#マンション

☆中国人の不動産熱と「寝そべり族」

☆中国人の不動産熱と「寝そべり族」

   中国の人々の熱い投資熱を感じたことがある。10年前のことだ。2012年8月、浙江省紹興市で開催された「世界農業遺産(GIAHS)の保全と管理に関する国際ワークショップ」(主催:国連食糧農業機関、中国政府農業部、中国科学院)に参加し、日本と中国のGIAHSについて意見交換や、隣接する青田県などを視察した。青田県方山郷竜現村を訪れたとき、田舎に不釣り合いな看板が目に飛び込んできた。川べりに建設予定の高層マンションの看板だった。

   中国人の女性ガイドに聞くと、マンションは1平方㍍当たり1万元が相場という。1元は当時12円だったので、1戸161㎡では円換算で1932万円の物件である。確かに、村に行くまでの近隣の都市部では川べりにすでにマンションがいくつか建っていた=写真=。夕食を終え、帰り道、それらのマンションからは明かりがほとんど見えない。おそらく、買って値上がりするのを待つ投資向けマンションなのだろう。前年の2011年6月に訪れた首都・北京でも夜に明かりのないマンションがあちこちにあった。

   同じ女性ガイドに「中国はマンションブームなのですか」と問いかけると、このような話を披露してくれた。「日本でも結婚の3高があるように、中国でも女性の結婚条件があります」と。中国の「3高」は、1つにマンション、2つに乗用車、そして3つ目が礼金、だと。マンションは1平方㍍当たり1万元が相場という。中国ではめでたい「8」の数字でそろえるので、1戸88平方㍍のマンションが人気。となると、1056万円だ。そして、18万元の乗用車、さらに8万元の礼金。この3つの「高」をそろえるのは大変だ。

   上記の話を思い出したのは、いま中国の若者の間で広がっているとされる、あえて頑張らない「タンピン(寝そべり)」現象がある一方で、習近平国家主席が共産党創立100年の式典で「われわれは党創立100年の目標である貧困問題を解決した。生産力が劣っていた状況から、経済規模で世界2位になるという歴史的な進歩を実現した」(7月1日付・NHKニュースWeb版)と拳を振り上げて強調した、いまの中国のギャップだ。

   習氏の世代は、極限の貧困や飢餓などを体験しながらも社会のはしごをよじ登ってきた。しかし、いまの若者たちは過当競争や長時間労働に耐えて、車の所有やマンション投資、結婚して子どもを持つという、いわば「人生の勝ち組」を目指すことにむしろ違和感や無力感を抱いているのではないだろうか。逆に言えば、習氏が「小康社会」と語ったように、それだけ国が豊かになったという証(あかし)なのかもしれない。

⇒2日(金)午後・金沢の天気   くもり時々はれ

★「死なばもろとも」中国の不動産バブル

★「死なばもろとも」中国の不動産バブル

   中国のマンションの建設ラッシュはすさまじいと実感したことがある。世界農業遺産(GIAHS)の国際ワークショップで中国を訪れた2012年8月のことだった。降り立った上海市や会議が開かれた浙江省紹興市などは高層マンションが立ち並んでいた。見学ツアーで同省青田県の山あいの村でもマンション建設が進んでいて、新築マンションの看板がやたらと目についた=写真=。

   移動のバスの中で、中国人の女性ガイドに尋ねた。「なぜ山あいでマンションが建っているんですか」と。すると笑顔で答えてくれた。「日本でも結婚の3高があるように、中国でも女性の結婚条件があります」と。それによると、1つにマンション、2つに乗用車、そして3つ目が礼金、だとか。マンションは1平方㍍当たり1万元が相場という。1元は当時のレートで12円だったので円換算で12万円となる。1戸88平方㍍のマンションが人気というから1056万円だ。それに乗用車、そして礼金。礼金もランクがあって、基本的にめでたい「8」の数字。つまり、8万元、18万元、88万元となる。この3つの「高」をそろえるとなると大変だ。

   当時もマンションは投資対象になっていたが、ガイド嬢の話を聞いて、結婚の条件としてのマンション需要となるとさらにすそ野は広がると納得した。その中国のマンションの「不動産バブル」、最近異変が起きているようだ。

   中国の不動産大手「中国恒大集団」は今月7日から1ヵ月間、すべての不動産物件を30%値引きする方針を示し、ニュースになった。同社は同業他社との比較で多額の負債を抱えており、負債比率の削減を目指している(9月7日付・ロイター通信Web版日本語)。このニュースでいよいよ中国の不動産バブルは崩壊かとの印象も抱いた。そして、今月25日のニュース。中国恒大集団がデフォルト(債務不履行)の可能性について中国当局に警告した。同社が求める深圳上場を当局が認めなければ、中国の50兆㌦(5274兆円)規模の金融システムが動揺する恐れがあるとしている。中国恒大は広東省政府に宛てた8月24日付書簡で、資金不足を回避し、上場を確実にするために必要な再編案への支持を求めた。この書簡をブルームバーグは確認した(9月25日付・ブルームバーグWeb版日本語)。

   証券取引所に上場できなければ、破産するぞと脅しているとの印象だ。さらに、50兆㌦規模の中国の金融システムを揺るがすぞ、と。「死なばもろとも」だと。

   中国政府は2008年のリーマンショック後に、やみくもに成長を追い求めずに安定をめざす「新常態(ニューノーマル)」経営を企業に求めているが、常に投資が先行する不動産の場合は簡単ではないだろう。「3高」の結婚の条件が今でも変わっていなければ、買いのチャンスかもしれないが。

⇒28日(月)午前・金沢の天気    はれ時々くもり