#パリ協定

☆気候変動対策「パリ協定」さっそく離脱 「トランプ様が戻ってきた」

☆気候変動対策「パリ協定」さっそく離脱 「トランプ様が戻ってきた」

  トランプ氏がアメリカ大統領に就任し、ホワイトハウスに入ったとのニュースが流れていたので、ホワイトハウス公式サイトをチェックする。すると、トップページは「AMERICA  IS  BACK」のタイトルで左手で指さすトランプ氏の得意のポーズが映っていた=写真=。この公式サイトを含めホワイトハウスの模様替えが大変だったようだ。メディア各社の報道によると、前任のバイデン氏の退去からトランプ氏の入居までのタイムラグは6時間で、その間にすべての部屋を掃除し、新たな主(あるじ)が好む執務室にしつらえ、好みのカーテンや家具をそろえ、お気に入りのシャンプーや歯ブラシまで用意したようだ。まさに、「AMERICA  IS  BACK」は「トランプ様が戻ってきた」と読める。

  そのホワイトハウスでのトランプ大統領の初仕事の一つが、気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」から再び離脱すると発表し、大統領令に即日署名したことだった。パリ協定は2015年の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で採択され、「産業革命前からの気温上昇を1.5度以内に抑える」という目標を掲げている。トランプ大統領は就任演説で「中国が平気で汚染を続けているのに、アメリカが自国の産業を妨害することはしない」と説明し、「不公平で一方的なパリ協定から即時離脱する」と宣言したのだった。第1次トランプ政権の2020年にパリ協定から離脱したが、2021年に就任したバイデン前大統領が初日に復帰。トランプ氏は大統領選でエネルギー開発の推進のため再離脱すると公約に掲げ勝利した経緯がある。

  EUの気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス」は、2024年の世界の平均気温は初めてパリ協定の基準を超えて1.6度高くなったと発表した。徐々に進む気候変動はアメリカにも大きな被害をもたらしているとの指摘もある。今月中旬に発生したカリフォルニア州ロサンゼルス周辺の大規模な山火事について、NOAA(アメリカ海洋大気局)は「気温の上昇、干ばつの長期化、乾燥した大気などの気候変動が、アメリカ西部の山火事の危険性と範囲を増す重要な要因となっている」と述べている(1月14日付・BBCニュースWeb版日本語)。  

  この山火事について、トランプ氏はこれまでSNSなどでカリフォルニア州の知事(民主党)の不手際で被害が拡大していると、「知事の責任」を印象付けるかのように強調していた(同・読売新聞Web版)。本来なら大統領として山火事について気候変動の側面からも取り組むべきで、パリ協定と真摯に向き合うべきだと思うのだが。次に火の粉をかぶるのは自身ではないだろうか。

⇒21日(火)午前・金沢の天気     はれ

★ノーベル賞「真鍋効果」がもたらすもの

★ノーベル賞「真鍋効果」がもたらすもの

   今年のノーベル物理学賞に地域温暖化予測の第一人者として知られるプリンストン大学上級研究員の真鍋淑郎氏が選ばれた=写真=。真鍋氏は京都大学と東京大学大学院で地球物理を学び、それまで物理学とは考えられていなかった気候変動を数式を使うコンピューターでシミュレーション解析を行うことで、「気候物理学」という新たな研究ジャンルを切り拓いた。

   実にタイムリーな受賞ではある。今月31日からイギリス・グラスゴーで国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が開催され、各国の代表やNGOが脱炭素の目標や具体策について話し合う。今回のノーベル賞受賞で、温室効果ガスの削減こそ国際的な課題として広く認知されることになるだろう。

   ひょっとして、真鍋氏のノーベル賞受賞はアメリカのバイデン大統領へのメッセージではないだろうか。アメリカは2015年に採択された温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」について、「不公平な経済的負担」を強いているという理由で2017年6月、当時のトランプ大統領が協定から離脱すると宣言し、2020年11月に正式に離脱した。政権を引き継いだバイデン氏はパリ協定への復帰を表明し、ことし1月20日に復帰手続きの開始を命じる大統領令に署名した(2021年1月22日付・BBCニュースWeb版日本語)。ノーベル委員会は「パリ協定復帰を急げ」とバイデン氏にメッセージを贈ったのだろう。

   話は変わるが、先の菅政権はことし4月に日本が2030年度の温室効果ガスの削減目標を46%減(2013年比)に引き上げて設定し、「2050年カーボンニュートラル宣言」に向けた青写真を示した。さらにG7首脳会議(ことし6月・イギリス)で途上国などで建設する石炭火力発電への新たな公的支援の廃止に合意した。これらの削減目標と対策は前出のCOP26で国連に提出することになる。日本は温室効果ガス削減に向けて舵を切った。

   これも実にタイムリーだった。これまでの温暖化対策が経済成長の制約やコストと考える時代に終わりを告げ、経済成長の新たなチャンスとらえる時代の到来だ。日本には脱炭素化のさまざまな先端技術(水素と二酸化炭素から天然ガスの主成分メタンを合成するメタネーション技術など)がある。日本が本気になって温暖化対策のイニシアティブを握る好機でもある。環境関連に投下される「ESG投資」は世界でさらに強まるだろう。日本経済に「真鍋効果」がもたらされるのではないか。

⇒6日(水)午前・金沢の天気       あめ後くもり