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☆「オリンピックはボイコットすることに意義あり」なのか

☆「オリンピックはボイコットすることに意義あり」なのか

   先月25日から始まった聖火リレーはきょう7日、三重県四日市市をスタートし、鈴鹿サーキットや鳥羽市の離島、伊勢神宮など県内の12市町を巡る。それにしても気になるのは、新型コロナウイルスの新規感染者の拡大が関西方面で急増している。大阪府ではきょう新たに800人台後半の新規感染者が出たようだ(4月7日付・毎日放送ニュースWeb版)。きのう6日は719人の感染が確認されている。その大阪府での聖火リレーは今月13、14日の両日だが、大会組織委員会は公道でのリレーを中止し、吹田市にある万博記念公園で代替の走行をすると発表した(同)。

   オリンピックに関して別の難題も持ち上がっている。時事通信Web版(4月7日付)によると、アメリカ国務省のプライス報道官は記者会見で、中国による人権侵害に懸念を示し、来年2022年2月に開催される北京冬季オリンピックについて、ボイコットの是非を同盟国や友好国と議論していく考えを示した。

   オリンピックのボイコットと聞いて思い浮かぶのは1980年のモスクワオリンピックで、アメリカのカーター大統領の提唱で旧ソ連によるアフガニスタン侵攻に抗議して日本を含め50ヵ国余りがボイコットした。それにしても、プライス報道官の記者会見でのコメントは絶妙なタイミングだ。

   今月15日、菅総理はアメリカ訪問に向けて出発し、16日にバイデン大統領と首脳会談を予定している。おそらく主要議題として、中国による台湾侵攻の可能性の分析や、有事に際してアメリカと日本はどう対応すべきか率直に意見交換することになるだろう。それと、今回の北京冬季オリンピックのボイコットについての論議がセットになるのではないだろうか。むしろ、バイデン氏はセットにしたいが故にあえてこの今回この報道官コメントを通じて問題提起をしたのかもしれない。

   バイデン政権による中国の人権弾圧に関する対応は強硬だ。アメリカの国務省の報道官は、中国がウイグル人に対して「ジェノサイド(大量虐殺)」を行っていると認め、この点においては前政権と現政権の見解は一致していると繰り返し述べている(2021年2月5日付・AFP通信Web版日本語)。

   ただ、日米首脳会談に臨む菅総理の心中は穏やかではないだろう。何しろ、アメリカの同盟国としてボイコットに同調すれば、中国は趣意返しとして3ヵ月後の東京オリンピックのボイコットを切り出すことは想像に難くない。さらに、中国は息のかかったアフリカの諸国に東京オリンピックのボイコット圧力をかけてくるだろう。そうした状況が見えてくるだけに、菅氏とすれば北京オリンピックのボイコット案件は東京オリンピック後に回答したいとバイデン氏に伝え、その場をしのぐのではないか。

   有名な言葉「オリンピックは参加することに意義ある」(元IOC会長・クーベルタン)はもう過去の話なのだろうか。オリンピックの政治利用という真逆の方向に世界は動き出している。

⇒7日(水)夜・金沢の天気      はれ

☆4月1日「中国ディストピア物語」

☆4月1日「中国ディストピア物語」

           今の中国の動きをメディアを通じてウオッチしていると「歴史ドキュメンタリー映画」を鑑賞しているようで、実に緊張感がある。あえてタイトルを付すれば、「中国ディストピア物語」だろうか。この場合のディストピア(dystopia)は自由が奪われる世界のたとえで、ユートピアと真逆な意味を込めている。

   最近のディストピア・ストーリーをいくつか。沖縄県の尖閣諸島の沖合で、中国海警局の船2隻が3月29日午前4時すぎ、日本の領海に侵入した。2隻は南小島の沖合で操業していた日本漁船2隻に接近する動きを見せたため、海上保安本部が巡視船を周囲に配備し漁船の安全を確保した。2隻は9時間にわたり領海内を航行したあと午後1時すぎに領海から出た。尖閣諸島の沖合で中国海警局の船が領海に侵入したのは、今年に入って11件目(3月29日付・NHKニュースWeb版)。

   「ここは我が国の領海だ」と主張して、漁船を追いかけ回す。南シナ海でもベトナムやフィリピンの漁船に対して同じことをしている。そのうち、民兵が乗った何百隻という「漁船」が尖閣諸島に来て上陸。小屋など建て居座る。漁民を守るためと称して海警局も上陸し灯台など造る。これを機に尖閣の実効支配に入る。見事なストーリーだ。

