   10ページにわたって詳細に経緯が書かれている。旧統一教会と北朝鮮の接近を観察していたアメリカ国防総省の情報局(DIA)のリポートの一部が機密解除され、そのコピーを入手した韓国在住ジャーナリストの柳錫氏が記事を書いている。以下、記事の要約。旧統一教会の文鮮明教祖は1991年12月に北朝鮮を訪れ、金日成主席とトップ会談をした見返りとして4500億円を寄贈していた。寄贈は現金での手渡しのほかに、旧統一教会がアメリカ・ペンシルベニア州で保有していた不動産の一部を売却し、300万㌦を中国、香港経由で北朝鮮に流れている。

   旧統一教会から北朝鮮に流れた資金はそれだけではない。教会日本本部運営局の2007年の資料では、教会の関連団体を通じて、毎月4000万円から4800万円の資金が北朝鮮に定期的に送金されたと記されている、という。こうした資金が北朝鮮で核やICBMの開発に使われた可能性があると、多くの証言や資料をもとに分析している。

   その一つとして、DIA報告書では、1994年1月にロシアから北朝鮮にミサイル発射装置が付いたままの潜水艦が売却された事例がある。売却を仲介したのが東京・杉並区にあった貿易会社だった。潜水艦を「鉄くず」と偽って申告して取引を成立させていた。韓国の国防部は2016年8月の国会報告で、北朝鮮が打ち上げたSLBM潜水艦発射型弾道ミサイルは北朝鮮に渡った「鉄くず」潜水艦が開発の元になっていたと明かした。この貿易会社の従業員は全員が旧統一教会の合同結婚式に出席した信者だった。   

   旧統一教会は日本で集めた資金を北朝鮮に貢いで、それが北朝鮮からICBMとなって日本に向ってくる。そしていま、日本を騒がせている防衛費増税になっている。「負のスパイラル」とはこのことだ。

⇒14日(水)夜・金沢の天気    くもり

★憶測呼ぶ「娘との手つなぎ」

★憶測呼ぶ「娘との手つなぎ」

   この画像を見ていろいろ憶測をめぐらした。メディア各社は北朝鮮の国営メディアである「朝鮮中央テレビ」や「労働新聞」の映像として、18日に金正恩総書記がICBM「火星17型」の発射を視察する際に同行する娘の写真を掲載したと伝えている。白の防寒ジャケットに身を包んだ娘が金総書記と手をつないで兵器の前を歩く姿が写っている(※写真は19日付・CNNニュースWeb版日本語より)。

   メディア各社は娘の同行は伝えているが、その理由についての解説がない。冒頭の憶測とは、家族を守りの盾に使おうとの意図があるのではないか、ということだ。金総書記は今月17日まで「空白期間」が30日間と、ことしに入って最も長くなっていた(18日付・NHKニュースWeb版)。

   動静報道のブランクには、アメリカの斬首(ピンポイント)作戦を恐れていたのではないだろうか。ことし7月30日、アメリカは同時多発テロ事件「9・11」の首謀者の一人とされていたアイマン・アル・ザワヒリを潜伏先のアフガンのカブール近郊のダウンタウンで、無人攻撃機に搭載した2発のヘルファイアミサイル(空からの対戦車ミサイル)で攻撃し殺害している。「テロ支援国家」や「ならずもの国家」などとアメリカから敵視されている北朝鮮の金氏にとっては気が気ではない。

   さらに、米韓の合同軍事訓練が長く続いた。野外機動訓練(8月)が4年ぶりに再開され、9月と10月には米原子力空母「ロナルド・レーガン」などが参加した海上機動訓練、11月にはステルス戦闘機と称されるアメリカの戦略爆撃機「B1B」が朝鮮半島周辺の上空で空中訓練を実施した。この間での斬首作戦を金氏は恐れていたのではないか。

