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★ロシアのICBMに「反撃能力」は可能なのか

★ロシアのICBMに「反撃能力」は可能なのか

   政府はきのう、敵のミサイル発射拠点などを攻撃する「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の保有を明記した安全保障関連3文書を閣議決定した。北朝鮮による弾道ミサイル発射、ロシアのウクライナ侵攻、中国による尖閣諸島周辺への領海侵入など、隣国による安全保障面の脅威は増している。

   たとえば、ロシアのセルゲイ・ミロノフ下院副議長がロシアのオンラインメディア(4月4日付)で「どんな国でも、隣国に対して権利を主張することはできる」「多くの専門家によると、ロシアは北海道に対してあらゆる権利を持っている」と述べたことが、日本でも報道された。プーチン大統領がウクライナのゼレンスキー政権を「ネオナチ」と称して偽旗を掲げて侵攻を始めたように、「北海道の権利」の奪還に動くかもしれないと憶測を呼んだ。

   ロシア軍は今年9月1日から7日に、北方領土や日本海、オホーツク海など極東各地で戦略的軍事演習「ボストーク(東方)2022」を実施した。中国やインドなど14ヵ国の兵員5万人が参加。さらに、9月下旬から1ヵ月ほどかけて、中国海軍とロシア海軍の艦船計7隻が日本列島を半周した。

   問題はここからだ。ことし4月20日にロシアがカムチャッカ半島にICBMを撃ち込んでいる。ロシア国防省は日本時間の20日午後9時すぎ、北部アルハンゲリスク州にあるプレセツク宇宙基地の発射場から新型のICBM「サルマト」を発射し、およそ5700㌔東のカムチャツカ半島にあるクーラ試験場の目標に命中したと発表した(4月21日付・NHKニュースWeb版)。BBCニュースWeb版はロシア国防省が撮影した「サルマト」の発射映像(43秒)を公開している=写真=。

   読売新聞Web版(4月21日付)によると、このICBMは射程1万1000㌔以上、重量200㌧を超える重量があり、10以上の核弾頭の搭載が可能とされる。弾頭部分をマッハ20(時速約2万4500㌔)で滑空飛行させ、既存のアメリカのミサイル防衛網での迎撃は困難とも指摘される。ロシア大統領府の発表として、プーチン大統領は「ロシアの安全を確保し、攻撃的な言動でロシアを脅かす人々に再考を迫るだろう」と述べ、ウクライナ侵攻を受けて対露制裁を科している米欧をけん制した。

   以下、素人の目線だ。カムチャツカ半島の目標にICBMを撃ち込めるのであれば、目標を北海道に設定することも可能ではないか。ロシアが「北海道の権利」の奪還という偽旗作戦を掲げて動き、プレセツク宇宙基地の発射場に再びICBMを構えた場合、日本の反撃能力は可能なのだろうか。

⇒17日(土)夜・金沢の天気   あめ

★黄海に向け弾道ミサイルを発射した北朝鮮の意図は

★黄海に向け弾道ミサイルを発射した北朝鮮の意図は

    NHKニュースWeb版(5日付)によると、国連安保理の緊急会合は4日(日本時間5日午前4時すぎ)から始まり、北朝鮮による相次ぐ弾道ミサイルの発射について、各国からは、安保理決議の違反であり、地域の安全を脅かす危険な行為だと北朝鮮を非難する意見が相次いだ。北朝鮮の弾道ミサイル発射をめぐり安保理の緊急会合が開かれるのは10月5日以来。

   このうち、アメリカの国連大使は「意図的に緊張を高める北朝鮮の行動は責任ある国家の行動ではない」と非難した上で「2つの理事国は、北朝鮮のたび重なる決議違反を正当化するために力を注ぎ、北朝鮮を増長させた」と中国とロシアも非難した。

   これに対して中国とロシアの国連大使は、アメリカ軍が韓国軍とともに共同訓練を実施するなど地域の緊張を高めていると改めて主張した。今回も欧米各国と中国やロシアが対立し、安保理として一致した対応はとれなかった。まさに、安保理そのものの信頼性が危険にさらされている。

