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★バイデン指示「90日で結論を」動物感染か研究所漏洩か

★バイデン指示「90日で結論を」動物感染か研究所漏洩か

   ワクチン接種の遅れに自身もやきもきしている。ことし2月に接種が始まった医療従事者(480万人)ですら、2回接種を終えたのは282万人(5月27日現在・総理官邸公式ホ-ムページ)、率換算で58%、ようやく半数越えだ。65歳以上の高齢者3600万人のうち2回接種は24万人(同)、率ではわずか0.6%だ。もたもたしているうちに、変異株が多様化と進化を繰り返し、そのうちワクチンが効かなくなるのではないかと不安もよぎる。

   新型コロナウイルスの起源をめぐってニュースが相次いでいる。CNNニュースWeb版日本語(5月28日付)は、「フェイスブック社の広報はCNNに寄せた声明で、今後は新型コロナウイルス感染症が人工的に作られたとする主張を当社のアプリから削除しないことにした」と伝えている。フェイスブックは今年2月、WHOなどと協議し、ウイルスが人工的に作られたとの主張を削除すると発表していた。(※写真・上はThe White House公式ホームページより)

   ロイター通信Web版日本語(同27日付)は、アメリカのバイデン大統領は新型コロナウイルスの起源について、動物からの感染と研究所からの漏洩という2つのシナリオを国内の情報機関が精査しているものの、見解は割れていると明らかにし、声明で「明確な結論に近づくことができるよう、情報機関に対し情報の収集・分析に関する取り組みを強化し、90日以内に報告するよう要請した」と述べた、と報じている。 WHOは実施したコロナの起源を探る調査報告書を3月に公表し、ウイルスが武漢周辺の研究所から漏洩したとの見方は「最も可能性の低い仮説」と結論付けていた。

   ウォールストリート・ジャーナルWeb版日本語(同27日付)も「2020年2月6日、華南理工大学の肖波涛教授は、このウイルスについて『恐らく武漢の研究所が発生源だろう』と結論付けた論文を発表した。しかし中国政府はコロナの発生源に関する研究を厳しく制限しており、同教授は論文を撤回した」と研究所からの漏洩を報じている。 

   上記の一連の報道でいぶかったのは、研究所からの漏洩がは発生源とする分析はアメリカで相当進んでいるものとこれまで理解していたからだ。現に、アメリカ前政権の当時のポンペイオ国務長官は、中国科学院武漢ウイルス研究所に関する「新たな情報」として声明を発表している。NHKニュースWeb版(20121年1月16日付)によると、ポンペイオ氏は「アメリカ政府には、感染拡大が確認される前のおととし秋、研究所の複数の研究員が新型コロナウイルス感染症やほかの季節性の病気とよく似た症状になったと信じるに足る理由がある」と主張。加えて、「研究所は新型コロナウイルスに最も近いコウモリのコロナウイルスを遅くとも2016年から研究していた」「中国軍のための極秘の研究に関わっていた」と発表していた。

   ポンペイオ氏の声明には裏付けがあるものと自身も理解していた。この事件がきっかけだった。アメリカのハーバード大学教授が中国政府からの学術・研究協力の名目で多額の研究資金などを受け取っていたことを報告していなかったとして、アメリカ司法省は2020年1月、大学教授を「重大な虚偽、架空請求、詐欺」の容疑で訴追(逮捕は2019年12月10日、その後、21種類の生物学的研究を中国に密輸しようとした罪で起訴)している。教授はハーバード大学化学・化学生物学部のチャールズ・リーバー氏で、ナノサイエンス・ナノテクノロジーの分野で世界最先端の研究を行っている科学者。リーバー氏は中国の武漢理工大学の「戦略科学者」として2011-16年までの雇用契約を結んでいた。(※写真・下は2020年2月6日付・ニューヨーク・タイムズWeb版)

