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★「まるで独裁者の宴」詭弁を弄するロシア大統領

★「まるで独裁者の宴」詭弁を弄するロシア大統領

    ロシアがまた詭弁を弄している。イスラエルとパレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスの戦闘激化を受け、国連安全保障理事会は今月13日、非公開で対応を協議した。 会合ではロシアが人道的停戦を要求する決議案を配布。ロシアのネベンジャ国連大使は会合後、報道陣を前に「安保理はこの流血に終止符を打つため行動しなくてはならない」と主張。決議案は全ての暴力とテロ行為を非難し、人道支援の円滑な提供を求める内容で、ネベンジャ国連大使は全国連加盟国に対し共同提案国になるよう呼び掛けた(14日付・時事通信Web版)。

   ロシアが国連安保理で他国の停戦を呼びかけ、一方で自国はウクライナへの侵略行為を続けている。まったく説得力のない決議案で、共同提案国になる必要はない。以下、憶測だが、ネベンジャ国連大使の決議案はウクライナ侵攻から他国の目を逸らし、自らを正当化する策ではないか。おそらくこの決議案はプーチン大統領の命令によるものだろう。

   ウクライナのゼレンスキー政権をネオナチ政権と呼び、その侵攻を「祖国の未来のため、ナチスを復活させないための戦い」と強調し、侵攻を始めた。相手をナチス呼ばわりすれば、武力侵攻などすべてのことが正当化されるとの詭弁だ。国連安保理での決議案も、自ら始めた戦争を棚に上げて他国の戦争を非難する。まさに、プーチン大統領の「独裁者の宴」のようだ。    

  ICC(国際刑事裁判所)はことし3月、プーチン大統領とマリヤ・リボワベロワ大統領全権代表について、ウクライナ侵攻で占領した地域の児童養護施設などから少なくとも何百人もの子どもたちロシアに連れ去ったとして、国際法上の戦争犯罪の疑いで逮捕状を出した(3月18日付・NHKニュースWeb版)。同日のCNNニュースWeb版日本語によると、ゼレンスキー大統領はICCの逮捕状について、「我が国の法執行当局で進行中の刑事手続きでは、ウクライナの子ども1万6000人以上が占領者(ロシア)によって強制連行されたことが既に確認されている」と述べている。   

   一方、ロシア側は戦闘地域から子どもを「保護している」と主張している。保護を理由に子どもたちをロシアに連れて行く行為。まるで、子どもたちを「戦利品」のように扱っている。

(※写真は、第二次世界大戦での対ドイツ戦勝記念日式典で演説を行ったプーチン大統領。相手をナチス呼ばわりして武力侵攻を正当化した=2022年5月9日付・BBCニュースWeb版)

⇒14日(土)夜・能登の天気    くもり

☆北の偵察衛星は開発支援 ロシアへの武器供与は沈黙

☆北の偵察衛星は開発支援 ロシアへの武器供与は沈黙

   この弾道ミサイル発射は祝砲なのか・・・。北朝鮮はきょう午前11時台に2発の弾道ミサイルを半島の西岸付近から日本海に向けて発射した。防衛省公式サイトによると、11時41分に発射した弾道ミサイルは最高高度がおよそ50㌔で、約350㌔飛翔したと推測される。2発目は11時51分の発射で、最高高度がおよそ50㌔、約650㌔飛翔したと推測される。落下した場所は日本のEEZの外側だった。

   防衛省が落下箇所を記したイメージ図を見てみると、ウラジオストクのほぼ真南に位置する。発射された時間帯は、北朝鮮の金総書記が列車に乗って、ウラジオストクから約1000㌔離れたアムール州の「ボストーチヌイ宇宙基地」に向かっていた途中だ。タイミングといい、距離感といい、金総書記にロシアのプーチン大統領との首脳会談が成功裏に運ぶようにと願った祝砲のようにも思える。あるいは、ロシアと北朝鮮の同盟関係を誇示した、日米韓同盟に対する威圧行為なのか。

   では、ボストーチヌイ宇宙基地での首脳会談でどのような内容が交わされたのか。BBCはWeb版で「Vladimir Putin signals help for Kim Jong Un but quiet on weapons」の見出しで、プーチン大統領は金総書記に支援の合図をするも、武器に関しては沈黙、と伝えている。そもそも、なぜ宇宙基地が会談場所として選ばれたのか。記事によると、ロシアが北朝鮮の偵察衛星の開発を支援するかどうか、記者に尋ねられたプーチン氏は、「これが我々がボストーチヌイ宇宙基地に来た理由だ」と述べた。つまり、偵察衛星の打ち上げに2度失敗している北朝鮮に対し、プーチン氏は衛星の開発を支援する意思を明確に示した。実際に、金氏はロケットの組み立てや発射施設などを視察した。

