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☆『テラスハウス』、故意に「侮辱」を煽ったのか

☆『テラスハウス』、故意に「侮辱」を煽ったのか

   フジテレビのリアリティ番組『テラスハウス』に出演した女子プロレスラーが自死した問題で新展開があった。読売新聞Web版(12月16日付)が報じている。警視庁は近く、ツイッターで女子プロレスラーを中傷したとして、大阪府の20歳代の男を侮辱容疑で書類送検する方針。女性に匿名の誹謗中傷は数百件に上ったが、中でもこの男が女性のツイッターの投稿に対し、「生きている価値あるのかね」「いつ死ぬの?」などと複数回にわたって返信の書き込みを繰り返し、公の場で侮辱した疑い。警視庁では、摘発して処罰の可否を問う必要があると判断した。

   問題のシーンは『テラスハウス』の38話で、同居人の男性が女子プロレスラーが大切にしていたコスチュームを勝手に洗って乾燥機に入れたとして怒鳴り、男性の帽子をはたく場面だ。この38話は3月31 日に動画配信サービス「Netflix」で流され、SNSコメントで批判が殺到した。この日、女子プロレスラーは自傷行為に及び、それをSNSに書き込んだ。フジの番組スタッフがこのSNSを見つけ、本人に電話連絡をとっている。ところが、フジは5月19日未明の放送で、SNSで批判された問題のシーンをカットすることなく、そのまま流した。女子プロレスラーは5月23日に自ら命を絶った。 

   女性の母親は、娘の死は番組内の「過剰な演出」がきっかけでSNS上に批判が殺到したためだとして、人権侵害があったとBPO(放送倫理・番組向上機構)に申し立てを行った(7月15日)。番組でプロレスのヒール(悪役)のキャラクターを演じるよう指示され、「番組内に映る虚像が本人の人格として結び付けられて誹謗中傷され、精神的苦痛を受けた」として、人格権の侵害を訴えた。併せて、「全ての演出指示に従うなど言動を制限する」などの条項を含む「誓約書兼同意書」によって自己決定権が侵害され、人権侵害に相当すると訴えた。

   これに対し、フジテレビ側は7月31日付で内部調査の検証報告を公式ホームページで掲載した。聞き取りを番組のプロデューサー、ディレクター、制作現場のスタッフ、出演者、女子プロレスラーの所属事務所の関係者ら27人に対して行った。番組について「予め創作した台本は存在せず、番組内のすべての言動は、基本的に出演者の意思に任せることを前提として制作されていた」としたうえで、調査では「制作者が出演者に対して、言動、感情表現、人間関係等について指示、強要したことは確認されなかった」としている。

   BPO放送人権委員会は遺族からの申し立てを受け、これまで10月20日と11月17日の2回審理を行っている(BPO公式ホームページ)。今回の警視庁の書類送検によって、今後の審理ではSNS上に批判が殺到した理由、さらに、なぜ5月19日にそのまま放送したのか、フジの姿勢が問われるのではないだろうか。故意に「侮辱」を煽ったのかどうかだ。

(※写真は5月23日付のイギリスBBCニュースWeb版で掲載された女子プロレスラーの死をめぐる記事)

⇒16日(水)夜・金沢の天気    くもり

★コロナ禍、大雪が「医療崩壊」に拍車

★コロナ禍、大雪が「医療崩壊」に拍車

   けさ大学からの一斉メールで、鳥インフルエンザウイルスに関する注意喚起の文書が届いた。この鳥インフルエンザウイルスは新型コロナウイルスと同時に日本で猛威をふるっている。鳥インフルエンザウイルスは、野鳥観察など通常の接し方では、ヒトに感染しないと考えられているが、どのような注意喚起なのか。

   「野鳥との接し方について」とPDF文書だ、「○ 死亡した野鳥など野生動物は、素手で触らないでください。また、同じ場所でたくさんの野鳥などが死亡していたら、お近くの都道府県や市町村役場にご連絡ください。」「○ 日常生活において野鳥など野生動物の排泄物等に触れた後には、手洗いとうがいをしていただければ、過度に心配する必要はありません。」「○ 野鳥の糞が靴の裏や車両に付くことにより、鳥インフルエンザウイルスが他の地域へ運ばれるおそれがありますので、野鳥に近づきすぎないようにしてください。 特に、靴で糞を踏まないよう十分注意して、必要に応じて消毒を行ってください。」「○ 不必要に野鳥を追い立てたり、つかまえようとするのは避けてください。」

   金沢大学は中山間地、いわゆる里山に位置するため、バードウオッチィングなどには最適だ。双眼鏡を手にして山歩きをする学生たちの姿も見かける。そして、実際に山に入ってみると、鳥の死骸や排せつ物を見かけることがある。ただ、山道に落ちていると、知らぬ間にスニーカーで踏んづけているものだ。そう考えるとこの時季はうかつに山に入れない。そして、駐車場に車を停めておくと、鳥のフンがフロントガラスに落ちていることがある。これもガソリンスタンドで念のために洗車をした方がよさそうだ。あれこれ考えながら文書を読んだ。

   さらに鳥インフルエンザウイルスと同時に、シベリアから強烈な寒気団も近づいている。北陸地方はあす15日から16日ごろにかけて大雪となる恐れがあると予報が出ている。ここ数年、大雪になると気象予報士が使う言葉に「JPCZ」がある。日本海寒帯気団収束帯(Japan sea Polar air mass Convergence Zone)のこと。シベリアからの寒気団が北朝鮮の最高峰である白頭山(標高2744㍍)にぶつかって分断されるが、その南の下で再び寒気団がぶつかって収束することで、帯状の雪雲の列となって日本の本州へ流れ込んでくるそうだ。2017年12月17日に降った大雪では、金沢市内で積雪が30㌢に達した。

