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☆裁判で問うべき、学術会議の任命拒否問題

☆裁判で問うべき、学術会議の任命拒否問題

   前回の続き。 日本学術会議が新会員候補に推薦したものの、菅総理が任命を拒否した6人が23日、外国特派員協会で記者会見した。この会見で、教授サイドから「独裁者」「恐ろしい話」という言葉が出た時点で、政権との敵対関係を宣言するために記者会見を開催した、と記者たちは解釈したのではないかと述べた。そして、この記者会見について、国民はどのようなイメージを持っただろうか。

   とくに、刑事法の教授が「ナチスドイツのヒトラーでさえも全権を掌握するには、特別の法律を必要としましたが、菅総理大臣は現行憲法を読み替えて自分がヒトラーのような独裁者になろうとしているのか」 と述べたことに、ネット上で批判的なコメントが集中している。

   「会見には何の関係も無いのに、独裁者とかヒトラーなどの用語を用いるのは、聞いている人達に菅総理や政府への悪印象を与える事が目的だからです。・・・」(ユーチューブ)、「自国の首相をヒトラーと同じだって。しかも外国記者クラブで世界に向かって宣伝。このようなおかしな”学者”が主導権を握っている学術会議ってなんだ。このよう組織を税金を使って持つ必要は無い。・・・」(ヤフーニュースのコメント)。それにしても、すさまじい数の批判コメントだ。

   この会見を仕掛けた側の意図がよく理解できない。当事者たちに思いや本音を自由に語らせるために開いた会見だとすれば、それは大間違いだ。会見の仕組みや意義を理解していないのではないか。会見で記者が読むのは、会見を開いた理由・意図・目的である。会見に臨んだ理由が、6人が総理の任命拒否について裁判で総理の権限をめぐって争うというのであれば、とても分かりよい。会見の開催は、目的性を持ったものである。言葉で「ヒトラーのような独裁者になろうとしているのか」などと政府批判を言うよりも、アカデミックな闘争として裁判を仕掛けた方が国民の理解を得るのではないだろうか。

   学術会議サイドは、学術会議の独立性は破壊され、学問の自由の制度的枠組みを破壊することになるので、憲法23条違反と主張している。 官邸サイドは、憲法15条1項の国民の公務員選定罷免権を根拠にして今回の措置が合法としている。だったら、裁判で決着するしかないだろう。

※写真は、FCCJ(日本外国特派員協会)公式ホームページの会見動画より

⇒25日(日)夜・金沢の天気     はれ

★記者会見で逆に問われること

★記者会見で逆に問われること

        日本学術会議が新会員候補に推薦したものの、菅総理が任命を拒否した6人がきのう23日、外国特派員協会で会見した。任命拒否は「学問の自由を破壊する憲法違反」「政治権力に左右されない職務の大きな妨げ」などと訴え、早期撤回を求めた。また、「会員の適否を政治権力が決められれば、憲法23条が保障する『学問の自由』の破壊になる」との主張もあった(10月23日付・共同通信Web版)。テレビでも会見のニュースを見たが、感想をひと言でいえば、「記者会見はもう少し戦略を持って臨むべき」ということだ。

   まず、この会見は誰に向けて発信したのだろうか。外国特派員協会なので、単純に世界に向けての発信なのだろうか。つまり、世界に向けて、日本の菅総理は「学問の自由を破壊する憲法違反を犯した」、あるいは「学問の自由の破壊者だ」と訴えたかった、のか。しかし、外国特派員はそう単純に受け取るだろうか。世界のメディアの目線は、政府批判を繰り広げた学者を捕捉し隔離する中国のケースならば、人権弾圧や「学問の自由」の侵害をとらえるだろう。海外メディアは、政府機関への任命拒否を単純に憲法違反や人権弾圧、学問の自由の侵害と解釈するだろうか。

