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★ヒートドーム化する五輪開催 批判の矛先はテレビ局に

★ヒートドーム化する五輪開催 批判の矛先はテレビ局に

   きのうのブログで香港の大雨警報、「ブラック・レインストーム」について記した。そしてきょう未明、発達した積乱雲が帯状に連なり集中的な豪雨をもたらす「線状降水帯」が沖縄で発生し、午前3時までの3時間におよそ160㍉の雨が降った。気象庁は沖縄本島地方に「顕著な大雨に関する情報」を発表した(6月29日付・NHKニュースWeb版)。そして太平洋を超えたアメリカとカナダでは強烈な暑さが襲っている。

   アメリカとカナダの西部で記録的な熱波が続いていて、カナダ・ブリティッシュコロンビア州リットンで28日、47.5度を観測した。地元メディアなどが報じた。前日に46.6度を記録し、84年前の最高記録を破ったばかりだった。上空の高気圧が熱い空気を閉じ込める「ヒートドーム(heat dome)」現象が原因とみられる。 アメリアとカナダの両国政府は「危険」な高い気温が今週中は続く恐れがあると、市民に警告した(6月29日付・BBCニュースWeb版日本語)。

   「ヒートドーム」現象という言葉は初めてだ。厳密には気象用語ではないものの、停滞する高気圧が、加熱中の鍋の「ふた」のように機能する。高気圧が晴天と高気温をもたらし、高気圧が長期間続けば続くほど、熱波も続き、気温は日に日に上昇を続けるという。 現在、北アメリカ大陸にかかる高圧帯はカリフォルニア州からカナダの北極圏、内陸のアイダホ州まで広大な範囲を覆っている(同)。

          話は変わるが、新型コロナウイルスのパンデミック下でオリンピック開催を疑問視する国際世論が「ヒートドーム」現象のように熱くなっている。歯に衣着せぬ論評でも知られるアメリカのエンターテインメント週刊誌「ザ・ハリウッド・リポーター」は6月23日号で、「NBC Approaches “Moral Hazard” Amid Tokyo Olympics Push During Pandemic」の見出しで、アメリカの3大ネットワークの一つで、全米のオリンピックの放送権を独占していてるNBCは、東京オリンピック開催で「モラル・ハザード(倫理観の欠如)」のレベルに近づいていると痛烈に批評している=写真=。

   IOCが簡単に五輪を中止しない理由は、IOCの収入は放送権料が73%、スポンサー料が18%だ。その放送権料の50%以上をNBCが払っている。韓国・平昌冬季大会(2018年)と東京大会の合算した数字だが、NBCの供出額は21億9000万㌦だ。ちなみに、開催国の日本はNHKと民放がコンソ-シアムを組んで5億9400万㌦を払っている。

   ザ・ハリウッド・リポーターが「モラルハザード」の論拠として上げているのは、今月14日に金融機関主催の投資家会議でNBCの最高経営責任者(CEO)が、「the pandemic-tainted Tokyo Games “could be our most profitable Olympics in the history of the company.“」(パンデミック下での東京大会は「当社の歴史の中で最も収益性の高いオリンピックになるかもしれない」)と述べたことだ。開催されれば発生するコロナ禍が日本人に最も大きな打撃を与える可能性があるにもかかわらず、その利益をCEOが誇示するのは「命より金」を重視するモラルハザードではないか、と。さらに、CEOが「And then once the Opening Ceremony happens, everybody forgets all that and enjoys the 17 days.」(開会式が行われると誰もがすべて忘れて17日間を楽しむ)と発言したことも批判している。

   CEOの不注意な発言だろう。しかし、オリンピック開催を疑問視する国際世論が、IOCに対してだけでなく放送局にまで「モラルハザードだ」と批判が高まるのはレアケースだ。まさに、「ヒートドーム」現象のように沸騰し、いつ何が起きるか分からない現象が起きている。開催まであと24日だ。

⇒29日(火)夜・金沢の天気      くもり

☆香港を覆う「ブラック・レインストーム」

☆香港を覆う「ブラック・レインストーム」

          中国政府への批判を続けてきた香港の新聞「蘋果日報(アップル・デイリー)」が今月24日付を最後に発行停止に追い込まれ、紙面の主筆や中国問題を担当する論説委員も逮捕されたと報じられている(6月27日付・メディア各社)。香港国家安全維持法(国安法)違反の容疑だ。香港で反政府的な動きを取り締まる国安法が2020年6月30日に施行されて1年となる。香港政府とバックの中国政府の狙いは何か。