   が、金氏は気が付いた、家族といっしょにいるならばアメリカの斬首作戦は実行されないのではないか、と。先に述べたアイマン・アル・ザワヒリ、そして、2011年5月1日、パキスタンのイスラマバードから60㌔ほど離れたところに潜伏していたオサマ・ビン・ラディンも一人でいるところを、ステルスヘリコプターなどで奇襲されている。

   そこで、家族を盾にすることを考えた。手をつないで家族といれば、奇襲攻撃を受けることはない。まったく根拠のない憶測にすぎない。ただ、そう思わせるほど娘との手つなぎは唐突なイメージなのだ。

⇒20日(日)夜・金沢の天気    あめ  

★また撃ったか、北朝鮮ICBM

★また撃ったか、北朝鮮ICBM

   北朝鮮がまたICBMを撃った。防衛省公式サイトによると、北朝鮮はきょう18日午前10時14分ごろ、平壌近郊から、1発のICBM級弾道ミサイルを、東方向に向けて発射した。弾道ミサイルは69分ほど飛翔し、午前11時23分ごろ、北海道の渡島大島の西方約200㌔の日本海、EEZ内に落下した。飛翔距離は約1000㌔、また最高高度は約6000㌔と推定される。

   北朝鮮の弾道ミサイルが日本のEEZの内側に落下したのはことし3月24日以来で、今回で11回目となる。弾頭の重さによっては、射程は1万5000㌔を超え、アメリカ全土に届くとみられる。(※写真は3月24日に北朝鮮が打ち上げた新型ICBM「火星17型」=同月25日付・労働新聞Web版、下の図は11月18日付の防衛省公式サイトより)

   NHKニュースWeb版(18日付)は海上自衛隊の元海将のコメントを以下伝えている。「2017年にICBM級の弾道ミサイルを発射した例や最近の例から考えると、今回はICBM級のいわゆる『火星17型』の可能性が十分ある」「従来はアメリカを交渉の場に引っ張り出すためにいわゆる瀬戸際外交をしていたが、今回は交渉のためのミサイル発射ではなく挑発行為だ。最近も米韓の訓練や日米韓の合同のコメントなどに反発するような形でミサイルを撃ってきている。これに対して米韓も挑発を繰り返す形になっていて、第三者の仲裁が入っていないことが一番気になっている。南北朝鮮間の挑発行為が繰り返されると朝鮮半島の有事にもつながりかねない」

   どこまでエスカレートするのか。北朝鮮の金正恩総書記は2021年の1月5-7日に開催した朝鮮労働党大会で、アメリカを「最大の主敵」「戦争モンスター」と呼び、より高度な核技術の追求などを通じて、アメリカの脅威に対する防衛力を絶えず強化する必要があると述べていた(2021年1月9日付・BloombergニュースWeb版日本語)。そして、ことし1月19日に開いた朝鮮労働党の政治局会議で「アメリカ帝国主義との長期的な対決に徹底して準備しなければならない」とする方針を決定し、2018年に中止を表明していたICBMの発射実験や核実験について見直しを表明していた。6月には、IAEA(国際原子力機関)が北朝鮮の豊渓里(プンゲリ)にある核実験場の坑道の1つが再び開いた兆候がみられると指摘していた。

   北朝鮮はICBMの発射実験を繰り返している。それに搭載する小型核弾頭が完成すれば、核・ミサイルによる打撃能力は完成形に近くづく。最高権力者としては、核実験を一刻も早く実施したいのではないか。

⇒18日(金)夜・金沢の天気    はれ

★黄海に向け弾道ミサイルを発射した北朝鮮の意図は

★黄海に向け弾道ミサイルを発射した北朝鮮の意図は

    NHKニュースWeb版(5日付)によると、国連安保理の緊急会合は4日(日本時間5日午前4時すぎ)から始まり、北朝鮮による相次ぐ弾道ミサイルの発射について、各国からは、安保理決議の違反であり、地域の安全を脅かす危険な行為だと北朝鮮を非難する意見が相次いだ。北朝鮮の弾道ミサイル発射をめぐり安保理の緊急会合が開かれるのは10月5日以来。