   安保理の緊急会合が終了したタイミングを見計らってなのか、北朝鮮は弾道ミサイルを発射した。韓国の聯合ニュースWeb版日本語(5日付)によると、韓国軍合同参謀本部の情報として、北朝鮮は同日午前11時32分ごろから同59分ごろにかけて、黄海に向けて短距離弾道ミサイル(SRBM)4発を発射したと報じている。ミサイルの飛行距離は約130㌔で、高度は約20㌔、速度は約マッハ5と推定される。

   発射地点となった北朝鮮の東林は中国・丹東から約20㌔の中朝国境地域。こうした黄海側からの中朝国境近くからこれまで日本海に向けて発射したことはあるものの、黄海に発射するのは極めて異例。韓国軍はその意図を分析している、と伝えている。

   アメリカと韓国が大規模空軍合同訓練「ビジラントストーム(Vigilant Storm)」を5日まで延長して行ったことに対する、北朝鮮の反発とみられる。が、なぜ黄海に向けて4発の弾道ミサイルを発射したのか。中国とすれば、「安保理でオマエのことを配慮してやったのに、なぜ、オレの方に向けて撃つんだ」と言いたいだろう。韓国軍による意図分析を待ちたい。

(※写真・上は国連安全保障理事会の会議室=国連広報センター公式サイトより、写真・下は北朝鮮の短距離弾道ミサイル=防衛省資料「北朝鮮による核・弾道ミサイル開発について」より)

⇒6日(日)午前・金沢の天気    はれ

★北朝鮮の挑発的な弾道ミサイル ロシアの終末的な核兵器

★北朝鮮の挑発的な弾道ミサイル ロシアの終末的な核兵器

   強烈なバトルとなるのか。NHKニュースWeb版(5日付)によると、きのう北朝鮮が中距離弾道ミサイル1発を発射したことへの対抗措置として、韓国軍とアメリカ軍はきょう未明に日本海に向けて地対地ミサイル4発を発射した。韓国軍が公開した映像では、移動式発射台から激しい光と煙を伴って発射されたミサイルが上昇していく様子が確認できる。米韓両軍による北朝鮮への対抗措置は、6月5日に短距離弾道ミサイルを8発発射したときも行っている。

   BBCニュースWeb版(5日付)=写真=も「North Korea fires ballistic missile over Japan」の見出しで日本列島を越えた北朝鮮の中距離弾道ミサイルの発射を伝えている。記事では、「Japan issued an alert to some citizens to take cover.」と、日本でのJアラートによる避難勧告の様子も伝えている。

   それにしても、世界の人々がこの北朝鮮の弾道ミサイルのニュースに接してどのような印象を抱いただろうか。日本を含め東アジアは戦争状態になりつつある、と。おそらく、インバウンド観光などへの影響も今度出てくるのではないだろうか。

   ここは終末期のバトルの様相だ。共同通信Web版(5日付)は、イギリスの『タイムズ(The Times)』の記事を引用して、ロシアのプーチン大統領がウクライナとの国境近辺で核実験を計画し、核兵器を使う意志を示そうとしているとの見方があり、NATOは加盟国に警告した、と報じている。その根拠として、ロシア国防省で核兵器の管理を担う秘密部門に関連があるとみられる列車がウクライナ方面に向けて動き出した、と報じている。

   プーチン氏はウクライナ侵攻についてのテレビ演説(9月22日)で、「西側諸国によるロシアへの核の脅威」と述べ、「反撃すべき兵器を多く持っている」「わが国の領土保全が脅かされるとき、ロシアと国民を守るために、ロシアが持つすべての手段を用いる。はったりではない」と発言していた(同日付・BBCニュースWeb版)。

   「はったりではない」とすれば、いよいよ本気だ。核兵器の使用がヒロシマとナガサキに続き現実となるのか。国連安保理が機能しない、混沌とした21世紀を象徴する展開となるのか。

⇒5日(水)夜・金沢の天気   くもり時々あめ

☆アメリカに渦巻くインフレ プーチンの「はったり」

☆アメリカに渦巻くインフレ プーチンの「はったり」

   アメリカのインフレとロシアの核に世界が翻弄されている。アメリカのCNNニュースWeb版は「Fed goes big again with third-straight three-quarter-point rate hike」の見出しで、FRBが21日まで開いた会合で、0.75%の大幅な利上げを決めたと報じた=写真・上=。3回連続で0.75%という異例の利上げに踏み切り、記録的なインフレを抑え込む姿勢を一段と鮮明にした。