   つまり、武漢周辺の研究機関でのウイルス研究に詳しかったであろうリーバー氏から事情聴取が進み、かなり全容が見えてきた段階でポンペイオ氏が声明を出した、とニュースの流れを読めば誰しもそう考える。ところが、トランプ氏からバイデン氏へと政権交代がポンペイオ氏の声明から5日後の1月20日に行われたことで、武漢市でウイルス感染の起源についての調査は頓挫していたようだ。トランプ氏やポンペオ氏は新型コロナを「中国ウイルス」「武漢ウイルス」と叫んだため、コロナ禍をめぐる政権の失政を中国の責任に転嫁しようとする政治的な発言とバイデン政権は解釈したのだろう。解明調査はストップした。フェイスブック社もバイデン政権と連動するように武漢起源説やウイルス人工説に関する主張をアプリから削除した。

   このアメリカの状況を中国側は利用した。WHO報告書では武漢のウイルス研究所からの漏洩説を「可能性が低い」としているが、NHKの取材によると、インタビューした武漢担当の調査メンバーのオーストラリアの研究者は、感染拡大の初期の患者に関する詳しいデータを中国側に求めたが、提供されなかったと告白している(2月15日付・NHKニュースWeb版) 。

   このままだと武漢研究所からの漏洩説が消滅するはずだったが、すんでのところで調査再開の指示がバイデン氏から出た。動物からの感染と研究所からの漏洩という2つのシナリオの結論を90日以内に結論を出すことになる。遅くとも8月末には公表される。アメリカと中国の間で激しいコロナ情報戦も今後予想される。映画の『バイオハザード』のような展開になってきた。結論を待ちたい。

⇒31日(月)午後・金沢の天気    くもり

★ダイアナ元妃に十字架を背負わせたTVメディア

★ダイアナ元妃に十字架を背負わせたTVメディア

   2006年1月にイタリアのフィレンツェを訪れ、サンタ・クローチェ教会の壁画に描かれているフレスコ画「聖十字架物語」を鑑賞した。1380年代にアーニョロ・ガッティが描いた大作。絵は、4世紀はじめにローマの新皇帝となったコンスタンティヌスの母ヘレナ(中央)がキリストの十字架を発見し、エルサレムに持ち帰るシーンを描いたものだ=写真・上=。その時ふと、聖女ヘレナの横顔がイギリスのダイアナ元妃(1997年8月に事故死)にとても似ている感じがして思わずカメラを向けた。

   いまダイアナ元妃をめぐってイギリスを騒がせているのが、国際的なテレビメディアであるBBCが1995年11月に放送した、ダイアナ妃(当時)への独占インタビュー番組でついてだ。もう25年も前の話なのだが、BBCが自省の念を込めて、「Martin Bashir: Inquiry criticises BBC over ‘deceitful’ Diana interview」の見出しでその経緯について伝えている(現地時間5月20日付Web版)=写真・下=。

   当時、ダイアナ元妃のインタビュー番組は世界に衝撃を与えた。夫のチャールズ皇太子と別居していた彼女の口から自身の不倫や皇太子の愛人の名前、自殺未遂や自傷行為などが語られた。この番組の放映後に彼女は離婚。1997年にパリで起きた自動車事故により36歳で亡くなった。

   今回問題となったのは、このインタビューを行ったBBCの記者がダイアナ妃への取材交渉をする際につくり話と偽造文書を使っていたことだ。記者は、マーチィン・バシール氏58歳。当時、ダイアナ妃の弟、チャールズ・スペンサー氏に取材を持ち掛けた際、ダイアナ妃の情報を横流しする王室関係者の銀行口座にメディアから報酬が振り込まれているなどと説得し、その際に偽造した銀行の取引明細書を見せて信じ込ませていた。

   今回、スペンサー氏が告発したことを受け、BBCは昨年2020年11月、イギリス最高裁の元判事に調査を依頼した。報告書は今月公表され、BBCのグラフィックデザイナーが銀行の取引明細書に関与していることなども判明した。そして「”We can see now that the false bank statements were the lever that opened the doors to the access to Diana.”」(偽の銀行明細がダイアナ元妃に近づくドアを開くレバーだったと、いまわかった)と、当時のBBC会長の言葉を引用してこの記事を終えている。

   王室関係者からリークされているとの記者のつくり話とそれを証明するかのような偽の銀行取引明細書に騙されて、当時のダイアナ妃は恐怖心を抱いて自らのこと、そして夫である皇太子のことなど王室の現状を暴露してしまったことは想像に難くない。インタビューに応じてしまったことにダイアナ元妃は十字架を背負ったような重い心の負担を感じていたのではないだろうか。BBC、そして記者の罪は重い。