   記者会見で記者サイドが読むのは相手の表情や言葉のバックボーンからにじみ出る思想信条だ。刑法専門の教授は「官邸側は憲法15条1項が定める国民の『公務員の選定・罷免権』を根拠にして、今回の措置は合法だと説明している。総理大臣は国民を代表しているからどのような公務員であっても自由に選び、あるいは選ばないことができる、その根拠は、憲法15条だと宣言したということだ。『独裁者になろうとしているのか』と思うほど、恐ろしい話だ」と述べた(同・NHKニュースWeb版)。

   おそらく学者から「独裁者」「恐ろしい話」という言葉が出た時点で、記者たちはこの言葉を発するために記者会見に臨んだに違いない、と読む。つまり、政権との敵対関係を宣言するために記者会見を開催した、と。

   動画(同・朝日新聞Web版)をチェックすると、ロイター通信の記者は「将来的に菅総理はどのように権力を使っていくか」と質問した。刑法専門の教授は「すべての公務員について自分が好き勝手に任命・罷免できるというところまで突き進む危険性がある。日本の国民の世論が内閣をどう評価するかが今後の行方を左右する」と答えていた。

   記者会見で述べれば、言いたいことすべてを記者が記事や放送で流してくれると勘違いしているのではないだろうか。ロイター通信が今回の会見をどのように報じたのかとWeb版をチェックしたが、この会見の模様はニュースになっていない(24日午前9時現在)。世界に発信するニュースではないとの記者判断なのだろう。国内メディア各社は報じている、が。

⇒24日(土)午前・金沢の天気    くもり

★「いのち短し 恋せよ乙女」

★「いのち短し 恋せよ乙女」

             このニュースを見て、『ゴンドラの唄』を思い出した。「いのち短し恋せよ乙女 紅き唇あせぬ間に・・・」。一般社団法人「いのち支える自殺対策推進センター」は、ことし1月から8月の自殺者数の動向を分析した中間報告を公表した。7月以降、同居人がいる女性や無職の女性の自殺が増加していて、新型コロナウイルスの影響で配偶者からのDVや、子育ての悩み、経済問題などが深刻化していることが要因になっている可能性があると指摘している。

   警察庁の発表では、全国で自殺した人は7月以降で昨年の同じ時期より増加にあり、とくに8月は1854人と昨年を16%上回った。このうち女性は651人で40%も増加している。

   自殺対策推進センターの公式ホームページによると、自殺に関する相談として、配偶者と暮らす女性から「コロナでパートの仕事がなくなり、夫からは怠けるなと毎日怒鳴られる。こんな生活がずっと続くなら、もう消えてしまいたい」といった相談や、シングルマザーの母親から「子どもが発達障害で子育てがとても大変なのに、ステイホームでママ友とも会えず、実家にも帰れない。子どもの検診もなくなって、一人でどうやって子育てをしていけばいいのか分からない。死んで楽になりたい」といった相談が多く寄せられているという。

   同ホームページによると、筑波大学の研究者の調査で、出産後の母親の「産後うつ」が新型コロナウイルス感染症の影響で、以前の2 倍以上に増えているとの報告があるなど、コロナ禍で、人と接する機会や場が少なくなり、経済的にも不安定な生活を強いられる女性が増えている中で、今後女性の自殺リスクがさらに高まっていくことが懸念される、としている。 

   また、ことし7 月の自殺者数が増加したのは「若手有名俳優の自殺報道」(俳優の自殺それ自体より、それに関する報道)が大きく影響している可能性が高い、と指摘している。自殺報道よって、自殺が増える現象は「ウェルテル効果」と呼ばれ、国内外で過去にも同様のことが起きている。有名人の自殺報道の後は「自殺報道で心が揺れて怖い。自分も自殺してしまいそう」「二ュースを見て、死にたい気持ちが呼び起こされてしまった」といった相談が増えるのだという。自殺は連鎖する。切ないニュースである。

⇒22日(木)夜・金沢の天気   あめ

   

