#パロディ画

★アメリカ死神と北斎パロディ画の共通点

★アメリカ死神と北斎パロディ画の共通点

   きょう5月1日は立春から数えて88日目、「八十八夜」だ。いにしえより、この日に摘んだ茶は上等なものとされる。「夏も近づく八十八夜、野にも山にも若葉が茂る・・・」と文部省唱歌の『茶摘み』の歌を思い出す。さらに、この茶摘みの唄からもう一つ思い出すのが、「ズイズイ ズッコロバシ ごまみそズイ 茶壺におわれて トッピンシャン ぬけたら ドンドコショ」という童謡だ。二つの歌の背景を探る。

   江戸時代、お茶は最高級品だった。「お茶壺道中」という言葉があった。幕府が将軍御用の宇治茶を茶壺に入れて江戸まで運ぶ行事を茶壺道中と言った。この道中は、京の五摂家などに準じる権威の高いもので、茶壺を積んだ行列が通行する際は、大名といえども駕籠(かご)を降りなければならない、というルールだった。街道沿いの村々には街道の掃除が命じられ、街道沿いの田畑の耕作が禁じられた。「ズイズイ ズッコロバシ ごまみそズイ 茶壺におわれて トッピンシャン ぬけたら ドンドコショ」というわらべうたは、田植えなどの忙しい時期に余分な作業を強いられるお百姓たちの風刺を歌ったものだった。世の中には裏と表の表層があるものだ。

   これも裏と表の表層とも言えるかもしれない。在日中国大使館が先月29日付のツイッターで、「アメリカが『民主』を持って来たらこうなります」という日本語のコメントとともに、アメリカを死神になぞらえた画像を掲載した。アメリカの国旗を模した服を着た死神が、イラクやリビア、シリアなどと書かれた扉を開けて回り、部屋の中からは血が流れ出ている=写真・上=。このツイートは現在削除されているが、なぜ在日中国大使館がこのような画像をわざわざ掲載したのか解せない。その背景を憶測する。

   単純な見方をすれば、アメリカのバイデン大統領が先月28日に行った就任100日目の施政方針演説で、中国の習近平国家主席のことを「autocrats」(独裁者)と称したことではないかと推測できる。これに反発して、アメリカこそ民主主義を無理強いしようとしてイラクやリビア、シリアなどを混乱に落とし込んでいる死神だ、と。それにしても、タイミングが良すぎる。中国御用達のイラストレーターにこの画像を制作させたものであることは推察できるが、これは以前から作成していて、アップロードのタイミングを見計らっていたのではないだろうか。

   もう一つ、絶妙なタイミングがある。日本政府が東電福島第一原発で増え続けるトリチウムなど放射性物質を含む処理水を海へ放出する方針を決めた(4月13日)。すると、中国と韓国が反発し、中国外務省の趙立堅副報道局長が26日付のツイッターで、葛飾北斎の「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」を模したパロディ画像を投稿して批判した=写真・下=。

   アメリカ死神と北斎パロディ画の両作品の作者はおそらく同一人物で日本に在住する中国御用達のイラストレーターではないだろうか。アメリカ死神の画像では「アメリカが『民主』を持って来たらこうなります」という日本語のコメントがついているが、なぜ中国語、あるいは英語ではなかったのだろうかと考えると、単純な話が、作者は日本人なのだろうと推測する。犯人探しをするつもりはまったくない。ただ、作品を中国側に売り込むのではなく、パロディ画作家として自立する道を拓いてほしい、ただそう思っただけである。

⇒1日(土)夜・金沢の天気     あめ

☆北斎のパロディ画 中国側の意図

☆北斎のパロディ画 中国側の意図

   政府は東電福島第一原発で増え続けるトリチウムなど放射性物質を含む処理水を海へ放出する方針を決めた(4月13日)。すると、中国と韓国が反発し、中国外務省の趙立堅副報道局長がツイッターで、葛飾北斎の「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」を模したパロディ画像=写真=を投稿して批判した。本人のツイッターをチェックする。

「An illustrator in #China re-created a famous Japanese painting The Great Wave off #Kanagawa. If Katsushika Hokusai, the original author is still alive today, he would also be very concerned about #JapanNuclearWater.」(意訳:中国のイラストレーターが、有名な日本画 「神奈川沖浪裏」 を再現した。原作者の北斎が生きていれば、#JapanNuclearWaterも非常に気になるところ)

   中国のイラストレーターが描いたパロディ画は、背景の富士山を原発とみられるものに書き換え、大波を進む船上から防護服姿の作業員が汚染水らしき液体を海に捨てる様子が描かれている。そして雲の上には十字架がかかっている。趙氏は以前も「太平洋は日本の下水道ではない」などと批判している。

   広報担当の趙氏とすると日本政府の放射性物質の処理水を海に放出する発表は、中国批判を逸らすグッドタイミングだったに違いない。何しろ、中国が台湾の領空と海域で軍事訓練を繰り返し、長距離ミサイルを配備するなど攻撃能力を強化しているとアメリカなど各国から批判され、香港やウイグルにおける人権弾圧問題でも手厳しい国際批判を浴びている。この批判を逸らすために、おそくら中国は執拗に北斎のパロディ画を世界に発信し、日本批判を続けるのだろう。

   アメリカ国務省のプライス報道官は「世界的に認められた原子力安全基準に合致したアプローチを採用したようだ」との声明を発表。国際原子力機関(IAEA)も日本の放出計画を支持している(4月16日付・BloombergニュースWeb版日本語)。また、BBCとCNNをチェックしたが、北斎のパロディ画をニュースとして取り上げてはいない(4月28日午後10時現在)。

⇒28日(水)夜・金沢の天気    くもり