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★コロナ騒動と「能登ジン」

★コロナ騒動と「能登ジン」

   能登半島の尖端に金沢大学が設けている能登学舎。ここで実施する社会人の人材育成事業「能登里山里海SDGsマイスタープログラム」についてはこのブログでも何度か取り上げている。月2回の割合で土曜日に実施し、座学や演習・実習、そして卒業課題研究などに取り組む10ヵ月のプログラムだ。卒業課題研究では自然環境問題や地域課題、起業やSDGsの取り組みなど、これまでイメージでしかなかった自分の思いを調査や実施計画の策定などを通じてストーリーとして描く。

   その卒業課題研究の発表会がきょう27日あった。2020年度の受講生は新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり人数は10人に減った。そして、これまで能登学舎での講義だったが、オンラインが中心となった。その分、教員は個別指導にもチカラを入れた。そして迎えたきょうの発表会は受講生が一堂に会する晴れの舞台、の予定だったが、急きょオンランに切り替わった。というのも、前日26日になって、「コロナ騒動」が持ち上がったからだ。

   別の研究プロジェクトのために能登学舎に来ていた学生が発熱と倦怠感を訴え、病院に運ばれた。26日午前のことだった。正午の段階で検査結果は出ていなかったが、万一に備えて、午後1時30分にはオンラインでの発表会に切り替え、全員に連絡した。というのも、受講生の中には能登地区だけでなく、県外の在住者もいるので、前泊のため午後には能登にやって来る。早めに連絡する必要があった。別日での開催、あるいは別の場所でとの案もあったが、「オンラインが無難」となった。結局、この学生のPCR検査の結果も陰性ということでひと安心。何より、スピード感を持って慎重に対処することがコロナ禍で求められることだと実感した。

   きょう午前9時30分からオンラインでの発表会。自身も審査員として参加した。発表者の一人で、東京のIT企業に勤める受講生は能登に移住し、5年後をめどに能登でジンの蒸留所の設置を目指す計画を淡々と述べた=写真=。能登の塩にユズの皮、クロモジなど、地元の素材を使った洋酒「能登ジン」を造る。この研究のため、去年9月にはEU離脱にともない蒸留酒製造が規制緩和されたイギリスの蒸留所の現場を訪れ、製造工程やコスト算出のノウハウなど学び、能登の植物素材で試作品を造ってもらった。その試作のジンが能登学舎に届けられていた。ユズの甘い香りは能登の自然豊かな里山をイメージさせる。「能登に新たな文化を持ち込む可能性」を感じた。

   受講生が夢の実現に向けて行動するとなれば、マイスタープログラムとは別途設けている金融機関と連携するセミナー「創業塾」で融資に至る手続きなど実務面を学ぶこともできる。

   3月20日には能登学舎で2020年度修了式も開催される予定だ。受講生がオンラインを超えて、初めて一堂に会する「晴れの舞台」となる。

⇒27日(土)夜・金沢の天気     はれ

☆島根の知事、「神等去出」のごとく

☆島根の知事、「神等去出」のごとく

   島根県の知事は日本一忙しい知事ではないだろうか。2月22日は島根県が条例で定める「竹島の日」だった。韓国による竹島の占拠は、国際法上、何の根拠もないとされる。島根県はこの日、松江市で式典を開き、丸山達也知事は「竹島は、わが国固有の領土だ。韓国と外交の場で、竹島問題が話し合われるよう強く要望する」と述べて、外交交渉による解決を政府に求めた(2月22日付・NHKニュースWeb版)。

   その丸山知事が一躍注目されたのは今月17日だった。この日、島根県庁で開かれた聖火リレーの実行委員会で中止を検討していると表明した。聖火リレーの実施について、県は大会組織委員会と協定を結んでおり、聖火ランナーやルートを決める県実行委の事務局を担当している。同県の聖火リレーは土日にあたる5月15、16日に実施予定。津和野町をスタートし、松江城(松江市)を目的地とする14市町村(総距離34.3㌔)で170人が聖火をつなぐ予定だ。警備費用など約9千万円を県の財源で予算化しており、県の判断で聖火リレーを事実上ストップすることもできる。

