#ワクチン

☆ワクチンへの期待と憂鬱

☆ワクチンへの期待と憂鬱

   新型コロナウイルスの感染状況が悪化している。朝日新聞Web版(5月14日付)によると、政府がきょう14日午前に開いた専門家による「基本的対処方針分科会」では、特別措置法に基づく緊急事態宣言の対象に、北海道、岡山、広島の3道県を新たに加える諮問を出し直し、了承された。期間は今月16日から31日まで。また、群馬と石川、熊本の3県は、緊急事態宣言に準じる「まん延防止等重点措置」の対象地域に加えた。期間は16日から6月13日まで。

   石川の「まん延防止等重点措置」の対象地域は金沢市となる。「重点措置」の適用が決まったことを受けて、石川県の谷本知事は、今月31日と来月1日に県内で行う予定の東京オリンピックの聖火リレーの公道での開催を中止すると発表した。聖火リレーの代替方法を検討するという(時事通信Web版)。

   金沢市に住んでいて、ただただ待っているのがワクチン接種だ。同市のワクチン接種の予約受付は今月6日に始まったが、自身の予約はまだ取れていない。市のコールセンタ-とはようやく12日に電話が繋がった。ところが、ワクチン接種を行う市内201の医療機関はすでに申し込みが満杯の状態で、今月31日から再度、予約受付を開始するとの返事だった。この日、予約受付に使用しているアメリカの顧客管理システム「Salesforce」が一時ダウン、予約受付もストップするなど混乱が続いていた。

   友人たちとメールでやり取りすると、「ワクチン神話はそのうち崩壊する。オレは接種しない」との意見もある。この声は少数派だが、確かに、石川県ではファイザー製のワクチンを2回接種(3月13日、4月3日)を終えた病院の女性職員が感染したことが報じられた(4月12日付・メディア各社)。2回のワクチン接種を完了しているにもかかわらず発症することを、「ブレイクスルー感染」と言うそうだ。また、全身にアレルギーが出たり、急に血圧が低下して気分が悪くなったという、アナフィラキシー・ショックを体感した知人もいる。さらに、次々と出現する変異株にワクチンがどこまで効果があるかは不透明という印象はぬぐえない。

   一方で、「ワクチン先進国」のアメリカの疾病対策センター(CDC)は、新型コロナウイルスを巡る指針を改定し、ワクチン接種を完了した人は屋外および屋内の大半の場所でのマスク着用は不要と定めた。また、 ソーシャルディスタンス(社会的距離)についても、大半の場所で維持する必要はないとした。ただ、航空機や電車、空港や駅、病院では引き続きマスクの着用を推奨した(5月13日付・ロイター通信Web版日本語)。

   アメリカでは、医療従事者の25%が接種拒否しているとニュース(2021年1月8日付・ロイター通信Web版日本語)になっていたが、その後、どのような展開になっているのか。日本でもことし2月から医療従事者480万人に対するワクチン接種が始まったが、これまで1回接種は336万人、2回接種は152万人となっている(総理官邸公式ホームページ・5月13日付)。単純に計算すると5月に入っても、144万人が1回も接種していないことになる。率換算で30%だ。これはワクチン配布の単なる遅れなのか、あるいは拒否なのか。

   日本ではワクチンの普及が遅れているがゆえにワクチンに対する疑心暗鬼が生じるのか。期待と憂鬱が交錯する。とりとめのない話になってしまった。(※写真は、ラファエロ作『アテネの学堂』)

⇒14日(金)夜・金沢の天気       くもり

☆広告メッセージの凄み 「政治に殺される」

☆広告メッセージの凄み 「政治に殺される」

   きのう朝8時39分に友人からメールが届いた。「おはようございます。今日の読売新聞です」と書かれ、画像が貼り付けられていた。「ワクチンもない。クスリもない。タケヤリで戦えというのか。このままじゃ、政治に殺される。」。出版社の宝島社の全30段(左右両面)の全面広告だ=写真・上=。図柄をよく見ると、戦時下の子どもたちの竹槍訓練の写真の真ん中に赤いウイルスがある。見ようによっては、国旗の日の丸の部分がウイルスになっている。

