#ヒトラー

☆粛清へと向かうのか 「プリゴジンの乱」の余波

☆粛清へと向かうのか 「プリゴジンの乱」の余波

   たった一日とは言え、私兵を率いて政府軍に盾突いたプリゴンジはプーチン大統領にとっては、いわゆる「反逆者」だ。はたしてプーチン氏は彼を許すだろうか。ロシアには「チーストカ(粛清)」の歴史がある。あのソビエト連邦時代の最高指導者だったスターリン(1878-1953)は反革命や不正者を徹底的に弾圧したことで歴史上で知られる。粛清は、ある意味で敵の脅威をつくり出すことで国民を恐れさせ、団結させることにあるとされる。プーチン大統領も国民の団結の「道具」として、プリゴジンの粛清を行うのではないか、との読みもある。(※写真は、6月25日付・BBCニュースWeb版)

   たとえは適切でないかもしれないが、ロシアにはもう一つの粛清の方法がある。それは墓などをつくらず、地上に存在したことを消去することだ。第二次世界大戦で、ヒトラー率いるドイツ軍は1945 年5月 8 日に無条件降伏したが、ヒトラーは降伏前の4月30日に自決する。遺体はヒトラーの遺言によって焼却されたものの、焼け残った遺体は当時ベルリンを占領していたソ連軍によって東ドイツのマクデブルクに運ばれ、ソ連諜報機関の事務所前の舗装の下に埋められた。1970年になって、ネオナチの崇拝目的になることを怖れ、遺体を再び焼却して遺灰をエルベ川に流したとされる(Wikipedia「アドルフ・ヒトラーの死」より)。

   この粛清の方法はロシアだけではない。第二次大戦後、極東軍事裁判(東京裁判)で死刑判決を受けた元総理の東條英機ら7人のA級戦犯の遺骨もそうだった。アメリカ軍は1948年12月23日、東京・巣鴨プリズンから遺体を運び出し、横浜市内の火葬場で焼かれ、遺骨は別々の骨つぼに納められた。そして、小型の軍用機に載せられ、上空から太平洋に散骨されている。

   また、ニューヨークの同時多発テロ(2001年9月11日)の首謀者とされたオサマ・ビン・ラディンに対する斬首作戦が2011年5月2日、アメリカ軍特殊部隊によって実行された。パキスタンのイスラマバードから60㌔ほど離れた潜伏先を奇襲して殺害。DNA鑑定で本人確認がなされた後、アラビア海で待機していた空母カール・ビンソンに遺体は移され、海に水葬された。

   遺骨が遺族に返還され、墓がつくられることになれば、その墓が将来、聖地化や崇拝の地になることを想定しての処置なのだろう。「死をもって罪をあがなう」という発想ではなく、存在証明を許さないのだ。プリゴジンの処遇をめぐっての書き出だしだったが、話がずいぶんと逸れた。

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☆裁判で問うべき、学術会議の任命拒否問題

☆裁判で問うべき、学術会議の任命拒否問題

   前回の続き。 日本学術会議が新会員候補に推薦したものの、菅総理が任命を拒否した6人が23日、外国特派員協会で記者会見した。この会見で、教授サイドから「独裁者」「恐ろしい話」という言葉が出た時点で、政権との敵対関係を宣言するために記者会見を開催した、と記者たちは解釈したのではないかと述べた。そして、この記者会見について、国民はどのようなイメージを持っただろうか。

   とくに、刑事法の教授が「ナチスドイツのヒトラーでさえも全権を掌握するには、特別の法律を必要としましたが、菅総理大臣は現行憲法を読み替えて自分がヒトラーのような独裁者になろうとしているのか」 と述べたことに、ネット上で批判的なコメントが集中している。

   「会見には何の関係も無いのに、独裁者とかヒトラーなどの用語を用いるのは、聞いている人達に菅総理や政府への悪印象を与える事が目的だからです。・・・」(ユーチューブ)、「自国の首相をヒトラーと同じだって。しかも外国記者クラブで世界に向かって宣伝。このようなおかしな”学者”が主導権を握っている学術会議ってなんだ。このよう組織を税金を使って持つ必要は無い。・・・」(ヤフーニュースのコメント)。それにしても、すさまじい数の批判コメントだ。

   この会見を仕掛けた側の意図がよく理解できない。当事者たちに思いや本音を自由に語らせるために開いた会見だとすれば、それは大間違いだ。会見の仕組みや意義を理解していないのではないか。会見で記者が読むのは、会見を開いた理由・意図・目的である。会見に臨んだ理由が、6人が総理の任命拒否について裁判で総理の権限をめぐって争うというのであれば、とても分かりよい。会見の開催は、目的性を持ったものである。言葉で「ヒトラーのような独裁者になろうとしているのか」などと政府批判を言うよりも、アカデミックな闘争として裁判を仕掛けた方が国民の理解を得るのではないだろうか。

   学術会議サイドは、学術会議の独立性は破壊され、学問の自由の制度的枠組みを破壊することになるので、憲法23条違反と主張している。 官邸サイドは、憲法15条1項の国民の公務員選定罷免権を根拠にして今回の措置が合法としている。だったら、裁判で決着するしかないだろう。

※写真は、FCCJ(日本外国特派員協会)公式ホームページの会見動画より

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