   このうち、アメリカの国連大使は「意図的に緊張を高める北朝鮮の行動は責任ある国家の行動ではない」と非難した上で「2つの理事国は、北朝鮮のたび重なる決議違反を正当化するために力を注ぎ、北朝鮮を増長させた」と中国とロシアも非難した。

   これに対して中国とロシアの国連大使は、アメリカ軍が韓国軍とともに共同訓練を実施するなど地域の緊張を高めていると改めて主張した。今回も欧米各国と中国やロシアが対立し、安保理として一致した対応はとれなかった。まさに、安保理そのものの信頼性が危険にさらされている。

   安保理の緊急会合が終了したタイミングを見計らってなのか、北朝鮮は弾道ミサイルを発射した。韓国の聯合ニュースWeb版日本語(5日付)によると、韓国軍合同参謀本部の情報として、北朝鮮は同日午前11時32分ごろから同59分ごろにかけて、黄海に向けて短距離弾道ミサイル(SRBM)4発を発射したと報じている。ミサイルの飛行距離は約130㌔で、高度は約20㌔、速度は約マッハ5と推定される。

   発射地点となった北朝鮮の東林は中国・丹東から約20㌔の中朝国境地域。こうした黄海側からの中朝国境近くからこれまで日本海に向けて発射したことはあるものの、黄海に発射するのは極めて異例。韓国軍はその意図を分析している、と伝えている。

   アメリカと韓国が大規模空軍合同訓練「ビジラントストーム(Vigilant Storm)」を5日まで延長して行ったことに対する、北朝鮮の反発とみられる。が、なぜ黄海に向けて4発の弾道ミサイルを発射したのか。中国とすれば、「安保理でオマエのことを配慮してやったのに、なぜ、オレの方に向けて撃つんだ」と言いたいだろう。韓国軍による意図分析を待ちたい。

(※写真・上は国連安全保障理事会の会議室=国連広報センター公式サイトより、写真・下は北朝鮮の短距離弾道ミサイル=防衛省資料「北朝鮮による核・弾道ミサイル開発について」より)

⇒6日(日)午前・金沢の天気    はれ

☆北朝鮮のICBM 統一教会総裁のラスベガスカジノ

☆北朝鮮のICBM 統一教会総裁のラスベガスカジノ

   能登半島の沖合300㌔にある大和堆(やまとたい)はスルメイカの好漁場で、日本のEEZ内にある。領海の基線から200㌋(370㌔)までのEEZでは、水産資源は沿岸国に管理権があると国連海洋法条約で定められている。いまはイカ漁の最盛期で、能登からもイカ釣り船団が大和堆で操業している。が、漁業関係者は安心できない日々が続いている。

   防衛省公式サイトによると、北朝鮮は3日午後9時台に北朝鮮内陸部から弾道ミサイル3発を東の方向に向けて発射した。34分から42分かけて断続的に発射し、最高高度は150㌔程度、飛行距離は約500㌔、落下地点はいずれも朝鮮半島東側の日本海で、日本のEEZの外と推定している。

   同日は午前7時40分にも日本海に向けてICBMを発射。ミサイルは2段目の分離まで行われたが、その後は不正常に飛行し、日本海で消失した。日本政府は午前7時50分ごろから8時ごろにかけてJアラート(全国瞬時警報システム)を宮城県、山形県、新潟県に発した後、その後訂正するという騒ぎになった。ICBMのほか2発の弾道ミサイルも発射していた。さらにその前日の2日は、23発の弾道ミサイルを日本海や黄海に向け発射している。

   昼夜を問わず、連日のように弾道ミサイルをぶっ放す北朝鮮。この国のガバナンスは一体どうなっているのか、そしてこの国の行く末は。冒頭の大和堆周辺で操業しているイカ釣り船団の関係者にとっても不安が募る。

