#世論調査

★森発言 五輪のモチベーションも失速

★森発言 五輪のモチベーションも失速

    菅総理はことし元旦の年頭所感で、「我が国は、多国間主義を重視しながら、『団結した世界』の実現を目指し、ポストコロナの秩序づくりを主導してまいります。そして、今年の夏、世界の団結の象徴となる東京オリンピック・パラリンピック競技大会を開催いたします」(総理官邸公式ホームページ)と述べたが、開催自体も怪しくなってきた。 

   共同通信社が6、7両日に実施した全国電話世論調査によると、「女性蔑視」発言をした東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長に関し、会長として「適任とは思わない」との回答が59.9%に上った。「適任と思う」6.8%、「どちらとも言えない」32.8%だった。菅内閣の支持率は38.8%で前回1月調査から2.5ポイント続落し、初めて40%を割り込んだ。不支持率は3.1ポイント増の45.9%となった(2月7日付・共同通信Web版)。

   読売新聞が5-7日に実施した全国世論調査では、森会長が「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などと発言したことについて、「問題がある」との回答は「大いに」63%、「多少は」28%を合わせて91%に上った。「大いに」を男女別にみると、女性が67%で、男性の59%を上回った。オリ・パラの開催では、「観客を入れて開催する」8%と「観客を入れずに開催する」28%を合わせ、計36%が開催に前向きな考えを示した。「再び延期する」は33%、「中止する」は28%だった(2月7日付・読売新聞Web版)。

   内閣支持率は39%と前回(1月15-17日調査)の39%から横ばいだった。不支持率は44%(前回49%)に下がった。昨年11月に69%だった内閣支持率は、その後、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い3回連続で下落していた。今回の調査で支持率の下落傾向に歯止めがかかったのは、新規感染者数が減少に転じたことが主な要因とみられる(同)。

   国内世論にオリ・パラ開催へのモチベーションが感じられない。森会長が辞めたら、世論的にモチベーションは上がるのだろうか。新型コロナウイルスの感染収束が見通せない状態では八方塞がりだ。どうやら、暗いトンネルに入り込んでしまったようだ。

⇒7日(日)夜・金沢の天気 

★コロナ禍が揺さぶる内閣支持率、そして政局

★コロナ禍が揺さぶる内閣支持率、そして政局

   昨年9月16日に発足した菅内閣。メディア各社の世論調査では内閣支持率は高かった。毎日新聞の調査では、内閣支持率が64%で、不支持率は27%を大幅に上回っていた(2020年9月18日付・毎日新聞Web版)。 朝日新聞社の調査は内閣支持率が65%で、不支持率は13%だった(同9月17日付・朝日新聞Web版)。共同通信の調査でも支持率66.4%、不支持率16.2%だった(同9月17日付・共同通信Web版)。高支持率の背景には、携帯電話料金の値下げや縦割り行政の打破、デジタル庁発足への布石、ハンコ行政の廃止など、新型コロナウイルスでよどんでいた世間の空気を換えてくれそうな期待感があった。

   その内閣支持率が急落している。読売新聞の最新の世論調査(今月15-17日)が先ほどネットに上がった。菅内閣の支持率は39%、不支持率は49%となり、初めて不支持が支持を逆転した。支持率の下落は3回連続。政府の新型コロナウイルス対策への強い不満が表れたとみられる(1月18日付・読売新聞Web版)。支持率は、前回調査(2020年12月26、27日)の45%から6ポイント下がり、内閣発足以降で最も低い。不支持率は前回の43%から6ポイント上がった。朝日新聞の調査でも菅内閣の支持率39%(不支持35%)に下がっている(2020年12月21日付・朝日新聞WEB版)。

   世論調査は上がり下がりするものだが、このまま右肩下がりが続くのか、V字回復があるのか。なんと言っても、内閣の支持率を左右するのはコロナ禍への対応だろう。右肩下がりが続くとすれば、観光支援策「GoToトラベル」を全国で一時停止する判断の遅れ、さらにコロナ禍にともなう景気と雇用の対策など政策決定の遅れで、支持率低下は加速するだろう。逆に、V字回復で支持率を上げるとすれば、ワクチン接種による集団免疫の獲得でなないか。すでに、厚労省は全国約1万ヵ所の「接種施設」で、2月下旬から始める方針と報道されている(1月16日付・読売新聞Web版)。その後、7月23日の開会式で東京オリンピックが無事スタートできれば、菅内閣はよく難局を乗り切ったと評価されるだろう。