   大幅利上げにより、政策金利の新たな目標は3-3.25%の範囲に決まった。これは世界的な金融危機が発生した2008年以来の高水準。この決定は、インフレと戦うための1980年代以来のFRBの最も厳しい政策だと指摘している。それはまた、住宅や乗用車、クレジットカードなどの借り入れのコストを押し上げることによって、何百万ものアメリカの企業や家計に経済的苦痛を引き起こす可能性が高い、とも述べている。

   今回の決定で円相場は24年ぶりとなる一時1㌦145円台をつけた。3月初めまでは1㌦=115円前後で安定していたが、半年余りで30円も円安が進んだ。日本も翻弄されている。 

   イギリスのBBCニュースWeb版は「Ukraine war: Putin orders partial mobilisation after facing setbacks」の見出しで、ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻についてテレビ演説で、予備役など30万人規模の動員を可能とする大統領令に署名した、と報じている=写真・下=。

   さらに、「西側諸国によるロシアへの核の脅威」と述べ、「反撃すべき兵器を多く持っている」、「わが国の領土保全が脅かされるとき、ロシアと国民を守るために、ロシアが持つすべての手段を用いる。はったりではない」と発言。プーチン大統領があらためて核兵器の使用をほのめかしたと報じている。

   ウクライナの猛反撃でロシアの劣勢が顕著となる中、戦況を打開したい考えなのかもしれないが、むしろプーチン大統領の焦りと窮地が浮き彫りになってきた。

   ちなみに、「はったりではない」のBBC記事原文は「It’s not a bluff」と記されている。

⇒22日(木)夜・金沢の天気     はれ

★「天動説」の人々とどう向き合うか

★「天動説」の人々とどう向き合うか

   ロシア人の35%が「太陽が地球のまわりを回っている」と信じている。朝日新聞Web版(8月2日付)は、ロシア政府系の「全ロシア世論調査センター」が発表した調査結果を報道した。国民の科学に対する理解度を測る調査。この天動説を信じる国民の割合は増えていて、この15年間で7ポイント上昇しているという。「初期の人類は恐竜と同時代に生きていた」との回答も21%という。調査は7月9日に電話で行われ、18歳以上の1600人が回答している。

   この記事を読んで、日本では中学の理科で地動説を習うのが、ロシアではこうした宇宙を学ぶ理科教育はないのかと不思議に感じた。何しろ、ロシアはアメリカと組んで国際宇宙ステーション(ISS)を建設するなど、「宇宙大国」のイメージがある。その国の3人に1人が天動説を信じている、とは。

   ただ、ロシアのプーチン大統領によるウクライナ侵攻を見ていると、ロシアを中心に世界は回っている、国境なんてない、という発想のようにも読める。プーチン氏も「天動説」派なのかと憶測したりする。「北海道の権利はロシアにある」と発言したセルゲイ・ミロノフ下院副議長もこの仲間か。

   中国の習近平国家主席も「天動説」派ではないだろうか。南シナ海はオレのものとばかりに島々に軍事基地を造るなどして実効支配。さらに「中国は一つ」なので台湾はオレのものとばかりに、軍事演習として称して台湾周辺や日本のEEZ内に弾道ミサイル11発を放った(今月4日)。そして、「尖閣諸島はオレのもの」と領海侵犯を重ねている。中国の大国意識には、中華は天下(世界)の中心という中華思想がある。脈々と受け継がれるこの思想には「国境」という発想がない。そのうち、沖縄もオレのものと言い出すチャンスを狙っているかもしれない。

   もう一人、北朝鮮の金正恩主席も「天動説」派かもしれない。日本海はオレのもとばかりに、今年に入って前例のないペースでミサイル発射を繰り返していて、3月24日には2017年以来となる大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試射も行った。そして、アメリカとの軍事衝突が起これば、北朝鮮は核抑止力を「動員する万全の態勢が整っている」と表明した(7月28日付・ロイター通信Web版日本語)。