⇒22日(土)夜・金沢の天気     くもり時々あめ

★中国のワクチン外交 「WHOお墨付き」の裏読み

★中国のワクチン外交 「WHOお墨付き」の裏読み

   WHOの「中国寄り」、またか。時事通信Web版(5月8日付)によると、WHOは中国国有製薬大手、中国医薬集団(シノファーム)が開発した新型コロナウイルスワクチンの緊急使用を承認した。治験などから推定される有効性は79%という。中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)のワクチンについても審査中で、近く結果が発表される見通し。

   WHOの公式ホームページをチェックする。「WHO lists additional COVID-19 vaccine for emergency use and issues interim policy recommendations」のページに承認に至った経緯を紹介している。以下、ポイント。シノファームのワクチンに関しては、WHOは製造施設の現地査察を行った。WHOの予防接種に関する戦略的諮問グループ(SAGE)は入手可能なすべての証拠に基づいて、症候性および入院性疾患に対するワクチンの有効性はすべての年齢層を合わせて79%と推定した。ただし、臨床試験に登録された高齢者(60歳以上)がほとんどいなかったため、この年齢層での有効性を推定できなかった。高齢者とそれ以外の年代で有効性が異なるという分析結果と理論的な根拠はない。

   要は、緊急使用として有効性79%のワクチンを承認した。データは中国の生産現場を訪れて入手したもので、WHOが独自に医療現場で治験に立ち会って得たデータではない。60歳以上の高齢者への有効性についてのデータはない。つまり、消去法でのデータだ。

   実は中国のワクチンの有効性を疑うニュースが以前報じられていた。イギリスのBBCニュースWeb版(2021年4月12日付)は「Chinese official says local vaccines ‘don’t have high protection rates’」の見出しで伝えている=写真=。中国の疾病対策センター(CDC)のトップが4月10日の記者会見で、中国で現在使われているワクチンについて、「予防できる確率はあまり高くない」と述べ、「効果を高めるため、いくつかのワクチンを混合させることを政府として検討している」と述べた。しかし、その後、トップは予防効果が低いとした点について、「完全な誤解」と発言を撤回した。

   BBCは同じ記事で、中国のシノバックのワクチンを事例に有効性の数値を上げている。ブラジルでの臨床試験の結果で有効性は50.4%、トルコとインドネシアで実施された臨床試験の中間結果では有効性は65~91%だった。WHOはワクチン承認の条件として、50%以上を目安としている。

   アメリカのファイザーやモデルナ、イギリスのアストラゼネカなど欧米のワクチンの有効性は90%前後かそれ以上と報じられている。中国CDCのトップが「予防できる確率はあまり高くない」と発言して1ヵ月、それから各段にワクチンの有効性が向上したとは考えにくい。WHOはシノファームの「79%」の論拠をもっと明確に示すべきだろう。

   WHOはワクチンを途上国や貧困国などへ配分できるよう、国際的な枠組み「COVAX」を立ち上げたが、製薬メーカーが欧米に偏っており、ワクチン供給がままならない状況に陥っている。焦りを感じたWHOのテドロス事務局長による緊急措置だろう。が、もう一つのシナリオを裏読みしてみる。

   中国のオリンピック委員会はIOCのバッハ会長に、今夏の東京五輪と来年の北京冬季五輪の参加者にワクチンを提供したいとの申し出を行った(2012年3月11日付・ロイター通信Web版日本語)。新疆ウイグルなど少数民族や香港での統制強化が問題視されて欧米などで北京五輪ボイコットの動きに反応したのだろう。このとき、バッハ氏は「WHOのお墨付きが必要だ」とアドバイスしたのではないだろうか。そこで、習近平国家主席はWHOのテドロス氏に依頼。今月7日にテドロス氏から緊急使用ということで承認は可能との連絡が入った。するとさっそく習氏はバッハ氏に電話をし、「IOCと引き続き連携し、東京五輪の開催を支持したい」と表明した(5月7日付・共同通信Web版)。