   ミャンマー国軍による弾圧強化で週末に市民100人以上が死亡した事態を受け、国連安全保障理事会は31日、イギリスの要請で緊急会合を開いた。ブルゲナー国連事務総長特使(ミャンマー担当)は、国境付近で国軍と武装勢力の戦闘が激化しており、「前例なき規模の内戦に陥る可能性が高まっている」と警告。「多重の破滅的状況」を回避するため共同行動を安保理に促した。一方、中国の国連大使は声明で、民主主義への移行を促しつつ、「一方的な圧力や制裁の訴えは緊張や対立を深め、状況を複雑化させるだけだ。建設的ではない」と主張した。安保理が今後、新たな声明を出す可能性はあるが、制裁など強力な措置で一致するのは難しいのが現状だ(4月1日付・時事通信Web版)。

   香港やウイグルにおける人権弾圧問題で国際批判を浴びている中国は国連の常任理事国の座にある。常任理事国であれば問題を起こしても国連では問われない。2020年5月、アメリカは中国による香港国家安全維持法(国安法)は人権侵害にあたるとして安保理の開催を提案したが、中国は「純然たる中国の内政問題だ」として拒否した。仮に安保理で決議がされても、拒否権を発動すれば成立しない。

   中国のディストピア・ストーリーは国連に関与を強めることだ。WHOのテドロス事務局長の有り様をウオッチすれば一目瞭然だ。さらにその先に描く夢は「国連本部を北京に」だろう。チャンスが到来した。「アジア系住民人へのヘイトクライムが多発するニューヨークを脱出しよう」と運動を起こす。

   4月1日、今年は自粛気味だがエイプリルフールの日。「中国ディストピア物語」を夢想してみた。(※写真は国連本部公式ホームページより)

⇒1日(木)午前・金沢の天気      はれ

☆「地震、カミナリ、火事」金沢の災害

☆「地震、カミナリ、火事」金沢の災害

    世の中で怖いものの例えとして、「地震、雷、火事、親父」がある。最近は「親父」は怖くなくなり、代わって台風が入る。「地震、雷、火事、台風」だ。一番怖いのは筆頭の「地震」だ。いつ、どこで強い揺れに襲ってくるか分からない。政府の地震調査委員会は、全国の活断層や海溝型の地震に関する最新の研究成果などに基づき、今後30年以内に震度6弱以上の激しい揺れに襲われる確率などを推計した「全国地震動予測地図」の2020年版を公表した(3月26日)。防災科学技術研究所の公式ホームページ「地震ハザードステーション」に掲載されている。以下引用する。

   地震は世界中どこでも起こっているわけではなく、地震が多発する地域とそうでない地域がある。1977年1月から2012年12月までに世界で発生したマグニチュード5以上の地震統計によると、日本の面積は世界の1%未満であるにもかかわらず、世界の地震の約1割は日本の周辺で起きている。つまり、日本は地球規模で見ても地震による危険度が非常に高い。

   2020年版=写真=を見ると、今後、南海トラフや千島海溝沿いでの巨大地震の発生が懸念されている。また、房総沖の巨大地震や、首都直下地震など確率が高い地域が赤紫色で塗られている。自身が住む金沢市も「森本・富樫断層帯」があり、今後30年以内に震度6弱以上の激しい揺れの確率は2%から8%と高レベルだ。長さ26㌔のこの断層帯は市内の中心地を走っている。中心地を走っているというのは、1799年(寛政11)6月29日の金沢地震が起き、断層で崩れたくぼ地などを道路として金沢の街が形成された。再度地震が起きれば市街地を揺れが直撃することになる。

   金沢は「加賀百万石」の優雅な伝統と文化の雰囲気が漂う街と思われている。一方で、江戸時代からの防災の街でもある。加賀鳶(とび)に代表される、伝統的な自主防災組織が金沢にある。また、市内には「広見(ひろみ)」と呼ばれる街中の空間が何ヵ所かある。ここは、江戸時代から火災の延焼を防ぐため火除け地としての役割があったとされる。また、城下町独特の細い路地がある町内会では、「火災のときは家財道具を持ち出すな」というルールが伝えられている。

