#ロケットマン

☆「壺中の政治家」「ドツボのロケットマン」

☆「壺中の政治家」「ドツボのロケットマン」

   二十四節季でいう寒露のころ。秋も深まり、床の間の掛け物を替えた。「壺中日月長」(こちゅうじつげつながし)。禅語で、壺の中という別世界で、時間に追われることなく悠々と人生を送る、悟りの境地と解釈している。掛け軸を眺めていて、ふと、ニュースの中で壺中の境地にいる人々の姿が浮かんできた。

   河野太郎デジタル大臣は記者会見(13日)で、2024年秋に現行の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に切り替えると発表した。また、24年度末としているマイナンバーカードと運転免許証の一体化時期の前倒しを検討することも明らかにした(13日付・毎日新聞Web版)。ことし8月10日の改造内閣でデジタル大臣に就任、河野氏らしい「突破力」を見せたようだ。

   河野氏の突破力でイメージするのは、防衛大臣だった2020年6月、地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画を撤回するとの唐突な表明だ。ミサイルのブースターと呼ばれる推進補助装置を基地内で落下させる想定だったが、基地の外に落下する可能性もあり、設備に大幅な改修と追加コストが必須となることから撤回に踏み切った。防衛大臣らしからぬ発言のように思えたが、基地周辺住民の将来不安を想定しての「突破発言」だった。他の政治家とは別の価値観を有する「壺中の政治家」ではある。

   この人の場合は、「ドツボにはまる」という表現がふさわしいのかもしれない。金正恩総書記。北朝鮮は14日午前1時47分、平壌近郊から、1発の弾道ミサイルを東方向の日本海に向けて発射した。最高高度は約50㌔で、650㌔程度飛翔し、日本のEEZ外に落下した。弾道ミサイルは変則軌道で飛翔した可能性がある(防衛省公式サイト)。弾道ミサイルの発射はことしに入って24回だ。9月25日以降は頻発していて8回(13発)になる。北朝鮮の労働新聞Web版(11日付)は、これまでの弾道ミサイルの発射について、「金総書記は人民軍の戦術核作戦部隊の軍事訓練を指揮した」との見出しで特集を組み、戦術核の搭載を想定したミサイルの発射であることを示唆した。

   2017年9月の国連総会で、当時のアメリカ大統領のトランプ氏が「ロケットマンが自殺行為の任務を進めている」と演説したが、まさにドツボにはまり込んでいる。

⇒15日(土)午前・金沢の天気   くもり時々はれ

★大陸間弾道ミサイル発射再開の地ならしか

★大陸間弾道ミサイル発射再開の地ならしか

    ことしに入って7回目のミサイル発射だ。松野官房長官はきょう午前9時、臨時会見を行った。総理官邸公式ホームページに掲載された会見動画によると、北朝鮮はきょう7時52分ごろ、北朝鮮内陸部から弾道ミサイル1発を東方向に発射。最高高度はおよそ2000㌔、飛しょう時間は30分、およそ800㌔を飛しょうし、日本海側のEEZ外に落下したものと推定される。付近を航行する航空機や船舶および関係機関への被害などは確認されていない。

   気になるのは、最高高度が2000㌔ということは、打ち上げ角度を高くする、いわゆる「ロフテッド軌道」型の弾道ミサイルということだ。2017年5月14日に発射した中距離弾道ミサイル(IRBM)級の新型弾道ミサイルは、2000㌔を超える高度に達した上で800㌔飛しょうさせている。さらに、同じ年の11月29日に発射した大陸間弾道ミサイル(ICBM)級新型弾道ミサイルは4000㌔を超える高度に達し、1000㌔を飛しょうした。ここから推測できることは、北朝鮮はICBMの発射の地ならしを始めたのではないか、ということだ。

   北朝鮮は今月19日に開いた朝鮮労働党の政治局会議で「アメリカ帝国主義との長期的な対決に徹底して準備しなければならない」とする方針を決定し、2018年に中止を表明していたICBMの発射実験や核実験については見直しを検討するとしている(1月27日付・NHKニュースWeb版)。

   このブログでは日本海側に住む者の一人の危機感として、北朝鮮のミサイル発射の動向をその都度記している。この1ヵ月で7回の発射は異常で、ミサイルの多様化には異様さを感じる。今月5日は極超音速の弾道ミサイルだった。11日の弾道ミサイルも極超音速型で、ミサイルから分離された弾頭が1000㌔先の目標に命中した。14日には鉄道から短距離弾道ミサイル2発を発射。17日に戦術誘導弾として弾道ミサイル2発を日本海上の島に「精密に打撃」した。25日にも長距離巡航ミサイル2発を「9137秒飛行し1800㌔先の島に命中」させている。6回目の27日は2発の戦術誘導弾を標的の島に「精密に打撃」、爆発威力は「設計上の要求を満たした」ものだった。

   そしていよいよ大陸間弾道ミサイル発射を再開させ、「ロケットマンが自殺行為の任務を進めている」(2017年9月、アメリカのトランプ大統領の国連総会演説)のステージに逆戻りするのか。

(※写真は、2020年10月の北朝鮮軍事パレードで登場した新型ICBMと見られる弾道ミサイル、令和4年1月・防衛省発表資料「北朝鮮による核・弾道ミサイル開発について」より)

⇒30日(日)午後・金沢の天気    くもり時々はれ