   国安法では、裁判は陪審員なしで秘密裏に行われ、裁判は中国政府の当局に引き継がれる。中国政府の治安要員は、免責されたまま香港で合法的に活動することができる。中国政府には、この法律は民主化運動で揺らいだ領土の安定を取り戻し、本土との整合性を高めるとの狙いがあるようだ。

   最初に適用されたのは昨年7月。香港で国安法に抗議する民衆デモで370人が逮捕され、うち10人が「香港独立」の旗を所持していたとして国安法違反の適用となった(2020年7月2日付・共同通信Web版)。その後、国安法をタテに政治活動や言論への締めつけが強まる。この法律が導入された後、多くの民主化運動グループが安全性を恐れて解散。自由で寛容な国際都市と言われてきた香港の姿が一変した。

   蘋果日報が狙い撃ちされたのは昨年8月だった。創業者の黎智英(ジミー・ライ)氏が国安法と詐欺の容疑で逮捕された後、保釈された。12月に詐欺罪での初公判が開かれ、保釈申請は却下、即日収監された(同12月3日付・読売新聞WEB版)。では、詐欺罪はどのような内容だったのか。蘋果日報を発行する「壱伝媒」の本社がある不動産の貸借契約に反し、黎氏が別会社に一部を提供して不正に利益を得たとして詐欺罪に問われた(同)。つまり、「また貸し」が詐欺として罪に問われたというのだ。日本では民事のような案件だが、香港では刑事事件として問い、収監におよぶところに政治的なむき出しが見て取れる。

   蘋果日報への狙い撃ちは「見せしめ」の狙いもあるだろう。報道機関への弾圧に他の新聞・テレビも当初は強い怒りを感じただろう。しかし、そのメディアの義憤は次第に無力感へと変質しているに違いない。また、香港市民や企業も取材相手として関わることを恐れ、敬遠するようになっていたのではないだろうか。

   きょうのイギリスBBCWeb版(6月28日付)は「Black rainstorm’ warning suspends Hong Kong trading」の見出しで、香港では暴風雨警報が発令され、雨量は70㍉以上の「黒い暴風雨」が予想されると報じている=写真=。このため、香港の証券市場とデリバティブ市場の取引が中止された。また、安全上の懸念から、学校の授業やワクチン接種も中断されている。痛ましいばかりの「ブラック・レインストーム」が香港を覆う。

⇒28日(月)午前・金沢の天気   くもり時々はれ

☆皇室は国内最後の養蚕家になるのか

☆皇室は国内最後の養蚕家になるのか

   前回のブログの続き。「人呼んで上滑り長官」ではないのか。報道によると、宮内庁の西村長官は、24日の定例の記者会見で、「オリンピックをめぐる情勢につきまして、天皇陛下は現下の新型コロナウイルス感染症の感染状況を、大変ご心配されておられます」と述べた。そのうえで、「国民の間で不安の声があるなかで、ご自身が名誉総裁をおつとめになるオリンピック・パラリンピックの開催が感染拡大につながらないかご懸念されている、ご心配であると拝察をいたします」と話した(6月24日付・NHKニュースWeb版)。

   これについて菅総理は、官邸で記者団に対し「長官ご本人の見解を述べたと理解をしている」と話した(6月25日付・同)。西村長官が陛下の気持ちを案じて述べたコメントなのか、あるいは長官本人の見解なのか、正直どちらでもよい。陛下がオリンピック・パラリンピックを案じられる気持ちは、国民も理解できる。それもさることながら、長官がもう一つコメントすべきは、皇室の威厳にかかわる問題として浮上している、眞子さまの婚約内定問題についてだろう。長官は陛下の今のお気持ちをなぜ述べなかったのか。

   オリ・パラより難題で、宮内庁長官といえどもコメントできないのは理解できる。皇室がお二人の結婚に反対していると発言すれば、国際世論が沸騰する。相思相愛のお二人の結婚を許さない日本の皇室は前近代的だ、旧態依然とした日本の姿をさらす出来事だ、と。問題は婚約内定中の小室圭氏側にあったとしても、この批判は日本にとって不名誉なことになる。逆に、結婚を認めれば国民の皇室への求心力がガタ落ちすることは想像に難くない。