   中止理由として、東京都が感染拡大で手が回らなくなった保健所の調査を縮小したため、感染経路や濃厚接触者の追跡ができていないと不信感を表明している。全国の飲食店などが打撃を受けているにもかかわらず、緊急事態宣言が出た地域と、島根など感染者が少ない地域で、政府の支援に差がある現状にも不公平感を訴えた。

   その丸山知事はきのう25日、内閣府や経産省を訪問し、緊急事態宣言が発出された地域と島根では飲食店支援に不公平が生じていることについて改善策を求めた。 しかし、要望していた新型コロナ担当の西村経済再生担当大臣との面会は叶わず、要請文を受け取ったのは担当職員だった(2月25日付・山陰中央テレビニュースWeb版)。

   それにしても行動が素早い。聖火リレー中止の表明し、竹島の日を開催、そして、上京して政府への要望だ。3つの動きを10日でこなす。ここで思い起こすのは、2018年11月に訪れた出雲大社での神等去出(からさで)の神事だ。11月のことを旧暦の月名で神無月(かんなづき)と称するが、出雲では神在月(かみありづき)と称する。この月は、全国各地から八百万(やおよろず)の神が出雲に集うとされ、同月24日には神等去出の神事が執り行われる。神官が「お立ち、お立ち」と唱える。すると、この瞬間に神々は出雲を去り、それぞれの国に戻る。神々のまるでデジタルのような素早い動きなのだ。

   丸山知事も「お立ち、お立ち」と自らに言い聞かせながら、次々と行動を起こしているようにも思えるのだが。

(※写真は2018年11月24日に撮影した出雲大社の神等去出の神事)

⇒26日(金)朝・金沢の天気    くもり 

☆春一番、ワクチン二番

☆春一番、ワクチン二番

   きょうは春本番かと思うほど暖かく、そして台風並みの風だった。北陸地方に春一番が吹いたと金沢地方気象台が発表した。とくにかく強烈な風だった。石川県内の最大瞬間風速は、能登で23.3㍍と2月の観測史上最大、金沢では21.2㍍だった。日中の最高気温は金沢で14.8度と4月上旬並みの暖かさ。自宅の庭や屋根の雪が見事に解けた。   

   そして待たれるのが新型コロナウイルスのワクチンだ。およそ4万人の医療従事者を対象に今月17日から接種が始まり、各地でニュースとなっている。政府は、接種が始まった富山県の富山労災病院で、副反応の疑いがある、じんましんの発生があったと、総理大臣官邸のきょうのツイッターで公表した=写真=。厚生労働省によると、19日午後5時現在でワクチンの接種を受けた人は5039人となっていて、国内での接種で副反応の疑いが公表されるのは初めて。厚生労働省は同じツイッターで、接種後15分以上は接種会場で様子を見るなどの安全対策の周知に努めていく、としている。医療従事者の次は65歳以上の高齢者なので、自身もぜひ接種に行こうと楽しみにしていたが、このニュースで少し気乗りがしなくなった。周囲の様子を見てからにしようか、と。

   このところ石川県内の感染者は二桁が続いている。きょうも19人の感染が確認された(石川県庁公式ホームページ「新型コロナウイルス感染症の県内の患者発生状況」)。感染者は10歳未満から90歳以上と幅広い年代に及んでいる。ニュースによると、このうち金沢市の30代から40代の男性3人は接待を伴う飲食店のクラスター関係の感染者。また、40代の女性は県内の福祉施設で介護を担当する職員、50代の男性は県内の医療機関に勤務する医師だ。これまで県内では合計1779人が感染、うち61人が亡くなっている。病床使用率は45.7%だ。県内の感染状況を総合的に判断すると、ステージ2の「感染拡大警報レベル」にあたるとしている(2月20日付・NHKニュースWeb版)。