   話は変わる。週刊文春(11月10日号)によると、世界平和統一家庭連合(旧「統一教会」)の韓鶴子総裁と教団幹部らが2008年から11年にかけてアメリカ・ラスベガスのカジノを訪れ、日本円に換算して64億円もの金をギャンブルに注ぎ込んで、9億円の損失を出していた疑いがあることが分かった。旧統一教会をめぐっては、霊感商法や過度な献金などが問題となっている。そんな中、教団のトップである韓総裁がギャンブルに興じていた疑いが浮上してきた。

   そのギャンブルの原資は、日本の信者による献金や霊感商法によって収奪された財産であることは容易に想像がつく。現在、日本で進められている宗教法人法に基づく旧統一教会への「質問権」の行使は、刑法や民法の不法行為だけでなく、日本で集めた巨額な金の不透明な流れも解明してほしいものだ。

⇒4日(金)夜・金沢の天気    はれ

★エスカレートする北朝鮮の軍事挑発 次は核実験なのか

★エスカレートする北朝鮮の軍事挑発 次は核実験なのか

   日本海側に住む者として、このところの北朝鮮の動きに目が離せない。聯合ニュースWeb版日本語(3日付)が韓国軍合同参謀本部からの情報として伝えたニュースによると、北朝鮮はきょう午前7時40分ごろ、平壌・順安付近から日本海に向けてICBMを発射した。最高高度は約1920㌔、飛行距離は760㌔、最高速度はマッハ15だった。ミサイルは2段目の分離まで行われたが、その後は不正常に飛行し、日本海の海上に墜落した。このICBMは新型大陸間弾道ミサイル「火星17型」とみられる。

   ことし3月24日、北朝鮮はICBM「火星17型」を発射させ、「実験は成功した」と公表している。このときは、最高高度は6248㌔に達し、1090㌔の距離を67分32秒飛行した。角度を変えて発射すれば1万5000㌔を超える射程距離となり、アメリカの東海岸を含む全土が射程内に入る(当時の岸防衛大臣の会見)。おそらく、今回はアメリカをけん制する狙いで角度を変えて発射したものの失敗に終わった可能性がある。ただ、北朝鮮による挑発のレベルは高まっている。

   防衛省によると、今回、北朝鮮から発射されたICBMが日本列島を越えて飛翔する可能性があると探知し、政府は午前7時50分ごろから8時ごろにかけてJアラート(全国瞬時警報システム)を宮城県、山形県、新潟県に発した。しかし、ICBMは日本海で消失したため、その後訂正した(防衛省公式サイト「防衛大臣臨時記者会見」)。

   きのうは23発の弾道ミサイルを、そして、きょうはICBMのほか2発の弾道ミサイルを発射した。北朝鮮がここまで執拗に弾道ミサイルの発射を繰り返す口実は、アメリカと韓国が先月31日から今月4日までの予定で行っている、ステルス戦闘機などおよそ240機を投入した大規模な合同訓練に対するけん制だ。

   韓国空軍はこうした北朝鮮からの軍事挑発を受け、きょう3日、実施中の米韓合同訓練の期間を延長することを決めたと発表した(3日付・共同通信Web版)。韓国とすれば、アメリカとの同盟態勢を強調することで北朝鮮に対して圧力をかけたいのだろう。すると、北朝鮮も次なる脅威を誇示するのではないか。7回目の核実験を含むさらなる軍事挑発だ。

(※写真は北朝鮮のICBM「火星17型」の発射実験=3月25日付・労働新聞Web版)

⇒3日(木)夜・金沢の天気   はれ

☆北朝鮮ミサイル23発 米韓は大規模訓練のキナ臭さ

☆北朝鮮ミサイル23発 米韓は大規模訓練のキナ臭さ

   朝鮮半島にキナ臭さが漂っている。NHKニュースWeb版(2日付)は、韓国軍の合同参謀本部の情報として、北朝鮮は2日午前6時台から9時台にかけて、東部や北西部など複数の場所から日本海や朝鮮半島西側の黄海に向けて、短距離弾道ミサイルなど17発以上のミサイルを発射した、と伝えている。