   天動説を信じる人たちに、「地動説の科学をコペルニクスやガリレオから学んでください」と進言しても、おそらくもっともらしい反論がかえってくる。「エセ科学を吹聴する人は自分の知識が不十分だと認識する必要がある。あなたこそ学び直しなさい」と逆に説教されそう。

⇒13日(土)午前・金沢の天気    はれ

★乱世に突入するのか日本

★乱世に突入するのか日本

   安倍元総理が射殺されて世の中が騒然となって、そして一夜が明けた。ブログで振り返ってみると、安倍氏の写真で印象に残っているのはこれかもしれない(2020年8月31日付)。 

   この写真を見て感じたことは、お笑いコンビのようだ、と。写真は総理官邸のツイッター(2019年5月26日付)で公開している。安倍氏(右)とトランプ大統領(左)が千葉県のゴルフ場で自撮りした写真だ。とくに、安倍氏の顔がなんとなく、芸能人っぽく見える。アメリカのCNNニュース(日本版)は「外務省によれば、昼食は米国産の牛肉のダブルチーズバーガーだった。トランプ大統領は相撲観戦も行った。優勝した力士にはトロフィーの上部に翼を広げたワシをあしらった『トランプ杯』も贈呈した」と。安倍氏のきめの細かな外交のテクニックが懐かしく思える。

   不謹慎な表現かもしれないが、今回の事件で日本は乱世の様相を呈してきたのではないかと、ふと思った。銃規制がきびしい日本の社会にあって、専門知識があれば銃や弾を自作できる。それも無尽蔵にだ。これから銃がはびこるのではないか。そして、世の中ではモラルの崩壊が起きている。税金を役人が詐取する事件が横行する。東京国税局の職員が国の持続化給付金をだまし取ったとして6月に詐欺罪で逮捕・起訴されている。去年7月には経産省のキャリア官僚2人が国の家賃支援給付金を詐取して逮捕・起訴されている。学校の教師が児童・生徒に猥褻な行為するという不適切な事象が後を絶たない。

   そして天変地異だ。「いつ起きてもおかしくない」と言われ続けている巨大地震がある。南海トラフ地震だ。四国や近畿、東海地方の広い範囲でマグニチュード8から9クラスで震度6強や6弱の激しい揺れが生じ、死者32万人、負傷者62万と想定されている。この30年の間に70%から80%の確率で起きる(国の地震調査研究推進本部)。さらに、東京の都心南部でマグニチュード7.3の地震が起きた場合、死者は最大で6100人、負傷者は同じく9万3400人、帰宅困難者は453万人、揺れや火災による建物被害は19万4400棟に上ると推計されている(5月25日・東京都防災会議)。

   地震はいつやってくるか分からない。80%の確率だとしても30年後も地震は起きない可能性もある。20%の確率だとしても、あすやってくるかもしれない。

   リアリティがあるのは隣国のリスクだ。ロシア流強奪の論理は日本でもまかり通る。極東の石油天然ガス開発事業「サハリン2」の運営をロシアが新たに設立する法人に移管し、現在の運営会社の資産を無償譲渡するよう命じる大統領令が下された。この事業に参画している三井物産や三菱商事などは経営の枠組みから排除されることになるだろう。そして、ロシア政府は6月7日、北方四島周辺水域での日本漁船の安全操業に関する日ロ政府間協定の停止を表明し、スケソウダラやホッケの刺し網漁ができなくなる。

   さらに、ロシアの政党「公正ロシア」のミロノフ党首が4月1日に「一部の専門家によると、ロシアは北海道にすべての権利を有している」と党公式サイトを通じて見解を述べた(4月8日付・時事通信Web版)。さまざまな憶測を呼んでいる。中国は尖閣諸島は中国の領土として主張し続けている。8日未明にも、中国海警局の船2隻が尖閣諸島の沖合で、日本の漁船を追いかけるように日本の領海に侵入。7日夜にも64時間余りにわたって領海に侵入した(8日付・NHKニュースWeb版)。