   冒頭の「人呼んで上滑り長官」は、4月8日に小室氏が母親の金銭トラブルに関して説明した28㌻文書について、西村氏が同日の記者会見で「非常に丁寧に説明されている印象だ」と述べていたが、その4日後に小室氏側が解決金を渡す意向があると方針転換したことで、長官発言は軽々しいとSNSなどで批判されたことを指す。

   話は変わるが、宮内庁の公式ホームページをチェックしていて、「給桑(きゅうそう)」という言葉が目に留まった。蚕(かいこ)に桑(くわ)を与えること。大きく育った蚕に、枝付きの桑を与えることを「条桑育(じょうそういく)」と説明している。5月25日に皇后が皇居内の紅葉山御養蚕所で給桑をほどこされる様子を掲載している=写真=。この画像を見て、皇室は相当長い歴史と技術を有する養蚕家でもあるのだと気付かされた。

   日本文化のシンボルの一つは和装、その素材は絹織物だ。蚕が産み出す繭(まゆ)から生糸をつくり、生糸を繊維に加工して絹織物をつくる。ところが、農水省の公式ホームページに掲載されている「新蚕業プロジェクト」によると、平成元年度(1989)に養蚕農家は全国で5万7230戸だったが、同30年度には293戸と激減している。さらに、養蚕農家の主たる従事者は現在も70歳以上が6割を占める。絶滅が危惧される業種なのだ。世界では中国が圧倒的なシェアを占め、インド、ウズベキスタンと続く(JETRO公式ホームページ「ビジネス短信」)。ひょっとして、10年後、20年後には皇室が国内最後の養蚕家になるのか。

⇒26日(土)夜・金沢の天気      くもり時々あめ

★書架にある立花隆氏の本を眺め、悼む

★書架にある立花隆氏の本を眺め、悼む

   ジャーナリストの立花隆氏が、ことし4月、急性冠症候群のため亡くなっていたことが分かったとメディア各社がけさ報じている。80歳だった。いわゆる「文春砲」、雑誌ジャーナリズムの先駆けをつくった人だ。1972年、テルアビブの空港で日本赤軍の3人が銃を乱射し24人が死亡した事件で、現地の警察に拘束されていた実行犯の岡本公三容疑者への一問一答の記事を「週刊文春」に掲載し、当時社会に衝撃を与えた。

   1974年には月刊「文芸春秋」に「田中角栄研究 その金脈と人脈」を発表。現職総理の政治手法を入念な取材と裏付け調査で明らかにし、退陣のきっかけをつくった。その後、「ロッキード事件」が発覚。田中氏や丸紅、全日空の役員らが受託収賄、贈賄などの罪で起訴される歴史的な疑獄事件となった。ジャーナリストとしての粘り強さ、徹底した調査報道は際立っていた。

   書棚を眺めて立花氏の本を手に取る=写真=。権力者の不正を追及するだけではなく、「科学する心」を持ったジャーナリストだった。宇宙や医療、脳、インターネットといった分野でも数々の著書を残している。科学・技術の最前線に立った人間がその体験を精神世界でどう受容し、その後の人生にどう影響したのか人物像も追っている。

   書棚の本をいくつかを紹介する。インターネットの普及期に読んだ『インターネットはグローバル・ブレイン』(1997)は示唆に富んでいた。著書名の通り、地球を生命体と見立てればインターネットは頭脳であり、プラットフォームやブログサイトなどはその神経細胞の一つというものだ。その細胞を活性化させることは、いかにして質の高い内容をアップロードし続けるかにある。自身はその後、この「インターネットはグローバル・ブレイン」というタイトルを会話や意見交換などで使わせてもらっていた。それが高じて、幻冬舎ルネッサンス新書『実装的ブログ論 日常的価値観を言語化する』(2017)を出版するきっかけにもなった。

   『臨死体験』と『証言・臨死体験』(文藝春秋社)は人間の脳の最期の姿を現すものだった。数々の臨死体験の中で、光の輪に入り、無上の幸福感に包まれるという臨死体験者の証言がある。立花氏は著書の中で「死にかけるのではなく本当に死ぬときも、大部分の人は、臨死体験と同じイメージ体験をしながら死んでいくのではないか」と推定している。この本を読んだのは1997年だった。17年後にこの本のことを思い起こすことになる。