   時間的なタイミングを読めば、上記のようなストーリーもできるのだ。中国はこれから「WHOのお墨付きがある」と大手を振ってワクチン外交を展開することだろう。

⇒9日(日)午前・金沢の天気     あめ後はれ

☆WHOテドロス事務局長の再選めぐるキナ臭さ

☆WHOテドロス事務局長の再選めぐるキナ臭さ

   WHOにまたキナ臭さが漂ってきた。AFP通信Web版日本語(5月4日付)は、「WHOのテドロス事務局長は再選を目指している」とアメリカの医療専門メディア「スタット・ニュース」の記事を引用して伝えている。テドロス氏はエチオピアの保健相と外相を歴任し、2017年にアフリカ出身者として初めてWHO事務局長に就任した。WHO事務局長は任期5年で2期まで務めることができる。1期ごとに加盟国の投票で選ばれる。

   テドロス氏への不信感が世界で広まったのは、「中国寄り」の露骨な振る舞いが新型コロナウイルスをきっかけに露わになったことから。中国の春節の大移動で日本を含めフランスやオーストラリアなど各国でコロナ感染者が拡大していたにもかかわらず、2020年1月23日のWHO会合で「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」宣言を時期尚早と見送った。同月30日になってようやく緊急事態宣言を出したが、テドロス氏は「宣言する主な理由は、中国での発生ではなく、他の国々で発生していることだ」と述べた(同1月31日付・BBCニュースWeb版日本語)。日本やアメリカ、フランスなど各国政府は武漢から自国民をチャーター機で帰国させていたころだった。

   その宣言後の記者会見でテドロス氏はさらにこう述べた。「私は先日中国に渡航し、習近平国家主席のリーダーシップを目の当たりにした。他の国も見習うべきだ。中国国外の感染者数が少ないことについて、中国に感謝しなければいけない」(同1月31日付・日経新聞Web版)。アメリカの当時のトランプ大統領は「WHOは中国に完全に支配されている。WHOとの関係を終わらせる」と脱退を表明し7月6日付で国連に正式に通告した(同7月8日付・共同通信Web版)。世界的な署名サイト『Change.org』でもテドロス氏解任キャンペーンが展開され、100万を上回る署名が集まった(同5月10日現在)。

   母国エチオピアでもテドロス氏への疑惑が起きている。エチオピア軍の参謀長は2020年11月19日の記者会見で、政府軍と対立している同国ティグレ州の政党「ティグレ人民解放戦線(TPLF)」にテドロス氏が武器調達を支援していると批判した。同月4日、TPLFが政府軍の基地を攻撃したのに対して、アビー首相(2019年ノーベル平和賞受賞者)が反撃を命じ、戦闘が続いていた。テドロス氏はティグレ人でTPLFの支援に回っているとエチオピア政府は不信感を募らせている(同11月19日付・AFP通信Web版日本語)。テドロス氏はTPLFへの武器調達を支援しているとの疑惑を否定した(11月20日付・同)。

   そのエチオピアではことし6月5日に国政選挙が行われる。選挙は当初2020年8月を予定していたが、新型コロナ対策を優先して実施を延期していた。アビー首相と政権与党「繁栄党」に対する国民の支持を占う選挙となる(2021年2月5日付・JETROWeb版)。この選挙で引き続き与党が政権運営を担えば、政府や軍の反発を買っているテドロス氏の2期目は危うくなる。また、中国寄りのテドロス氏がWHOの最高責任者として居座ることを国際世論が許すかどうか。そして、開発途上国に多額の債務を負わせる投資プロジェクト「一帯一路」をエチオピアでも展開する中国はこの局面をどう操るのか。キナ臭いストーリーの展開に注目したい。

(※写真は2020年8月21日のWHOの記者ブリーフィング=WHO公式ホームページ)

⇒4日(祝)夜・金沢の天気    くもり

★まるで「戦時下」 大阪のコロナ禍

★まるで「戦時下」 大阪のコロナ禍

   新型コロナウイルス感染者が急拡大している大阪府できのう20日新たに1153人増えた。また、医療体制がひっ迫していることから、全国の大学病院などから看護師ら90人の医療従事者が大阪に入るとニュースで報じられていた。ここまで来ると、まさに「戦時下」の印象だ。そして、昨夜に大阪府は国に緊急事態宣言の発令を正式に国に要請した。緊急事態宣言が発令されれば、人の流れを減らすために、百貨店など商業施設やテーマパークなどに休業要請がなされる。宣言の期間については3週間から1ヵ月の見込み。