   大量の難民問題も起こりうる。北朝鮮に有事が起これば、大量の難民が発生し、船に乗って逃げるだろう。リマン海流に乗って日本海側に漂着する。そうした難民をどう受け入れるのか、中には武装難民もいるだろう。

   乱世というさまざまなリスクを抱えた時代にこのまま突入するのか。世の中の乱れ、天変地異、隣国のさまざまなリスク・ファクターが集中する日本。安倍氏だったら、どう乗り切るだろうか。

⇒9日(土)夜・金沢の天気    あめ

☆「デフォルト国家」のあがき:2題

☆「デフォルト国家」のあがき:2題

   ウクライナに侵攻しているロシアのプーチン大統領のこの発言は悪あがきの強弁ではないだろうか。BBCニュースWeb版(6日付)=写真=は「Ukraine war: Putin warns over Western long-range weapons」の見出しで、もし欧米諸国がキーウに長距離兵器を送れば、ロシアはウクライナで攻撃する標的のリストを拡大するだろうと、プーチン大統領が国営テレビのインタビューで警告したと報じている。

   もともと、欧米諸国のウクライナ支援は防衛を条件としている。アメリカは最大70㌔離れた目標に命中できる精密誘導ロケット弾を発射するシステム(HIMARS)を供与する計画だが、ロシア国内を攻撃しないという保証をゼレンスキー大統領から得た後で提供する。ドイツもロシア軍の空爆から都市全体を守ることを可能にする防空システム「短距離空対空ミサイル」を提供する(同)。

   BBCの記事を深読みすると、逆にロシアの国内状況が見えてくる。軍事侵攻はきょうで103日目だ。戦争の長期化で苦しくなっている。ロシア国債は国際金融市場でデフォルトとみなされており(6月2日付・NHKニュースWeb版)、金融市場での信用失墜で戦費の調達や軍隊組織そのものが行き詰まっているに違いない。ウクライナに進軍するも、道路に埋められた地雷をチェックする装備が不足しているため多大な損害が出ていて、派兵を拒否するロシア兵が増えている(5月23日付・同)。

   プーチン氏の強弁は国内の経済や軍内部の乱れへのあせりを反映しているのかもしれない。ロシアが脅威を受けた場合はその武器を供与した国を標的にするとは、偽旗作戦の格好の言い分だろう。確たる証拠がなくても、「ウクライナ軍がHIMARSを我が国に撃ち込んだ」とロシアが言い張れば、アメリカに対する攻撃の条件が整う。敵を新たにつくることで国内を引き締めるのは常套手段だ。

   きのう5日午前9時過ぎ、北朝鮮は弾道ミサイルを相次いで発射した。防衛省公式サイト(5日付)をチェックするとミサイルは少なくとも6発。落下したのは北朝鮮東側の沿岸付近および日本海であり、日本のEEZ外だった。きょうの北朝鮮の労働新聞Webなどを検索したが、その記事が見当たらない。5月25日にICBMを含む3発を発射しているが、これも国営メディアは報じていない。これまで発射の成功や核・ミサイル能力の開発を大々的に報じてきたのに、5月4日の弾道ミサイル発射以降は沈黙が続いている。この沈黙は何を意味するのか。

   前日4日に米韓合同演習が行われ、原子力空母「ロナルド・レーガン」が加わった。5日の弾道ミサイルはこれを牽制する狙いがあったとみられるが、それだったらなおさら公表するはずだ。おそらく、国家自体がデフォルト状態に陥っているのではないか。「建国以来の大動乱」と称される新型コロナウイルスとみられる発熱症状の拡大で国全体がロックダウンとなり、それにともなう食糧難と飢え。このような状況下にあるとすれば、国営メディアが弾道ミサイルを報じても、人々は「ミサイルより、食べ物よこせ」とあがき叫ぶだろう。最高権力者はそれが怖いのではないか。