   春一番の訪れたとともに、コロナ禍の勢いも治まってほしいと思うのだが、現実はなかなか厳しい。

⇒20日(土)夜・金沢の天気    くもり

★悲劇の始まりはどこにあったのか

★悲劇の始まりはどこにあったのか

   このニュースに接して言葉が出ない。残念としか言いようがない。事件は全国ニュースにもなった。石川県中能登町の前副町長の広瀬康雄氏(65)が93歳の母親とともに15日未明に死亡した状態で見つかった。県警の司法解剖などから、広瀬氏が母親を殺害後、自殺した無理心中とみられる(2月16日付・北國新聞)。広瀬氏は3月16日告示の町長選に出馬予定で、支援者は本人が「選挙事務所を開いてから体重が落ちた」と述べていたと言い、選挙の準備で相当なプレッシャーを感じていたようだ(同)。

   自身が広瀬氏と出会ったのは、2012年4月だった。自治体の特色ある取り組みを学生たちに講義してもうら、大学コンソーシアム石川の授業「石川県の市町」の講師依頼をした。当時は企画課長で快く引き受けてくれた。7月の講義で、「織姫の里なかのと」をタイトルに繊維産業を活かした地域づくりについて話していただいた。町の基幹産業である繊維については、麻織物から合成繊維へ、そして新素材や炭素繊維などにチャレンジしている企業の現状を紹介し、産業の観光化について熱く語ったのを覚えている。その後、住民福祉課長、総務課長を歴任して、2014年から副町長だった。講義をお願いしたことが縁となり、お会いすると言葉を交わし親しくさせていただいた。

   広瀬氏に転機が訪れたのは昨年12月だった。現職の町長から後継候補に指名され、本人も町長選に立候補を表明。1月15日に副町長を辞して、同30日に後援会の事務所開きをして選挙の準備を進めていた。先日、後援会事務所の前を通りかかったので、事務所をのぞいたが、本人はあいさつ回りに出かけていて不在だった。事務所のスタッフから、毎日100世帯以上を訪問していると聞き、選挙への意欲を感じた。

   事件についての記事を読むと、遺書などは見つかっていない。ただ、家族や支援者の話として、声がけしても返事がなかったり、本人の相当な疲労感を周囲も感じ取っていたようだ。亡くなったとされる14日もあいさつ回りをしていた。自身がこれまで接してきた印象は、理論的で仕事熱心、そして冷静なタイプだった。その人物がなぜ母親を道連れに死を選んだのか。悲劇としか言いようがない。

⇒16日(火)夜・金沢の天気    ゆき 

☆森発言 批判鳴り止まず

☆森発言 批判鳴り止まず

   東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の女性蔑視ともとれる発言の波紋が広がっている。IOCのバッハ会長は、「組織委員会から森会長が発言を撤回し、謝罪したという報告を受けて、IOCとして、その部分はよく理解した。引き続き、東京大会の成功に向けて努力してほしい」(橋本オリンピック・パラリンピック担当大臣の談話、2月5日付・NHKニュースWeb版)と語ったと、報じられている。果たしてそれでこの発言問題は収束するのか。

   日本の新聞メディアはどうか。「森会長失言、批判噴出」と毎日新聞(2月5日付)は一面のトップ記事だ。朝日新聞(同)も「森会長、発言撤回し謝罪」と同じく一面トップ。一方、読売新聞(同)は「森会長が発言撤回」と一面ながら、扱いは3番目だ。日経新聞(同)も「森氏、発言を謝罪」と一面ながら扱いは4番目だ。では地元新聞はどうか。北國新聞(同)は「森氏『不適切』と謝罪」と一面の準トップ。北陸中日新聞(同)は「森会長 性差別発言を謝罪」と一面トップだ。扱いの大きさでそれぞれの新聞の編集方針が浮き出ている=写真=。

   では、海外の報道はどうか。アメリカのCNNは「Top Tokyo Olympics organizing official apologizes for sexist remarks that women talk too much in meetings」と伝えている。イギリスのBBCも「Tokyo Olympics chief Yoshiro Mori ‘sorry’ for sexism row」と。このニュースがさらに世界に広がり、オリンピックの競技でどこかの国の女子チームが不参加を表明したら、さらに大きなニュースとなって世界を駆け巡る。すでに、カナダのアイスホッケー女子五輪金メダリストでIOC委員を務めるヘーリー・ウィッケンハイザー氏は4日、「(森氏を)絶対に追い詰める」とツイッターに投稿し、発言への憤りを表明した(2月5日付・NHKニュースWeb版)。

