#ミサイル

★「軍事衛星」を打ち上げる北朝鮮の狙いは何か

★「軍事衛星」を打ち上げる北朝鮮の狙いは何か

   きょう朝、目が覚めてスマホでNHKニュースを視ると大騒ぎになっていた。「政府は午前6時半にJアラート=全国瞬時警報システムで、沖縄県を対象に情報を発信し、『北朝鮮からミサイルが発射されたものとみられます。建物の中や地下に避難して下さい』と伝えました」。その後、「政府は午前7時4分にJアラートで新たに情報を発信し、『先ほどのミサイルは我が国には飛来しないものとみられます。避難の呼びかけを解除します』と伝えました」と=写真=。NHKも混乱したのだろう。ただ、民放のニュースとは比べ物にならないくらいのスピード感のある速報だった。

   北朝鮮は29日に「31日から来月11日までの間に『人工衛星』を打ち上げる」と日本に通報していた。自身を含めての多くの日本人は「またミサイルか」と思ったに違いない。なにしろ、北朝鮮は去年1年間で弾道ミサイルなどを37回も発射し、ことしに入ってからも12回の発射を繰り返している。ところが、韓国の通信社「聯合ニュース」は、韓国軍の消息筋の話として、北の宇宙発射体が予告された落下地点に行かず、レーダーから消失したと伝えた。

   そこで、北朝鮮の国営メディア「朝鮮中央通信」(Web版)をチェックすると、「午前6時27分に西海衛星発射場から軍事衛星『万里鏡1号』を新型ロケット『千里馬1型』に搭載・発射した」「1段目の分離後、2段目のエンジン始動に異常があり推進力を失って朝鮮西海(黄海)に落ちた」。失敗の原因を「千里馬1型に導入された新型エンジンシステムの信頼性と安定性が低く、使用された燃料の特性が不安定であることに事故の原因があった」とした上で、「国家宇宙開発局は衛星発射で現れた重大な欠陥を具体的に調査、解明し、可能な限り早期に2回目の発射を断行する」と報じている。

   防衛省公式サイトを検索すると、浜田防衛大臣の臨時会見(午前9時35分-同40分)の内容が掲載されている。上記の朝鮮中央通信の「2回目の発射を断行」を意識した記者の質問に防衛大臣が答えている。
「Q:北朝鮮側は、2回目の発射の可能性に言及しているようですけれども、日本政府として、現状2回目の発射があるというふうにお考えでしょうか。分析をお願いします。

A:色々な発表に対してのことについてはですね、我々いちいちコメントをすることは避けさせていただきたいと思いますが、防衛省としては、引き続き必要な態勢を構築していきたいというふうに考えております」

   緊迫感のある朝だった。北朝鮮の「軍事衛星」の打ち上げは失敗した。が、次なる発射を準備していることは明確だ。「我々いちいちコメントをすることは避けさせていただきたい」ではなく、防衛のトップとして、北朝鮮の軍事衛星についてどのような分析をしているのか、具体的な返答がほしい。

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☆北の脅威はミサイルだけではない

☆北の脅威はミサイルだけではない

   前回のブログの冒頭で、「日本海側に住んでいると、北朝鮮の動向が気になってしまう」と述べた。それは、日本海側に住めば実感できる「4つの脅威」と言い換えてもよいかもしれない。

   その一つが「ミサイル」だ。2017年3月6日、北朝鮮が「スカッドER」と推定される弾道ミサイルを4発発射し、そのうちの1発は能登半島から北に200㌔㍍の海上に着弾した=写真・上=。北が弾道ミサイルを撃ち込む標的の一つが能登半島だ。半島の先端・輪島市の高洲山(567㍍)には航空自衛隊輪島分屯基地のレーダーサイトがある。その監視レーダーサイトの目と鼻の先にスカッドERが撃ち込まれた。

   今回の北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」(9月13日付)は、新たに開発した長距離巡航ミサイルの発射実験に成功したと伝えている。巡行ミサイルは低空飛行するためレーダーで捉えること難しいとされる。「1500㌔先の目標に命中した」と報じているので、能登半島の監視レーダーサイトだけでなく、ほかの自衛隊基地やアメリカ軍基地も射程内に入れているのだろう。

   2つ目の脅威が「軍事境界線」だ。能登半島の沖合300㌔にある大和堆はスルメイカの好漁場で、日本のEEZ(排他的経済水域)内にある。領海の基線から200㌋(370㌔)までのEEZでは、水産資源は沿岸国に管理権があると国連海洋法条約で定められている。ところが、北朝鮮は条約に加盟していないし、日本と漁業協定も結んでいない。北朝鮮が非批准国であることを逆手にとって自らの立場を正当化してくる。その事例は、1984年7月27日に起きた「八千代丸銃撃事件」だ。能登半島の小木漁協所属のイカ釣り漁船「第36八千代丸」が、北朝鮮が一方的に引いた「軍事境界線」の内に侵入したとして、北朝鮮の警備艇に銃撃され、船長が死亡、乗組員4人が拿捕された。1ヵ月後の8月26日に「罰金」1951万円を払わされ4人は帰国した。 

   3つ目が「難民」だ。能登半島の先端からさらに沖合50㌔に舳倉島(へぐらじま)がある。アワビやサザエの漁場でもあり、漁業の中継拠点でもある。この島の周囲は南からの対馬海流(暖流)と北からのリマン海流(寒流)がぶつかり、混じり合うところ。そのため海岸では、日本語だけでなく中国語やハングル、ロシア語で書かれたゴミ(ポリ容器、ペットボトル、ナイロン袋など)を拾うことができる。かつて、島の住民から聞いた話を覚えている。「島に住んでいると、よその国の兵隊が島を占領したり、大量の難民が押し寄せてきたり、そんなことをふと考え不安になることがある。本土の人たちには思いもつかないだろうけど」と。北朝鮮による拉致問題がクローズアップされ、当時の小泉総理が北朝鮮を訪問した2002年ごろの話だ。

   北朝鮮に有事が起これば、大量の難民が発生し、船に乗って逃げるだろう。ガソリンが切れたり、エンジンが止まった船の一部はリマン海流に乗って舳倉島や能登半島に漂着する。そうした難民をどう受け入れるのか、中には武装難民もいるだろう。有事でなくても、いまでも日本海の沿岸には北の木造船の漂流や漂着が相次ぐ=写真・中=。(※写真は2017年11月に能登半島・珠洲市の海岸に漂着した木造漁船)

   そして、「拉致」だ。日本海を舞台に相次いだ。1977年に拉致1号事件が能登半島で起きていた。9月19日、東京都三鷹市役所の警備員だった久米裕さんが石川県能登町宇出津(うしつ)の海岸で失踪した。地元では今でも「宇出津事件」と呼ばれている。この年の11月15日、横田めぐみさんも同じ日本海に面した新潟市の海岸べりの町から姿を消した=写真・下=。拉致問題はめぐっては、2002年9月と2004年5月に日朝首脳会談が行われ、一部の拉致被害者が帰国した。その後、北朝鮮は「拉致問題は解決済み」との姿勢を変えていない。拉致は過去の話なのか。いまもどこかで。

⇒14日(火)夜・金沢の天気      くもり