   キャッチコピーの下に趣旨が述べられている。「私たちは騙されている。この一年は、いったい何だったのか。いつまで自粛をすればいいのか。我慢大会は、もう終わりにして欲しい。ごちゃごちゃ言い訳するな。無理を強いるだけで、なにひとつ変わらないではないか。今こそ、怒りの声をあげるべきだ。」と。

   実は4日前の今月7日にメールを送ってくれた友人たち3人で昼食を伴にした折に、まさに、キャッチコピーや趣旨文と同様のフレーズが次々と出て、話が盛り上がった。「いまだにワクチンも接種できない。日本はまるで敗戦国だ」と。

   この広告は、読売のほかに朝日、日経の朝刊にも掲載されていた。宝島社はこれまでも全面広告を出している。印象深いのが、2019年1月7日付だった。「敵は、嘘。」(読売新聞)と「嘘つきは、戦争の始まり。」(朝日新聞)の2パターンあった=写真・下=。

   「敵は、嘘。」はデザインがイタリア・ローマにある石彫刻『真実の口』だった。嘘つきが手を口に入れると手が抜けなくなるという伝説がある。「いい年した大人が嘘をつき、謝罪して、居直って恥ずかしくないのか。この負の連鎖はきっと私たちをとんでもない場所へ連れてゆく。嘘に慣れるな、嘘を止めろ、今年、嘘をやっつけろ。」と。当時国会で追及されていた森友・加計問題のことを指していた。

   そして、「嘘つきは、戦争の始まり。」のデザインは湾岸戦争(1991年)のとき世界に広がった、重油にまみれた水鳥の画像だった。当時は、イラクのサダム・フセインがわざと油田の油を海に放出し、環境破壊で海の生物が犠牲になっていると報じられていた。また、イラクがアメリカ海兵隊部隊の沿岸上陸を阻むためのものであるとの報道や、多国籍軍によるイラクの爆撃により原油の流出が生じたなど、その真偽は定かではない。この広告の掲載のときは、アメリカ大統領のトランプ氏が2017年の就任時からメディアに対して「フェイクニュース」を連発していた。為政者こそ軽々しく嘘をつくな、というメッセージだった。

   今回の広告は、コロナ禍で後手後手になっている為政者をダイレクトに突き刺す広告である。企業広告とは言え、国民の気持ちを代弁するメッセージの数々に喝采を送りたい。

⇒12日(水)夜・金沢の天気      はれ

★中国のワクチン外交 「WHOお墨付き」の裏読み

★中国のワクチン外交 「WHOお墨付き」の裏読み

   WHOの「中国寄り」、またか。時事通信Web版(5月8日付)によると、WHOは中国国有製薬大手、中国医薬集団(シノファーム)が開発した新型コロナウイルスワクチンの緊急使用を承認した。治験などから推定される有効性は79%という。中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)のワクチンについても審査中で、近く結果が発表される見通し。

   WHOの公式ホームページをチェックする。「WHO lists additional COVID-19 vaccine for emergency use and issues interim policy recommendations」のページに承認に至った経緯を紹介している。以下、ポイント。シノファームのワクチンに関しては、WHOは製造施設の現地査察を行った。WHOの予防接種に関する戦略的諮問グループ(SAGE)は入手可能なすべての証拠に基づいて、症候性および入院性疾患に対するワクチンの有効性はすべての年齢層を合わせて79%と推定した。ただし、臨床試験に登録された高齢者(60歳以上)がほとんどいなかったため、この年齢層での有効性を推定できなかった。高齢者とそれ以外の年代で有効性が異なるという分析結果と理論的な根拠はない。

   要は、緊急使用として有効性79%のワクチンを承認した。データは中国の生産現場を訪れて入手したもので、WHOが独自に医療現場で治験に立ち会って得たデータではない。60歳以上の高齢者への有効性についてのデータはない。つまり、消去法でのデータだ。