   2014年2月、乳がんを患っていた妻の最期に立ち合うことができた。脈拍、心拍数がどんどん落ちていく。医師から臨終を告げられたのは午後8時50分だった。そのとき、妻の左目から涙がひとしずく流れた。死の生理現象なのかもしれないが、若くして逝った悔し涙だったのかなどと、その涙の意味をそれからずっと考えていた。ふと、以前読んだ『臨死体験』を思い出した。あのときの妻の涙は光の輪の幸福に包まれ流した涙だったに違いない、と。今でもそう思っている。書籍を通じてだが、教示いただいた立花氏に感謝している。そして、氏も臨終の際は光の輪の幸福に包まれていたことを祈る。

⇒23日(水)朝・金沢の天気    はれ

☆バイデン大統領 報道されないある一面

☆バイデン大統領 報道されないある一面

   アメリカ大統領のバイデン氏は78歳。日本でいう後期高齢者ながら、はっきりとした物言いで、先のG7サミット(イギリス・コーンウォール、6月11-13日)でも存在感があった。バイデン氏がイニシアティブを発揮した共同声明では、中国に対して新彊ウイグル自治区での人権尊重、香港の高度の自治を求めたほか、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調した。と、報道はされているものの、別の側面もあったようだ。

   アメリカのオンライン・メディア、「ワシントン・フリー・ビーコン」は「What About His Gaffes? Joe Biden Bumbles His Way Through G7 Summit」(6月14日)との見出しでサミットにおけるバイデン氏の様子を報じている。中でも、「It’s also very embarrassing for America.」(アメリカにとっても非常に恥ずかしいこと)として、バイデン氏の「ボケぶり」を伝えている。

   写真は、バイデン氏が会議場の屋外の座席エリアに迷い込んで混乱しているところ。バイデン氏の妻が彼を連れ出したエピソードを紹介している。また、7ヵ国の首脳とゲスト参加の韓国、オーストラリア、南アフリカの首脳が並んで写真撮影する場で、ホストであるイギリスのジョンソン首相が一人ひとりを紹介した。ジョンソン氏は、南フリカのラマポサ大統領をすでに紹介していたにもかかわらず、バイデン氏はジョンソン氏の話の途中で「南アのラマポサ大統領はどこに」と口を挟んだ。ジョンソン氏が「すでに紹介しましたけど」と告げると、バイデン氏は「そうか。それは失礼した」と。

   この記事を読んで連想したのが、日本の「エーザイ」とアメリカの製薬会社「バイオジェン」が開発したアルツハイマー病の新薬「アデュカヌマブ」について、アメリカのFDA(食品医薬品局)は原因と考えられる脳内の異常なタンパク質「アミロイドβ」を減少させる効果を示したとして治療薬として承認したとのニュースだった。「アデュカヌマブ」は、アミロイドβを取り除く効果が認められ、アルツハイマー病の進行そのものを抑える効果が期待される初めての薬となる。

   この夢の薬、ぜひ点滴投与を受けたいとのニーズは世界で高まっているだろう。ひょっとして、バイデン氏も待ち望んでいる一人かもしれない。

⇒22日(火)夜・金沢の天気     くもり

★エレキと運命をともにした「寺内タケシ」の人生

★エレキと運命をともにした「寺内タケシ」の人生

   昭和40年代のエレキギターブームで人気を集め、「エレキの神様」の愛称で親しまれたギタリストの寺内タケシ氏が、18日夜、横浜市内の病院で肺炎のため亡くなった。82歳だった(6月19日付・NHKニュースWeb版)。自分自身にとってはエレキギターは青春の思い出の一つだけに、いまでも、「寺内」「テラウチ」と見たり聞いただけで、つい「タケシ」と連想してしまう。

   エレキギターの音色が最初に耳に入ってくるようになったは、アメリカのバンド「ザ・ベンチャーズ」の来日(1965年1月)だった。自身はまだ小学生のころだ。ヒット曲「パイプライン」や「急がば廻れ(Walk, Don’t Run)」に刺激を受けたものだ。続いて、イギリスのバンド「ザ・ビートルズ 」の来日(1966年6月)に心がかき立てられた。

   音楽に興味がわいて、中学生になりブラスバンド部に入った。トロンボーンを始めた。ブラスバンド部で同じくエレキギターを趣味でやっていた仲間と知り合い、2年生のときにエレキギターとドラムによる独自のバンドを結成した。バンド名を「Bombs」とした。激しい音を出すので、「爆弾のようなバンドだ」と周囲からなじられ、bomb(爆弾)をバンド名にした。ビートルズのように歌えるボーカルがいなかったので、ベンチャーズのインストゥルメンタル・サウンドが中心だった。

