#不都合な真実

☆北京オリンピック 健康管理アプリから漏れ出る情報とは

☆北京オリンピック 健康管理アプリから漏れ出る情報とは

   このブログでは「不都合な真実」という言葉をたびたび使っている。一見して正論のように見えて、奥にはとてつもない矛盾やたくらみがあったりするとそのような表現をする。アメリカのクリントン政権で副大統領を務めたアル・ゴア氏が主演するドキュメンタリー映画『不都合な真実 (An Inconvenient Truth)』で、地球温暖化の裏側で起きている石油業界と政治の癒着を指摘した。15年前に鑑賞した映画だった。

   今また不都合な真実が見えてきた。総理官邸公式ホ-ムページに掲載されている松野官房長官の記者会見(3日午後)=写真・上=で、産経新聞記者から質問があった。それは、北京オリンピックで新型コロナウイルス感染など健康状態を管理する中国の公式アプリについて、すでに7ヵ国1000人の選手は情報の抜き取りなどを懸念して「使い捨てスマホ」に切り替えているとして、日本政府の対応を質した。これに対して、松野官房長官はスポーツ庁がJOCを通じて選手側に対し、帰国後は速やかにアプリを削除するなどの注意点を伝えていることを明らかにした。

   中国は各国の代表団やメディアに対し、入国14日前に公式アプリ「MY2022」のスマホへのインストールを義務づけ、入国後は毎日の体温の登録などを求めている。ところが、このアプリについては中国当局による監視や情報の抜き取りへの懸念が広がっている。BBCニュースWeb版(1月18日付)は「Winter Olympics: Athletes advised to use burner phones in Beijing」(北京冬季五輪: 必須アプリのセキュリティーに懸念 プリペイド携帯使用を推奨する国も)の見出しで特集を組んだ=写真・下=。サイバーセキュリティーの研究団体によると、問題のアプリには「検閲キーワード」が埋め込まれているのが見つかった。検閲キーワードは発信者がその言葉を使った場合、当局が発信者の氏名や内容などをチェックできるとされる。

   こうしたことを重く見たアメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、スウェーデン、スイス、オランダの欧米各国は、中国の通信回線を通じて個人情報が盗まれたり、行動を監視されることを警戒し、自国選手に個人所有のスマホやノートパソコンを持ち込まないようにと注意し、プリペイド携帯に替えるよう呼びかけているという。上記の松野官房長官の発言も、アプリは必要最小限の使用にとどめ、帰国後は速やかにアプリを削除することや、アプリを導入する端末を別途用意するのが望ましいこと、さらに違和感があった場合は「内閣サイバーセキュリティセンター」などに連絡するよう呼び掛けた。

   では、中国はどのような情報を入手したいのだろうか。以下は憶測だ。オリンピック選手には軍の関係者もいる。たとえば、今回の北京オリンピックではバイアスロンとクロスカントリースキーの2種目の日本代表選手のうち7人が自衛隊所属だ。中国とすれば、どのような会話や情報が7人の中で、あるいは自衛隊本部と交わされているのかチェックしたいのではないか。あくまでも憶測だ。健康管理アプリという名の情報管理アプリ、まさに不都合な真実だ。アプリは必要最小限の使用にとどめ、帰国後は速やかに削除することを願う。

⇒4日(金)午後・金沢の天気     あめ時々みぞれ

☆ノーベル平和賞を隠す「不都合な真実」

☆ノーベル平和賞を隠す「不都合な真実」

   ノーベル平和賞を隠すということはどのような意味があるのだろうか。9日付のこのブログでノーベル平和賞について記した。ノルウェーのノーベル平和賞選考委員会は、ことしのノーベル平和賞にフィリピンのインターネットメディア「Rappler(ラップラー)」代表マリア・レッサ氏と、ロシアの独立系新聞「Novaja Gazeta(ノヴァジャ・ガゼータ)」の編集長ドミトリー・ムラトフ氏の2人を選んだと発表した(「ノーベル平和賞2021」プレスリリースWeb版)。