   実は中国のワクチンの有効性を疑うニュースが以前報じられていた。イギリスのBBCニュースWeb版(2021年4月12日付)は「Chinese official says local vaccines ‘don’t have high protection rates’」の見出しで伝えている=写真=。中国の疾病対策センター(CDC)のトップが4月10日の記者会見で、中国で現在使われているワクチンについて、「予防できる確率はあまり高くない」と述べ、「効果を高めるため、いくつかのワクチンを混合させることを政府として検討している」と述べた。しかし、その後、トップは予防効果が低いとした点について、「完全な誤解」と発言を撤回した。

   BBCは同じ記事で、中国のシノバックのワクチンを事例に有効性の数値を上げている。ブラジルでの臨床試験の結果で有効性は50.4%、トルコとインドネシアで実施された臨床試験の中間結果では有効性は65~91%だった。WHOはワクチン承認の条件として、50%以上を目安としている。

   アメリカのファイザーやモデルナ、イギリスのアストラゼネカなど欧米のワクチンの有効性は90%前後かそれ以上と報じられている。中国CDCのトップが「予防できる確率はあまり高くない」と発言して1ヵ月、それから各段にワクチンの有効性が向上したとは考えにくい。WHOはシノファームの「79%」の論拠をもっと明確に示すべきだろう。

   WHOはワクチンを途上国や貧困国などへ配分できるよう、国際的な枠組み「COVAX」を立ち上げたが、製薬メーカーが欧米に偏っており、ワクチン供給がままならない状況に陥っている。焦りを感じたWHOのテドロス事務局長による緊急措置だろう。が、もう一つのシナリオを裏読みしてみる。

   中国のオリンピック委員会はIOCのバッハ会長に、今夏の東京五輪と来年の北京冬季五輪の参加者にワクチンを提供したいとの申し出を行った(2012年3月11日付・ロイター通信Web版日本語)。新疆ウイグルなど少数民族や香港での統制強化が問題視されて欧米などで北京五輪ボイコットの動きに反応したのだろう。このとき、バッハ氏は「WHOのお墨付きが必要だ」とアドバイスしたのではないだろうか。そこで、習近平国家主席はWHOのテドロス氏に依頼。今月7日にテドロス氏から緊急使用ということで承認は可能との連絡が入った。するとさっそく習氏はバッハ氏に電話をし、「IOCと引き続き連携し、東京五輪の開催を支持したい」と表明した(5月7日付・共同通信Web版)。

   時間的なタイミングを読めば、上記のようなストーリーもできるのだ。中国はこれから「WHOのお墨付きがある」と大手を振ってワクチン外交を展開することだろう。

⇒9日(日)午前・金沢の天気     あめ後はれ

★ワクチン敗戦国の無残な姿~下

★ワクチン敗戦国の無残な姿~下

   新型コロナウイルスのワクチンをめぐって、興味深いニュースが流れていた。NHKニュースWeb版(5月6日付)によると、WTO(世界貿易機関)は、ワクチンの供給を拡大するためにワクチンの特許権を一時的に停止すべきかどうか協議している。南アフリカとインドが低価格のジェネリックワクチンを自由に生産できるよう、特許権を一時的に停止することを提案し、ワクチンを十分に確保できていない途上国の間で支持が広がっている。これについて、アメリカ政府は特許権の停止を支持すると表明した。

    予約で混乱、コロナ禍は拡大、まるで破滅の行進曲  

   また、時事通信Web版(同7日付)によると、ドイツ政府は生産能力の増強を目指すべきだとして消極的な姿勢を示した。報道官は声明で「ワクチン生産の障害となっているのは、生産能力と高い品質が要求されることであって、特許ではない」と強調。「知的財産権の保護は技術革新の源泉であり、将来もそうあるべきだ」と指摘した。

   記事を読んでの自身の感想で言えば、「ジェネリックワクチンはそう簡単ではない」ということだ。先発メーカーがコストと時間をかけて開発した新薬(先発医薬品)を安価に大量生産という目的のために簡単に技術を渡せるものなのか。特許権の一時的停止ではなく、むしろ、ワクチン製造メーカーが信頼がおけると判断したメーカーに委託生産をするという方式でなければ技術は伝わらない。この国際的な論議の中で、日本政府はどのような考えなのだろうか。日本国内での委託生産を積極的に受け入れると表明した方がよいでのはないか。

