#冬将軍

★冬将軍が来た さっそく「エンヤコラ」と雪すかし

★冬将軍が来た さっそく「エンヤコラ」と雪すかし

   気象庁の予報通り、金沢は大雪となった。きょう夕方までに自宅周辺では30㌢ほど積もった。そして、朝からさっそく「雪すかし」を行った。「雪かき」という言葉を使う人もいるが、いわゆる除雪のこと。雪の晴れ間をぬって作業を行った。

   町内会でお達しがあったわけではないが、不思議と道路沿いの家々の人たちが一斉に出てきて、雪すかしの作業を行っている。平日の朝、通学路でもあるので児童生徒たちが多く通る。子どもたちから「ごくろうさまです」と声をかけられ、「滑らないように気をつけて」と応える。また、通学路は午前9時まで車が通れないので除雪作業にはタイムリーな時間帯でもある。そして、「よく降りましたね」は、ご近所のみなさんと交わす朝のあいさつとなる。(※写真は、22日午前6時57分に自宅2階から撮影した近所の雪景色)

   金沢の雪すかしにはちょっとした「暗黙のルール」のようなものがある。雪をすかす範囲はその家の道路に面した間口部分となる。角の家の場合は横小路があるが、そこは手をつけなくてもよい。家の正面の間口部分の道路を除雪する。しかも、車道の部分はしなくてよい。登校の児童生徒たちが歩く歩道の部分でよい。すかした雪を家の前の側溝に落とし込み、積み上げていく。冬場の側溝は雪捨て場となる。

   暗黙のルールに従わなかったからと言って、罰則や制裁があるわけではない。雪は溶けて消えるものだ。しかし、町内の細い市道でどこかの家が積雪を放置すれば、交通の往来に支障をきたし雪害となる。もちろん、道路の雪害は住民の責任ではなく、行政にある。一方で道路を使うのは住民なので、公共の意識で出来る範囲で除雪を行う。そんなルールだ。町内の雪すかしは、雪国の住民の「自助・共助」の光景でもある。

   金沢の雪はじっとりと湿っていて重い。その雪を側溝や空きスペースに放り投げる。「エンヤコラ」と『ヨイトマケの唄』を心で歌いながら作業を40分ほど続けた。

⇒22日(金)夜・金沢の天気    くもり時々ゆき

★寒波襲来に雪国は耐える 「冬来たりなば春遠からじ」

★寒波襲来に雪国は耐える 「冬来たりなば春遠からじ」

   「10年に一度のレベルと言われている強烈な寒波が襲来し、きょう日本海側では大雪による災害に警戒が必要です」とテレビのニュースや情報番組では何度も繰り返されている。少々聞き飽きた感がある。雪国に住んでいると、これが当たり前だからだ。寒波は2波、3波とやってくる。強烈な寒波は昔から「冬将軍」と称して、メディアに言われなくても身構える。

   メディアがしつこく報道するのは、日本海側の大雪もさることながら、太平洋側にも雪雲が流れ首都圏などでの積雪が予想されるからだろう。日ごろ雪が降らない都市では少しの雪でも、生活を直撃する。スノータイヤを履いていない車はスリップ事故が起きる。電気や水道などの生活インフラにダメージが起きる。さらに、配送など物流が滞る。

   今回の寒波で身の回りのことを言えば、あす25日に出席予定だった金沢での会議が延期になった。きょう午後4時ごろ、風雪の中で車を運転すると、マイナス3度となっていた。そのせいで、フロントガラスやバックミラーになどに雪がこびりついて運転に危なさを感じたので=写真=、ほどなくして自宅に引き返した。

   北陸ではこうした強烈な寒波に備えて、乗用車をスノ-タイヤに履き替え、庭木には雪吊りを施してリスクに備えている。ただ、雪国で慣れているとはいえ、屋根雪下ろしは滑って落ちることもあり緊張する。屋根に1㍍余りも雪が積もると、天上からミシッ、ミシッと音がすることもあり、これも緊張する。

   夕方のテレビニュースによると、ヤマト運輸が猛烈な吹雪により高速道路の通行止めなどが見込まれることから、石川県など北陸3県と新潟県で荷物の配送や集荷を停止した。また、石川県内のほとんどの自治体で、あす25日は小中学校の臨時休校を決め、多くの県立高校も臨時休校を予定している。

   金沢地方気象台は雪のピークについて24日夜から25日朝にかけてと予想している。寒波襲来、冬本番だ。「冬来たりなば春遠からじ」(イギリスの詩人シェリー)の言葉を思い起こしながら、雪国に人々はこの季節を耐える。