   このうち、午前8時台に発射した短距離弾道ミサイルの1発が国連軍が設定した海上の境界線であるNLL(北方限界線)を越えて、韓国東部の鬱陵島の北西167㌔の公海上に落下した。同島では空襲警報が発令された。さらに、午後4時30分から午後5時10分ごろにかけて、北朝鮮は地対空ミサイル6発を日本海と黄海に向けて発射したと発表。きょうこれまでに23発のミサイルをした。

   アメリカ軍と韓国軍は先月31日から今月4日までの予定で、最新鋭のステルス戦闘機などおよそ240機を投入した空軍による大規模な共同訓練「ビジラントストーム(Vigilant Storm)」を行っている。北朝鮮のミサイルの乱発はこれに対するけん制だ。

   ロイター通信Web版日本語(2日付)によると、北朝鮮で軍事担当の労働党書記は1日付の声明で「米韓が何の恐れもなく北朝鮮に対して武力を行使しようとするならば、北朝鮮軍の特殊部隊が遅滞なく戦略的任務を遂行し、米韓は悲惨な出来事に直面し、歴史上最もおぞましい代価を支払わなければならないだろう」と共同訓練を中止するよう要求している。

   韓国中央日報Web版日本語(1日付)によると、米韓空軍による大規模訓練は2017年12月以来となる。韓国空軍基地に初めて入るアメリカ海兵隊のステルス戦闘機「F-35B」の編隊は31日、山口県岩国基地から出撃した。また、今回の訓練にはオーストラリア空軍のKC-30A空中給油機も加わっていて、3ヵ国による訓練は今回が初めて。 アメリカ太平洋空軍の関係者は「歴代最大規模」と明らかにした。   

   防衛省も日本海に落下した弾道ミサイルについて公表している。防衛省公式サイト「北朝鮮のミサイル等関連情報」(2日付)によると、北朝鮮は午前9時50分ごろ、少なくとも2発の弾道ミサイルを、東および南東方向に向けて発射。一発目は最高高度が約150㌔でおよそ150㌔飛翔した。2発目は最高高度が約100㌔で、およそ200㌔飛翔。落下はいずれも朝鮮半島東岸付近で、日本のEEZ外だった。さらに、午後4時台に、北朝鮮東岸付近から、少なくとも1発の弾道ミサイルの可能性があるものを東方向に向けて発射した。最高高度は約50㌔以下の極めて低い高度で短距離を飛翔し、日本のEEZ外に落下した。

(※写真は、北朝鮮が「極超音速ミサイル」と称する新型弾道ミサイル=防衛省公式サイト資料「2019年以降に北朝鮮が発射した弾道ミサイル等」より)

⇒2日(水)夜・金沢の天気    はれ

★沈黙破り「弾道ミサイル」「核戦力」を強調する背景は

★沈黙破り「弾道ミサイル」「核戦力」を強調する背景は

   北朝鮮の労働新聞Web版(11日付)は、9月25日からの今月9日まで7回におよんだ弾道ミサイルの発射について、「경애하는 김정은동지께서 조선인민군 전술핵운용부대들의 군사훈련을 지도하시였다 」(意訳:金総書記は人民軍の戦術核作戦部隊の軍事訓練を指揮した)の見出しで記事と写真で紹介している。記事を読むと、この日はどこを狙ったなどと具体的に記していて実に生々しい。

   記事によると、9月25日に発射した弾道ミサイルは、貯水池に設けられた水中発射施設からの発射だった=写真・上=。水中発射ということは、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)なのだろう。記事では、「設定された高度で正確な弾頭爆発の信頼性が検証された」としている。同28日の弾道ミサイル発射は韓国の飛行場への攻撃訓練で、戦術核弾頭を想定したと記載している。具体的な核攻撃目標が飛行場であり、リアルさを感じる。