   なぜそこまで、と考える向きもあるだろう。気象庁の雷日数(雷を観測した日の合計)の平年値(1981~2010年)によると、全国で年間の雷日数がもっとも多いは金沢の42.4日だ。雷がとどろけば、落雷も発生する。1602年(慶長7)に金沢城の天守閣が落雷による火災で焼失している。石川県の消防防災年報によると、県内の落雷による火災発生件数は年4、5件だが、多い年(2002年)で12件も発生している。1月や2月の冬場に集中する。雷が人々の恐怖心を煽るのはその音だけではなく、落雷はどこに落ちるか予想がつかないという点だ。

   寛政の金沢地震から220年余り、震災はいつ起きるか分からない。雷鳴も激しくとどろく。自身のパソコンは常に雷サージ(電気の津波)を防ぐコンセントを使用している。実は怖い街なのだ。

⇒27日(土)夜・金沢の天気        くもり

 

★ミサイルゲームはいつまで続く

★ミサイルゲームはいつまで続く

   弾道ミサイルを1発打ち上げると、そのコストはいくらなのだろうか。共同通信Web版(3月25日付)によると、北朝鮮はきょう25日、弾道ミサイル2発を日本海に向けて発射したと日本政府が発表した。北朝鮮東部の宣徳付近から午前7時4分と同23分に発射し、いずれも約450㌔飛行。日本領域には到達せず、日本の排他的経済水域(EEZ)の外に落下した。北朝鮮の弾道ミサイル発射は昨年3月29日以来で、1月のアメリカのバイデン政権発足後で初めて。

   この弾道ミサイル発射の意図は何なのか。以下憶測である。北朝鮮の金正恩総書記が一番恐れていることはアメリカによるピンポイント攻撃、いわゆる「斬首作戦」だろう。実際、アメリカは2011年5月2日のバキスタン攻撃でオサマ・ビン・ラディンに対する斬首作戦を実行した。命令を下したのはオバマ氏、民主党政権下で実施された、

   この斬首作戦を避けるため、金氏はまず弾道ミサイルを打ち上げ、アメリカとの対話の機会を狙う。以下事例だ。2017年7月28日、北朝鮮が打ち上げた大陸間弾道ミサイル(ICBM)はアメリカ西海岸のロサンゼルスなどが射程に入るものだった。北は同年9月3日に6回目の核実験を実施し、同15日には弾道ミサイルを日本上空に飛ばした。それをトランプ大統領が国連総会の演説(同19日)で「ロケットマンが自殺行為の任務を進めている」と演説した。その後、金氏はトランプ氏との米朝首脳会談を2018年6月12日(シンガポール)、2019年2月28日(ハノイ)、同年6月30日(板門店)で3回行った。首脳会談を実施している間はアメリカによる斬首作戦はないと踏んでいるのだろう。

   この経験則をベースに、今度はバイデン氏との対話を求めて挑発を行っているのではないか。金氏が1月5-7日に開催した党大会で、アメリカを「最大の主敵」「戦争モンスター」と呼び、より高度な核技術の追求などを通じて、アメリカの脅威に対する防衛力を絶えず強化する必要があると述べた。核兵器の小型・軽量化と大型核弾頭の製造推進、1万5000㌔射程内の戦略的目標に命中させ破壊する能力の向上を目指す方針も表明。固体燃料を用いるICBMと原子力潜水艦の開発、衛星による情報収集能力強化にも言及した(2021年1月9日付・BloombergニュースWeb版日本語)。

   そして、きょう弾道ミサイルを打ち上げを実行した。ただ、2017年7月28日のICBMに比べると地味なイメージだ。おそらくコストの問題だろうか。国連安保理が履行を求める国際社会による経済制裁、それに昨年の台風と洪水など自然災害の食糧危機、そして新型コロナウイルス対策などが重なって経済情勢がかなりひっ迫していることは想像に難くない。それにしても、金氏はいつまでこのミサイルゲームを続けるのか。

(※写真は朝鮮中央通信HPに掲載されている2017年3月6日の弾道ミサイルの発射の模様。「スカッドER」と推定される弾道ミサイルを4発発射、このうち1発が能登半島沖200㌔に着弾した)

