#与党過半数割れ

☆与党は過半数割れ「宙づり」状態をどう乗り切るのか

☆与党は過半数割れ「宙づり」状態をどう乗り切るのか

  内閣支持率は「危険水域」に近づいている。読売新聞の衆院選の結果を受けた緊急世論調査(28、29日)によると、石破内閣の支持率は34%で、内閣発足後の前回調査(今月1、2日)の51%から急落した。内閣不支持率は51%(前回32%)で、内閣発足から1ヵ月足らずで不支持が支持を上回った(29日付・読売新聞オンラン)。読売の調査で内閣支持率の20%台は政権の「危険水域」、20%以下は「デッドゾーン」とよく言われる。ちなみに、岸田内閣が退陣を表明した8月の読売調査は支持率が24%、不支持率が63%だった。

  急降下した内閣支持率を見て、石破政権はいつまで持つのかと考えてしまう。政策の実効性を確保するために「議会を解散して民意を問う」と石破政権は選挙に打って出たものの、与党の過半数割れとなった。このままでは何も決められない、いわゆる「宙づり議会」、ハング・パーラメント(hung parliament)の状態だ。この言葉は議会制民主主義の歴史が長いイギリスが発祥で、直近では2017年の総選挙で保守党が第1党を維持しながらも過半数割れとなり、宙づり状態に陥った。この時は、北アイルランドの地域政党の閣外協力を得て、何とか政権を維持し、その後2019年の総選挙で保守党が単独過半数を獲得した。日本の自民党もハング・パーラメントを乗り切るために、部分連合や閣外協力に躍起になっているようだ。

  メディア各社の報道によると、自民と国民民主の幹事長と国会対策委員長があす(31日)国会内で会談する。政府が11月中のとりまとめをめざす経済対策で、国民民主が掲げる政策の一部を反映させる検討に入るとみられる。自民とすれば、2024年度補正予算案や25年度予算案について編成段階から国民民主に配慮することを持ち掛け、部分連合あるいは閣外協力を打診するのだろう。

  一方の国民民主の玉木代表は記者団に対し、自公との部分連立について改めて否定し、「政策本位でいい政策であれば協力するし、ダメなものはダメと言っていく」と語っている(28日付・メディア各社の報道)。また、閣僚を出さずに政権に協力する閣外協力の可能性についても、同様に「政策ごとにいいものには協力するし、ダメなものはダメと貫いていく」と述べるにとどめている(29日付・同)。

  与党は過半数割れのハング・パーラメント状態をどう乗り切るのか。衆院選後30日以内(11月26日まで)に特別国会を開き、新総理を選出することが憲法に定められている。

⇒30日(水)夜・金沢の天気    くもり

☆与党過半数割れが今後もたらす「政治空白」と「経済空白」のWショック

☆与党過半数割れが今後もたらす「政治空白」と「経済空白」のWショック

  与党が過半数割れに陥った背景には有権者の信頼低下があることは言うまでもない。自民党派閥のパーティー収入不記載事件を受け、選挙では「政治とカネ」の問題に有権者の関心が高まっていた。それに輪をかけたのが、選挙期間中の「非公認2000万円問題」。自民党が非公認候補側に2000万円の活動費を支給した問題だ。これが致命傷になったのだろう。そもそも、石破総理就任から最短の「8日間」での解散も、有権者には理解されなかったのではないか。

  「なんで選挙なんかするんや、ダラくさい」。このブログで何度か取り上げたが、震度7の地震と記録的な大雨に見舞われた能登の有権者の雰囲気は、このひと言に象徴される。能登で何度も耳にした言葉だ。「ダラくさい」は能登の方言でばかばかしいという意味だ。誰のために、何のために選挙をするのかと問うているのだ。能登の被災地の人たちの率直な気持ちなのだろう。その気持ちが投票行動でも表れている。

  能登の人々の性格は律儀さもあり、「選挙に行かねば」は当たり前で、金沢市など都市部に比べて投票率が高い。ところが、今回、石川3区の投票率は62.5%と、前回2021年より3.5ポイント減少した。中でも、地震と豪雨の二重被害となった奥能登の輪島市では11.9ポイント減の58.9%、珠洲市では9.5ポイント減って62.0%だった。避難者が現地から離れていて、投票に行けなかったというケースもあったろう。それにしても、この減少率の高さは「ダラくさい」の気持ちがにじみ出ているように思えてならない。それでも都市部より投票率は高い。ちなみに、金沢市は49.5%だった。