   きのうの続き。金沢市は6日にワクチン接種の予約受付を開始したが、市内の医療機関に足を運んでも受け付けてもらえず、コールセンターに電話しても繋がらない状態だった。朝9時に受付開始なのでけさ電話したが、『回線が混み合ってるのでかけ直して下さい』と自動音声が繰り返されるだけだった。結局、きょうも予約はできなかった。別に焦ってはいないのだが、行動範囲が狭められていることに気分がうっ積している。

   金沢市で起きているワクチン接種の予約をめぐるトラブルは全国でも起きている。横浜市では、80歳以上の34万人を対象に今月3日午前9時に始まった。ところが、専用ホームページや電話での申し込みが殺到し、45分で受付中止となった。サーバーを増設するなどして5日に再開したものの、電話は終日かかりにくい状態が続いた。6日朝、今回用意した7万6千人分の予約が埋まり、受付はいったん締め切った(5月6日付・毎日新聞Web版)。電話が繋がらない、アプリでアクセスできない、そのように取り残されたシニアの人たちはどう思っているだろうか。北陸では「ワクチンよこせ」の一揆が起きそうな気配だ。

   オープンな接種はできないものだろうか。たとえば、選挙管理委員会と連携して、予約なしで有権者名簿をチェックするだけで市内の地区ごとで接種ができるようにすればどうだろう。場所は選挙のように体育館を使う。その代わり、地区によって接種日が異なる。そうなれば、少なくとも予約の混乱は防げるのではないか。

   きょう石川県は1日の感染者としては最多となる47人の感染が確認され、1人が亡くなったと発表した。県ではコロナ禍で感染拡大に歯止めがかからないとして、政府に対し、金沢市を対象地域として「まん延防止等重点措置」の適用を要請した(6日付・石川県庁公式ホームページ)。これにともない、金沢市内の飲食店の営業時間は午後8時までになる見通しだ。ワクチンは十分に届かない、コロナ禍はさらに拡大する。破滅の行進曲が聞こえてくるようだ。

(※写真はファイザー社のワクチン=同社の公式ホームページより)

⇒7日(金)夜・金沢の天気      くもり

☆ワクチン敗戦国の無残な姿~上

☆ワクチン敗戦国の無残な姿~上

   きょう6日、金沢市でも65歳以上を対象にした新型コロナウイルスのワクチン接種の予約受付が始まった。自身もその対象に入るのでさっそく自宅近くの内科医院へ申し込みに出かけた。「電話での申し込み」と市の説明書に書いてあったが、電話だと混雑してかかりにくいかもしれないと察して、直接申し込みに行くことにした。ところが、医院の受付の女性は「せっかくおいでいただきましたが、直接の申込受付はいたしておりません。市のコールセンターに電話して申し込むか、LINEでも予約ができます」とチラシ=写真=を出してきた。

      自国で開発できず、国民は求めさまよう、これが日本の姿か

   せっかく来たのにと文句の一つでもと思わないでもなかったが、「市の健康政策課の担当者からは医療機関に電話で直接申し込むことができる言われましたよ。わざわざ足を運んだのですから、受付の登録をしてくださいよ」とお願いした。すると、「当院では直接受け付けておりませんので市のコールセンターにお電話ください」の一点張りだ。すると、「そんなダラなね。せっかく来たのに」と背後から声がしたので振り返ると、順番待ちの人が5人いて、私と受付の女性のやり取り聞いていたようだ。「市のコールセンターに電話をかけたけど、電話が繋がらんからわざわざ来たんや。それがダメならどうすりゃいいんや」と、杖をついた高齢の男性が怒りだした。一触即発の状況だととっさに思い、「ここで言い合っていてもラチがあきませんので、自宅から気長にコールセンターに電話しましょう」と場をなだめて外に出た。