   女性差別発言は海外ではさらに厳しくなるだろう。国際的な人権団体の格好の攻撃対象だ。森氏の辞任どころか、東京オリンピックそのものの開催も危うくなるのではないだろうか。ジェンダーの発言問題を収束させる機関も人物も手段もないのだ。

⇒5日(金)夜・金沢の天気   くもり

☆ユニークベニューな能登への本社移転

☆ユニークベニューな能登への本社移転

   ワーク(仕事)とバケーション(休暇)を組み合わせた造語、ワーケーション(workation)は夢のような働き方と思っていた。景勝地にオフィスを構え、通勤時間は歩いて10分ほど。四季を肌で感じ、食事は近くのホテルやレストランで取れたての食材で寿司や海鮮料理や和食、イタリアンなどを楽しむ。仕事に集中でき、ストレスは溜まらない。そのようなイメージだ。それが、能登で現実に動き始めようとしている。

   日経新聞北陸版(1月23日付)で、東証一部の医薬品商社「イワキ」が東京都中央区にある本社機能をことし6月から石川県珠洲市に段階的に移転するというニュースが掲載されていた。記事によると、本社機能は経営企画、人事、経理、情報システムなどの部門が含まれ、約110人を予定し、東京と石川で居住地や就労地を選べるようにする。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、本社機能の一部を珠洲市に分散し経営上のリスクを減らす。珠洲の原材料を使用した商品を開発するなど地方創生に関わる事業の創出にもつなげる。

   珠洲市は能登半島の先端に位置する。日本海に囲まれ、北部は切り立った断崖、南部には穏やかな海が広がる。軍艦のような形をした見附島や、しぶきを上げて流れる「曽の坊の滝」などの観光スポットとしても知られる(同)。

   記事を読んで驚いたことに、本社機能を移転する予定のオフィスは古民家だ。1914年に東京・日本橋で創業した上場企業が能登の茅葺(かやぶき)の古民家に拠点を移す。前代未聞だ。

   じつは、自身はこの古民家にこれまで3度訪れたことがある。もともと、日本画家の勝田深氷氏が1994年に東京から移住し創作活動をしていたアトリエだった。当時は「勝東(しょうとう)庵」と呼ばれていた。勝田氏は、最後の浮世絵師と称され、美人画で知られた伊東深水の二男で、姉は女優の朝丘雪路だ。サンフランシスコにもアトリア「勝東庵」を構えていたが、2012年7月にシスコで急逝した。しばらく、奥様が珠洲の「勝東庵」を守っていた。自身が初めて訪れたのは2013年5月、奥様から深氷氏の18年間におよぶ能登での創作活動の様子などうかがった。その後、珠洲市が文化芸術交流施設「文藝館」=写真・上=として管理している。この文藝館がオフィスとして貸し出される。

   堂々とした建物の外観もさることながら、内部には深氷氏が遺した芸術作品がある。正面玄関から入ると、左手に杉の板戸6枚に描かれた見事な桜が出迎えてくれる。 作品名は「桜心(おうしん)」=写真・中=。この絵を眺めていると、現代画壇という感じではなく、まさに江戸時代の絵師の筆の勢いというものが伝わってくる=写真・下=。この絵を鑑賞していると新たなアイデア創出や思考力といった感性が高まるような気がする。板戸だけではない。芸術的な工夫が凝らされた玄関やトイレ、客間なども感慨深い。

   文化財の建物などを会議の場として活かすことをユニークベニュー(unique venue、特別な会場)という言葉を用いる。まさに、ユニークベニューなオフィスではないだろうか。