⇒25日(木)夜・金沢の天気     はれ

★コロナ禍で地価下落、バブル後の悪夢再びか

★コロナ禍で地価下落、バブル後の悪夢再びか

   コロナ禍では「はやりこうなる」のか。国土交通省がきょう23日、1月1日時点の公示地価を発表した。金沢市の繁華街では軒並み下落している。とくに、中心分である片町2丁目のスクランブ交差点付近では1平方㍍41万5000円、前年が46万円だったので、マイナス9.8%だ。片町付近は最近では人の流れはそこそこ回復しているようにも見えるが、それまでは土日曜日でもゴーストタウンかと思うほど静かな風景を感じたものだ。北陸新幹線開業(2015年3月)の効果もあって、金沢は順調に地価が上昇していたので5年ぶりの下落だろう。コロナ禍が地価という数字となって表れた。

   観光地も直撃している。石川県には5つの温泉地(和倉、粟津、片山津、山代、山中)があるが、片山津で3.5%、粟津で3%、和倉で2.4%などとそれぞれ下落している。それまではインバウンド観光客などのニーズもあって、「温泉観光」はにぎわいを見せていた。それが、観光客の激減で5つの温泉地ともに厳しい状況にさらされている。すでに、休業や廃業に追い込まれたホテルや旅館もある。

   もちろん、首都圏4都県で続いていた緊急事態宣言は今月21日に解除され、観光需要が高まるのではないかと思わないでもない。ただ、観光地や温泉地などは、むしろ「インバウンド頼み」となっているの現状だ。日本政府観光局(JNTO)公式ホームページによると、訪日観光客数は2019年で3188万人だったが、コロナ禍で2020年は411万人と激減している。ちなみに、兼六園を訪れた観光客は2019年は275万人で、うち47万人はインバウンド観光客だった(「金沢市観光調査結果報告書2019年」など)。率にして17%だ。

   景気に連動するとされる地価。観光が地域経済の主力の一つとされる金沢では、ホテルや飲食店などによる土地需要が落ち込めば地価も下がる。地価が下がれば、投資をしようにも金融機関からの融資も回らなくなる。バブル崩壊後に寂れた金沢の光景とダブってしまう。コロナ禍の収束と経済回復を期待するしかない。(※写真は2020年4月25日、金沢市片町の大通りの風景。大型連休初日だったが閑散としていた)

⇒23日(火)夜・金沢の天気       はれ

☆4選の壁と匿名ポスターの威力

☆4選の壁と匿名ポスターの威力

   きのう21日、石川県では4つの市町選挙があった。小松市長選と中能登、宝達志水、能登の各町長選だ。ある意味で驚いたのは小松市長選だった。失政もなく、69歳という年齢は「まだいける」、そして内閣府の「SDGs未来都市」に選定され、3年後に控えた北陸新幹線小松駅の開業など、ある意味で順風満帆の現職市長が新人の41歳、元市会議員に敗れた。この選挙結果から読み取れるトレンドは何か。

  小松市は建設機械の最大手「小松製作所」の発祥の地でもあり、主力工場などが同市にある。和田慎司氏は大学卒業後に同製作所に入社し、産業機械事業本部副部長をつとめ、2009年に初当選した。今回は4期目を賭けた挑戦だった。一方、初当選を果たした新人の宮橋勝栄氏は大学卒業後に大手ドラッグストア「クスリのアオキ」など経て、2011年4月に小松市議選に初当選。2期目の2017年に市長選に立候補して敗れ、再挑戦だった。

  選挙戦では、和田氏は3期12年での財政健全化の実績を強調し、北陸新幹線小松駅の開業を見据えた駅周辺へのホテル誘致を訴えていた。逆に宮橋氏は緊縮財政で小松市の活気が失われたと批判し、市長退職金(2000万円)の全額カットを公約、さらに小中学校の給食無償化や音楽ホールやカフェを備えた複合型図書館の建設なども公約に掲げた。

   選挙戦では和田氏が自民、公明、立憲民主の推薦を得て、宮橋氏には市議の自民党第二会派などの支援を得ていた。また、小松出身の2人の自民党県議がそれぞれに支援に回るという「保守分裂」の状態だった。ローカル紙の情勢分析をチェックすると、3月14日告示の選挙序盤では、「和田氏を宮橋氏が追う」という論調だったが、中盤17日ごろからは、「和田氏を宮橋氏が激しく追い上げ」「激戦」などとの論調に変わってきた。

