#北國銀行

★能登半島の尖端 デジタル通貨の最先端

★能登半島の尖端 デジタル通貨の最先端

   能登半島の尖端にある珠洲市は「すずし」と呼ぶ。万葉の歌人として知られる大伴家持がこの地を訪れ、「珠洲の海に 朝開きして 漕ぎ来れば 長浜の浦に 月照りにけり」。748年、越中国司だった家持は能登を巡行し、最後の訪問地だった半島先端の珠洲から朝から船に乗って越中国府に到着したときは夜だったという歌だ。当時は大陸の渤海(698-926年)からの使節団が能登をルートに奈良朝廷を訪れており、能登では日本海の荒波を乗り切る造船技術が発達していたとされる。家持が乗った船も時代の最先端の船ではなかったのかとイメージさせる。

   珠洲市はいまでも時代の先端を試みるユニークな地域で知られる。メディアの報道によると、同市で独自のデジタル地域通貨サービス「珠洲トチツーカ」を流通させるプロジェクトをスタートさせると、きのう27日の記者会見で発表した=写真=。北国ファイナンシャルホールディングス(FHD)傘下の北国銀行(金沢市)が法定通貨と価値が連動する、1コインが1円のデジタル通貨「ステーブルコイン」を発行する。また、珠洲市が独自に発行し市内の加盟店で使えるポイント制度も統合するなど、ことし夏ごろにサービスの大枠を整える。

   珠洲トチツーカでは、利用者IDがマイナンバーと結びつくことで、行政からの各種給付金の支払いのほか、地方税の納付や公共料金、病院、学校関係費用の納付などにも使えるよう整備する。デジタル通貨を発行するのはことし12月の見通しで、預金口座からのチャージや出金も可能になる。同市は行政サービスのDX化を進めていて、デジタル通貨はその切り札の一つ。金融機関には地域の興能信用金庫も加わり、自治体と金融機関によるデジタル通貨の発行は全国初めてという。

   金融機関と行政がタイップできた背景には、同市のマイナンバーカードの普及率が全国でもトップクラスの79.5%(ことし3月末時点、全国平均は67.0%)であることや、もともと同市には金融機関の支店やATMが少ないことなどから、キャッシュレス決済の利用率が高かったことなどがある。

   同市のデジタルへの前向きな取り組みはデジタル通貨だけでなく、2010年7月には珠洲市が総務省が募集した地デジへのリハーサル候補地に手を挙げ、先行モデル地区に採択され、全国でもいち早く地デジ化に踏み切った。金沢大学のEV研究グループによる公道での走行実験を受けれたのも同市が初めてだった。また、3年に一度のトリエンナーレで開催する奥能登国際芸術祭も2017年にスタートさせている。斬新な取り組みに向き合うのは市長、泉谷満寿裕氏の個性であり、ポリシーなのかもしれない。5期目で全国初のデジタル通貨を采配する首長である。

⇒28日(金)午前・金沢の天気    はれ   

★再生、DX、イノベーション・・時代を映す広告

★再生、DX、イノベーション・・時代を映す広告

   年末年始の新聞広告は例年のごとく派手さが目立った。中でも際立ったのがネット動画配信サービス「NETFLIX」の全国紙の広告(31日付)だった。何しろ両面見開きで、暗闇から朝焼けが始まるというアングルの写真だ。左側に小さく、「再生のはじまり」の見出しで、メッセージが始まる。「東の国も西の国も北の国も南の国もまるで世界のすべてが止まってしまうようだった。だけど人の想像力は、どんな時にも止まらなかった。世界には新しい物語が生まれ続けている。見たことのない世界が広がり続けている。あなたがボタンを押せば、世界はもう一度はじまる。何度でもはじまる。」

   NETFLIXの社名は右下に小さく記されていた。新型コロナウイルスの感染拡大で世界の人々は「巣ごもり」生活を余儀なくされ、NetflixやHulu、Amazon プライム・ビデオといったネット動画配信サービスは高収益を確保したに違いない。前年は全面広告を使って「正月はNetflixざんまい!」とPRしていたのに比べれば、「再生のはじまり」は動画再生とコロナ禍からの再生の2つの意味を絡めた、とても練られた広告ではないだろうか。

   入試願書の受付開始日と合わせた近畿大学の全国紙広告(3日付)は相撲部の学生の練習の図柄で、「近大DX え、近大まだデカなるん?」と少々自虐的な見出し。文章を読むと、「デジタルを駆使することで、学生や世の中に新しい教育モデルや価値観を提供する、それが近大のめざすDX。中でも、急ピッチで進めているのが、好きな所で好きなだけ24時間学び放題になる、授業のオンデマンド化。」などとうたっている。最後に「コロナな時代に日本一のDX大学をめざして、2021年も近大はデラックスに進化し続けます! あっ・・・ちなみに相撲と本文の内容は全く関係ございません!!」とオチもつけている。実に関西っぽいアドバタイジング。

   地元紙の広告(1日付)で目を引いたのか「コミュニケーション×コラボレーション×イノベーション 地域に、元気と笑顔を届けたい。」という北國銀行の全面広告。同行の頭取が昨年6月に14年ぶりに交代し、これまでの同行にはなかったオープンさ、そしてサービスにIT技術を導入する手法が地域でも評判になっている。確かに、同行の公式ホームページをチェックすると、「本店(金沢市)に勤務する役員1名が新型コロナウイルスに感染していることが判明いたしました」と発表している。これまでだったら、このような情報は公開しなかっただろう。

   地銀がこれから本気で地域と向き合い、「コミュニケーション×コラボレーション×イノベーション」に取り組むのであれば、開かれた気持ち(オープンマインド)と情報公開が必要だ。地域経済の改革の担い手としての地銀に期待したい。

⇒4日(月)朝・金沢の天気   くもり