   この古民家の周辺は、「珠洲ビーチホテル」という8階建のホテルを中心に家族用のキャビン群もあるリゾート地としても知られる。震災などリスクヘッジを念頭に置いた地方への本社機能の移転は進むのではないか。人材派遣会社「パソナグループ」も本社機能の一部を東京から兵庫県淡路島へ移転することを発表している。今回のイワキのケースは古民家を活用するという点で、地方移転へのシンボリックな存在になるのではないだろうか。

⇒24日(日)午後・金沢の天気   くもり時々あめ

★東京オリンピック 開催は無理なのか

★東京オリンピック 開催は無理なのか

           きょうは1月23日、東京オリンピックの開会式まであと6ヵ月だ。その開催をめぐって世界にニュースが走っている。イギリスの「タイムズ」紙WEB版(1月21日付)が「Japan looks for a way out of Tokyo Olympics because of Covid」の見出しで、IOCと日本政府との間で、ひそかに東京五輪を中止し、2032年の開催を目指す道を探っていると報じた=写真=。タイムズは1785年創刊の世界最古の日刊紙であり、世論形成の役割を担うメディアの一つだ。ニュースを目にした世界の人々は妙に納得しているかもしれない。

   タイムズと同じく世界のメディアとして存在感を示している、イギリスのBBCニュースWeb(20日付)も「Tokyo Olympics ‘unlikely to go ahead in 2021’」の見出しで「2021年開催は無理」と、ロンドン五輪(2012年)の元最高責任者の言葉を引用して述べている。この2つのメディアが「開催は無理」とのニュースを流すと、世界のニュースのトレンドが定まってしまうので恐ろしい。

   開催は無理なのだろうか。ワクチンが世界に十分に供給されていない状況で、世界中から33競技に出場する1万1000人の選手、加えて審判員が東京に集まる。1万人のランナーが参加する聖火リレーは3月25日に福島県をスタートにゴールの東京都まで121日間かけて行われる。大会では競技場や選手村で活動する「フィールドキャスト」と呼ばれるボランティアが8万人、選手の移動に2190台のバスが用意されるとの報道(1月23日付・NHKニュースWeb版)がある。開催の有無は遅くとも、3月25日の聖火リレーが始まる前に決断しなくては、その途中で開催中止の発表をするわけにもいかないだろう。

   東京五輪・パラリンピックの開催都市契約はIOCと東京都、日本オリンピック委員会(JOC)の3者で締結しているので、この際、この3者で「開催条件」を明示すべきではないだろうか。たとえば、選手や審判員のワクチン接種など具体的な条件を明らかにする。その進捗度で開催する、しないを決める。国内でもワクチン接種をすることで観戦が可能などといった条件があれば、分かりやすい。繰り返しになるが、いつまでにどんな基準を満たしていればオリンピックを開催するのかという「開催条件」を明確に示すことだ。そうでなければ、国民の気持ちがまとまらない。もちろん、他の参加国における条件も決めておくべきだろう。

   話は前後するが、IOCのバッハ会長は22日、各国・地域の国内オリンピック委員会(NOC)とオンラインで意見交換し、大会開催への固い決意を重ねて示した。バッハ氏はタイムズによる「日本政府が中止せざるを得ないと内々に結論付けた」との報道を「フェイクニュース」と否定した上で、日本の準備状況を高く評価。NOCに対し、大会への準備に関するアンケートを近く行う方針を示した(1月22日付・共同通信Web版)。

⇒23日(土)午前・金沢の天気  あめ

☆バイデン大統領「My whole soul 」演説の響き

☆バイデン大統領「My whole soul 」演説の響き

   果たしてアメリカは変わるのか。ジョー・バイデン大統領の就任演説がホワイトハウスの公式ホームページ(1月21日付)で全文掲載されている=写真=。演説の中味をチェックすると、率直な感想はやはり78歳の、アメリカ史上最高齢の大統領の、超ベテラン政治家の、ある意味でアンテークな演説なのだ。そう感じたのは以下の箇所だ。

「In another January in Washington, on New Year’s Day 1863, Abraham Lincoln signed the Emancipation Proclamation.When he put pen to paper, the President said, “If my name ever goes down into history it will be for this act and my whole soul is in it.”