   選挙戦の激しさを象徴するかのように、市内265ヵ所の選挙ポアスター掲示板のほかに、匿名ポスターがあちらこちらに貼られた。この匿名ポスターというのは候補者を支援する団体として選管に届けて認められた確認団体が出すもの。ただし、候補者の名前と写真が掲載しないという条件がつく。公選法では市長選の場合、候補者1人つき1000枚のポスターを作成できる。そこで、両陣営は「現職小松市長 再び。今が働き盛り」や「41歳に一票を 若さ 情熱 政策。」など工夫を凝らした匿名ポスター=写真=を貼った。さらにそれを有権者がSNSなどで拡散することで、選挙戦が盛り上がった。ちなみに、右側の歌舞伎の隈(くま)取りは毎年5月に開催される「お旅まつり」で屋台で子ども歌舞伎が上演されることから、祭りのシンボルとして使われる。

   今回選挙(投票率60%)の開票結果は宮橋氏2万8676、和田氏2万3731で、4945票差だった。前回(投票率59%)は和田氏2万7735、宮橋氏2万2678で5057票差だった。まさに5000票差の逆転現象が起きた。

   同市内で住む何人かの知人にメールで選挙結果について尋ねた。すると、宮橋氏の勝因については、「市長になったら退職金を全額カットすると公示の日にアピールしていた。これはけっこうSNSでも話題になった。小中学生の学校給食の無料化もママ友の間では評判がよかった」と。和田氏の敗因については、「四選は長すぎると言う人(有権者)はもともと多くいた。周囲を固めている人もシニアな人が多く、守りの選挙だったのでは」と。

   四選の壁。和田氏の祖父・伝四郎氏は戦後の小松市長を4期(1947-63)つとめた。それ以来、小松市には四選の市長は出ていない。

⇒22日(月)夜・金沢の天気     はれ

☆海外観客を断念、メディアも規制対象か

☆海外観客を断念、メディアも規制対象か

            報道によると、東京オリンピック・パラリンピックの大会組織委員会と政府や東京都、それにIOCなど5者による会談が開かれ、現在のコロナ禍の状況では海外から日本への自由な入国を保証することは困難だとして、海外からの観客の受け入れを断念することが決めた。一方で、東京大会の観客の上限については来月改めて方向性を確認し、その後も柔軟に対応していく(3月20日付・NHKニュースWeb版)。会談はオンライン形式で橋本大会組織委員会会長、丸川五輪担当大臣、小池都知事、IOCのバッハ会長らが参加した。

  組織委の発表文によると、世界の新型コロナウイルスの感染状況は変異株の出現を含めて厳しい状況が続いており、世界各国で国境をまたぐ往来が厳しく制限されている状況下では、今年の夏に海外から日本への自由な入国を保証することは困難だと説明。「すべての参加者及び日本の国⺠にとって、⼀層確実に、安全で安心な大会を実現するための結論」だとした(同)。

   大会組織委員会によると、すでに海外で販売されたチケットの枚数はオリンピックが60万枚、パラリンピックが3万枚に上り、これらのチケットは今後、払い戻しされる。ちなみに、国内で販売されたチケットはオリンピックが448万枚、パラリンピック97万枚となっていて、大会の観客の上限については来月改めて方向性を確認し、その後も柔軟に対応していくとしている。

   橋本氏は会見で、「東京大会はこれまでとは全く異なる大会となるが、アスリートが卓越したパフォーマンスを持って、人々の心を動かす本質は変わらない。今の時代にふさわしい方法で人々をつなぐことができるよう、具体的な仕掛けの検討も進める」と述べた。また、丸川氏は記者団に対し、「IOC、IPCの方からは全面的に日本側の判断を支持するというコメントがあった」と発言。国内の観客については新型コロナの変異株の状況がどうなるか分からないとした上で、「4月に判断することになる」と述べた。

   海外からの観客を断念したとなれば、テレビ中継や新聞などメディアによる五輪報道が欠かせない。来月になれば、東京ビックサイトに設営されたIBC(国際放送センター)にIOCから放送権を得たRHBs(Rights Holding Broadcasters)と呼ばれる放送メディアが続々と準備のために東京にやって来る予定だ。

   気になるのは、海外メディアの取材陣も規制対象とするのだろうか。仮にそうなると、IOCに放映権料を払っているテレビメディアは降りるだろう。困るのはIOCだ。そして、国際世論がまた大騒ぎとなる。