☆日本海、スルメイカ漁の危機

☆日本海、スルメイカ漁の危機

   自身はワイン党でもあり日本酒党でもある。食前酒はワイン、食事は日本酒とともに味わう。最近の傾向で、ワインはシャンパン、あるいはスパークリングワインが多くなってきた。そのつまみに「あたりめ」がよく合う。とくに、スルメイカが絶品で、マヨネーズをちょっとつける。スパ-クリングの泡立ちと、ほどよい固さのあたりめが口の中で妙に混じり合って、独特の食感になる。この「マリアージュ」は発見だった。

   このスルメイカが危機に陥っている。今月6日付のこのブログでも取り上げたが、日本海のスルメイカの漁場、大和堆(EEZ=日本の排他的経済水域)で大量の中国漁船が違法操業を行っているのだ。地元紙は以前からこの問題を取り上げているが=写真=、きょうは全国紙の朝日新聞が掲載している。

   水産庁が9月末までに退去警告をした船の数は延べ2586隻に上っている。去年までは北朝鮮の漁船による違法操業(2019年の警告数4007隻)が圧倒的に多かったが、今年は中国漁船の違法操業が去年より倍増しているのだ。

   記事によると、8月中旬から大和堆周辺で中国の大型底引き網船の違法操業が活発に動き始めた。水産庁の取締船はこれまで違法警告したにもかかわらず退去しなかった漁船に対し放水で警告を発した漁船は329隻に上った。

   中国は北朝鮮海域での制裁決議違反が問題視されているにも関わらず、北朝鮮の漁業海域での漁業権を購入し、中国の遠洋漁船全体の3分の1にも相当すると見られる大量の船団を送り込んで漁業資源を漁っていた。北朝鮮の漁業海域で漁業資源をほぼ取り尽くし、次に狙ってきたのが日本海のEEZではないだろうか。

   憶測だが、中国の狙いはもう一つある。地元紙は中国漁船の違法操業について、「EEZ内に中国の公船が現れているとの情報もある」と伝えている(10月6日付・北國新聞)。漁船の違法操業に紛れて、公船が海底調査を行っている。これは「大和堆の中国所有論」の布石だろう。中国は今年8月に東シナ海の海底地形50ヵ所について命名リストを公表した。尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺海域のほか、沖縄本島沖の日本のEEZも含まれる。その前、4月には南シナ海でも海底地形55ヵ所や島嶼(とうしょ)や暗礁25ヵ所について命名リストを公表している。

   おそらく、中国は北朝鮮と共同戦線を組んで、関連海域と海底に主権と管理権があると主張することで、大和堆周辺の海洋管理を主張する。そして、公船を繰り出し、日本の漁船を追い払う。尖閣で行われているパターンである。スルメイカ漁の危機に、日本の外交が問われている。   

⇒21日(水)朝・金沢の天気    はれ 

★振り向けば、街中にクマがいる

★振り向けば、街中にクマがいる

          クマの出没が相次ぐ石川県内で、ついにショッピングセンターにクマが現れるという騒動が起きた。きのう19日午前7時50分ごろ、加賀市のJR加賀温泉駅前にある大型ショッピングセンターで、搬入口にクマがいるのを従業員が発見し通報。クマはそのまま搬入口から店舗内に侵入した。このためセンターでは午前9時30分の開店を取り止め、従業員を別の建物に避難させた。最初の通報から13時間が経過した午後9時過ぎ、猟友会が店の中にいたクマを駆除した。センターはこの日休業した(10月19日付・NHKニュースWeb版)。

   加賀市は山代や山中、片山津といった温泉地があり、JR加賀温泉駅はまさにその玄関口でもある。前日の18日午後7時ごろには山代温泉で70代の女性がクマに襲われ、17日にも同じ山代で3人がケガをしている。