⇒24日(火)夜・金沢の天気    ふぶき

★ラニーニャの冬来る

★ラニーニャの冬来る

   このような雪の積もり具合を北陸では「うっすら積もった」と言う。金沢の自宅周辺の積雪は数㌢ほど。屋根や樹木は少し雪を被った程度で、路面は積雪にはいたっていない=写真、午前10時20分ごろ撮影=。うっすら積もる雪のことを淡雪(あわゆき)と表現したりもするが、これは季節的に冬が終わり、春先にうすく積もる雪のことを指すので、「春の淡雪」と言う。冬の始まりの時節では使わない。これは雪国に実際住まないと理解できない感覚かもしれない。

   ニュースによると、石川県内の午前中の積雪は、白山市河内で8㌢、加賀市菅谷で6㌢、金沢市で2㌢、輪島市と珠洲市でそれぞれ1㌢となっている。白山麓の山の福井県との県境付近にある白山市の谷峠で57㌢の積雪を観測している(18日・NHKニュース)。山手に積雪が多い場合は山雪(やまゆき)、平地の方が山手より多く積もる場合を里雪(さとゆき)と言ったりする。

   それにしても寒い。気象庁ホームページによると、きょうの金沢の最高気温は4度の予想だ。今シーズン一番の寒気が流れ込んでいる上、冬型の気圧配置が強まっている。そして、きょうはおさまっているが、きのう午後から雷がよく鳴っていた。北陸では「雪出しの雷」と言う。ちなみに、気象庁の雷日数(雷を観測した日の合計)の平年値(1991-2020年)によると、全国で年間の雷日数がもっとも多いは金沢の45.1日だ。

   冒頭で述べたように、きょうの初積雪が「うっすら」だったからこの先も安堵できるかと言えばそうではない。気象庁は先月10日に太平洋の南米ペルー沖の監視水域で海面水温が低い状態が続き、世界的な異常気象の原因となるラニーニャ現象が発生したとみられると監視速報を発表している(11月10日付・時事通信Web版)。ラニーニャの年には豪雪がやってくる。直近で言えば、去年の冬は北陸では24時間で1㍍以上の降雪となり、観測史上1位の記録を更新した。2017年から2018年かけては福井県で豪雪となり、北陸自動車道で1500台の車が立ち往生。さらにさかのぼれば、あの1981年の「五六豪雪」も1963年の「三八豪雪」もラニーニャだったと言われている。

    ラニーニャが本格化するこれからの白い世界に身震いする。「ラニーニャ」冬将軍、いよいよ来たる。来るなら来い。こちらも戦闘態勢だ。

⇒18日(土)午前・金沢の天気    くもり

★静かなる年末年始(8)「冬将軍と向き合う」

★静かなる年末年始(8)「冬将軍と向き合う」

   大晦日の雪景色が広がる。自宅周囲では正午過ぎに15㌢の積雪があり、きょう午後から元旦にかけてさらに「数年の一度の大雪」になるとの予報。大雪をともなった寒さが厳しい冬、まさに「冬将軍」の到来だ。

   北陸の人々は、長期予報で「ことしは暖冬」と伝えられていても、冬将軍の訪れに備えて自家用車のタイヤをスタッドレスに交換し、自宅では庭の雪吊りの備えを怠らない。たとえ期間は短くとも、冬将軍は必ずやってくるからだ。

   逆に、冬将軍が来ないと雪すかし(除雪)をしなくて楽なのだが、別の不安感もよぎる。暖冬だったある年に久しぶりに雪が降った。そのときのご近所さんとの会話だ。「ようやく降りましたね」と声がけすると、「もうちょっと降ってもらわんと心配やね」だった。北陸人にとっては降るべき時に降ってもらわないとこれからのシーズンで異常気象が起きるのではないかと不安が募るのだ。

  この季節感覚はなんだろう。北陸は四季がはっきりとしているからだと考える。日常の暮らしに季節の風景の変化があり、雪や雨の多少や温度や湿度の高低差がある。視野と肌感覚が実に敏感になっているのだろう。

  北陸人は粘り強いとか、めげないなどと評価されることがままある。「冬来たりなば春遠からじ」(イギリスの詩人シェリー『西風に寄せる歌』より)は北陸ではこの時節によく使われる言葉だ。辛いことがあっても辛抱しよう、そのうち良いことがあると心に言い聞かせながら耐え忍ぶ。季節感覚がそのような精神風土を育んでいるのかもしれない。

          ところで、民放テレビで気象ニュースを視聴していると、キー局の気象予報士が「吹雪で見通しが悪くなりますので、不要不急の外出は控えてください」といったコメントを繰り返している。新型コロナウイルスの感染を意識したようなコメントに聞こえ、違和感が残る。吹雪であっても小学生は学校に通っている。雪国で暮らす者にとっては余計なお世話と言いたくなる。言うのであれば、「スノータイヤに履き替えていない車での外出は控えてください」だろう。コメントに現場感を持たせてほしいものだ。雪国の人々は冬将軍と向き合って暮らしているのだ。

⇒31日(木)午後・金沢の天気    ゆき