⇒20日(土)夜・金沢の天気       あめ

★オリンピック「いじり」

★オリンピック「いじり」

   テレビ業界では「いじる」「いじり」という言葉がある。タレントが少々意地悪な目線で、同じタレントや素人を相手にちょっと痛いところを突くことで笑いを取る。もちろん、「いじる」側は「いじり」と「いじめ」のボーダーラインを心得ている。最初に相手を褒めたたえて、「ところで」と突っ込んでいく。視聴者側にとってはその言葉の展開が面白い。

   これもテレビ的な「いじり」の発想だったのかもしれない。以下、NHKニュースWeb版(3月18日付)から。東京オリンピック・パラリンピックの開閉会式の統括責任者を務める佐々木宏クリエーティブディレクターが、去年3月、大会の演出チームのSNS上のやり取りで、女性タレントの渡辺直美さんの容姿を侮辱するような豚に見立てた演出案を提案し、メンバーの反対で撤回していたことを明らかになった。

   大会組織委員会の橋本会長は18日正午すぎから記者会見し、本人から事実関係の説明を受けたとしたうえで「容姿を侮辱するような発言は大変、不適切。絶対にあってはならない」と述べ、本人からの辞意を了承し、佐々木氏が辞任したことを明らかにした。佐々木氏は18日、報道各社に対し「私のアイデアおよび発言内容に非常に不適切な表現がありました。大変な侮辱となる私の発案、発言は取り返しのつかないことで心から反省し、おわび申し上げます」との謝罪文を出した。

   佐々木氏はサントリー缶コーヒー「BOSS」などのCMで知られる電通出身のクリエーター。2016年リオデジャネイロ五輪の閉会式では、当時の安倍総理が「スーパーマリオブラザーズ」のキャラクターに扮して登場する演出で世界を沸かせた(同)。発想がもともとテレビ的なのだ。

   渡辺直美氏が所属する吉本興業の公式ホームページでは、本人のコメントが発表されている。

「オリンピックの件ですが、去年、会社を通じて内々に開会式への出演依頼をいただいておりましたが、コロナの影響で オリンピックも延期となり、依頼も一度白紙になったと聞いておりました。それ以降は何も知らされておらず、最初に聞いていた演出とは違うこの様な報道を受けて、私自身正直驚いております。

表に出る立場の渡辺直美として、体が大きいと言われる事も事実ですし、見た目を揶揄されることも重々理解した上でお仕事をさせていただいております。

実際、私自身はこの体型で幸せです。なので今まで通り、太っている事だけにこだわらず『渡辺直美』として表現していきたい所存でございます。しかし、ひとりの人間として思うのは、それぞれの個性や考え方を尊重し、認め合える、楽しく豊かな世界になれる事を心より願っております。

私自身まだまだ未熟な部分もありますので、周りの方にご指導いただきながら、これからも皆様に、楽しんでいただけるエンターテイメントを作っていけるよう精進して参りたいと思います。」

   上記の本人コメントは英語と中国語でも発表されている。おそらく吉本興業とすれば、本人がネットフリックスの「Queer Eye: We’re In Japan!」やCMなどで国外でも人気があり、東京オリ・パラ関連という国際ニュースを意識してあえて翻訳文も掲載したのだろう。しかもスピード感を持って対応していることに、ある意味で感じ入る。佐々木氏が辞任したので、いっそうのこと東京オリ・パラの閉会・開会の総合演出を吉本興業に委ねるのも一案ではないかと、ふと思った。

⇒18日(木)夜・金沢の天気      はれ

☆領海からハイテクまで曲がり角に入った対中関係

☆領海からハイテクまで曲がり角に入った対中関係

        中国との付き合い方が曲がり角に入った。「国」と「国」との関係では、日本と中国の場合、武器使用が認められ中国海警局の艦艇による尖閣諸島への領海侵入がクローズアップされる。 中国の経済圏構想「一帯一路」の対立軸として、「自由で開かれたインド太平洋」構想をテーマに日本、アメリカ、オーストラリア、インド4ヵ国の枠組み「クアッド(Quadrilateral Security Dialogue)」も動き始めている。

        「会社」と「会社」の関係性もうまくいくだろうか。中国のファーウェイは16日、高速通信規格「5G」対応スマートフォンから同社が徴収する必須特許の使用料を初めて公開した。1台当たり2.5ドル(約270円)を上限とし、端末の価格に応じて「合理的な比率」にするという。必須特許はあらゆるメーカーが製品で使うのを避けられない技術を指し、保有者は合理的な水準の使用料を受け取って競合企業などにも使用を許諾する仕組み(3月16日付・日経新聞Web版)。