   政府の観光支援事業「Go To トラベル」がこのところ順調なだけに、クマ騒動が温泉地観光に水を差さしたのではないか。「Go To トラベル」は1人1泊当たり1万4千円が上限の割引額があり、加賀温泉(山代、山中、片山津、粟津)や能登の和倉温泉の旅館がにぎわいを見せている。いまはマツタケの季節、来月になればさらにズワイガニでにぎわいが戻ると関係者は期待しているだろう。

   連日のニュースでクマの様子に変化を感じるのは、街中に頻繁に出没していることだ。これまでは、奥山から人里に下りてきて柿の木に登る、といったケースだった。それが、JR駅近くのショッピングセンターに現れる。金沢市内では、周辺にオフィスビルなどが立ち並ぶ兼六園近くの金沢城公園でも出没したことがある。街に出没するのはクマだけではない。イノシシ、サルなどの出没がニュースとなる頻度も高くなっている。

   石川県が8月下旬に調べたところ、ブナの実が大凶作、ミズナラの実が並作、コナラの実が凶作とみなされた。ブナは過去10年で最も不作とか。冬眠前のクマが餌を求めて里山に下りる状況はしばらく続くという。餌を求めるために街中のショッピングセンターにやってきたとなるとただ事ではない。人の生活圏に入ることを厭わない「新世代」のクマやイノシシが出現しているのではないだろうか。新聞の見出し(10月20日付・朝日新聞)の引用にもなるが、振り向けば、街中にクマがいる。

⇒20日(火)朝・金沢の天気      はれ

☆仰ぎ見る富士なれど、世間は騒々しく

☆仰ぎ見る富士なれど、世間は騒々しく

   共同通信社が17、18両日に実施した全国電話世論調査によると、菅内閣の支持率は前回9月の調査と比べて5.9ポイント減の60.5%、不支持率は5.7ポイント増の21.9%だった。日本学術会議が推薦した会員候補6人の任命拒否問題を巡り、菅義偉首相の説明は「不十分だ」との回答が72.7%に達した(10月18日付・共同通信Web版)。

         NHKが今月9-12日で行った世論調査によると、菅内閣を「支持する」と答えた人は、政権発足後初めての先月の調査より7ポイント下がって55%、「支持しない」は7ポイント上がって20%だった。日本学術会議が推薦した新しい会員の一部を任命しなかったことについて、菅総理が「法に基づいて適切に対応した結果だ」と説明していることに、どの程度納得できるか聞いたところ、「大いに納得できる」が10%、「ある程度納得できる」が28%、「あまり納得できない」が30%、「まったく納得できない」が17%だった(10月13日付・NHKニュースWeb版)。

   各メディアの世論調査では内閣支持率が前回比で減っている。共同とNHKはそれぞれ6ポイント、7ポイントだ。日本学術会議が推薦した会員候補6人の任命拒否となったことをめぐり、連日メディアで問題視されているにもかかわず、NHKでは支持率55%と高い。菅内閣とすれば想定内のことなのかもしれない。

   この日本学術会議問題をめぐってさまざまな視点から批判や意見があって当然なのだが、まったく解せないのが、静岡県の川勝知事の発言だった。知事は今月7日の定例記者会見で、「菅首相の教養レベルが図らずも露見した。学問をされた人ではない。単位を取るために大学を出た」などと発言した。その後、12日も報道陣に「訂正する必要は全くない」と強調し「(菅首相の)経歴を見ると、学問を本当に大切にしてきたという形跡が見られない」と述べていた(10月16日付・静岡新聞Web版)。このニュースを知って、まるで人格攻撃のようだと感じた。

   静岡県庁の公式ホームページで知事のプロフィルをチェックすると、「昭和50年3月 修士(早稲田大学大学院経済学研究科)」「昭和60年10月 D.Phil.(オックスフォード大学)」とあり、「私は学問を追求してきた」と言わんばかりだ。ただ、「言葉は人格を表す」とよく言われるが、学歴と人格の乖離が目に余る人は私の周囲にもいる。知事は去年12月19日にも、来年度予算に難色を示した県議会の自民党系の最大会派を念頭に「やくざの集団、ごろつきがいる」と発言。県議会2月定例会で撤回、謝罪し「今後、不適切発言はしない」と答弁したばかりだった(同)。