My whole soul is in it. Today, on this January day, my whole soul is in this: Bringing America together. Uniting our people. And uniting our nation. I ask every American to join me in this cause. Uniting to fight the common foes we face: Anger, resentment, hatred. Extremism, lawlessness, violence. Disease, joblessness, opelessness.」

以下意訳:別の1月、1863年の元日にエイブラハム・リンカーンは奴隷解放宣言に署名した。紙にペンを走らせた時、大統領はこう言った。「もし私の名が歴史に残るようなことがあれば、これがその理由になる。私は全身全霊をこれに注ぎ込んだ」と。

今日のこの1月の日に、私も全身全霊を込めている。アメリカをひとつにまとめるため。国民の連帯、国の連帯を実現するため。この大義のため、すべてのアメリカ人に協力を呼びかける。怒り、不満、憎悪、過激主義、無法状態、暴力、病気、失業、そして希望の喪失――。こうした敵に立ち向かうため、みんなで連帯してほしい」

   リンカーン大統領の事例の引用もさることながら、「My whole soul 」という言葉にアンテークさを感じる。日本語で「全身全霊」という言葉となるが、古めかしさを感じるのは自身だけだろうか。そして、見逃しているのかもしれないが、演説にはデジタル(digital)という言葉が出てこないのだ。

   大統領選でのトランプ氏との壮絶な闘いの後だけにアメリカ国民に連帯を訴えたのだろう。ただ、アメリカの分断を生み出している一つの要因としてSNSといったデジタル社会の有り様を認識しているのであれば、アメリカの世代間の融和やデジタル社会における国家の存在意義というものを強調すべきなのではないだろうか。「My whole soul」はアメリカ国民の心にどれだけ響いたのだろうか。

⇒22日(金)朝・金沢の天気     あめ 

★続・世界は「破滅的なモラル崩壊寸前」なのか

★続・世界は「破滅的なモラル崩壊寸前」なのか

         前回のブログで、WHOのテドロス事務局長は、富裕国が新型コロナウイルスのワクチンを独占して最貧国が苦しむならば、世界は「破滅的なモラル崩壊寸前」だと警告した、との記事(1月18日付・時事通信Web版)を紹介した。次にテドロス氏が打ってくる手は、「最貧国にワクチンが届かなければ、オンリンピックは開催できない」、ではないかと懸念している。つまり、オリンピックを盾に富裕国にワクチン拠出を迫る、荒っぽい手口だ。

   そう懸念する論拠は以下だ。昨年2020年5月16日、WHOのテドロス事務局長とIOCのバッハ会長はジュネーブにあるWHO本部で会談し、スポーツを通して健康を共同で促進していこうという覚書(MOU)を交わした。ICOの公式ホームページにMOUの内容が紹介されている。

「the IOC and WHO are demonstrating their shared commitment both to promoting healthy society through sport, in alignment with Sustainable Development Goal 3 (“Good health and well-being”), and to contributing to the prevention of non-communicable diseases. (IOCとWHOは、SDGs目標3「健康と幸福」に沿って、スポーツを通じて健康的な社会を促進するという共通のコミットメントを示し、さらに非感染性疾患の予防に貢献する)

   問題なのはこの一文だ。「The IOC and sports organisations recently benefited from WHO guidelines on mass gatherings, aiming specifically to provide additional support to sports event organisers and host countries in developing a risk-assessment process, identifying mitigation activities and making an informed evidence-based decision on hosting any sporting events. The guidelines can be found here.」(意訳:IOCとスポーツ組織は、リスク評価プロセスの開発や緩和の特定、およびスポーツ大会の開催の決定に当たり、スポーツイベントの主催者と開催国に追加のサポートを提供する。実施にあたってはWHOからガイドラインを頂戴する)

   つまり、オリンピックなど国際スポーツイベントの開催にあたっては、WHOからガイドライン(この場合は助言)を示される。つまり、東京オリンピックでは、参加するすべての国にワクチンを行き渡らせることが開催のガイドラインとしてWHOが示す可能性もあるのではないか。