   ただ、現実は甘くない。日本は乗り超えたとしても、世界は混沌としている。オリンピックが開催できなくなれば、一気に政局は揺らぐ可能性もある。メディア業界でよくささやかれるのは、内閣支持率の20%台は政権の「危険水域」、20%以下は「デッドゾーン」と。第一次安倍改造内閣の退陣(2007年9月)の直前の読売新聞の内閣支持率は29%(2007年9月調査)だった。その後の福田内閣は28%(2008年9月退陣)、麻生内閣は18%(2009年9月退陣)と、自民党内閣は支持率が20%台以下に落ち込んだときが身の引きどきだった。民主党政権が安倍内閣にバトンタッチした2012年12月の野田内閣の支持率は19%だった(数字はいずれも読売新聞の世論調査)。

   総理は元旦の年頭所感でこう述べている。「我が国は、多国間主義を重視しながら、『団結した世界』の実現を目指し、ポストコロナの秩序づくりを主導してまいります。そして、今年の夏、世界の団結の象徴となる東京オリンピック・パラリンピック競技大会を開催いたします。安全・安心な大会を実現すべく、しっかりと準備を進めてまいります」(総理官邸公式ホームページ)。ぜひ、団結した世界を実現してほしい。

⇒18日(月)朝・金沢の天気   ゆき

★数字の裏読み、深読み、独り歩き

★数字の裏読み、深読み、独り歩き

    数字には納得できるものと納得できないものがある。さらに納得できたとしても、「さらに裏の潜むもっと大きな数字もあるだろう」と思わせるものもある。日本と中国の相互意識を探る第16回日中共同世論調査(実施=言論NPO、中国国際出版集団)の結果だった。17日付のNHKニュースWeb版の記事を引用しながら数字を読んでみる。

    調査は9月と10月に18歳以上を対象に行われ、日本は全国で1000人、中国は北京や上海など10都市で1571人からの回答をもとにしている。記事によると、中国に「良くない」という印象を持つ日本人は前回に比べ5ポイント増の89.7%に上った。その理由として、中国公船などによる「尖閣諸島周辺の日本領海や領空の侵犯」が同6ポイント増の57.4%で最も多く、以下、「国際的なルールと異なる行動」49.2%、「南シナ海などで行動が強引・違和感」47.3%で、中国による一方的な海洋活動が対中感情を悪化させている。設問はメディアで報道される内容に沿っている。

   一方、中国人で日本に対する印象が「良くない」と答えたのは52.9%で前回と横ばいだった。「良くない」理由は、「侵略の歴史 きちんと謝罪・反省せず」74.1%、「魚釣島・周辺諸島『国有化』で対立」53.3%、「米国と連携し包囲しようとしている」19.7%となっている。良くない印象の理由の設問はおそらく中国側が独自に作成したものだろう。その設問の内容は国内での反日教育をベ-スにしたものや、2012年9月に日本が尖閣諸島を国有化したこと、経済圏構想「一帯一路」のシーレーンをめぐる動きなど、いわゆる国策をベースにしたものだ。

   以下は深読み、裏読み、憶測である。「89.7%」をどう読むか。率直に中国で独り歩きをする危険な数字ではないだろうか。その大前提には中国人と日本人ではまったく情報は共有されないという事情がある。たとえば、日本人が「良くない」とする一番の理由である中国公船の尖閣周辺での航行について、日本で大きな問題となっていることは中国では報じられていないだろう。つまり、なぜ「良くない」のか理解されない。

   今回のアンケート調査の数字は中国でどのように報じられるのだろうか。憶測だが、「中国嫌いの日本人は89.7%」「日本嫌いの中国人は52.9%」の表現だろか。すると、「なぜ中国嫌いの日本人が多いのだ」と、今度は数字が独り歩きをして、逆に中国での反日感情を煽る可能性も出てくる。あるいは、数字は政治的に利用されることもあるだろう。