⇒6日(月)夕方・金沢の天気    あめ  

★日本の「ゆでガエル」化を狙う隣国の軍事行動

★日本の「ゆでガエル」化を狙う隣国の軍事行動

   現代の世界の国家観を表現する絶妙な言葉ではある。「ならず者」と「ゆでガエル」。この2つの言葉を用いたのは、自民党の外交部会長、佐藤正久氏だ。元陸上自衛官で参院議員、テレビメディアの政治討論会でもよく見かける。FNNプライムオンライン(25日付)によると、きのうの自民党外交部会で、佐藤氏は24日の日米豪印によるクアッド首脳会合の最中に、中国軍とロシア軍の爆撃機が日本周辺の日本海や東シナ海、それに太平洋上空で長距離にわたって共同飛行したことについて、「ならず者国家」「常軌を逸した示威行動」と批判した。

   中露の軍事演習は当日午前から午後にかけて、中国の爆撃機「H-6」2機が、日本海でロシアの爆撃機「TU-95」2機と合流して行われた。また、ロシアの情報収集機「IL-20」1機が北海道礼文島沖から能登半島沖までの公海上空を飛行していることが確認された。これに対して、航空自衛隊は戦闘機をスクランブル発進させて監視を行った。中露による長距離の軍事演習は2021年11月以降で4度目となる(24日付・防衛省公式サイト「大臣記者会見」)。

   この中国とロシアの示威行動に対して、佐藤氏は「これはクアッド開催国の日本に対する当て付け・当て擦り以外の何ものでもなく、中国自らが力の信奉者、『ならず者国家』であることを示したようなものだ」と批判。そして、ウクライナ侵略の教訓として、「遺憾の意を示すだけでは国を守れない」との認識を示した(25日付・FNNプライムオンライン)。

   「ゆでガエル」発言が飛び出したのはこのタイミングだった。「日本はこうした常軌を逸した行動に対して単なる抗議だけではなく、国際法に基づいて毅然とした行動を示すべき段階に来ている。日本が『ゆでガエル』になっては絶対にいけない」。そして、「単なる抗議だけではなく毅然とした行動を示すべき段階に来ている」と述べ、自衛隊によるオホーツク海での訓練や台湾海峡の通過を実施すべきだと主張した(同)。

   「ゆでガエル」は、徐々に進む危機に気づかずに対処が遅れて命取りになる例えだ。確かにいまの日本をあり様を見渡すと、まさに「ゆでガエル」だ。尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域に中国海警局の艦船が連日来ているにもかかわらず、日本は「遺憾」を繰り返すだけだ。上記の中露の共同飛行でも両国に対し外交ルートで懸念を伝達しているが、佐藤氏が述べているような「毅然とした行動」は取らなかった。

   中国とロシアが日本周辺で軍事演習を繰り返す狙いの一つは、日本の「ゆでガエル」化なのだろう。日本の安全保障環境にあえて接近を繰り返すことで、緊張感を慣れへと持って行き、ウクライナ侵攻のように「偽旗作戦」を駆使して一気に領土に踏み込む。そのような思惑なのだろう。

   一方、23日の日米首脳会談で岸田総理は防衛費の増額を表明した。そして25日午後、航空自衛隊千歳基地のF15戦闘機4機とアメリカ軍三沢基地のF16戦闘機4機が日本海の上空で共同飛行を行っている。日本とアメリカが連携して対抗措置、すなわち隣国との「にらみ合い」を演じるステージに入った。ウクライナ侵攻から学んだ教訓でもある。

⇒26日(木)午後・金沢の天気      くもり

★プーチン演説から読む「時代錯誤」な感覚

★プーチン演説から読む「時代錯誤」な感覚

   きのう9日、ロシアのプーチン大統領は赤の広場で開催した、第二次世界大戦での対ドイツ戦勝記念日の式典で演説を行った=写真、9日付・BBCニュースWeb版=。10分間ほどの演説。サイトで見る限りだが、プーチン氏の顔は腫れていて、病的な表情だと感じた。演説内容の日本語訳が新聞・テレビメディア各社のニュースサイトで掲載されている。読んで浮かんだのは「時代錯誤」という言葉だった。

   ウクライナ侵攻は自分たちを守るための行動だったと正当化している点が気になった。「われわれの責務は、ナチズムを倒し、世界規模の戦争の恐怖が繰り返されないよう、油断せず、あらゆる努力をするよう言い残した人たちの記憶を、大切にすることだ。だからこそ、国際関係におけるあらゆる立場の違いにもかかわらず、ロシアは常に、平等かつ不可分の安全保障体制、すなわち国際社会全体にとって必要不可欠な体制を構築するよう呼びかけてきた」(9日付・NHKニュースWeb版)