   そもそも、高齢者にLINEで予約を申し込めということ自体が間違っているのではないか。総務省「情報通信白書(令和2年版)」によると、70代(70-79歳)のSNS利用者は41%だ。さらに、「NTTドコモ」モバイル社会研究所のSNS利用動向についての調査リポート(2020年6月29日付)によると、スマホを所持する70代の46%がLINEを利用している。この割合でいくと、LINEを使っている70代は19%、つまり5人に1人ということになる。金沢市の65歳以上の人口は12万人なので、LINEで申し込んでいる人は2万2千人だ。残り9万8千人は電話で申し込むか、直接申し込むしかない。

   午後4時、コールセンターに30回目の電話をしたが、『回線が混み合ってるのでかけ直して下さい』と自動的に繰り返さるだけだった。そこで、近くの別の内科医院を探して申し込みに行った。この医院では窓口に「コロナワクチン受付」と貼り紙がしてあり、名簿に記入して待合室で順番を待った。番号は「165」だった。しばらくして受付の女性から名前が呼ばれた。「ウノさんは当院は初めてですよね。当院では通院をされておられる方のみワクチン接種は受け付けています。申し訳ありません」と。「えっ、でもコロナワクチン受付と書いてあるではないですか。ダメなんですか」と言うと、「配布されるワクチンの量が限られているということで仕方なく通院されている方を優先させていただいています」と。

   実に情けない気分になった。LINEは使わないことにしているので、わざわざ申し込みに出向いたのにこの様だ。その後、コ-ルセンターに電話しても繋がらない。高校時代からの友人が金沢に住んでいるので電話した。すると彼も通っている病院に申し込んだが、1週間後に再度申し込んでほしいと言われたという。「まるで日本はワクチン後進国だね」と言うと、彼は「いや、ワクチン敗戦国だよ」と返してきた。自国でワクチン開発をできず、他国の企業に頼らざるを得ない。一国の首相がわざわざ製薬会社の社長に電話して拝む頼むでワクチンの供給を懇願する。そして、国民はワクチンを求めてさまよっている。まさに、敗戦国の姿ではないか。

⇒6日(木)夜・金沢の天気     はれ

☆広く薄くばらまかれるワクチン

☆広く薄くばらまかれるワクチン

   65歳以上のシニアへの新型コロナウイルスのワクチン接種がきのう12日から始まった。自身もその対象なのだが、ニュースを視聴していて期待感どころか、モヤモヤ感がわいてくる。それはなぜか。先行して2月17日から始まった医療従事者への接種は12日までに168万9453回(首相官邸公式ホームページ)とある。ところが、医療従事者は480万人と言われているので、2回打つとなると960万回の接種が必要だ。ということは、接種率は17%にすぎない。

   国のワクチン接種の優先順位は  (1)医療従事者、 (2)高齢者(令和3年度中に65歳に達する人)、 (3)高齢者以外で基礎疾患を有する人や高齢者施設等で従事する人、 (4)それ以外の人となっている(厚労省公式ホームページ)。ワクチンの供給量は限られているので、医療現場に携わる人たちを最優先すべきではないだろうか。

   医療従事者への接種が中途半端なまま、今度は高齢者が対象となった。日本の高齢者は3600万人、7200万回の接種となる。自身が住む石川県ではきょうから接種が始まった。スタートは能登半島の尖端部分にある珠洲市。対象は75歳以上4000人だが、まず接種するのは1500人分。残り2500人は5月下旬以降に接種の見通し(4月14日付・北陸中日新聞)。実は、珠洲市は県内でも感染者ゼロの地域だ。言葉は適切ではないかもしれないが、感染者ゼロ地域にワクチンを回すより、まず医療従事者を優先すべきだ。

   きょう大阪府の新たな感染者が1000人超えと報道されているが、今後東京を含め大都会に感染拡大するであろうことは目に見えている。自身は医療の専門家ではないが、感染症対策としてのワクチンは「選択と集中」が効果を発揮するのであって、広く薄くばらまいても意味はないだろう。大都会での感染を抑えることは地方での感染を抑えることに結果的につながるのではないか。