   知事は今月16日にようやく発言を撤回し陳謝した。静岡県公式ホームページには「『富士の国』づくりに向けて」と題したページがある。以下引用する。「富士」の「富」は物の豊かさを、「士」は心の豊かな徳のある人格者を意味しており、その字義をふまえ、我々は物の豊かさと心の豊かさの調和した国をめざして「富国有徳」をもって理念とする。知事には富士山のように仰ぎ見、畏敬の念に打たれる人格者であってほしいと願うのだが。(※写真は、静岡県富士市役所の「フリー写真素材集」より)

⇒19日(月)朝・金沢の天気   くもり

★クマ出没とキノコ狩りの因果関係

★クマ出没とキノコ狩りの因果関係

           きのう16日朝のブログでツキノワグマの出没が相次いでいて、ことしに入ってクマの目撃情報は357件(10月9日現在)とこれまで過去最高だった2010年の353件を上回ったと述べた。ブログを書いてからのニュースだが、石川県白山市できのう午後、クマに襲われ4人がケガを負う被害があった。

   きょうの新聞各紙=写真=によると、正午過ぎに95歳の男性がクマに顔面をひっかかれて畑で倒れていると近くの人が通報。自宅で襲われた63歳の女性は自ら119番通報。住宅納屋に逃げ込んだクマを網で捕獲しようと猟友会の57歳と72歳の男性が納屋に近づいたところ、クマが飛び出してきて2人がケガを負った。クマはその後、猟銃で駆除された。体長132㌔、体重100㌔のオスだった。16日は同市のほか、金沢市など7市町で11件の目撃や痕跡情報が県生活環境部に寄せられていた。

   クマは場所を選ばない。金沢市内ではいろいろなところに出没している。金沢の野田山は加賀藩の歴代藩主、前田家の墓がある由緒ある墓苑だ。市街地とも近い。お供え物の果物を狙って出没するのだ。だから、「お供え物は持ち帰ってください」との看板が随所にかかっている。クマは中心街でも出る。兼六園近くの金沢城公園で、たびたび出没していたことから、捕獲用のおりを仕掛けたところ体長1㍍のオスがかかったことがある(2014年9月)。周辺にはオフィスビルなどが立ち並ぶ。

   クマは柿が大好物だ。一度食べたら、また翌年も同じところに柿を食べにくる。知人から聞いた話だ。痩せたクマが市街地の民家の柿木に登って、無心に柿の実を食べていた。通報を受けたハンターが駆けつけたが、その無心に食べる姿を見て、「よほどお腹がすいていたのだろう」としばらく見守っていた。満足したのか、クマが木から下りてきたところをズドンと撃った。クマはたらふく食べることができてうれしかったのか、目に涙が潤んでいた。

    金沢や加賀地方を中心にクマがひんぱんに出没していることの余波が能登地方にも及んでる。キノコ採りのシーズンだが、クマとの遭遇を嫌って加賀地方の山々は敬遠されている。そこで、クマが少ない能登地方の山々へとキノコ採りの人々の流れが変わってきているのだ。

   本来、能登地方の人々にとっては迷惑な話なのだが、能登の人たちが目指しているキノコはマツタケや、コノミタケと地元で呼ぶ大きな房(ふさ)のホウキダケの仲間だ。ところが、金沢や加賀地方からやってくる人たちは、能登ではゾウゴケ(雑ゴケ)と呼ぶシバタケがお目当てだ。目指すものが異なるので、山でトラブルになったという話は余り聞かない。クマの話がキノコへと横に逸れた。

