★テレビ局という「ムラ社会」の発想と人権社会の感覚の隔たり
かつて民放テレビ局に籍を置いたことがある自身の読みだが、一連のフジテレビ問題、これは民放の企業風土の問題そのものではないだろう。ある意味で民放はタテ割り社会で、たとえば番組のプロデューサーが番組制作に関わる人選(ディレクターや出演スタッフ)や制作会社の選定など担う。キー局のゴールデン番組ともなれば、おそらく数百人の規模ではないだろうか。なので、スタッフはプロデューサーには逆らえない。番組では絶対的な権力者でもある。言葉は適当でないかもしれないが、番組という「ムラ社会」だ。このムラの中では長(おさ・プロデューサー)に視聴率という数字を献上する従者(ずさ・ディレクター)がいて、中には数字を上げるために「やらせ」や「捏造」という悪さをする者もいる。
今回のフジテレビの一連の問題で焦点となっているのが、ムラの長が女衆(女性社員)に「晩酌の付き合いをせい」と半ば迫ったことだろう。長とすれば、同じムラという共有意識があれば、付き合いは当たり前という身勝手な思惑があったのだろう。そのムラ社会の発想と人権社会の感覚の隔たりが見えてきたのがフジテレビ問題だった。繰り返しになるが、これは
民放の企業風土の問題なので、ほかのキー局や系列局などでも起こりうる、あるいは起きていることなのかもしれない。
フジ・メディア・ホールディングスはきのう(31日)、元タレントの中居正広氏と女性とのトラブルをめぐる第三者委員会の調査報告書を公表した。その様子をフジ系のローカル局で視ていた。委員長の弁護士は手厳しく指摘していた。人権侵害の疑いがあるにもかかわらず、フジテレビの社長ら幹部が「プライベートな男女間のトラブル」と即断したことが「対応を誤る大きな要因となった」「経営判断の体をなしていない」と断じていた。また、情報公開のあり方についても、2024年12月に公開した一部報道に対する会社見解について否定すべき部分は否定するという方針ありきで、「問題があったと言わざるを得ない」と指摘した。(※写真は、フジテレビ社長の生中継での記者会見の様子)
午後8時からのBSフジ「プライムニュース」では、冒頭で女性キャスター2人が「反町キャスターからは『状況に鑑み、番組の出演を見合わせたい』との申し出がありました。BSフジとプライムニュースではこれを受け、今夜は2人でお伝えします」と述べていた。第三者委員会の報告書では、反町氏が総理官邸キャップや政治部デスクだった2006年から2008年にかけて、後輩の女性記者2人に対するハラスメント行為があったと報じられている。食事の誘いを女性から断わられると、この女性に対して原稿が遅いなどと叱責のメールを部内共有で送信するなどしていたようだ。その後、キャスターとなり、報道局解説委員長、取締役なども務めることになる。フジテレビのムラ社会がよく見えてくる。
⇒1日(火)夜・金沢の天気 くもり時々あめ
やり直し会見だった。今月17日にフジテレビ社長が出席して会見を開いたものの、会見に出席するメディアを定例会見のメンバーに限定し、また、テレビメディアでありながら動画撮影を禁じた。このことがむしろ火に油を注ぐことになり、スポンサー企業などからCM出稿の差し止めなどが相次いだ。こうした批判を受け、フジはきのう27日午後4時から、あらためて会見を開催した。週刊誌やネットメディアの記者も参加し、会場には191社437人が詰めかけた報じられている。動画撮影も可能だった。
この厳罰化のきっかけとなったのが、フジテレビのリアリティ番組『テラスハウス』(2020年5月19日放送)に出演していた女子プロレスラーがSNSの誹謗中傷を苦に自死した事件(同5月23日)だった。
テレビ朝日公式ホームページの「大下容子ワイド!スクランブル」=写真=をチェックすると、10月21日付「お知らせ」欄で「不適切な演出について」と題して概要を説明している。この「視聴者からの質問にお答えするコーナー」は月曜日から木曜日の番組終了間際に通常2分ほど放送していた。質問を用意したのは番組のチーフディレクターである社外スタッフ(「テレビ朝日映像」所属)。チーフディレクターは、放送に向けた準備のため、それまでに寄せられた意見や質問を踏まえて放送前に想定質問案を作っていた。今年3月以降、その想定質問を視聴者からの質問として放送に使っていた。。これまで放送した質問のうち約2割が想定質問たっだ。
単純な話、たとえば中国資本の企業が20%以上の株を持って、フジテレビに「中国に友好的な番組をつくれ」と要求してきたとすると、フジはおそらく呑むしかない。友好的な番組とはニュース番組も含めてのことだ。さらに、その中国資本の企業が番組CMのスポンサーとなって、意に反する番組をつくらせないとなったら、実質的にフジを乗っるような状態になってしまう。もちろん、これはフジテレビだけの問題ではない。すべてのテレビ局に言えることだ。何しろテレビ局は出資者とスポンサーには頭が上がらない。