   折しも、「自由で開かれたインド太平洋」のもと日本、アメリカ、インド、オーストラリアの4ヵ国の海軍と海上自衛隊がインド近海での共同訓練を行っている。中国とすれば、格好の「口撃」材料だろう。「中国嫌いの日本人89.7%が敵に回っている」とプロバガンダにされる、かもしれない。

⇒18日(水)朝・金沢の天気     はれ

☆数字は踊る、気になる、「一番」に弱い

☆数字は踊る、気になる、「一番」に弱い

   あさ起きると数字が踊っていた。16日のニューヨーク株式市場で、ダウ平均株価の終値が前週末比で470㌦高の2万9950㌦となり、今年2月につけた終値としての最高値2万9551㌦を更新し、初の3万㌦突破も迫っているとメディア各社が報じている。アメリカの株高を好感して、きょう17日の東京株式市場で日経平均株価が前日比100円を超える上昇、一時、2万6000円台をつけた(午前9時10分現在)。2万6000円台の回復は終値ベースで1991年5月以来29年ぶりととか。

   「一番」という数字には目が向く。理化学研究所と富士通が開発したスーパーコンピューター「富岳」が、17日に公表された計算速度を競う世界ランキングで首位を維持した。富岳が世界一になるのは今年6月に続いて2期連続(11月17日付・日経新聞Web版)。世界ランキングは毎年6月と11月に公表され、富岳は1秒あたり44.2京(京は1兆の1万倍)回の計算速度を達成した。2位のアメリカの「サミット」(同14.8京回)をさらに引き離した(同)。「富岳」を製造している富士通ITプロダクツは石川県かほく市にあり、地元の多くの人たちが製造に関わり、地域の誇りでもある。

   ここで思い出す。2009年11月、民主党政権下に内閣府が設置した事業仕分け(行政刷新会議)で蓮舫議員が、次世代スーパーコンピューター開発の要求予算の妥当性について説明を求めた発言。「(コンピューターが)世界一になる理由は何があるんでしょうか。2位じゃダメなんでしょうか」だった。科学者やスポーツ選手では当たり前と思われてきた世界一(金メダル、ノーベル賞)への道だが、政治家にはこの目標がない、正確に言えば「政治の世界ナンバー1」という尺度がないのだ。その尺度がない政治家が「世界一になる理由は何があるんでしょうか」と言う資格は本来ないだろう。ひょっとして政治家の多くは「オリンピックは参加することに意義がある」と今でも思っているのかもしれない。

   世論調査の数字も気になる。朝日新聞が今月11月14、15日に行った世論調査によると、「菅内閣を支持しますか。支持しませんか」の問いでは、「支持する」が56%で前回(10月17、18日)より3ポイントアップ。「支持しない」は20%で前回より2ポイント下げた。国会で論戦にもなった「日本学術会議」問題で、菅総理が学術会議が推薦した学者の一部を任命しなかったことについて、「あなたはこのことは妥当だと思いますか。妥当ではないと思いますか」の問い。「妥当だ」34%(前回31%)、「妥当ではない」36%(同36%)、「その他・答えない」30%(同33%)だった。三つ巴の様相だが、「菅総理の国会での説明に納得できますか。納得できませんか」の問いでは、「納得できる」が22%、「納得できない」49%となる。

    民意はどこにあるのだろうか。「菅さん、国会答弁は口下手だけど、やっていることはそう間違ってはいない。東京オリ・パラもあるのでなんとか頑張って」ということだろうか。

⇒17日(火)午前・金沢の天気    はれ

★大阪都構想 票に滲むコロナ禍と報道と共感と

★大阪都構想 票に滲むコロナ禍と報道と共感と

    「反対50.6%、賛成49.4%」の僅差で否決された大阪都構想。その後の新聞・テレビ各社の報じる論評を読めば読むほど分からないことが増えてくる。同時に票にはさまざま思いや時のタイミングが滲んでいると思えてくる。