⇒17日(土)夜・金沢の天気    くもり

☆クマの飢え、馬の嘆き

☆クマの飢え、馬の嘆き

   このところツキノワグマの出没が相次いでいる。石川県庁は先月9月11日にクマの出没注意情報を発令して注意喚起をしたが、以降でもクマの出没が急増していることから、人身事故の危険性が高まっているとして今月8日には出没警戒情報を発令した=写真=。ことしに入ってクマの目撃情報は357件(10月9日現在)とこれまで過去最高だった2010年の353件を上回った。

   クマの出没による農作物の食い荒らしなど被害も多発している。今月14日に金沢市山間部の果樹園でリンゴが数十個食べられているのが見つかったほか、カキの実などがあちらこちらで荒らされている。同じ日にあわや人身事故になりかけたこともあった。14日午前8時ごろに、小松市の小学校で体長1㍍の成獣のクマ1頭が学校正門から侵入した。クマは校外へ逃げ去ったが、この日は屋外の授業を中止し、教職員が付き添って集団下校させた。小松市ではことしに入って目撃情報が105件もあり、すでにケガ人も出ている。今月7日には同市の住宅街で79歳の女性が朝、新聞を取るために家から出たところ目の前にいたクマに突然襲われた。

   県によると、ことしはクマの冬眠前の餌となる木の実のうち特にブナが大凶作になっていて、エサを求めて人里近くに出没しているようだ。県では、庭のクマはカキやクリを早く収穫するように、合わせて屋外に生ゴミを放置しないなどの対策を徹底するよう呼びかけている。冬眠前のクマの飢えと住宅地での徘徊、解決策はあるのだろうか。

   地元紙では、「金大馬術部 存続危機」との大見出しで記事が掲載されていた(10月15日付・北國新聞)。新型コロナウイルスの感染拡大で、多くのイベントなどが中止となったが、金沢大学馬術部では収入の道が絶たれたカタチで餌代の確保に苦戦しているという内容だった。県内では気多大社「おいで祭り」(3月・羽咋市)や「お旅まつり」(5月・小松市)といった祭事や伝統的な行事が各地で開催されるが、その折に神馬として馬術部の馬も出場してアルバイト代を稼いでいた。これが中止となった。

   同部では13頭を飼育していて、年間で餌代や装蹄などに400万円ほどかかる(同紙)。所属する学生たちもアルバイトで費用を捻出していたが、そのアルバイトも減少。また、部員もこれまで30人ほどいたが、コロナ禍でオンライン授業が主流となり、新入部員の勧誘すらままならない状態のようだ。コロナ禍での馬の嘆きが聞こえる。

⇒16日(金)朝・金沢の天気    はれ  

★オンライン「初診OK」恒久化の是非

★オンライン「初診OK」恒久化の是非

   今月初め、かかりつけの病院に行くと待合室に「【重要】定期通院をされている方へ 電話による診療について」の貼り紙=写真=がしてあった。オンライン診療のお知らせだった。5月に行ったときには貼ってはなかった。医師からも「予約していただければ、電話でもOKですよ」と。で、次回はさっそくオンライン診療を利用することにした。

   これまでは、医師は血圧を測って、最近の様子を聞いて、いつもの薬を処方していた。これからは、自身で測った血圧の数値と、「とくに変わりありません」と電話で医師に伝えるだけだ。その後、病院からのFAXが指定する薬局に届き、自身は薬を取りに行くことになる。通院する時間が省け、何より、待合室での新型コロナウイルス感染への気遣いもなくなる。病院でのオンライン診療はコロナ禍以前でもOKだった。

   それのオンラン診療が大きく変わろうとしている。厚労省は特例措置として、新型コロナウイルスの院内感染などを防ぐため、ことし4月から電話やタブレット端末などを活用したオンライン診療での初診を容認している。ただし、期限は感染が収束するまでと決められていた。それを特例ではなく、いつでも初診はオンランでOKとする動きだ。菅内閣では特例措置を恒久化に向けて動き始めているのだ。

