#人権侵害

☆人権侵害や国土防衛にどう手立て あす憲法記念日

☆人権侵害や国土防衛にどう手立て あす憲法記念日

   あす3日の憲法記念日を前に共同通信が行った憲法に関する世論調査(郵送方式)の結果が各紙で報じられている。目を引いた項目は「問5:憲法に関し、あなたが国会で議論してほしいテーマは何ですか。優先度の高いものを三つまでお答えください」。答えのトップは「九条と自衛隊」38%で、「社会保障などの生存権」32%、「教育」25%、「大災害時などの緊急事態」24%、「デジタル社会での人権」22%などと続いている。

   「九条と自衛隊」がトップなのは、隣国のロシアによるウクライナ侵攻が北方領土から北海道へと連鎖反応するのではないか、北朝鮮は弾道ミサイルを日本領土に撃ち込んでくるのではないか、中国は尖閣諸島に軍事侵攻するのではないか、といった懸念を抱く有権者がこのところ増えているからではないだろうか。日本は、国際紛争を解決する手段として戦争や武力の行使に訴えることは、憲法によって認められていない。

   この対応策の一つとして、政府は2022年12月の閣議で「国家安全保障戦略」など新たな防衛3文書を決定し、敵の弾道ミサイル攻撃に対処するため、発射基地などをたたく「反撃能力」(敵基地攻撃能力)の保有を明記した。ところが、北朝鮮は固体燃料ロケットの開発でICBMを素早く実践配備できるよう動いている。追尾して発射前に叩くことはできるのだろうか。

   そして最近とくに高まっている懸念という意味では「デジタル社会での人権」もそうだ。他人への誹謗中傷や侮辱、プライバシーの侵害、SNSいじめ、ヘイトスピーチなど。フジテレビのリアリティ番組『テラスハウス』に出演していた女子プロレスラーがSNSの誹謗中傷を苦に自死した事件(2020年5月)はその典型的な事案だろう。この事件がきっかけで、公然と人を侮辱した行為に適用される侮辱罪に、「1年以下の懲役・禁錮」と「30万円以下の罰金」を加えられて厳罰化した。しかし、刑法の厳罰化によって、SNSの誹謗中傷は治まったと言えるだろうか。

   デジタル社会の人権問題はさらに複雑だ。たとえば、児童ポルノはその画像がいったんネット上で出回ると、画像のコピーが転々と拡散して回収が極めて困難となる。被害者は将来にわたって苦しむことになる。重大な人権侵害だ。

   衆参の国会議員には法の見直しによる対応や与野党の足の引っ張り合いではなく、憲法そのものをテーマに本筋の議論を深めてもらいたい。

⇒2日(火)午後・金沢の天気    はれ   

☆リアリティ番組、いよいよ「BPO沙汰」に

☆リアリティ番組、いよいよ「BPO沙汰」に

   台本のない共同生活を描いたリアリティ番は実話、損害賠償金つきの誓約書兼同意書によって、出演者たちが制作者側の意図に沿って演じていた番組だった、のか。フジテレビの番組『テラスハウス』に出演していた女子プロレスラーが自死した問題で、遺族がBPO(放送倫理・番組向上機構)の放送人権委員会に人権侵害を申し立てる書類を提出した(7月15日付・共同通信Web版)。

   番組の中で、同居人の男性が女子プロレスラーが大切にしていたコスチュームを勝手に洗って乾燥機に入れたとして怒鳴り、男性の帽子をはたく場面が流れ、視聴者から誹謗中傷のSNSなどが集中し、本人が追い込まれた。母親によると、このシーンについて、スタッフの指示があったと本人がかつて話していて、「暴力的な女性のように演出・編集され、過呼吸になっても撮影を止めてくれなかった。人格や人権が侵害された」と訴えている(同)。

   BPOがこの問題を審議することになれば、リアリティ番組の中で、女子プロレスラーが凶暴な悪役を演じさせられたのか、それが誰の指示によるものだったのか、損害賠償金つきの誓約書兼同意書の意図はどこにあったのか議論になるだろう。台本のないリアリティさを売りにしていた番組だったので、映像に描き出される彼女の言動そのものが、人格・個性と視聴者に受け止められた。これが、娯楽バラエティー番組であれば役者による演技と受け止められ、視聴者からのSNSによる誹謗中傷もそれほどではなかったのではないか。リアリティ番組で過剰な演技が要求されていたとすれば、まさに「人権侵害」といえるだろう。

   フジテレビの社長は7月3日の記者会見で、「現在、検証作業中であり、事実関係の精査などを行っている」と前置きし、「一部報道にスタッフが“ビンタ”を指示したと書かれているが、そのような事実は出てきていない。一方で、『テラスハウス』という番組は性質上、出演者とスタッフが多くの時間を過ごしており、多くの会話をしている中で、撮影では、出演者へのお願い・提案などはある。 」と述べている(フジテレビ公式ホームページ)

   この問題は「BPO沙汰」にすべきだと考えている。5月にこの問題が発覚し、女子プロレスラーの自死はSNSでの誹謗中傷が招いたと社会問題となった。自民党はインターネット上での誹謗中傷対策を検討するプロジェクトチームを立ち上げ、匿名による中傷を抑制する法規制などを検討を始めている。ところが、この問題の根本はテレビ局側が出演者に過剰な演技を要請したことが原因ということになれば、別次元の問題だ。視聴者もテレビ局側にある意味で騙され、煽られたことになる。

   BPOは放送や番組に対して政治や総務省が介入することを防ぐ目的で、NHKと民放が自主的に問題を解決する姿勢を示すために設けた第三者機関である。「人権侵害」と認定されれば、テレビ局側もそれ相当の自己改革が迫られる。この際、リアリティ番組の放送基準を明確にすべきだろう。このままうやむやにしてはならない事案だと考える。

(※写真はイギリスのBBCニュースWeb版が報じた女子プロレスラーの死=5月23日付)

⇒16日(木)朝・金沢の天気    くもり