   今月4日に日本列島を通過する中距離弾道ミサイルが発射され、太平洋に落下した。写真では、金総書記がパソコンのモニターを見ながら、想定飛行を確認する様子が映っている=写真・下=。記事では、「地上中長距離弾道ミサイル」の発射は朝鮮労働党中央軍事委員会の決定によるもので、「敵に対してより強力で明確な警告を発した」と記載している。この中距離弾道ミサイルの飛翔距離は4600㌔と推定され、距離としてはこれまでの弾道ミサイルで最長だった。この射程内には、アメリカ軍のアジア太平洋地域の戦略拠点であるグアムがすっぽりと入る。核弾頭が搭載して高いステルス性能を持つB2戦略爆撃機などが展開するアンダーセン基地がある。

   記事の最後は、「敬虔な同志金正恩は、核戦力が我が国の尊厳、自己主権、射撃権の重大な義務を認識し、最強の核対応態勢を維持し、より後方を強化することへの自信を表明した」(意訳)と結んでいる。5月4日以降、弾道ミサイル発射について、国営メディアは関連記事を掲載していなかった。今回、「沈黙」を破って掲載した狙いはどこにあるのか。「核戦力」を強調するためか。7回目となるであろう核実験への連鎖はあるのか。

⇒11日(火)午前・金沢の天気   くもり時々あめ

★SLBMを繰り返す北朝鮮の執念「瀬戸際戦略」

★SLBMを繰り返す北朝鮮の執念「瀬戸際戦略」

   今度は海からの弾道ミサイルの発射だ。防衛省公式サイト(9日付)によると、北朝鮮はきょう未明、午前1時47分と同53分の2回、半島東岸付近から東方向に向けてそれぞれ1発の弾道ミサイルを発射した。2発とも最高高度は100㌔程度で、約350㌔飛翔したものと推測される。ことし5月7日にも半島東岸付近から、1発のSLBM=潜水艦発射弾道ミサイルを発射している。今回も、海岸付近という発射場所などから、SLBMの可能性が高い。弾道ミサイル発射は9月25日以降7回目(計12発)だが、未明の発射は初めて。

   去年10月19日にも半島東部の潜水艦の拠点となっている新浦(シンポ)付近から、SLBMを東方向に発射させている。このときの労働新聞(同20日付)は「조선민주주의인민공화국 국방과학원 신형잠수함발사탄도탄 시험발사 진행」(国防科学研究所が新型潜水艦発射弾道ミサイルを試験打ち上げ)の見出し=写真=で、2016年7月9日にSLBM「北極星」を初めて発射した潜水艦から再び新型SLBMの発射に成功し、国防技術の高度化や水中での作戦能力の向上に寄与したと記事を掲載している。

    防衛省資料「北朝鮮による核・弾道ミサイル開発について」(令和4年度版)によると、北朝鮮は弾道ミサイルを発射可能な潜水艦を1隻保有し、その潜水艦にはSLBM1発が搭載可能。さらに、北朝鮮はより大きな潜水艦の開発を追求しているとの指摘もある。例えば、北朝鮮メディアは金総書記が「新たに建造された潜水艦」を視察したと発表(2019年7月)している。これは、通常の攻撃用潜水艦(24隻)を改造して、SLBMを3発搭載可能にするという指摘もある。SLBM搭載の潜水艦の開発は、弾道ミサイルによる打撃能力の多様化のほか、敵からの攻撃に対して残存性が高いため報復攻撃を狙っているとされる。

          「残存性」を別の言葉で解釈すれば、敵に対してはSLBMでしつこく攻撃する、復讐を繰り返す、そんな意味だろう。北朝鮮の「瀬戸際戦略」の執念がここに見えるようだ。

⇒9日(日)午後・金沢の天気   あめ