   逆に、ワクチン供給量が限られているにもかかわらず、なぜ感染者が少ない地方にまで広く薄くばらまくのか。うがった見方かもしれないが、今年の総選挙を意識してのことか。ワクチンは大都会も地方も全県平等に配分せよと政治家たちが裏で動いているのか。「ワクチン担当大臣」は行革担当大臣の河野太郎氏だ。既成概念を突破するリーダーシップを期待しているのだが。ワクチン効果を高めてほしと誰しもが願っている。

(※写真は、ファイザー社のワクチン=同社の公式ホームページより)

⇒13日(水)夜・金沢の天気     くもり

☆身の回りのコロナ世情

☆身の回りのコロナ世情

   コロナ禍の世情を眺めてみると、実は身の回りにいろいろ起きていると気付く。きのう2日、コーヒーのカプセルを通販で注文している「ネスカフェ」からお詫びのメールが届いた。以下。

「専用カプセルをご購入いただいているお客様にお知らせとお詫びがございます。専用カプセルは、主にヨーロッパの工場で製造し、輸入していますが、世界的な商品の需要増加と昨年末からの国際輸送の逼迫により、現在一部の商品で欠品が発生しております。さらに、その他の商品の安定供給も困難な状況となりましたため、十分な供給体制が確保されるまでの間は、専用カプセルにおきまして、新規の定期お届け便への商品追加注文と単品購入を休止とさせていただきます」

   新型コロナウイルスのパンデミックで自宅でのコーヒ-飲みが世界中で急増していて、ヨーロッパでの生産が追いついていないという内容だった。5月半ばで再開するので、それまでは我が家もインスタントコーヒーで。

   先日自宅近くのガソリンスタンドで給油した。ガソリンはまだ半分ほど残っていたが、このところ毎日のように価格が値上がりしているので、1円でも安いうちにと消費者心理が働いて満タンにした。1㍑当たり149円だった。それにしても不思議だ。新型コロナウイルスの感染で、不要不急の外出自粛やオンライン会議、リモートワークの生活スタイルが定着して、自身もマイカーに乗る回数が減ったと実感している。街中でもコロナ禍以前の3分の2ほどの交通量だ。さらに、脱炭素化で「EVシフト」が加速し、電気自動車やプラグインハイブリッド車が目立つようになってきた。

         車のガソリン需要は全国、あるいはグローバルに見ても減少傾向だろう。脱炭素時代に入り、石油が余っていると思うのだが、ガソリンの小売価格が上がっている。解せない。

   そしてこれは、おそらく日本人の誰もの感じていることだ。なぜ日本の製薬メーカーが新型コロナウイルスのワクチンや治療薬を独自開発できないのか。メディアに報じられている開発メーカーは、ファイザーやモデルナ、アストラゼネカ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ノババックスなどアメリカやイギリスの会社だ。日本の製薬メーカーは不活化ワクチンというインフルエンザのワクチンをつくる伝統的な技術には強いが、独自にコロナワクチンを開発したというニュースを見たことも聞いたこともない。

   日本の最大手、武田薬品工業は売上高で世界トップ10に入るメガファーマ(巨大製薬企業)だ。それでも、コロナワクチンの独自開発をしていない。ただ、同社はノババックス(アメリカ)が開発したコロナワクチンについて、日本国内での臨床試験(治験)を開始したと発表した(2月24日付・時事通信Web版)。下請けだが、7月以降に結果をまとめ、厚生労働省に薬事承認を申請。年内の供給開始を目指すという。

   きょう石川県は、新たに11人に新型コロナウイルスへの感染が確認されたと発表した。きのうは14人で2日連続の二桁の人数だ。いよいよ第4波の始まりか。県内のワクチン接種は今月13日から一部自治体でようやく始まる。ワクチンから日本の滞った国の姿がよく見える。