  そして、能登は「自民王国」とも称されてきたが、今回、立憲民主が逆転した。前回(2021年)の衆院選では、自民の西田昭二氏が8万692票、立民の近藤和也氏は7万6747票で、その差は3945票だった。今回は近藤氏が7万7247票、西田氏は6万1308票と、その差1万5939票で近藤氏が挽回したのだ。近藤氏が小選挙区で勝つのは2009年以来15年ぶり。西田氏は比例で復活当選した。

  話は冒頭に戻る。石破政権は窮地に陥るのではないか。与党が過半数を割り、自民執行部の責任論が浮上するのは必至だ。懸念されるのは、選挙後に待ったなしで行われる予定の補正予算の編成だ。石破総理は去年の13兆円を上回る予算規模を選挙戦などでも明言していたが、政治空白が生じれば補正の成立時期が後ずれする。自民は国民民主などと政策ごとに協力する「部分的な連合」で政権運営を乗り切らざるを得ないだろう。ただ、野党側との協議は難航するのが常である。懸念されるのは国民全体に影響が降りかかる「経済政策の空白」ではないだろうか。

⇒28日(月)夜・金沢の天気     あめ時々くもり

★地震と豪雨の能登・石川3区で立民の近藤氏が勝利、与党過半数割れで政局突入か

★地震と豪雨の能登・石川3区で立民の近藤氏が勝利、与党過半数割れで政局突入か

  きょうは衆院総選挙の投票日。元日の震災と9月の記録的な大雨に見舞われた輪島市町野町の現場を見に行った。現地で農業を営む従兄(いとこ)の案内で被害に遭った自宅を見せてもらった。裏山が大規模に崩れ、この集落は土砂に埋まるなど壊滅的な状態になっていた=写真・上=。いまは仮設住宅で家族と暮らしている。農地は3分の2ほどが残り、耕運機なども無事だったことから、来春の作付けに意欲的な様子だった。復旧・復興が遅い能登を政治はどう導いていくのか。

  地震と豪雨で大きな被害を受けた能登の輪島市と珠洲市では、投票時間が短縮されて午後6時で投票が締め切られた。NHKの開票速報によると、輪島市と珠洲市を含む石川3区では立憲民主の前職・近藤和也氏が自民・前職の西田昭二氏を破り、4回目の当選を果たした。近藤氏は2009年の衆院選で小選挙区で初当選。その後、2017年、2021年には選挙区で敗れたものの、比例で復活していた。  

  近藤氏の選挙活動はじつにユニークだった。立ち姿はまったく候補者らしくない。防災服姿で、名前入りのたすき掛けもしていないのだ=写真・下=。近藤氏は七尾市での出陣式(今月15日)で「与党も野党も関係なく、助け合わなければならない時期。選挙なんてやっている場合か。それが能登の総意だと思う」と憤りの声を上げた。選挙実施への反発の意味を込め、選挙期間中は防災服姿で、たすき掛けをしないことを宣言していた。ただ、選挙活動は実にアクティブだった。元日の地震後、これまで選挙区内で整備された6000戸余りにもなる仮設住宅を足しげく回り、被災者の声を国会論戦などで反映させてきた。地震と豪雨の二重被災の奥能登(輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)へは選挙期間中にそれぞれの自治体を2回ずつ回った。「まだ能登は大変なんだと全国に訴えていきたい」と述べていた。  

  「自民党王国」と称されていた石川3区で2009年以来、15年ぶり2度目の勝利を果たした立憲民主の近藤氏。今回の選挙も2009年と同様、政局に異変をもたらしそうな様相だ。メディア各社の開票速報によると、与党が勝敗ライン「自公で過半数(233議席)」を下回る見通しとなったと報じている。自民党派閥のパーティー収入不記載事件を受け、選挙戦では「政治とカネ」の問題に関心が高まった。有権者は自公政権に対し、厳しい審判を下したようだ。そして永田町は今後、波乱含みの政局に突入しそうだ。ただ、政局がどうであろうと能登のことを忘れてほしくない。

⇒27日(日)夜・金沢の天気   あめ