   世界を敵に回すような表現だが、これは事実だろうか。「去年12月、われわれは安全保障条約の締結を提案した。ロシアは西側諸国に対し、誠実な対話を行い、賢明な妥協策を模索し、互いの国益を考慮するよう促した。しかし、すべてはムダだった。NATO加盟国は、われわれの話を聞く耳を持たなかった」(同)

   史実をひっくり返すような主張も理解できない。「欧米は、この千年来の価値観を捨て去ろうとしているようだ。この道徳的な劣化が、第2次世界大戦の歴史を冷笑的に改ざんし、ロシア嫌悪症をあおり、売国奴を美化し、犠牲者の記憶をあざ笑い、勝利を苦労して勝ち取った人々の勇気を消し去るもととなっている」(同)

   冒頭の「時代錯誤」と感じる点は、ウクライナのゼレンスキー政権をネオナチ政権と呼び、その侵攻を「祖国の未来のため、ナチスを復活させないための戦い」と強調している点だ。相手をナチス呼ばわりすれば、武力侵攻などすべてのことが正当化されるとの主張だ。そして、自ら始めた戦争を人ごとのように語る理不尽さ、これが時代錯誤なのだ。実に無益な行為だ。

⇒10日(火)夜・金沢の天気    はれ

★世界のど真ん中で岸田総理「核兵器なき世界」訴えるとき

★世界のど真ん中で岸田総理「核兵器なき世界」訴えるとき

   岸田総理は先月26日、地元広島県の平和記念公園で原爆死没者慰霊碑に献花を行った。その際、平和記念資料館でアメリカのエマニュエル駐日大使と面談を行った。岸田氏は、「核兵器のない世界」の実現に向けて日米で協力していきたい旨を述べた。これに対し、エマニュエル氏は核なき世界の実現に向け日米間の連携をさらに深めたいと発言した(外務省公式サイト)。岸田氏は広島1区での当選10回、「ヒロシマ」の思いを知り尽くしている。エマニュエル氏にとっては重い発言だったに違いない。

   2015年5月に行われた核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議で当時外務大臣だった岸田氏の演説。「70年前、私の故郷広島において、一発の原子爆弾が13万人以上の尊い命を奪いました。残された者も後遺症に苦しみ、多くの者がその後命を落としました。『被爆体験は思い出したくないが、2度と繰り返さないために忘れないようにしている』、これは多くの被爆者の思いです。被爆地広島出身の外務大臣として、私は、被爆地の思いを胸に、この会議において『核兵器のない世界』に向けた取組を前進させる決意です」(岸田文雄公式サイト)。2016年5月、当時のアメリカのオバマ大統領の広島訪問が実現した際に岸田氏は原爆ドームなどについて通訳を介さずに英語で説明を行っている

   ロシアによるウクライナ侵攻が始まって70日ほどになるが、プチーン大統領は先月、4月27日の連邦国会で、ウクライナをめぐりロシアにとって戦略的脅威となる国には「電光石火」で報復すると欧米に警告した(29日付・BBCニュースWeb版日本語)。4月20日には、10以上の核弾頭の搭載が可能な新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)をカムチャッカ半島の標的地に落としている。明らかに核兵器の使用を示唆したものだろう。このロシアの動きは、核兵器の拡散を防止することが核兵器の廃絶につながるとの考えのもとで1970年に発効したNPTをその前提から瓦解させるものではないだろうか。

   「ヒロシマ」の岸田総理が世界にその存在感を示すべきときが来た。ニューヨーク、パリ、ロンドンなどで、持論の「核兵器のない世界」の実現に向けて訴えるべきだ。今月22日に来日するアメリカのバイデン大統領と広島・長崎でロシアに向けて「核で威嚇するな、NPTを壊すな」と強く主張すればよい。

(※写真は2016年4月に開催された広島でのG7外相会合=岸田文雄公式サイト)

⇒2日(月)夜・金沢の天気    くもり