   では、プーチン氏は金氏に何を求めたのか。金氏はロシアのウクライナ侵攻の支持を表明した。「われわれは常にプーチン大統領とロシアの指導者の決定を支持する。われわれは共に帝国主義との闘いに加わる」とロシアへの支持を改めて伝えた。ただ、会談では北朝鮮のロシアに対する武器供与の話が明らかになっていない。

   BBCは、北朝鮮はロシアに対して「応急措置」として武器を提供する可能性もある、と伝えている。この場合、北朝鮮の武器がロシアによってウクライナで使用されたことが明らかになれば、国連の北朝鮮に対する追加の制裁を引き起こす動きが出てくる。そこで、プーチン氏はあえて「quiet on weapons」だったと解説している。

⇒13日(水)夜・金沢の天気    はれ

★プリゴジン氏「墜落死」はプーチン大統領の「粛清」なのか

★プリゴジン氏「墜落死」はプーチン大統領の「粛清」なのか

   ロシアには「チーストカ(чистка、粛清)」の歴史がある。あのソビエト連邦時代の最高指導者だったスターリン(1878-1953)は国内の反革命や不正者を徹底的に弾圧したことで歴史上で知られる。粛清は、ある意味で敵の脅威をつくり出すことで国民を恐れさせ、団結させることにあるとされる。たった一日とは言え、私兵を率いて政府軍に盾突いたプリゴンジ氏はプーチン大統領にとっては、いわゆる「反逆者」だ。はたしてプーチン氏は彼を許すだろうか。

   その結末が、プリゴジン氏が搭乗していた自家用ジェット機が今月23日、モスクワ北西のトベリ州で墜落し、乗客乗員10人全員死亡したことだ。ジェット機はモスクワからサンクトペテルブルクに向かっていた。

   この事故について、アメリカの複数のメディアは機内に仕掛けられた爆発物が爆発したことによって墜落した可能性があると伝えている。24日付の「ウォール・ストリート・ジャーナル」は、「Early Intelligence Suggests Prigozhin Was Assassinated, U.S. Officials Say」の見出し=写真=で、アメリカ政府当局者の初期段階の分析として、機内に仕掛けられた爆発物が爆発したか、あるいは破壊工作がなされたことによる墜落と見られると報じている。また、イギリス政府当局者のコメントとして、ロシアの連邦保安庁(FSB)が関与した可能性が高い、と伝えている。

   「ニューヨーク・タイムズ」は、欧米の政府当局者の初期段階の分析としてジェット機内に仕掛けられた爆発物が有力な原因だとする一方、不純物が混ざった燃料が爆発を引き起こした可能性もあると報じている。

   この事故について、プーチン大統領は24日、ウクライナ東部ドネツク州の親ロシア派の代表と会談した際、「犠牲者の家族に哀悼の意を表したい」「プリゴジン氏のことは1990年代初めからよく知っている。複雑な運命を背負った男だ。人生で重大な過ちを犯したが、私の求めには必要な結果も達成した。才能のある人物だった。彼はきのう、アフリカから戻ったばかりでここで何人かの関係者と会っていた」などと述べ、プリゴジン氏の死亡を認めた(25日付・NHKニュースWeb版)。

   以下は憶測だ。プーチン大統領はプリゴジン氏の遺体があったとしてもおそらく遺族には引き渡さずに、完全に消去するのではないだろうか。ロシアの粛清方法は、墓などをつくらせずに、地上に存在したことを消すことだ。

⇒25日(金)夜・金沢の天気   はれ

★世界が加盟に動く 新たな2極化なのか

★世界が加盟に動く 新たな2極化なのか

   これはロシアのプーチン大統領の「敗北」を意味しているのかもしれない。国連憲章違反であるにもかかわらず偽旗を掲げてウクライナを侵攻して500日が過ぎ、さらに国連安保理を拒否権で機能不全に落とし込んでいるロシアに対して世界の多くの国々が疑心暗鬼になっている。これまで伝統的に中立政策を掲げてきた北欧のスウェーデンとフィンランドでさえ、NATOの加盟を申請し、フィンランドはことし4月に正式加盟。スウェーデンも難色を示してきたトルコが議会で批准の手続きを進めることになり、加盟に向け前進することになった(11日付・NHKニュースWeb版)。