   報道によると、今月6日の政府の経済財政諮問会議では、民間議員がオンライン診療の「特例措置の恒久化」を提言。翌7日の規制改革推進会議でも当面の審議事項にオンライン診療を盛り込んで、「デジタル時代に合致した制度として恒久化を行う」と明記した。

   これについては、患者目線とズレがあると感じる。政府はデジタル化のために「初診もOK」と考えているようだが、患者側としては、やはり初診は医師に症状をしっかりと伝え、診療をしてほしい。もちろん、オンライン初診OKであったとしても、患者側が足を運べばよいだけの話なのだが。医師としても、触診など対面より得られる情報は少なく、誤診につながるのでNGだろう。リスクが高すぎる。

   さらに、医療側にすれば、検査料や管理料などが取れなくなるので収入減となり経営の問題にもなるだろう。さらに、患者になりすまして薬を不正に入手するといった犯罪の温床になるのではないか、といったことにも思いをめぐらしてしまう。デジタル化推進のためにオンラインで「初診もOK」の動きはどうもすっきりしない。後味が悪い。

⇒15日(木)朝・金沢の天気     くもり

★ポストコロナで具現化、大学への未来投資

★ポストコロナで具現化、大学への未来投資

    財政が厳しい国からの予算配分を待つだけでは、最先端の研究は進まず、世界に後れを取ってしまう。ならば、「大学債」を発行し研究資金を調達する。当たり前のことがようやくできるにようになった。東京大学は大学債を発行し、200億円を債券市場から調達すると発表した(10月8日付・NHKニュースWeb版)。

   東京大学公式ホームページによると、大学債は「FSI債」の名称で、大学が社会変革を理念に進めるFSI(Future Society Initiative)活動を加速させることを目標としている。総長メッセージが掲載されている。以下一部を引用。

   「学債の発行は、直接的には、東京大学を真に自立した経営体とすることに貢献します。しかし、それだけではありません。よい良い未来社会づくり向けて、大学を起点に、知識集約型社会によりふさわしい、資金を動かし循環させる新しい仕組みをつくることにもつながると考えています。それが、閉塞感が拡がる現在の経済社会システムを変革する駆動力を生み出すことを期待しています。これはポストコロナ時代における大学の新しい立ち位置、姿を具現化するものなのです」

   公式ホームページによると、投資家は生命保険会社や銀行、学校法人のほか、意外だったのは蒲郡市や飛騨市、宮崎県新富町といった自治体、それに吉本興業ホールディングスなども。これら46社に毎年0.8%余りの金利を支払い、40年後に返済する仕組み。市場から調達した資金は、素粒子観測施設「スーパーカミオカンデ」の後継となる次世代の施設「ハイパーカミオカンデ」の整備費の一部に充てるほか、宇宙の成り立ちを調べるため、ハワイで計画している超大型望遠鏡の整備費用などに充てる。

   これまで国立大学が発行する大学債は、付属病院やキャンパス移転などの整備事業が主だったが、世界最高水準の教育研究施設の整備事業も対象にできるようになった。ただし、文科省が世界レベルの教育・研究を進めていると認めた指定国立大に限られる。こうした研究は収益事業ではないので、大学全体として寄付金や運用益などの余裕金で返済していくことになる。

   新型コロナウイルスの感染対策と経済立て直しに国の財政が向けられ、大学の研究費がひっ迫してくることは想像に難くない。東京大学は今後10年で1000億円規模の調達を計画している。使いみちが自由な資金を市場から確保し、研究活動を強化する、これこそが「学問の自由」を担保することになる。総長のメッセージにあるように、ポストコロナ時代における大学の新しい立ち位置、姿の具現化ではある。

(※写真は「ハイパーカミオカンデ」の紹介ビデオから)

⇒8日(木)夜・金沢の天気   あめ