   大阪・朝日放送(ABC)の世論調査によると、10月24-25日調査では賛成46.9%、反対41.2%だった。ABCは9月19-20日から世論調査を始めているが、それまでの賛成が6回続けてリードしていた。7回目となる10月30-31日の調査で初めて反対46.6%、賛成45.0%と逆転した。これまで「未定・不明」と答えた人の割合が、3.5ポイント減って反対側に流れたようだ。そして、この7回目の調査結果がそのまま11月1日の住民投票の結果に反映されたかっこうだ。

   ABC調査で気になったデータがある。「新型コロナの拡大下でも住民投票を行うべきか」(10月3-4日調査)の問い。年代でもバラツキがあるが、全年代通しでは「予定通り行うべき」37.8%を「中止もしくは延期するべき」42.0%が上回っている。大阪市では、10月は第3波ともいえる新規感染者数が増加を始めたころだった。とくに終盤の27日から11月1日の投票日にかけては連日50人から70人の新規陽性者が出ていた(大阪市役所公式ホームページ)。

   実際にコロナ禍は投票行動に影響を与えたのではないだろうか。投票率が66.8%だった前回(2015年)より世論の関心度も高く盛り上がったにもかかわらず、今回投票率が62.4%と4.4ポイントもダウンしたのも、コロナ禍で投票場へ行くのを控えた人も多かったせいだろう。期日前投票が前回35万9千、今回41万8千と率にして16%も増えているのも、「3密」を避けた投票行動と読めるのではないか。

   ABC調査のデータが現実になったともいえる。「中止もしくは延期するべき」が声が上がっていたにもかかわらず、それを実施したことに対する、松井市長、大阪維新の会への批判が「反対」票となって表れたのではないだろうか。大阪都構想を推進する側にとっては、コロナ禍はタイミングが悪かった。

           さらにもう一つ「反対」票につながったと思われる数字がある。大阪市を4つの特別区に分割した場合、標準的な行政サービスを実施するために毎年必要なコスト「基準財政需要額」の合計が、現在よりも約218億円増えることが市財政局の試算で明らかになったと報道された(10月26日付・毎日新聞Web版)。市財政局の担当者は29日に緊急記者会見で、この試算を撤回した(10月29日付・同)。が、この数字が都構想のデメリットとして独り歩きを始めたのではないだろうか。

   きょう大阪維新の会のツイッターをチェックすると、吉村知事の囲み会見(11月2日)が動画で紹介されている。支持者のコメントが出ていた。「燃え尽き症候群のようになってしまわないか心配です。今はなかなか切り替えができないと思いますけど、違うやり方で少しづつ改革を進めることはできます。60万人以上の市民が賛成したのも事実です、これで都構想を諦めるなんて言わないでください!まずは一休みして」。やさしい励ましの言葉だ。都構想はある意味で市民の共感を得ていた政策だったのだ、と理解もできた。

⇒3日(祝)朝・金沢の天気     はれ

☆仰ぎ見る富士なれど、世間は騒々しく

☆仰ぎ見る富士なれど、世間は騒々しく

   共同通信社が17、18両日に実施した全国電話世論調査によると、菅内閣の支持率は前回9月の調査と比べて5.9ポイント減の60.5%、不支持率は5.7ポイント増の21.9%だった。日本学術会議が推薦した会員候補6人の任命拒否問題を巡り、菅義偉首相の説明は「不十分だ」との回答が72.7%に達した(10月18日付・共同通信Web版)。

         NHKが今月9-12日で行った世論調査によると、菅内閣を「支持する」と答えた人は、政権発足後初めての先月の調査より7ポイント下がって55%、「支持しない」は7ポイント上がって20%だった。日本学術会議が推薦した新しい会員の一部を任命しなかったことについて、菅総理が「法に基づいて適切に対応した結果だ」と説明していることに、どの程度納得できるか聞いたところ、「大いに納得できる」が10%、「ある程度納得できる」が28%、「あまり納得できない」が30%、「まったく納得できない」が17%だった(10月13日付・NHKニュースWeb版)。