   プーチン大統領にとってはNATO拡大そもののがロシアの脅威に映っているに違いない。そして、ウクライナも去年9月にNATOへの加盟を正式に申請している。ただ、NATOは第三国からの攻撃に対し加盟国が互いに防衛参画することで合意しているため、ウクライナの加盟がNATOとロシアの全面的な対立となる可能性もあるとして、加盟に慎重な国もある。そのNATOの首脳会議が11日から12日まで、ロシアと国境を接するバルト三国のリトアニアで開かれる。この会議でウクライナの加盟についてどのような議論が交わされるのか。

   「ブレグジット(Brexit)」と呼ばれ、イギリスがEUから離脱したのは2020年1月だった。そのイギリスが今月16日にニュージランドで開催されるTPP(環太平洋連携協定)の閣僚級会合で加盟を認めることが正式に承認される。IMFによると、イギリスの加盟によりTPPの経済圏は世界全体のGDP合計額の15%を占めることになる(今月8日付・Bloomberg-Web版日本語)。

   TPPは当初、アメリカを含めた12ヵ国の協定だったが、2017年にトランプ大統領が離脱を決め、日本など11ヵ国で「CPTPP(環太平洋パートナーシップ経済連携協定)」として再出発した。日本は引き続きアメリカに復帰を求めている(同)。ただ、アメリカは対中包囲網の構築に向けて、ローバルサウスの代表格であるインドとインドネシアを加えた新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の構築を進めている。

   軍事の対ロシア包囲網をNATOが、経済の対中国包囲網をアメリカが、それぞれ担っている。世界の新たな2極化の動きでもある。

⇒11日(火)午後・金沢の天気    くもり

☆粛清へと向かうのか 「プリゴジンの乱」の余波

☆粛清へと向かうのか 「プリゴジンの乱」の余波

   たった一日とは言え、私兵を率いて政府軍に盾突いたプリゴンジはプーチン大統領にとっては、いわゆる「反逆者」だ。はたしてプーチン氏は彼を許すだろうか。ロシアには「チーストカ(粛清)」の歴史がある。あのソビエト連邦時代の最高指導者だったスターリン(1878-1953)は反革命や不正者を徹底的に弾圧したことで歴史上で知られる。粛清は、ある意味で敵の脅威をつくり出すことで国民を恐れさせ、団結させることにあるとされる。プーチン大統領も国民の団結の「道具」として、プリゴジンの粛清を行うのではないか、との読みもある。(※写真は、6月25日付・BBCニュースWeb版)

   たとえは適切でないかもしれないが、ロシアにはもう一つの粛清の方法がある。それは墓などをつくらず、地上に存在したことを消去することだ。第二次世界大戦で、ヒトラー率いるドイツ軍は1945 年5月 8 日に無条件降伏したが、ヒトラーは降伏前の4月30日に自決する。遺体はヒトラーの遺言によって焼却されたものの、焼け残った遺体は当時ベルリンを占領していたソ連軍によって東ドイツのマクデブルクに運ばれ、ソ連諜報機関の事務所前の舗装の下に埋められた。1970年になって、ネオナチの崇拝目的になることを怖れ、遺体を再び焼却して遺灰をエルベ川に流したとされる(Wikipedia「アドルフ・ヒトラーの死」より)。

   この粛清の方法はロシアだけではない。第二次大戦後、極東軍事裁判(東京裁判)で死刑判決を受けた元総理の東條英機ら7人のA級戦犯の遺骨もそうだった。アメリカ軍は1948年12月23日、東京・巣鴨プリズンから遺体を運び出し、横浜市内の火葬場で焼かれ、遺骨は別々の骨つぼに納められた。そして、小型の軍用機に載せられ、上空から太平洋に散骨されている。

   また、ニューヨークの同時多発テロ(2001年9月11日)の首謀者とされたオサマ・ビン・ラディンに対する斬首作戦が2011年5月2日、アメリカ軍特殊部隊によって実行された。パキスタンのイスラマバードから60㌔ほど離れた潜伏先を奇襲して殺害。DNA鑑定で本人確認がなされた後、アラビア海で待機していた空母カール・ビンソンに遺体は移され、海に水葬された。

   遺骨が遺族に返還され、墓がつくられることになれば、その墓が将来、聖地化や崇拝の地になることを想定しての処置なのだろう。「死をもって罪をあがなう」という発想ではなく、存在証明を許さないのだ。プリゴジンの処遇をめぐっての書き出だしだったが、話がずいぶんと逸れた。