   やはりそうかと感じたことがあった。中国では今回のノーベル平和賞の受賞について、国営の新華社通信などの主要メディアは報じていない。独裁的な政権に立ち向かうジャーナリストの受賞決定に、中国政府が報道を規制した可能性がある(10月8日付・NNNニュースWeb版)。では、なぜ中国政府は今回のノーベル平和賞受賞を隠すのか。いわく因縁がある。

   中国政府に民主化を求めたことが国家転覆罪にあたるとして有罪判決を受けた、作家で人権活動家の劉暁波氏は服役中の2010年にノーベル平和賞を受賞した。肝臓を患っていたが、国外での治療を認められず2017年7月に死亡した。中国在住の中国人として初のノーベル賞受賞者だったが、劉氏は「この受賞は天安門事件(19896月)で犠牲になった人々の魂に贈られたものだ」と語ったことでも知られる。その遺体は火葬にされ、遺骨は海にまかれた。中国当局とすれば、「劉暁波」を人民の記憶から消し去ろうとしたのだろう。反骨のジャーナリストがノーベル平和賞を受賞したことを人民が知ると「劉暁波」が想起される。そこで報道をいっさい認めないのではないか。

   あるいはこの問題も避けたかったのかもしれない。ことし6月、中国政府への批判を続けてきた香港の新聞「蘋果日報(アップル・デイリー)」が発行停止に追い込まれ、紙面の主筆や中国問題を担当する論説委員も逮捕された。蘋果日報が狙い撃ちされたのは昨年8月だった。創業者の黎智英(ジミー・ライ)氏が香港国家安全維持法(国安法)と詐欺の容疑で逮捕され、ことし2月、禁固1年2月の実刑判決を受けている。中国政府とすれば、この点からも体制に批判的なジャーナリストのノーベル平和賞受賞は好ましくないと判断した可能性もある。

  いずれの理由にしても、中国政府にとってはジャーナリストのノーベル平和賞受賞は「不都合な真実」なのだろう。

⇒11日(月)夜・金沢の天気     くもり

★雪国とスコップの「マイクロプラスティック問題」

★雪国とスコップの「マイクロプラスティック問題」

   アメリカCNNのニュースWeb版(12月11日付)で、覆面のパロディ画家、バンクシーの新作を楽しませてもらった。「Aachoo!! : Banksy confirms new sneezing woman mural as his latest work」と題した話題で、イギリス・イングランドの民家の壁に描かれている。くしゃみをする老婆が顔をゆがめ、手にしていたステッキとポシェットを思わず放り出し、口から噴き出した飛沫の先には入れ歯が飛んでいる=写真・上=。笑える壁画だが、よく考えると、日本でも極たまに街で見かける光景ではある。

   話は変わる。けさ金沢では10㌢ほどの積雪になっていた。この時季、さらに積もると近所の人たちがスコップで道路の雪すかし(除雪)を始める。自宅の前の雪は自分たちで除雪する。雪国の住民の「自助・共助」の美しい街の光景ではある。ただ、今日的な問題もはらんでいる。スコップだ。

   かつて、鉄製が多かったが、軽量化とともにアルミ製に変化。さらに、最近はプラスチックなど樹脂製が主流だ。除雪する路面はコンクリートやアスファルトなので、そこをスコップですかすとプラスチック樹脂が摩耗する=写真・下=。微細な破片は側溝を通じて川に流れ、海に出て漂うことになる。

   粉々に砕けたプラスチックが海を漂い、海中の有害物質を濃縮させる。とくに、油に溶けやすいPCB(ポリ塩化ビフェニール)などの有害物質を表面に吸着させる働きを持っているとされる。そのマイクロプラスチックを小魚が体内に取り込み、さらに小魚を食べる魚に有害物質が蓄積される。食物連鎖で最後に人が魚を獲って食べる。

   この不都合は真実の解決方法はただ一つ。一部には製品化されたものもあるが、スコップのさじ部分の尖端を金属にすることだろう。これを法令で措置すべきではないだろうか。雪国・秋田出身の菅総理ならばこの解決策のイメージはわくかもしれない。「2050年のカーボンニュートラル」宣言の次は、「マイクロプラスチック・ゼロ宣言」を出してほしい。

⇒20日(日)朝・金沢の天気   ゆき