   各メディアの世論調査では内閣支持率が前回比で減っている。共同とNHKはそれぞれ6ポイント、7ポイントだ。日本学術会議が推薦した会員候補6人の任命拒否となったことをめぐり、連日メディアで問題視されているにもかかわず、NHKでは支持率55%と高い。菅内閣とすれば想定内のことなのかもしれない。

   この日本学術会議問題をめぐってさまざまな視点から批判や意見があって当然なのだが、まったく解せないのが、静岡県の川勝知事の発言だった。知事は今月7日の定例記者会見で、「菅首相の教養レベルが図らずも露見した。学問をされた人ではない。単位を取るために大学を出た」などと発言した。その後、12日も報道陣に「訂正する必要は全くない」と強調し「(菅首相の)経歴を見ると、学問を本当に大切にしてきたという形跡が見られない」と述べていた(10月16日付・静岡新聞Web版)。このニュースを知って、まるで人格攻撃のようだと感じた。

   静岡県庁の公式ホームページで知事のプロフィルをチェックすると、「昭和50年3月 修士(早稲田大学大学院経済学研究科)」「昭和60年10月 D.Phil.(オックスフォード大学)」とあり、「私は学問を追求してきた」と言わんばかりだ。ただ、「言葉は人格を表す」とよく言われるが、学歴と人格の乖離が目に余る人は私の周囲にもいる。知事は去年12月19日にも、来年度予算に難色を示した県議会の自民党系の最大会派を念頭に「やくざの集団、ごろつきがいる」と発言。県議会2月定例会で撤回、謝罪し「今後、不適切発言はしない」と答弁したばかりだった(同)。

   知事は今月16日にようやく発言を撤回し陳謝した。静岡県公式ホームページには「『富士の国』づくりに向けて」と題したページがある。以下引用する。「富士」の「富」は物の豊かさを、「士」は心の豊かな徳のある人格者を意味しており、その字義をふまえ、我々は物の豊かさと心の豊かさの調和した国をめざして「富国有徳」をもって理念とする。知事には富士山のように仰ぎ見、畏敬の念に打たれる人格者であってほしいと願うのだが。(※写真は、静岡県富士市役所の「フリー写真素材集」より)

⇒19日(月)朝・金沢の天気   くもり

★国連への評価が低くなった日本人の本音

★国連への評価が低くなった日本人の本音

          国連に対するイメージが自身の中で変化していると思っていた。どうやらこれは日本人全体がその傾向にあるようだ。アメリカの世論調査機関「ピュー・リサーチ・センター」は、創設75年を迎える国連の実績について先進14ヵ国で実施した世論調査を発表した。それをCNN が伝えている。「Americans think the UN is doing a good job. Japanese people disagree.」(9月22日付・CNNニュースWeb版)。国連に対する評価が最も低かったのは、国連バッシングを続けているアメリカではなく、日本だった。

   調査は、アジア太平洋地域、北米と欧州の先進14ヵ国で6月10日から8月3日にかけて電話での聞き取り方法で行われた。調査対象国は、日本、韓国、オーストラリア、アメリカ、カナダ、デンマーク、ドイツ、オランダ、イタリア、スウェ―デン、ベルギー、フランス、スペイン、イギリスでそれぞれおよそ千人、合計1万4276人からデータを抽出した。

   CNN記事によると、アメリカ人の国連に対する評価は、トランプ政権の初期にはやや低下したが、ここ2年間に再び上昇してオバマ前政権時代とほぼ並んだ。国連に「好感を持つ」は62%に上り、「好感を持たない」は31%だった。この傾向は、他の先進国とそれほど大きな違いはなかった。

   突出していたのは日本で、国連に対する好感度は14ヵ国の中で最も低かった。「好感を持つ」は29%で、「好感を持たない」が55%と半数を占めた。1年前の前回調査は、「好感を持つ」が47%で、「好感を持たない」35%を上回っていた。「分からない」と「答えたくない」は今回16%、前回18%だった。

