#ボケ封じ

★「呆け封じ」か「呆けた者勝ち」か

★「呆け封じ」か「呆けた者勝ち」か

   これがアルツハイマー病の画期的な治療薬になるのだろうか。メディア各社は7日、アメリカのFDA(食品医薬品局)が日本のエーザイとアメリカの医薬品バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病の治療薬「LEQEMBI(レカネマブ)」に対して、「迅速承認」と呼ばれる特例的な承認を行ったと報じた。エーザイ公式サイト(7日付)によると、臨床試験でこの新薬を投与したグループと偽薬のグループを比較し、レカネマブのグループでは記憶や判断力などの症状の悪化が27%抑制された。特例承認の条件となっている最終段階の治験データをもとに速やかに完全な承認申請を行う。日本やヨーロッパでも承認申請を行う。

   アルツハイマー病は、脳内に異常なタンパク質「アミロイドβ 」が蓄積することで神経細胞が傷つき、記憶力や判断力などが低下するとされる。これまでの治療薬は症状の一時的な改善を促すものだが、レカネマブは脳内のアミロイドβ そのものを除去することで病気の進行を長期的に遅らせる。治療薬の効果が表れるのは軽度認知障害の段階での投薬で、早期または後期段階での治療開始に関する安全性と有効性に関するデータは取っていない。2週間に1回、体重に応じた点滴を施すことになる。価格は、体重75㌔の患者に換算して1人当たり年間2万6500㌦ (1㌦132円換算で350万円)と設定している(エーザイ公式サイト)。

   エーザイとバイオジェンは2021年6月にも同じタイプの治療薬「ADUHELM(アデュカヌマブ)」を開発。FDAに承認されたものの、価格が高いことや有効性への疑問などからアメリカでは高齢者向け保険が適用されなかった。日本の厚労省も、効果が明確に判断できないとして承認を見送っていた。以下推測だ。今回のレカネマブはアデュカヌマブよりアミロイドβ の除去により特化した治療薬なのだろう。アデュカヌマブは4週間に1回の点滴に対し、レカネマブは2週間に1回と投与頻度を高めている。さらに、価格に関してもアデュカヌマブは年間コストは5万6000㌦なので、レカネマブは半値以下に抑えている。商品化に対する企業の熱意というものを感じる。

   超高齢化社会といわれるこの世の中で、「呆け封じ」の妙薬となるのか。一方で、「呆けた者勝ち」という言葉がある。頭脳は普通に動いているが、寝たきりとなり食事や入浴、排泄の介護を受ける自分の姿を見て何を思うだろうか。むしろ、家族や周囲との人間関係のしがらみを記憶から一切消し、家族に面倒や世話をかけていると認識もせずに、その日を暮らしていければ、それで十分ではないか。「呆けた者勝ち」とはそういう意味だろう。アルツハイマー病の治療薬レカネマブのニュースを見て、そんなことを考えてしまった。

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★続・アルツ新薬の論調 「ボケた者勝ち」なのか

★続・アルツ新薬の論調 「ボケた者勝ち」なのか

   今回もアルツハイマー病の新薬がアメリカのFDAで承認された話題を。新薬「アデュカヌマブ」の開発に携わった日本の「エーザイ」の株価が8日、9日と連日でストップ高となり、株式投資家の間でも注目の的になっている。定年を過ぎて株式投資を楽しんでいるという知人がこのブログを見て、メールを送ってきた。「オレは厚労省が承認したとしてもこの薬は点滴しない。だって、ボケた者勝ちだよ」と。

   その後、知人とメールで何回かやりとりして、「ボケた者勝ち」の言葉の背景を知ることができた。知人の父親はアルツハイマー病ですでに亡くなったが、自宅で奥さんといっしょに入浴や食事、排泄などの世話をしていた。80歳を過ぎてボケが始まったころは独りでトイレに行っていたが、そのうちにトイレがどこにあるのかも分からなくなった。介助しようとすると、「何する」としかられ、その都度「トイレへ行こう」と言うと、「世話かけるな」と礼を言う。また、5分もたつと忘れてしまい、同じことを繰り返した。

   ただ一つ発見したことがあったという。何かと心配性だった父親の顔から不安げな表情がなくなり、ボケたとは言え、表情が以前よりはつらつとしていた。不安なことはすっかり忘れて、自分が言ったことや行ったことも覚えていない状態。「父にとって毎日が新鮮な気分なんだろうと思えるようになった。幸せなんだろうと」

   確かに、頭脳は普通に動いているが、自分が寝たきりになって、食事や入浴、排泄の介護を受ける自分の姿を見て、何を思うだろうか。家族や周囲との人間関係のしがらみを記憶から一切外し、家族に面倒や世話をかけていると認識もせずに、その日を暮らしていければ、それで十分ではないか。「ボケた者勝ち」とはそういう意味ではないかと知人から教えられたような気がした。

   「エーザイ」の公式ホームページによると、アメリカ人の平均体重74 kgの場合の点滴投与は1回当たり4312㌦、4週間に1回の投与で年間コストは5万6000㌦、つまり610万円となる。自らの「ボケ封じ」に金を注ぐより、貧困にあえぐ難民の子どもたちへの教育や環境問題と向き合っているNGOに寄付をした方が後悔しないですむかもしれない。

⇒10日(木)午前・金沢の天気     はれ