   しかし、大阪府では3度目となる緊急事態宣言の効果は果たしてあるのか。2度目の緊急事態宣言(1月14日から2月28日)の後、大阪市内に「まん延防止措置」(4月5日から5月5日)が適用され、飲食店に午後8時までの営業時間の短縮を要請し、府民に対しても不要不急の外出自粛を求めている。それでもほぼ連日のように新たな感染者が1000人を超えている。そして、今回の3度目の緊急事態宣言の要請だ。

   大阪のメディアのニュースをチェックすると、3度目の緊急事態宣言中の飲食店に対する措置として3つの案を国と調整する。1つ目は、すべての飲食店の休業、2つ目は土日祝日は休業し、平日は午後8時までの時短営業で酒の提供を自粛、3つ目は休業要請はせずに酒の提供は自粛する、という内容(4月20日付・読売テレビニュースWeb版)。仮にすべての飲食店の休業だとしても効果はあるのか。

   先日、大阪の梅田の繁華街で、店が開いてないからとマスクもせずに路上で宴会する若者たちの姿がテレビで報じられていた。このとき思い出したのが、子どものころ父親から聞いた、「また逃げたか八連隊」という言葉だった。戦時中、大阪を中心に部隊編成された陸軍の八連隊では司令官が「突撃」と叫んでも、逆に逃げる兵士が多くいて部隊の統制が効かないとの例えだった。コロナ禍でこのような言葉を持ち出すことは相応しくないが、吉村府知事が緊急事態宣言だといくら叫んでも、実行性が伴わなければコロナ禍は治まらないのではないか。むしろ大阪にワクチン接種を集中させてもよいのではないだろうか。(※写真は大阪府庁舎=「Wikipedia」より)

⇒21日(水)午前・金沢の天気      はれ

★「恩を仇で返す」ような

★「恩を仇で返す」ような

   最近のニュースで「恩を仇で返す」という言葉を思い浮かべたことが2つある。慈しみや施しを受けた相手に対して、相応の礼を尽くすのではなく、逆に相手を攻撃するような態度のことだ。

   秋篠宮家の長女の眞子さまと婚約内定中の小室圭氏が、実母と元婚約者男性の金銭トラブルについて記したA4用紙28枚の文書を発表した(今月8日)。その「小室文書」をメディア各社がネットで上げているので、斜め読みだったが目を通した。目に留まったのは「切実に名誉の問題」とする文面だった。以下「AERA」公式ホームページに掲載されている文書の抜粋。

「どのような理由があろうと、早期解決と引き換えに借金でなかったものが借金であったことにされてしまう事態を受け入れることはできないと考えたからです。借金だったことにされてしまえば、元婚約者の方のおっしゃることが正しかったということになり、私や母は借金を踏み倒そうとしていた人間だったのだということになります。これは、将来の私の家族までもが借金を踏み倒そうとした人間の家族として見られ続けるということを意味します。」「一般的には金銭トラブルと呼ばれていますが、切実に名誉の問題でもありましたし、今でも、同じように受け止めています。」

 

   元婚約者から請求された「400万円」を返済すれば、借金だったとの意味付けになり、「借金を踏み倒そうとした人間の家族として見られ続ける」ことから、これは「名誉の問題」だと記した。かつて生活費を支援してくれた元婚約者への感謝の気持ちというものが文面からは感じられない。

   その象徴的な行為が「隠し録り」だ。2012年9月、元婚約者が婚約破棄にともない金銭に関する要求はしないとの会話を収めた録音データの存在を小室氏は記している。おそらくその後も「隠し録り」を続けていたのだろう。両者が真摯に話し合いの場に持って行けない状況をつくっていたのは小室氏側ではないだろうか。

   そして、「名誉の問題」は4日後に一転する。今月12日付のNHKニュースWeb版によると、小室圭氏の代理人弁護士は12日、報道陣の取材に応じ、母親と元婚約者の男性の金銭問題について、小室氏側が解決金を渡す意向があると明らかにした。なぜ方針転換をしたのだろうか。AERAが9日から12日にかけて実施した緊急アンケート(2万8641人回答)によると、「小室氏は文書によって金銭問題の説明を十分に果たしたか」の問いに94.7%が「十分とは言えない」と回答している。小室文書はむしろ国民の不信感を募らせたのだ。