   上記の数字からも、日本人の国連に対する好感度は前回もさほど良くはなかった。それが、1年後には完全に逆転して、「好感を持たない」がハッキリした。では、自身を含め日本人の意識が大きく変化した理由はなぜか。ここからは自身の考えを述べたい。

   この1年で国連を見つめる目が大きく変化したのは、はやり新型コロナウイルスの感染拡大、パンデミックに対するWHOの対応だろう。中国でヒトからヒトへの感染を示す情報がありながら、WHOがその事実を知っていたにもかかわらず世界に共有しなかった。WHOと中国の関係性が疑われたのは1月23日だった。中国の春節の大移動で日本を含めフランスなど各国で感染者が出ていたにもかかわらず、この日のWHO会合で「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」宣言を時期尚早と見送った。同月30日になってようやく緊急事態宣言を出した。自身を含め日本人の多くはこの一件で中国に配慮したWHOとのイメージが根付いた。

   今回の調査でも数字で表れている。WHOによる新型コロナウイルス対応を「悪い」と答えた日本人は67%と、14ヵ国の平均のおよそ2倍だった。評価が日本よりも低かったのは韓国のみで、「悪い」とする回答は88%だった。ちなみに、アメリカは44%だった(9月22日付・CNNニュースWeb版)。中国の近隣国である日本と韓国の目線は、WHOの中国との処し方が最初から腑に落ちていなかったのだ。

   なぜ国連への好感度が低下しているのか。二つ目は国連安保理の常任理事国の有り様ではないだろうか。香港やウイグルにおける人権弾圧問題で国際批判を浴びている中国が常任理事国の座にある。連日のように尖閣諸島への中国公船の領海侵入がある。常任理事国の座にあれば問題を起こしても国連では問われない。その座を守っているのは拒否権だ。ロシアなどは旧ソ連時代を含めて127回も拒否権を発動している(2008年現在、「ウイキペディア」より)

   そして、国連憲章(第53、107条)で定めらている「敵国条項」に日本がいまだに入っている。ある国を攻撃する場合は国連安保理の承認が必要だが、「敵国」に再侵略の企てがあるとみなせば先制攻撃が可能で、安保理の承認は不要という規定だ。年間2億4千万㌦もの国連分担金を払っている日本が「敵国」なのである。

   矛盾の数々がこれまで日本人の心の底に眠っていたが、このところのWHOや最近の中国の動向で国連とは何か、このままでよいのかという義憤に転化してきたのではないだろうか。菅政権が向き合うべき課題がまた一つ増えた。

⇒23日(水)午前・金沢の天気     はれ

☆世論調査に表れた「判官びいき」の国民性

☆世論調査に表れた「判官びいき」の国民性

   きょう7日付の読売新聞に全国世論調査の結果が掲載されていた。それによると、安倍内閣の支持率は52%となり、前回調査(9月7、8日調査)より、15ポイントも上昇している。不支持率は38%と10ポイント下がっている。さらに、第2次安倍内閣の7年8ヵ月の実績を尋ねた項目では、「大いに評価」19%と「多少評価」55%を合わせると74%になる。自身の記憶でも、辞任表明後に支持率がこれほど上昇するのは異例ではないだろうか。それはなぜなのか。

   この傾向は読売新聞の調査だけではない。朝日新聞の調査(9月2、4日)でも、安倍内閣以降の7年8ヵ月間の実績評価は「大いに評価」17%と「ある程度評価」54%を合わせると71%となる。共同通信が実施した緊急世論調査(8月29、30日)でも、内閣支持率が56.9%と前回調査(8月22、23日)より20.9ポイントも増え、7年8ヵ月間についても、「ある程度」を含めて「評価する」が71.3%に上っている。マスメディア各社の調査では安倍内閣の実績評価は70%を超えているのだ。

   確かに、先月28日午後5時からのNHKテレビの生中継を視聴していて、自身もある意味でショックを受けた。8月上旬に持病の潰瘍性大腸炎の再発が確認され、安倍氏は「体力が万全でない中で政治判断を誤ること、結果を出せないことがあってはならない。総理の職を辞することにした」と述べた=写真=。拉致問題も憲法改正も北方領土もどれも道筋をつけられないままでの辞任表明。まさに断腸の思いだったに違いない。

