#円安・ドル高

★台風一過 隣国の不安材料に漂うキナ臭さ

★台風一過 隣国の不安材料に漂うキナ臭さ

   台風7号が日本海を北上している。メディアの報道によると、中国地方や近畿、東海の各地で記録的な大雨となり被害が出たようだ。金沢では、昨夜に最大瞬間風速22㍍を観測したものの、きょうは時折強い風が吹いて断続的に雨となった。能登ではけさ強風にあおられて女性が転倒してケガを負ったとのニュースが流れていた。そして、台風一過、世界ではキナ臭さが漂う。

   読売新聞Web版(今月12日付)によると、アメリカのホワイトハウスは11日、バイデン大統領がユタ州で行った演説(10日)で、回復が鈍い中国経済について「中国は時限爆弾だ。問題を抱えている」と述べたことを明らかにした。バイデン氏は演説で、中国の成長率の鈍化や高い失業率、高齢化の進行などに言及。「悪い人々が問題を抱えると、悪いことをする。良くないことだ」と語った。

   一方、「中国とけんかをしたいわけではない。合理的な関係を求めている」とも述べ、対話を通じて競争関係を「管理」していく考えを強調した。アメリカは9日、中国を安全保障上の「懸念国」に指定し、先端半導体やAIなどを手がける中国企業への投資を規制する大統領令を公表している(同)。この時限爆弾発言で米中の緊張がさらに高まるのではないか、キナ臭さが漂う。

   きょうの日経平均株価の終値は前日(15日)より472円安い3万1766円と大幅に反落した。共同通信Web版(16日付)によると、格付け会社フィッチ・レーティングスのアナリストがは15日のアメリカのCNBC番組で、金利高が長引き、銀行の資金調達コストが上がることで収益が悪化するなど銀行業界の経営環境評価が引き下げられた場合、JPモルガン・チェースを含めて70を超える銀行の格付けを引き下げる可能性があると明らかにした。このフィッチのアナリスの発言と中国の急速な経済減速など、海外発の不安材料に押されて日本の株価も売り圧力が強くなったと、メディア各社は分析している。

   そして、円安・ドル高が進んでいる。きょうはニューヨーク外国為替市場で円相場が下落し、一時1㌦=145円台をつけた。去年9月22日、政府・日銀はおよそ24年ぶりとなる為替介入を実施した。介入直前に円相場は145円90銭をつけていた。政府・日銀は再び円買い介入に動くのか。

⇒16日(水)夜・金沢の天気    くもり時々はれ

☆利上げせず、さらなる円安、その先の危機シナリオ

☆利上げせず、さらなる円安、その先の危機シナリオ

   日米の金利差が拡大し、円よりもドル建てで運用する方が有利になり、ドルが買われて円安になる。当たり前のことだ。世界が見つめる日本はさらに厳しい。日本は賃金上げができないほど経済が弱体化している。なので利上げができず、円安が続く。世界で日本だけが成長から取り残されている、という世界の論調だ。「2000年時点では日本の平均賃金は米国より高かったのに、今では日本の平均賃金は米国の半分だ。国益とは何を指していたのだろうか」(4月22日付・ロイター通信Web版日本語)。

   メディア各社によると、政府・日銀は急激な円安を止めるためきょう22日未明にかけて、円買い・ドル売りの為替介入を実施した。これにより、円相場は1㌦=152円から146円まで円高に振れた。円安による為替介入は9月22日以来で2度目。ただ、今回は介入の事実を公表しない、「覆面介入」だった。

   ということは、投機筋に対して円相場の動きを読みにくくさせる、忍法「目くらまし」術のようなものだ。政府・日銀がこのような奇襲作戦を今後も続ける、円安で損をするのは投機筋だと宣言したようなものだ。

   では、なぜ日銀は利上げをしないのか。黒田総裁は参院予算員会(今月19日)で「金融緩和を継続することで経済をしっかりと支え、賃金上昇を伴うカタチで物価安定目標の持続的・安定的な実現を目指すことが適当」と答弁している。利上げによる経済への悪影響で巷(ちまた)でよく言われているのが、住宅ローン破綻の急増だ。変動金利で住宅ローンを組んだ購入者にとってローン金利が上がると打撃だ。ましてや、賃金上げがない中では現実的な話だ。

   もう一つ、日銀が利上げをしない理由。メディアでもよく報じられているのが、「利上げをすると国債暴落が起き、日銀のバランスシートが債務超過になるので、日銀は利上げができない」という論調だ。確かに、利上げをすると債券価格は下落するとは定説になっている。日銀は長期国債537兆円、国庫短期証券9兆円の合計546兆円の「国債」を資産として保有している(10月10付・日銀「営業毎旬報告」)。この数字をみれば、利上げで国債価格が下落すると日銀のバランスシートが崩れ、債務超過に陥るのではないかと考えてしまう。

   では、国債価格の下落に含み損が生じたとして、そのことによって日銀の業務に支障が出たり、金融市場が混乱するだろうか。民間の金融機関だったら、いわゆる預金者による「取り付け騒ぎ」が起きて混乱するだろう。中央銀行ではそれはない。雑ぱくな言い方だが、含み損が生じたとしても、いわゆる現金というのは日銀券のことであり、日銀にとっては痛くもかゆくもないだろう。   

   ただ、日銀が真に恐れているのは、いわゆる「キャピタルフライト(資本逃避)」かもしれない。覆面介入が奏功せずに投機筋による円安が続き、1㌦=200円ということになれば、国民はむしろ危機感を募らせる。2000兆円ともいわれる個人金融資産が安全資産への買い替えとしてドル買いに動き始めると、どうなるのか。おそらく政府は外貨購入に制限を設けるだろう。この時点で、政治も経済も信頼を失って、キャピタルフライトがさらに加速する。通貨危機のパターンでもある。

⇒22日(土)夜・金沢の天気     くもり