⇒3日(土)夜・金沢の天気      はれ

☆春一番、ワクチン二番

☆春一番、ワクチン二番

   きょうは春本番かと思うほど暖かく、そして台風並みの風だった。北陸地方に春一番が吹いたと金沢地方気象台が発表した。とくにかく強烈な風だった。石川県内の最大瞬間風速は、能登で23.3㍍と2月の観測史上最大、金沢では21.2㍍だった。日中の最高気温は金沢で14.8度と4月上旬並みの暖かさ。自宅の庭や屋根の雪が見事に解けた。   

   そして待たれるのが新型コロナウイルスのワクチンだ。およそ4万人の医療従事者を対象に今月17日から接種が始まり、各地でニュースとなっている。政府は、接種が始まった富山県の富山労災病院で、副反応の疑いがある、じんましんの発生があったと、総理大臣官邸のきょうのツイッターで公表した=写真=。厚生労働省によると、19日午後5時現在でワクチンの接種を受けた人は5039人となっていて、国内での接種で副反応の疑いが公表されるのは初めて。厚生労働省は同じツイッターで、接種後15分以上は接種会場で様子を見るなどの安全対策の周知に努めていく、としている。医療従事者の次は65歳以上の高齢者なので、自身もぜひ接種に行こうと楽しみにしていたが、このニュースで少し気乗りがしなくなった。周囲の様子を見てからにしようか、と。

   このところ石川県内の感染者は二桁が続いている。きょうも19人の感染が確認された(石川県庁公式ホームページ「新型コロナウイルス感染症の県内の患者発生状況」)。感染者は10歳未満から90歳以上と幅広い年代に及んでいる。ニュースによると、このうち金沢市の30代から40代の男性3人は接待を伴う飲食店のクラスター関係の感染者。また、40代の女性は県内の福祉施設で介護を担当する職員、50代の男性は県内の医療機関に勤務する医師だ。これまで県内では合計1779人が感染、うち61人が亡くなっている。病床使用率は45.7%だ。県内の感染状況を総合的に判断すると、ステージ2の「感染拡大警報レベル」にあたるとしている(2月20日付・NHKニュースWeb版)。

   春一番の訪れたとともに、コロナ禍の勢いも治まってほしいと思うのだが、現実はなかなか厳しい。

⇒20日(土)夜・金沢の天気    くもり

☆節分に叫ぶ「コロナは外」「ワクチンはうち」

☆節分に叫ぶ「コロナは外」「ワクチンはうち」

   きょうから2月、ことしは節分は2日、立春は3日となっている。国立天文台公式ホームページによると、立春はこれまでずっと4日だった。同天文台の観測によって、「太陽黄経が315度になった瞬間が属する日」を決めている。計算ではことしの立春の日は3日23時59分となるそうだ。1分の違いではあるものの、立春は3日となる。実にきわどい二十四節気ではある。従って、節分はその前日の2日となる。

   さて、節分と言えば豆まき。季節の変わり目に起きがちな病気や災害を鬼に見立て、それを追い払う風習が知られる。「鬼は外、福は内」と声を出しながら煎り豆をまき、豆を食べて厄除けをする。ここからきょうの論点だ。ことしの豆まきの掛け声は「コロナは外」「ワクチンはうち」ではないだろうか。ワクチンをめぐってさまざまな国際問題が起きている。

   WHOは新型コロナウイルスのワクチンについて、EU域内で製造されたワクチンの輸出を制限するというEUの発表を批判し、パンデミック長期化の原因となりかねないと警告した。EUは製薬会社の製造の遅れで当初契約された量が確保できていないことから、輸出制限を発表した(1月31日付・BBCニュースWeb版日本語)。今、世界ではワクチンの囲い込み騒動が起きているのだ。EUは域内で製造されたワクチンについて、域外への輸出規制を強化することは加盟国の人々を守るために必要な行動と表明していた。

   このEUの動きに対して、WHOのテドロス事務局長は、EUなどの富裕国がワクチンを独占して最貧国が苦しむならば、世界は「破滅的なモラル崩壊寸前」だと警告した(1月18日付・時事通信Web版)。まさにワクチンの争奪戦だ。