   バンド「寺内タケシとブルージーンズ」にのめり込んだのは、いわゆる「テケテケ」と特徴のあるギターテクニックだった。とくに、ベートーベンの交響曲第5番をエレキギターで演奏する「レッツ・ゴー 運命」は当時エレキギターを志す誰しもが目指した曲でありテクニックだった。自身はサイドギターを担当し、ベンチャーズとブルージーンズの演奏曲を秋の文化祭で披露することにして練習を重ねた。公演も無事成功し、当時は「エレキの若大将」気取りだったかもしれない。

   ただ、そのころ教育界ではエレキギターは「不良の温床」と見なされていたようだ。中学3年とき学校の担任から「高校受験もあるのでことしは止めた方がよい」と指導された。その後、全国の多くの学校でいわゆる「エレキ禁止令」が広まった。寺内氏は、偏見を解いてもらおうと1974年から全国の高校を回る「ハイスクールコンサート」を始めた。ライフワークとして2016年まで続け、訪れた学校は1500ヵ所にもおよんだ。エレキギターと運命をともにした人生だった。

⇒19日(土)夜・金沢の天気      くもり

☆「コロナ禍」と「ケムシ」 ニュース・アラカルト

☆「コロナ禍」と「ケムシ」 ニュース・アラカルト

           新型コロナウイルスの感染拡大はさまざまが言葉を産んでいる。「ロックダウン」(都市封鎖)や「クラスター」(感染集団)、「ソーシャル・ディスタンス」(社会的距離)、「オーバーシュート」(爆発的急増)、「パンデミック」(世界的大流行)といったカタカナ語は常識となった。さらに、「三密」や「濃厚接触」、「飛沫感染」、「無観客開催」などの漢字も。最近でも「職域接種」という言葉が新聞・テレビのマスメディアでも普通に使われるようになった。言葉を産み出す量が半端ではない。それだけ「コロナ禍」という世界のリスクがいかにすさまじいかを物語る。

   東京オリ・パラに伴う感染拡大のリスク評価について、政府の分科会の尾身会長ら専門家の有志が提言をまとめ、大会組織委員会の橋本会長と西村経済再生担当大臣に提出した。提言では「無観客開催が最も感染拡大リスクが少なく望ましい」としたうえで、観客を入れるのであれば、現行の大規模イベントの開催基準より厳しい基準を採用することなどを政府や大会の主催者に求めた(6月18日付・NHKニュースWeb版)。むしろ、新型コロナウイルスのワクチン接種を証明する「ワクチンパスポート」を自治体が発行し、これで会場に入れるようにすればよいだけの話ではないだろうか。

   能登半島で聞いた話。半島の北部にある能登町の山間部では、マイマイガの幼虫(ケムシ)が大量に発生している。電柱や建物の壁、木の幹などに大量の卵塊を生みつけられ、卵塊から続々とケムシがはい出している。この地域ではほぼ10年周期で大量発生していて、一度大量発生すると2、3年は続く。これまで、ケムシを駆除するため農薬散布を行ってきた。が、多量の農薬散布そのものが自然環境に過度の負荷をかけることになると最近では散布そのものを敬遠する傾向にある。ガムテープに貼り付けて取り除く方法もあるが、それだけではなかなか追いつかない。(※写真は公益社団法人「農林水産・食品産業技術振興協会」の公式ホームページより)   

   時事通信の世論調査(今月11-14日実施)によると、菅内閣の支持率は前月比0.9ポイント増の33.1%と横ばい。不支持率は0.4ポイント減の44.2%だった。不支持が支持を上回るのは6カ月連続。菅総理が感染対策の「切り札」とするワクチン接種については、「遅い」が69.4%で、「順調だ」の20.0%を大きく上回った。 政党支持率は自民党が22.8%、公明党3.7%。立憲民主党2.9%、共産党1.7%、日本維新の会1.2%、国民民主党0.5%、社民党とれいわ新選組がともに0.2%で、「支持政党なし」は63.2%だった(6月18日付・時事通信Web版)。