   安倍氏の最大の功績は長期政権を築いたということに尽きるかもしれないと思っている。小泉内閣以降の2005年から短命政権が続き「7年間で7人の首相が誕生する」政治状況だった。当時は「回転ドア内閣」とも呼ばれ、総理の名前を覚える間もないほど交代劇が続き、日本のガバナンスや国際評価の足を政治が引っ張っていた。その意味で、7年8ヵ月続いた安倍内閣は政治の安定をもたらした。さらに、トランプ大統領と良好な関係を築きながら、アベノミクスで積極的な経済政策を推進し、女性の社会進出を拡大させた功績も大きい。

    「こころざし半ばで去ることになった人への判官びいきかもしれません」。安倍氏の辞任表明について書かれた知人からのメールの一文だ。おそらく、国民は声に出すほどのことではないが、7年8ヵ月の「最長の総理」をそれとなく心情的に評価しているということではないだろうか。「多少評価」55%(読売)、「ある程度評価」54%(朝日)といった、微妙な数字がその「判官びいき」ではないだろうか。ある意味で日本の国民性がシンボリックに表れた数字なのかもしれない。

⇒7日(月)夜・金沢の天気    くもり

☆「ポスト安倍」 世論調査は「石破」だが

☆「ポスト安倍」 世論調査は「石破」だが

          「こころざし半ばで去ることになった人への判官びいきかもしれません」。安倍総理の辞任表明について書かれた知人からのメールの一文だ。その前段に、「森加計桜があったり、アベノミクスで日本の経済は強くならなかったりはあっても、安倍さんてすごい人だったのかも・・・」と評している。おそらく国民は声には出さなくても、7年8ヵ月の「最長の総理」の実績はそれなりに心に留めているのではないだろうか。

   それを数字が物語っている。共同通信が実施した緊急世論調査(29、30日)で、内閣支持率が56.9%と前回調査(8月22、23日)より20.9ポイントも増えている(8月30日付・共同通信Web版)。1週間後に内閣支持率が20ポイント以上も伸びることは通常ではあり得ない。さらに、第2次安倍内閣以降の7年8ヵ月間について、ある程度を含め「評価する」が71.3%に上っている。「こころざし半ばで去ることになった人への判官びいき」なのだろうか。

   緊急世論調査では、次期首相に「誰がふさわしいか」と聞いている。ダントツで1位は石破茂氏(自民党元幹事長)で34.5%、2位は菅義偉氏(官房長官)14.3%、3位は河野太郎氏(防衛大臣)13.6%、以下、小泉進次郎氏(環境大臣)10.1%、岸田文雄氏(党政調会長)7.5%と続いている。石破氏のどこが総理としてふさわしいと世論は感じているのだろうか。

   一度だけ、石破氏にインタビューしたことがある。学生に地方創生を理解してもら教材ビデオを制作していた。タイミングよく、2016年2月7日、当時地方創生大臣だった石破氏が講演に金沢市を訪れた折に、インタビューに応じていただいた=写真=。

Q:地方創生にはどのような人材が必要なのですか
石破氏:昔から地域を変えるのは「よそ者、若者、ばか者」と言われ、外から新鮮な目で見ることが一つの要素なんです。若い感性とは、たとえばPCが使える、外国語が使えること。ばか者はこれまでの既成概念にとらわれない新しい考え方を持つこと。学生はそのすべてを持っている人が多いし、チャレンジ精神旺盛な方を求めたい。

Q:地域で活躍する若者に対して期待することは何ですか
石破氏:地方は東京と違い、行政との距離が近い。地域の特性を最大限に活かして金沢の大学が未来を作っていくのか。この国の未来は「学生」に創ってもらわないといけない、今はそんな時代です。明治維新など、歴史の変わり目に常に若者がいるというのはそういうことなんです。

Q:地域の大学に期待することは何ですか
石破氏:「象牙の塔」にならないこと。大学が持つ本来の真実を探求する心は忘れないでほしい。今は「地方が日本を変える時代」、その責任感や使命感、学生にはそんな感性を持って欲しい。