⇒29日(木)夜・金沢の天気    くもり時々あめ

★宗教画を強制移設 「聖戦」勝利はプーチンの願い

★宗教画を強制移設 「聖戦」勝利はプーチンの願い

          ロシアをめぐる騒々しいニュースは、「プリゴジンの乱」だけではないようだ。BBCニュースWeb版(今月5日付)は「Ukraine war: Holy Trinity painting on display in Moscow」の見出しで、ロシアでもっとも有名な宗教画とされる「聖三位一体」がプーチン大統領の命令で、国立美術館からモスクワ大聖堂に移され展示されたことが物議を醸している、と伝えている=写真=。

   宗教画は「イコン(Icon)」と称され、聖三位一体のイコンは15世紀初頭に描かれたもので、旧約聖書の一場面でとされる。16世紀にモスクワ教会はこれをイコンと定めて保管してきたが、ロシア革命の後は宗教活動が認められなくなったため、1929年から国立トレチャコフ美術館で所蔵されていた。それをプーチン大統領がロシア正教の総本山であるモスクワ大聖堂に強制的に移設し、6月4日から一般公開している。

  ただ、このイコンは壊れやすく、美術館ではこれまで温度と湿度が制御された部屋に置かれ、修復チームがメンテナンスを行ってきた。まさに、「it was like a person in intensive care(集中治療室にいる人のような)」状態だった(BBCニュースWeb版)。それほど破損が危ぶまれる作品を、プーチン氏はなぜ移設を命令したのか。

   ロシア正教の総主教はウクライナ侵攻を「holy war.(聖戦)」と称して、プーチン氏を支持してきた。そして、総主教は「This icon returns to the Church at a time when our Fatherland is confronting massive enemy forces」と信者に語っている。つまり、戦争中にイコンを大聖堂に戻すとロシアが勝利する、と。

   BBCはこう締めくくっている。「To make Russians believe that God is on their side. And to make them forget that it was their country that invaded Ukraine.」。プーチン大統領の狙いは、イコンがここにある限り敵国に勝てるとロシア人に信じさせる。それは、ウクライナを侵略したのはロシアであることを彼らに忘れさせるため、なのかもしれない、と。

   モスクワ大聖堂に展示されている聖三位一体のイコン。プーチン氏はイコンが奇跡をもたらすと本当に信じているのだろうか。

⇒27日(火)夜・金沢の天気    くもり時々あめ

☆ドローン攻撃が本当なら 「恥ずべきはクレムリン」

☆ドローン攻撃が本当なら 「恥ずべきはクレムリン」

   モスクワのクレムリン上院宮殿の建物の上にある旗ざおの近くでドローンが撃ち落された映像が世界のニュースになっている。メディア各社の報道によると、ロシア大統領府は3日、「2機の無人機が夜、首都モスクワのクレムリンにある大統領府を攻撃しようとした。無人機は軍や特殊部隊によってレーダーで無力化され、クレムリンの敷地内に破片が落下した。被害は出ていない」と発表した(NHKニュースWeb版)。

   また、ロシア大統領府は無人機による攻撃の試みはウクライナのゼレンスキー政権によるものだとして、「ロシアの大統領を狙ったテロ行為だ」と主張。そのうえで「ロシアは適切な時期と場所で報復する権利がある」と報復措置を取るとしている(同)。

   これに対して、ウクライナ大統領のスポークスマンは「ゼレンスキー大統領が以前に何度も述べたように、ウクライナは他国を攻撃するのではなく、自国の領土を解放するために自由に使えるあらゆる手段を使用している」と述べ、ドローンによるクレムリンへの攻撃を否定している(CNNニュースWeb版)。

   アメリカのブリンケン国務長官はワシントン・ポスト紙主催の会合で、何が起きたかは「全く分からない」とし、事実関係を確認すると表明。「ロシアの言うことをうのみにはしない」とも述べ、ロシアの主張に懐疑的な見方を示した(共同通信Web版)。クレムリンでのドローン撃墜がロシアの偽旗作戦(自作自演)かどうかを判断する決定的な証拠は見当たらないものの、だからと言って、証拠が見当たらなければそれが直ちにウクライナによる攻撃であることの証拠にはならない。 むしろ、証明すべきはロシア側の責任だろう。