⇒18日(金)夜・能登町の天気     くもり   

☆「北斎」の次は「ダヴィンチ」 中国のおちょくり

☆「北斎」の次は「ダヴィンチ」 中国のおちょくり

    中国は名画で風刺する広報戦略をとっている。ネットのニュースでみつけた記事(6月16日付・FNNプライムニュースWeb版)=写真・上=によると、G7首脳会議に中国が反発を強める中、ネット上で拡散されている『最後のG7』と題したイラストを、中国共産党系のメディア「環球時報」英語版が報じた。G7の国々に、オーストラリア、インドを加えた9ヵ国を動物に模し、テーブルには中国の地図が描かれたケーキが置かれている。

   レオナルド・ダ・ヴィンチの壁画「最後の晩餐」を模したものだ。図をよく見ると、日の丸の帽子をかぶった犬が、ヤカンからグラスに緑色の液体を注いでいる。この液体は福島第一原発の処理水を意図しているのだろう。 アメリカの国鳥のハクトウワシを中心に動物たちが囲んでいる。芸が細かいと思うのは、ワシの前ではトイレットペーパーをドル紙幣にプリントするような図柄。金融緩和と称して、価値のないドル紙幣を刷りまくり世界にバラまいているとでも言いたいのだろう。

   風刺画やパロティー画は思わず笑ってしまうものだが、それを中国が発信するのでは笑えない。香港やマカオの近くにある広東省の原発で放射能漏れが起きているという報道(6月15日付・CNNニュースWeb版日本語)もあるので、中国にとって、タイミングが悪いのでは。

   パロディー画と言えば、2ゕ月前にもあった。日本政府が東電福島第一原発で増え続けるトリチウムなど放射性物質を含む処理水を海へ放出する方針を決めた(4月13日)。すると、中国と韓国が反発し、中国外務省の趙立堅副報道局長が同月26日付のツイッターで、葛飾北斎の「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」を模したパロディー画像を投稿して批判した=写真・下=。富士山を原発とみられる建物に、そして、防護服を着た人物が船からバケツで液体を流す様子が描かれている。

   他国を揶揄するような風刺画の投稿がネットで相次ぐ。おそらく、作者は中国御用達のイラストレーターだろう。それにしても見た人を思わずクスリと笑わせるセンスがない。単なる「おちょくり」にしか見えない。

⇒16日(水)夜・金沢の天気      くもり

★「まん延防止」解除の夜

★「まん延防止」解除の夜

   金沢市に適応されていた飲食店での時短や酒類の提供自粛などの「まん延防止等重点措置」がきのう14日に解除された。夜の街の様子を見たかったのと、「家飲み」には少々飽きが来ていたので、さっそく繁華街に出てみた。写真はきのう午後7時45分ごろの金沢の繁華街、片町のスクランブル交差点の様子だ。月曜日なのでもともと人通りは多くない。

   まん延防止の措置は5月16日から今月13日まで適応されていて、期間中に夜の片町のスクランブル交差点を自家用車で通過したことがあるが、これまでのきらびやかなネオン街とは打って変わって、まるで「ゴーストタウン」のようだった。それに比べれば、人影がいくぶん戻ってきたという感じだった。タクシーの運転手は、「人の通りがあるだけましな方ですよ。勝負は今週の金曜の夜ですね」と業界の見方を話してくれた。   

   タクシーを降りて街を歩くと、ガラス越しに見える飲食店も人影がボツボツと見えた。そして、行きつけのワインバーに入る。期間中はメインのワインが出せないので、本格的な中国茶とコーヒーの提供に切り替えて午後8時までの時短営業を続けていた。「普段のサービスに戻れてホッとしています」とオーナーソムリエは顔をほころばせた。カウンターの右隣りにいた客も「仕事がヒマすぎてつらかった。暇(ひま)疲れですよ」と。長かった「まん延防止等重点措置」の解除、カウンター越しにそれぞれに想いを語り合った。

   するとカウンターの右隣りの椅子に女性が腰かけた。地元新聞の記者で、「まん延防止措置」解除の夜を取材しているとのこと。オーナーソムリエはインタビューに「こんなににぎわうもの久々ですね」と無難に答えていた。そして、質問の矛先はこちらにも。きょうはある意味で解除を祝う席のようなもので、拒否するもの無粋と思い、記者に「家飲み」から解放された思いを語った。

   その後、ワインバーを出て大通りでタクシーを拾い自宅に向かった。片町のスクランブル交差点では電光ニュースが流れていた。「G7サミット 中国への圧力鮮明に 台湾海峡の平和と安定の重要性を強調」