    もう一つのニュース。東芝の経営再建に功績があった代表執行役社長兼CEOの車谷賜昭氏が任期半ばで辞任した(今月14日付・日経新聞Web版)。東芝は2015年に発覚した不適切な会計処理やアメリカでの原子力事業の失敗で債務超過に陥り、2017年8月には東証1部から2部に降格した。CEOとして白羽の矢が立ったのが、三井住友銀行出身の車谷氏だった。

    辣腕を振るったのは6000億円の増資やNAND型フラッシュメモリー会社「キオクシア」(旧東芝メモリ)の売却だ。そして、今年1月に東証1部に復帰した。3月に入って、いざこざが起きた。昨年7月の定時株主総会で、一部株主の議決権が無効だったとして今年3月の臨時株主総会で、定時株主総会の公正さを調査する議案が採択された(3月18日付・東芝公式ホームペ-ジ)。いわゆるアクティビスト(物言う株主)から企業統治への不信が噴出する事態に陥っていた。本来ならば再建の功労者なのだが。

(※写真は2017年9月3日、眞子さまと小室氏の婚約内定の記者会見=宮内庁公式ホームペ-ジより)

⇒18日(日)午後・金沢の天気     くもり

★「ヨシ」「ジョー」外交の初舞台

★「ヨシ」「ジョー」外交の初舞台

   菅総理は昨夜、アメリカに向け出発した。ホワイトハウスで16日午後(日本時間17日未明)にバイデン大統領と会談する。おそくら会話の中では、男子ゴルフ「マスターズ・トーナメント」で優勝した松山英樹選手のことがホットな話題として出るだろう。「Matsuyama’s Masters win will make him ‘forever a hero’ 」(マスターズ優勝で松山は永遠のヒーローだ)などとバイデン氏は持ち上げるかもしれない。どのような言葉が交わされるのか注目したい。

   これまで日本の総理とアメリカの大統領はギブ・アンド・テイクの関係で親密さを演出してきた。最近の印象では、安倍氏が来日したオバマ氏を東京・銀座のすし店で接待した。オバマ氏は寿司が好物だった。安倍氏のお酌する姿を覚えている。また、安倍氏はトランプ氏とゴルフ外交を重ねた。面白いと思ったの この写真だ。2019年5月26日付で総理官邸のツイッターに公開された。お笑いコンビのような雰囲気で両氏が映っている。千葉県のゴルフ場で自撮りした写真だ。

   親密さの演出は外交に欠かせない。2016年5月にオバマ氏がアメリカ大統領として初めて被爆地・広島を訪れて慰霊し、核兵器廃絶を訴えた。同じ年の12月、今度は安倍氏がハワイのパールハーバーに赴き、日本軍の攻撃による犠牲者を祀るアリゾナ記念館を慰霊訪問した。安倍氏とトランプ氏は2019年9月、ニューヨークでの首脳会談で日米貿易協定の締結にこぎつけた。日本はアメリカの農産物の関税を撤廃、アメリカは日本製自動車などへの追加関税を当面発動しないことで合意した。外交の演出は外務省の努力や根回しもさることながら、為政者のセンスにもよるだろう。その意味で次の外務大臣に安倍氏をとの論調も時折耳にする。

   さて、菅総理とバイデン大統領の外交演出はどのような見せ方になるのか。日米同盟を強化すること、中国の台頭に連携して対処すること、気候変動の問題やサプライチェーン(供給網)など経済安全保障など課題は多々ある。そして何より、「ヨシ」「ジョー」と互いのファーストネームをうまく呼び合えるのかどうか。

⇒16日(金)午後・金沢の天気    はれ

☆広く薄くばらまかれるワクチン

☆広く薄くばらまかれるワクチン

   65歳以上のシニアへの新型コロナウイルスのワクチン接種がきのう12日から始まった。自身もその対象なのだが、ニュースを視聴していて期待感どころか、モヤモヤ感がわいてくる。それはなぜか。先行して2月17日から始まった医療従事者への接種は12日までに168万9453回(首相官邸公式ホームページ)とある。ところが、医療従事者は480万人と言われているので、2回打つとなると960万回の接種が必要だ。ということは、接種率は17%にすぎない。