   EUはワクチン開発に際して域内の製薬メーカーなどに1億ユーロ(126億円)を投資していた。なので、EU域内の感情論だと、域内の製薬メーカーで生産されたワクチンがなぜ国民に行き渡らないのかと疑問に思ってるだろう。実際、EU4億4800万人のうち、これまで840万人しかワクチンを接種していない。ドイツ155万人、イタリア129万人、スペインは115万人、フランス100万人の順だ(1月26日付・BBCニュースWeb版)。ワクチ ンは域内で行き渡っていないのだ。そこにテドロ氏の「破滅的なモラル崩壊寸前」の警告はEUの国民の気持ちにどう響くのだろうか。

   日本政府はアメリカのファイザー社との契約でワクチンを確保し、医療従事者を対象に2月下旬から接種すると述べている。政府がファイザー社と契約した量は年内で7200万人分(1人2回で1億4400万回分)だ(1月30日付・NHKニュースWEB版)。ここに、WHOが日本に対し、「半分寄こせ」と直談判してきたら日本政府はどう動くのだろうか。国益との矛盾が見えてくる。日本は率直に「コロナは外」「ワクチンはうち」と相手をかわすことができるのだろうか。

(※写真は、ファイザー社のホームページより)

⇒1日(月)夜・金沢の天気   くもり

☆ワクチン囲い込み、WHOの思惑

☆ワクチン囲い込み、WHOの思惑

   けさWHOの公式ホームページをチェックした。直近8日(ジュネーブ現地時間)の記者会見(リモート)の模様が動画で掲載されている。その中で、テドロス事務局長は「The time to deliver vaccines equitably is now! 」(ワクチンを公平に届ける時が来た!)と語気を強めていた=写真=。会見のキーワードは「COVAX」だ。

   COVAXは、新型コロナスウイルスのワクチンを世界各国で共同購入して分配する国際的な枠組みで、WHOや途上国でのワクチン接種を支援する国際機関「Gavi」などが昨年7月に立ち上げた。日本やヨーロッパなどの高所得国などに拠出金を要請し、2021年末までに20億回分のワクチン確保を目指す。

   ところが、ワクチンの分配は現実に進んでいない。当日の会見で明かされたことは、ワクチンの接種や準備が42か国で始まり、このうち36ヵ国は経済的に豊かな高所得国、6ヵ国は中所得国で、低所得国には行き渡っていないというのが現実だ。

   テドロス氏は、高所得国によるワクチンの囲い込みの動きを牽制し、こう発言した。「Iurge countries that have contracted more vaccines than they will need, and are controlling the global supply, to also donate and release them to COVAX immediately, which is ready TODAY to rollout quickly.」(意訳:必要以上に多くのワクチンを契約し、世界の供給を管理している国々にも、すぐにCOVAXに寄付してリリースしてもらいたい。COVAXはきょうからすぐに展開できるようになっている)。そして冒頭の「The time to deliver vaccines equitably is now! 」となった。

   テドロス氏の発言はアメリカを強く意識したものとも読める。アメリカはこのCOVAXに参加していないのだ。自国の感染者2100万人、死亡者36万人(ジョンズ・ホプキンス大学ダッシュボード)という状況では、ワクチンを最優先で確保することがコロナ対策の課題だろう。アメリカのトランプ大統領は「WHOや中国の影響を受ける多国間組織の制約は受けない」と不信感を募らせ不参加を表明した経緯もある。

   おそらくアメリカのこうした態度に不満を抱いている。テドロス氏はこうも述べている。「This is a very dangerous time in the course of the pandemic and I do not want to see people become complacent as vaccines are starting to rollout.」(意訳:これはパンデミックの過程で非常に危険な時期であり、ワクチンが普及し始めていることに人々が満足するのを見たくはない)。

   パンデミックを終わらせるにはすべての国で一定の人々にワクチンを接種することであり、高所得国の全国民に接種することではない、ということだろう。ただ、テドロス氏の理想通りに低所得国にワクチンが持ち込まれたとして、はたして国民に公平な分配ができるのだろうか。国民同士の争奪戦になりかねない。

⇒9日(土)午前・金沢の天気    ゆき