   上記に関連して、BBCニュースWeb版(4日付)の論調はロシア側の矛盾を突いている=写真=。「Kremlin drone attack is highly embarrassing for Moscow」の見出しで、クレムリンが言っていることが真実であり、プーチン大統領を狙ったものだとすれば、それはクレムリンにとって「非常に恥ずかしい事件」ではないのか、と質している。要約すると、記事の写真にもあるようにクレムリンの空域は厳重な警備下にある。なぜ、ロシア軍はクレムリンに飛来するまでこのドローンを迎撃しなかったのか、大きな疑問が残る。むしろ、この矛盾を解明すべきではないのか、と。

           確かに、ウクライナのドローンが突然、クレムリンに現れたとすれば、それはなぜなのか、ロシアが証明しなければ、「やはり偽旗か」と世界のロシアに対する不信の念は一層深まる。

⇒4日(木)午後・金沢の天気    はれ  

☆北方四島は日本領と認めず その中国の思惑は何か

☆北方四島は日本領と認めず その中国の思惑は何か

   前回ブログの続き。北海道の根室の目と鼻の先にある歯舞諸島など北方領土で、ロシアは軍事演習を行う。極東を拠点とする太平洋艦隊を戦闘態勢に移行させ、サハリン本島と日本の北方領土周辺で仮想敵の上陸阻止を想定した軍事演習だ。時期は明らかにしていない。

   ロシア側は去年3月21日、日本との平和条約交渉の中断を一方的に表明して以降、立て続けに北方領土などで軍事演習を行っている。4月には国後島と択捉島にある2ヵ所の演習場で、1000人以上の兵士と軍事装備を投入し、対戦車ミサイルシステムや自走砲などの実弾発射を実施した。「北方四島は固有の領土」との立場を貫く日本を牽制し、ロシアの実効支配を強くアピールする狙いだろう。

   さらに気になるのは中国が、北方四島をめぐるロシアの領有権に軟化の姿勢を表明したことだ。共同通信Web版(4月4日付)によると、3月20-21日に習近平国家主席がプーチン大統領と行った会談で、北方四島の領有権問題について「(どちらか一方の)立場を取らない」と表明していたことが分かった。中国関係筋が明らかにした。中国は1964年に最高指導者だった毛沢東が北方四島は日本領だと明言して以降、その認識を崩していなかったが、ロシア側に歩み寄り、中立の立場に変更したことになる。

   表明した経緯はこうだ。会談でプーチン氏がロシアが去年3月に北方四島に設置した免税特区の活性化が重要だと指摘。先月16日の日韓首脳会談で日韓関係が改善したため、韓国企業による投資は望めないとの認識を示し、中国企業の投資を要請した。これに対し、習氏は領有権問題については「立場を取らない」と表明した。特区への投資に参加するかどうかは、経済政策を担う国家発展改革委員会の担当者に検討させるとのみ述べ、明確な回答は避けた(4月4日付・共同通信Web版)。

   以下はあくまでも憶測だ。この記事の発信は【北京共同】とあり、中国側から共同通信に伝わった情報だ。日本で報道されることで、日本側の反応を中国はうかがっているのだろう。さらに一歩踏み込んで、「免税店特区」と表現されているが、これはたとえで、プーチン氏は「軍事基地」への中国参加を促したのでないだろうか。習氏はとりあえず、領有権問題については「立場を取らない」と返答するにとどめた。北方四島をめぐり中露による何らかの駆け引きが始まっている、との憶測だ。別に根拠があるわけではない。(※地図は、外務省公式サイト「日本の領土をめぐる情勢」より)

⇒16日(日)夜・金沢の天気      くもり

★物騒な世の中「政治家テロ」日本と「北方領土に偽旗」ロシア

★物騒な世の中「政治家テロ」日本と「北方領土に偽旗」ロシア

   日本はいつの間にか「テロ多発国家」になった。報道によると、きょう15日午前11時半ごろ、和歌山市の雑賀崎漁港で、岸田総理が衆院和歌山1区の補欠選挙の応援演説を始める直前に、銀色で金属製とみられる筒状の爆発物が投げ込まれた。「ドン」という大きな爆発音とともに白い煙が上がった。岸田総理は現場から避難してけがはなく、30代の男性警察官1人が左腕にけがを負った。

   投げ込んだ男が警察官に取り押さえられた。威力業務妨害の疑いで現行犯逮捕されたのは兵庫県川西市に住む木村隆二容疑者、24歳。政治家への襲撃は去年7月8日、安倍元総理が参院選の応援で訪れた奈良市で街頭演説中に銃撃され死亡している。