   国のワクチン接種の優先順位は  (1)医療従事者、 (2)高齢者(令和3年度中に65歳に達する人)、 (3)高齢者以外で基礎疾患を有する人や高齢者施設等で従事する人、 (4)それ以外の人となっている(厚労省公式ホームページ)。ワクチンの供給量は限られているので、医療現場に携わる人たちを最優先すべきではないだろうか。

   医療従事者への接種が中途半端なまま、今度は高齢者が対象となった。日本の高齢者は3600万人、7200万回の接種となる。自身が住む石川県ではきょうから接種が始まった。スタートは能登半島の尖端部分にある珠洲市。対象は75歳以上4000人だが、まず接種するのは1500人分。残り2500人は5月下旬以降に接種の見通し(4月14日付・北陸中日新聞)。実は、珠洲市は県内でも感染者ゼロの地域だ。言葉は適切ではないかもしれないが、感染者ゼロ地域にワクチンを回すより、まず医療従事者を優先すべきだ。

   きょう大阪府の新たな感染者が1000人超えと報道されているが、今後東京を含め大都会に感染拡大するであろうことは目に見えている。自身は医療の専門家ではないが、感染症対策としてのワクチンは「選択と集中」が効果を発揮するのであって、広く薄くばらまいても意味はないだろう。大都会での感染を抑えることは地方での感染を抑えることに結果的につながるのではないか。

   逆に、ワクチン供給量が限られているにもかかわらず、なぜ感染者が少ない地方にまで広く薄くばらまくのか。うがった見方かもしれないが、今年の総選挙を意識してのことか。ワクチンは大都会も地方も全県平等に配分せよと政治家たちが裏で動いているのか。「ワクチン担当大臣」は行革担当大臣の河野太郎氏だ。既成概念を突破するリーダーシップを期待しているのだが。ワクチン効果を高めてほしと誰しもが願っている。

(※写真は、ファイザー社のワクチン=同社の公式ホームページより)

⇒13日(水)夜・金沢の天気     くもり

★「松山」と「松山英樹」の違い 見出し考

★「松山」と「松山英樹」の違い 見出し考

   新型コロナウイルスの感染拡大やそのワクチンの国の対応の遅れや混乱など暗い話題が多い中で、久しぶりに明るいニュースだ。アメリカで行われた男子ゴルフの海外メジャー大会、マスターズ・トーナメントで29歳の松山英樹選手が優勝した。日本の男子選手が、ゴルフの海外メジャー大会で優勝するのは初めて。「松山選手は歴史的な快挙を成し遂げた」と、朝のワイドーショーは大騒ぎだ。

   ということは松山選手の地元・出身地でも大変なことになっているのではと察して、愛媛新聞Web(4月12日付)をチェックすると、「号外」=写真=がPDFで掲載されていた。「松山マスターズV」が主見出しだ。松山選手は愛媛県松山市の出身。地元では「松山の松山」、愛媛県民にとっては身近な存在なのだ。愛媛だけではない。松山選手が明徳義塾高校(高知県須崎市)のときに全国優勝を飾っていて、高知県民ともなじみが深い。高知新聞の速報版も「松山 マスターズ制覇」、そして東北福祉大学(宮城県仙台市)のときにマスターズ・トーナメントにチャレンジして27位、日本人初のベストアマチュアに輝いている。「3・11」の災害復旧ボランティアにもいそしんだと言われる松山選手は、宮城県民にとってもなじみが深いのだろう、河北新報(仙台市)も「松山 マスターズV」と速報版を出している。

   名前は知っていても、なじみのない読者にとって、「松山マスターズV」は違和感があるかもしれない。ちなみに、読売や日経、NHKなど全国メディアのWeb版は「松山英樹、マスターズ優勝」とフルネームで伝えている。