   実際、IOCとWHOの覚書の後の記者会見で、記者からワクチンが完成する見通しがたたない東京オリンピックの開催は可能かと問われ、バッハ会長は「2021年の7月に世界がどのようになっているかわからない。大会まで1年2ヵ月あり、WHOと作業チームの助言(ガイドライン)に従いながら正しい時期に必要な決定を行う」と、五輪開催の最終決定にあたってはWHOのガイドラインを重視すると述べている。

   IOC公式ホームページの写真でもトレーニング用の固定自転車でツーショット=写真=が掲載されている。解釈によっては、IOCとWHOは「両輪」、あるいは「二人三脚」と強調しているようにも読める。

   結論を急ぐ。MOUによってテドロス氏はある意味でオリンピックを開催するしないの「決定権」を握ったのだ。コロナワクチンを富裕国が独占し、最貧国に行き渡らない状態ではオリンピックは開催できないとテドロス氏が言えば、IOCも従わざるを得ないだろう。あるいは、テドロス氏は日本に対してオリンピックを開催するためと称して、最貧国へのワクチン購入費を要求してくるかもしれない。それも言葉巧みに脅し、すかしの外交用語で。上記は憶測である。

⇒20日(水)朝・金沢の天気     はれ

☆世界は「破滅的なモラル崩壊寸前」なのか

☆世界は「破滅的なモラル崩壊寸前」なのか

   天気予報によると、きょう19日の金沢の最高気温が零度、最低気温がマイナス2度だ。能登の輪島は最高気温がマイナス1度、最低気温がマイナス3度となっている。朝起きて自宅周囲を見渡すと10数㌢積もっている。きのうは雷もとどろいていたので、しばらく厳冬は続くだろう。

       それにしても、世界は「コロナ厳冬」だ。感染者9560万人、うち死者204万人(1月19日付・ジョンズ・ホプキンス大学コロナダッシュボード)。世界ではさまざま議論が沸き起こっている。WHOのテドロス事務局長は、富裕国が新型コロナウイルスのワクチンを独占して最貧国が苦しむならば、世界は「破滅的なモラル崩壊寸前」だと警告した(1月18日付・時事通信Web版)。

   中国外務省の華春瑩報道局長は19日の記者会見で、WHOの独立委員会が中国の新型コロナウイルス感染症への初期対応に遅れがあったと指摘した中間報告に反論した。華氏は武漢市の海鮮市場を昨年1月1日に閉鎖し、新型肺炎の発見からわずか3週間あまりで武漢を封鎖したと強調。早期に世界に警鐘を鳴らしたと主張した。また、新型コロナの起源を巡り政治問題化することに断固反対すると改めて強調。新型コロナ対策のため国際社会が団結し協力する助けにならないためだと理由を述べた(1月19日付・共同通信Web版)。

   上記のテドロス氏と中国の華報道局長の発言には違和感を感じた。中国が初期対応に遅れはなかったと言うのであれば、1月下旬は中国の春節の大移動で世界にコロナ禍をまき散らす結果となったが、なぜ出国禁止としなかったのか。そして、1月23日のWHO会合では、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言を時期尚早として見送った。WHOが緊急事態宣言を出したのは1週間遅れの30日だった。

   このころ、中国以外での感染が18ヵ国で確認され、日本をはじめアメリカ、フランスなど各国政府が武漢から自国民をチャーター機で帰国させていた。なのになぜ、WHOは23日に宣言を見送ったのか、中国に配慮して「武漢ウイルス」を国際的に宣言するのをためらったのはないか、との疑念が今もくすぶっている。

   テドロス氏は、コロナワクチンを「富裕国が独占している」として、「破滅的なモラル崩壊寸前」だと警告したが、ならば、その大前提として世界が抱いているテドロス氏への疑念に真摯に答えなければならない。でなければ、「そもそもパンデミックを広めたのは、貴方でしょう」と、議論は前に進まないのではないか。

⇒19日(火)午後・金沢の天気    あめ時々ゆき