   来月15日からG7広島サミットが開催される。世界のメディアの論調は、政治家へのテロが多発する日本は安全なのかと不安視するに違いない。

   話は変わる。「ロシアの言うことが信じられない、プーチンの言うことが信じられない」、世界の民主主義国家の多くの人々はそう思っているのではないだろうか。ウクライナ政府を「ネオナチ」呼ばわりして武力侵攻を正当化する偽旗作戦はその象徴的な事例だ。物騒な話になるが、その二の舞いが日本で起きるかも知れない。

   報道によると、ロシアのショイグ国防相は14日、ロシア軍幹部との会合で、極東ウラジオストクに司令部を置く太平洋艦隊が、北方領土やサハリンへの敵の上陸を阻止することを目的にした軍事演習を開始したと明らかにした。 演習では空軍、海軍、航空宇宙軍が参加し、ミサイルや魚雷発射などの対潜水艦攻撃の訓練も行う。「北方四島は固有の領土」との立場を貫く日本を牽制し、ロシアの実効支配を強くアピールする狙いだろう。

   北方領土の歯舞諸島などは根室の目と鼻の先にある。ここでロシアは敵の上陸を阻止する軍事演習を行うというのだ。日米安保条約があるので、ロシアの軍事演習を阻止すればよいと思ってしまうが、日本が実効支配できていない地域は日米安保の適用対象外となり、アメリカの防衛義務は生じない。北方領土がロシアによる不法占拠であるにもかかわらず、だ。

   去年4月4日、ロシアのセルゲイ・ミロノフ下院副議長がロシアのオンラインメディアで「どんな国でも、隣国に対して権利を主張することはできる」「多くの専門家によると、ロシアは北海道に対してあらゆる権利を持っている」と述べ、物議を醸した。これを口実に、プーチン大統領が「北海道の権利の奪還」という偽旗を掲げて動き出すのではないだろうか。ロシアの軍事演習はその予行ではないのか、とは考え過ぎだろうか。

⇒15日(土)夜・金沢の天気     くもり

☆ウクライナの子どもたちを「戦利品」のように扱うロシア

☆ウクライナの子どもたちを「戦利品」のように扱うロシア

   ICC(国際刑事裁判所)は先月3月17日、ロシアのプーチン大統領とマリヤ・リボワベロワ大統領全権代表について、ウクライナ侵攻で占領した地域の児童養護施設などから少なくとも何百人もの子どもたちロシアに連れ去ったとして、国際法上の戦争犯罪の疑いで逮捕状を出した(3月18日付・NHKニュースWeb版)。

   同日のCNNニュースWeb版日本語によると、ウクライナのゼレンスキー大統領はICCの逮捕状について、「我が国の法執行当局で進行中の刑事手続きでは、ウクライナの子ども1万6000人以上が占領者(ロシア)によって強制連行されたことが既に確認されている。だが、強制移送者の実数ははるかに多い可能性がある」と述べ、「そうした犯罪行為はテロ国家の最高指導者の指示なしには不可能だ」との見方を示した。

   では、連れ去れた子どもたちはロシアでどのように扱われていたのか。AFP通信などで断片的に伝えられているニュースを総合すると、以下の様になる。子どもたちは東部ハルキウや南部ヘルソン両州などから不法に連れ去られていった。子どもたちの多くは、里子(養子)になるか孤児院に行くかを自分で判断することになる。

   一方、ロシア側は戦闘地域から子どもを「保護している」とし、家族と再会できるよう手続きを進めていると主張している。クライナの孤児380人がロシアの里親に引き渡された。養子になった子どもはウクライナ国籍を維持するとともに、ロシア国籍も与えられた。

   また、施設に入ると、朝6時に起床し、体操のあと朝食。その後は勉強をしたり、ゲームをしたりする時間もあるようだ。時にはダンスパ-ティーやモスクワ市内の見学もあるようだ。ただ、このケースはロシア政府が「慈悲深い救援者」と宣伝するプロパガンダに使われている。実際は子どもたちに再教育や軍事訓練などが課せられているとの見方もある。

   保護を理由に子どもたちをロシアに連れて行く行為そものが、子どもたちを「戦利品」のように扱っている。これはICCが指摘する戦争犯罪というより、ジェノサイド(民族抹殺)の行為に相当するのではないだろうか。

(※写真は、第二次世界大戦での対ドイツ戦勝記念日式典で演説を行ったプーチン大統領。相手をナチス呼ばわりして武力侵攻を正当化した=2022年5月9日付・BBCニュースWeb版)

⇒10日(月)午後・金沢の天気     はれ