   10分足らずの単独インタビューだったが、石破氏は淡々と答えた。無駄のない、理路整然とし、そして奥が深い内容だった。冒頭での「よそ者、若者、ばか者」は意外な言葉だったが、印象的として残り、納得もした。世論調査で石破氏の評価が高いのは、その発する言葉ではないだろうか、「言葉は人柄を語る」である。

   しかし、「内閣総理大臣」となると別の側面も問われる。防衛問題でならす政治家だが、海外の安全保障のキーマンと意見交換や握手するといった防衛外交をする姿をメディアで見たことがない。たまたま見逃しているだけないかもしれないが、「外交の石破」の姿が見えないのだ。

   自民党執行部は総裁選挙を今月8日に告示したうえで、党員投票は省略し、14日に両院議員総会を開いて投開票を行う方向で調整している(9月1日付・NHKニュースWeb版)。 菅氏が有力とも報じられているが、世論調査1位の石破氏はどうか。

⇒1日(火)朝・金沢の天気      はれ          

☆読売調査、内閣不支持54%の暗雲

☆読売調査、内閣不支持54%の暗雲

           読売新聞社の世論調査(今月7-9日実施)で、安倍内閣の支持率は37%で前回調査(7月3-5日)の39%から下がり、不支持率は54%と前回52%より高くなった。不支持率54%は2012年12月からの第2次安倍内閣では最高となった(8月9日付け・読売新聞)。読売新聞の調査でこの数字だ。安倍内閣の正味期限はすでに切れているのかもしれない。

   読売の調査で不支持が50%を超えたことは2012年12月の第2次安倍内閣発足以降で3度あった。直近では2018年4月調査で53%。森友学園への国有地売却や財務省の文書の改ざんをめぐる問題が沸騰したころだ。2017年7月調査では52%。森友・加計学園問題などでの批判の高まりと、小池都知事が率いる都民ファーストの会の都議選で圧勝で、不支持が前回から11ポイントも跳ね上がった。2015年9月調査で51%。このときは安全保障関連法で世論が揺らいだ時期だった。

   では、今回の不支持の高まりの理由は何なのか。やはり、新型コロナウイルス対策についての無力感だ。ウイルス対策を巡る政府のこれまでの対応を「評価しない」は66%で、前回(7月調査)の48%より上昇、「評価する」は27%で前回45%より大幅に下がった。そして、安倍内閣がコロナ対策の指導力を発揮していると思わない人が78%にも上っている(同)。

   今では店頭でのマスク不足は解消され、自由に購入できるのに、さらに8000万枚、118億円もの布マスクを介護施設などに追加配布するとのニュースが7月下旬に流れて、呆気に取られた。 7月22日から始まった「Go To キャンペーン」の混乱も不支持率の高まりに影響しているのだろう。

   ただ、今回の読売調査で内閣支持は前回から2ポイント下がったとは言え、37%ある。さらに、今回の調査で「同じ人が長く首相を続けることは、日本にとって、プラスの面が大きいと思いますか、マイナスの面が大きいと思いますか、それとも、プラスとマイナスの面が同じくらいだと思いますか」がある。最も多かった回答が「プラスとマイナスの面が同じくらい」で42%だ。長期政権は必ずしもマイナスではないというイメージを持っている人が多い。政党支持率は「自民党」33%、「立憲民主党」5%、「支持する政党はない」46%と前回とほぼ同じだ。

   安倍政権は不支持が57%もあるものの、政権から引きずり降ろすべきだとの強いメッセージをこの世論調査からは読み取れない。どちらかというと、「安倍さん、これまで頑張ってきたけれど、そろそろ降りるべきですね」くらいのニュアンスか。

   内閣支持率の20%台は政権の「危険水域」、20%以下は「デッドゾーン」とされる。第2次安倍内閣での支持率の最低は2017年7月調査の36%だ。第1次安倍内閣の退陣(2007年9月)の直前の読売の内閣支持率は29%だった。これに比べるとまだまだ余裕だ、と本人は思っているかもしれないが、安倍内閣に暗雲が垂れ込めてきたことは間違いない。

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