   通信アプリ「LINE」の日本の利用者の個人情報などがシステムの管理を委託されていた中国の会社の技術者からアクセスできる状態になっていた。個人情報保護法は外国への個人情報の移転が必要な場合には利用者の同意を得るよう定めている。2018年から中国人の技術者が日本国内のサーバーに保管されている利用者の名前や電話番号、それにメールアドレスといった個人情報のほか、利用者の間でやりとりされたメッセージや写真などにアクセスできる状態になっていた(3月17日付・NHKニュースWeb版)。

   企業だから安心できるという次元ではない。中国が2017年6月に施行した「国家情報法」がある。11項目にわたる安全(政治、国土、軍事、経済、文化、社会、科学技術、情報、生態系、資源、核)を守るために、「いかなる組織および国民も、法に基づき国家情報活動に対する支持、援助および協力を行い、知り得た国家情報活動についての秘密を守らなければならない。国は、国家情報活動に対し支持、援助及び協力を行う個人および組織を保護する」(第7条)としている。端的に言えば、政府や軍から要請があればファーウェイなど中国企業はハッキングやデータ提供に協力せざるを得なくなる。

   この中国の国内企業への統制を受けて、アメリカでは2018年8月に「国防権限法」をつくり、ファーウェイなど中国のハイテク企業5社からアメリカの政府機関が製品を調達するのを2019年8月から禁止している。2020年8月からは、5社の製品を使う各国企業との取引も打ち切るなど徹底している。領海侵入からハイテク技術まで、中国との関係はすでに曲がり角に入っている。

⇒17日(水)夜・金沢の天気      くもり   

★黄砂から見える能登半島

★黄砂から見える能登半島

   強烈な黄砂がやって来る。気象庁公式ホームページ「黄砂情報」(3月16日付)によると、きょう午後3時で日本海から能登半島の尖端に近いづてき=写真・上=、午後9時ごろには山陰、北陸、新潟をすっぽりと覆うことになる。NHKニュースWeb版(3月15日付)は「中国の気象当局は、今回の黄砂について中国北部では、過去10年で最大の規模だとして、なるべく外出を控えるよう呼びかけています」と伝えている。

   西日本新聞Web版(3月16日付)によると、今回の黄砂で北京市内では粒子状物質「PM10」の濃度が一時、WHO基準値の約160倍となる1立方メートル当たり8千マイクログラムに達した。モンゴル国営放送によると、同国では草原地帯の広い範囲で強風や突風が発生し、遊牧民の住居が吹き飛ばされるなどして死傷者や行方不明者が出た。

     黄砂はタクラマカン砂漠やゴビ砂漠など中国の乾燥地域で巻き上げられ、偏西風に乗ってやってくる。わずか数マイクロメートル(1マイクロメートルは千分の1ミリ)の大きさの砂が、日本に飛来するまでに、まさざまに変化する。「汚染物質の運び屋」もその一つ。日本の上空3キロで採取した黄砂の表面には、硫黄酸化物が多くついていて、中国の工業地帯の上空で亜硫酸ガスが付着すると考えられる。

   黄砂に乗った微生物もやってくる。敦煌上空で採取した黄砂のおよそ1割にDNAが付着していて、DNA解析でカビや胞子であることが分かった(岩坂泰信・元金沢大学教授らの調査)。黄砂は「厄介者」とのイメージがあるが、生態系の中ではたとえば、魚のエサを増やす役割もある。日本海などでは、黄砂がプランクトンに鉄分などミネラルを供給しているとの研究などがある。地球規模から見れば、「小さな生け簀」のような日本海になぜブリやサバ、フグ、イカなど魚介類が豊富に取れるのか、黄砂のおかげかもしれない。

    その黄砂をキャッチするには、日本海に突き出た能登半島がよい。偏西風に乗って日本に飛んできた黄砂をいち早く観測・採取できるからだ=写真・下=。この地の利を生かして、「大気観測・能登スーパー・サイト」という調査フィールドが岩坂氏らの発案で2008年に形成された。能登半島は日本海を挟んで、中国と韓国、ロシアと向き合う。これらの国々の黄砂研究者との連携も進んでいる。東アジアにおける能登半島のポジションが、黄砂研究の視点から見えてくる。

⇒16日(火)午後・金沢の天気     あめ