   文字メディアの見出しについての考察なのだが、「松山」と「松山英樹」の違いは地元メディアと全国メディアの編集サイドの感覚の違いなのかもしれない。全国メディアはあくまでもニュースとして伝えている。地元メディアは「松山おめでとう」と心からエールを送っている。そんなふうに感じる。もちろん、東京キー局であれローカル局であれ、テレビ局が生番組で伝える場合は、「松山英樹選手」、二度目からは「松山選手」だろう。決して呼び捨てにはしない。

⇒12日(月)午前 金沢の天気     はれ

★「教師は聖職」揺らぐ信頼

★「教師は聖職」揺らぐ信頼

    半世紀ほど前、教育論をめぐる議論が政界であった。田中角栄が人とモノの流れを巨大都市からに地方に分散させると著書『日本列島改造論』でぶち上げ、1972年に総理の座に就いた。列島改造ブームによる高度成長で民間給与は上昇した。一方で労働運動も高まり、社会党と日教組は教師は労働者であり、労働に正当な評価と報酬を堂々と要求すればよいと組織を拡大した。これに対し、田中内閣は「教師は聖職だ」と述べて真っ向から対立し、教師の給与改善で日教組の切り崩しを図った。

   その後も教師の聖職論をめぐっては議論が続くことになる。教育現場の多忙さから、教師は教育的な仕事のみに専念できるようにすべきという「本務論」が出る。すると、本務以外に雑務労働を設けることは職業における差別構造をもたらすといった議論が起きる。さらに、教師は聖職であり労働者でもあるという「教育専門家」の定義づけも出てきた。今でも自民党は教師を聖職、社民党は労働者、共産党は教育専門家とそれぞれ違った教師像を描いている。

   ただ、社会的な目線はやはり「聖職」なのかもしれない。これは自身が感じたことだ。2005年にそれまでの民放テレビ局を辞して、金沢大学で職を得た。当初は地域ニーズと大学の研究シーズをマッチィングする「地域連携コーディネーター」という職だった。その後、「特任教授」に任命され、講義を担当すると、途端に「先生」と呼ばれるようになった。民間企業で働いていた身とすると、「先生」と呼ばれこそばゆい思いをしたのものだ。そして、「先生」に資する振る舞いや言葉遣い、教育的な指導をしなければならないと自覚するようなった。「先生」という言葉には社会の期待感が込められていると実感した。

   きょう述べようとした考察から大幅にずれた。読売新聞Web版(4月10日付)によると、教員による児童生徒らへのわいせつ行為が後を絶たない中、文部科学省は9日、SNSの私的なやりとりの禁止や密室状態での指導の回避などの「対応指針」をまとめ、全国の教育委員会に通知した。通知では、通信アプリ「LINE」などで私的なやりとりを交わしているうちに親密になり、わいせつな行為に及ぶケースが多いとして、教員と児童生徒のSNSの私的なやりとりの禁止を明確化するよう各教委に求めた。

   教師と生徒のLINEさえも禁止される事態。2018年度の公立学校(小中高校)の教職員によるわいせつ行為・セクハラによる懲戒処分の件数は過去最多の282人となった(文科省公式ホームページ)。これは、保護者や本人から学校や教委、警察に申し立てがあって発覚したものだ。言い出せない、あるいは秘されているケースは一体どれほどあるだろうか。

   また、行為は「ホテル・自宅・自家用車」といった校舎外だけではなく、使われなくなった「空き教室」など校舎内でのケースも目立つ。職場での行為だ。ほとんどが男性教員によるものだが、このような事態が続けば教師という職業そのものの信頼性が揺らぐ。いや、もう揺らいでいる。

   国はどのような対策を取るべきなのか。厳罰による「抑止効果」しかないだろう。文科省はこの4月から懲戒免職となった教員について、「18歳未満や児童生徒に対するわいせつ行為」「それ以外のわいせつ行為」「交通違反や交通事故」「職務に関連した違法行為」「その他」の5つに分類し、氏名を官報に記載する新制度を始めている。今回の指針では、懲戒処分歴を隠して応募することがないよう、処分歴の記載のある応募書類の作成を各教委に指示。さらに、処分前に依願退職させないことも盛り込んでいる(4月10日付・読売新聞Web版)。

   文科省はわいせつ行為・セクハラを絶対に許さないという「強硬姿勢」をかざすしかないだろう。聖職たるもの、情けない話ではある。

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