   昨夜、記者に話したことがきょうの朝刊の記事になっていた。以下。「客の男性はほろ酔い気味で『家飲みはもう限界。家族もまた飲んでるのとけげんで、テレビのチャンネル争いをするようになってしまう』と目尻を下げた。」(6月15日付・北陸中日新聞)

   新聞の行数にして7行。自身の話しぶりに対する女性記者の印象は「ほろ酔い気分」で「目尻を下げた」ように見えた。つまり、うれしそうに飲んでいるように見えたのだろう。わがことながら思わず笑ってしまった。

⇒15日(火)午前・金沢の天気    はれ

☆台湾めぐる「海峡」と「WHO」が国際問題に浮上

☆台湾めぐる「海峡」と「WHO」が国際問題に浮上

   菅総理がホワイトハウスを訪れ、バイデン大統領と初めて対面での会談を行った日米首脳会談(ことし4月16日)。「台湾海峡の平和と安定の重要性」が初めて盛り込まれた共同声明「“U.S. – JAPAN GLOBAL PARTNERSHIP FOR A NEW ERA”(新たな時代における日米グローバル・パートナーシップ)」はある意味で新鮮だった。あれから2ヵ月、いまでは国際政治、安全保障を語る上でのキーワードとして浮上している。

   そして、台湾をめぐるもう一つのキーワードがWHOだ。WHO公式ホームページをチェックすると、第74回年次総会(5月24日-6月1日、オンライン)=写真・上=の模様が詳しくホームページ掲載されている。今回の総会で注目を集めたのは、台湾のオブザーバー参加についてだった。結局、中国などの反対で認められなかったもの、以前から中国寄りと批判が向けられているWHOへの風当たりがさらに強くなった。

   台湾はWHOに非加盟であるものの、2009年から2016年までは年次総会にオブザーバーとして参加していた。2017年以降は、中国と台湾は一つの国に属するという「一つの中国」を認めない蔡英文氏が台湾総統に就いたことで、「一つの中国」を原則を掲げる中国が反対し、オブザーバー参加が認められなくなった。

   ところが、新疆ウイグル自治区での人権問題や香港の民主主義運動への抑圧などで中国への懸念が高まる中、台湾問題がクローズアップされるようになった。先のG7外相会合(5月3-5日・ロンドン)の共同声明では、「台湾海峡の平和と安定の重要性」を強調すると同時に、中国が反対する台湾のWHO会議への参加も支持した(5月6日付・共同通信Web版)。G7の共同声明で台湾問題をめぐる2つのテーマで盛り込まれるのは異例だった。
 
   日本でもこれまでになかった動きが起きている。年次総会に台湾の出席が認められなかったことをめぐり、今月11日の参議院本会議では、次の総会から参加を新型コロナウイルス禍からのより良い回復をテーマとしたセッション認めるよう各国に求める決議を全会一致で可決した(6月11日付・NHKニュースWeb版)。決議文は超党派の議員がまとめたもので、「検疫体制の強化などに先駆的に取り組んできた台湾が会議に参加できないことが、国際防疫上、世界的な損失であることは、各国の共通認識になっている」との内容で、政府にも今後、台湾が会議に参加する機会が保障されるよう各国に働きかけることを求めている(同)。

   そして、現在、イギリス・コーンウォールで開催されているG7サミット(6月11-13日)=写真・下、外務省公式ホームページより=の共同声明でどのような表現で2つの台湾問題がメッセ-ジとして盛り込まれるのか注目している。

   話はそれるが、WHO公式ホームページをふと見ると、北朝鮮が声明文を出している。新型コロナウイルスのワクチンの供給をめぐって、強烈な内容だ。「The development of COVID-19 vaccines and medicines might be the achievement for the common mankind whereas an unfair reality is to be seen that some countries are procuring and storing the vaccines more than its needs by inspiring the vaccine nationalism plainly when other countries can’t even procure it with their affordability. 」

 
   意訳すれば、一部国家が必要以上にワクチンを確保し、ワクチンのナショナリズムをあからさまに煽って、世界に不公平な事態を招いている、と。名指しこそしていないが、アメリカを意識しているのだろう。WHOの「パンデミック宣言」(2020年3月11日)下で、北朝鮮は弾道ミサイル2発を日本海に向けて発射している(同3月25日)。弾道ミサイルを1発打ち上げると、そのコストはいくらなのだろうか。ミサイルの打ち上げより、ワクチンの確保に自助努力する方が賢明だと誰しもが思うのだが。

⇒13日(日)午後・金沢の天気   くもり時々はれ