   今回も大雪となると、つい案じてしまうのが雪道での交通事故だ。12月中頃では、金沢でもスタッドレスタイヤなど雪道用タイヤの取り換えに間に合っていない乗用車やトラックが多い。ましてや、16日に雪マークがついている名古屋では危険だ。凍結路面などでスリップ事故が多発するのだ。新型コロナウイルス感染で病床数にそれほど余裕がないところにきて、さらに交通事故で重傷患者が運ばれてきたら大変だ。「医療崩壊」に拍車をかけることになるのではないか、とさえ思ってしまう。

(※写真は、2017年12月、自宅近くの市道でスリップ事故で電信柱に衝突した貨物トラック)

⇒14日(月)午前・金沢の天気    くもり時々あめ 

    

★「金属バットマン」に同情の余地なし

★「金属バットマン」に同情の余地なし

  元新聞記者、元テレビ番組ディレクターを経験したせいか、地域にこういった事件が起きると、「なぜだ」と妙に血が騒ぐ。きのう10日、石川県七尾市の市会議員が金属バットを持って議会事務局に入り、駆け付けた警察官に現行犯逮捕された。この議員は77歳、10期目のベテランだ。一夜明けて、その「なぜだ」の問いが断片的ながら見えてきた。きのうに引き続き、ブログのネタに。

   きのうのブログで「過去に無用にバットを振り回し周囲を威嚇するような行為があったのだろう。市役所の職員の対応はその経験則ではないかと察する」と憶測を述べた。きょうの地元紙によると、やはり、過去にも「金属バット歴」があるようだ。逮捕された市議、杉本忠一容疑者はきのう午前10時半ごろに七尾市役所に金属バットを持って入った際、市役所職員が警察に通報。杉本容疑者が議会議長の杉木勉氏と議会棟のロビーで面談する際、脇にバットを置いたため、議会事務局の職員が隙を見て、バットを取り上げた。駆け付けた警察官は任意同行を求めたが、杉本容疑者は「素振りなどの運動をするために持っていた」と警察の要請を拒否。警察は迷惑防止条例違反で午前11時20分ごろ現行犯逮捕した。市役所職員のこの機敏な行動(警察への通報、バットの取り上げ)は経験則だと直感した。

   きょうの地元紙によると1995年に市職員に暴力をふるおうとするなど荒っぽい言動があり、議員辞職勧告を議会から受けたことがある(12月11日付・北國新聞)。また、同僚の議員とトラブルを起こしてバットで殴りかかろうとしたほか、市職員や議員に暴力を振るおうとするなど荒っぽい言動やトラブルが目立つと議会関係者は話している(同・北陸中日新聞)。暴力には至らなかったものの、その寸前での行為が目立った。市職員の経験則にはこうしたリアルな背景があった。

   もう一つの疑問だ。なぜ金属バットを持って議長と面談をしに行ったのか。ことし10月に同市の市長が選挙によって交代した。現職を応援したのが杉本容疑者、前職を応援したのが議長だった。今月8日の議会一般質問で、前職を支持した議員が現職の市長に対して、「市長選で用いた討議資料の中で、七尾市のごみ処理施設の予定価格が非公開だったため、談合が行われたとの記載があるが、予定価格は公開されていた。記載が間違っており、市民に謝罪を」と厳しく追及した。これに対し、杉本容疑者は「裁判所の検事のように追及するな」などとやじを繰り返したため、議長から何度も注意を受けた。また、翌日9日は杉本容疑者自身が一般質問をしたが、通告にはない話をしたとした議長から再度注意を受けていた(同・北陸中日新聞)。

   議会で注意を受けたことに逆に遺恨の念をもったようだ。同情の余地がない。

⇒11日(金)夜・金沢の天気     くもり

☆市会議員が「金属バット」を持てば

☆市会議員が「金属バット」を持てば

   さらに、ローカル放送のニュースをチェックする。警察などによると、杉本市議は午前10時ごろ、金属バットを持って市役所の議会棟に現れた。駆け付けた警察官が任意同行を求めたものの、杉本市議が抵抗したため、警察がその場で逮捕した。けが人はいなかった。 七尾市議会の杉木勉議長は「キャップを深くかぶって黒いマスクでマフラーをつけていた。全く誰かわからなかった」と証言した。 杉本市議は議会運営に不満を持っていたとみられ、議長に面会を求めていた。同市議会の杉木勉議長によると、一般質問で杉本容疑者がやじを飛ばすなどしたため注意した。杉本容疑者は「議長が議員を公平に扱っていない」と不満を口にしていた(同・北陸放送ニュースWeb版)。

    別のローカル放送はこう伝えている。10日午前、七尾市役所の議会事務局に金属バットを持った現職市議が乱入し、駆け付けた警察官に現行犯逮捕された。午前10時半ごろ、市役所3階の議会事務局に金属バットを持った男が突如現れ、議長に面会を求めた。男は通報で駆け付けた警察官の要請を拒否。そのまま現行犯逮捕された。県迷惑防止条例違反で逮捕された現職議員・杉本忠一容疑者は通算10期目のベテラン議員だった(同・石川テレビニュースWeb版)。

   それにしても、事件が流れが断片的に記事になっているだけで、全体が理解できない。地元紙の関連ニュースをネットでチェックしたが掲載されていない。そこで、上記の3つのニュースを総合すると、以下だ。市議会の杉木勉議長によると、一般質問で杉本議員はやじを飛ばすなどしたため注意した。すると、杉本氏は「議長が議員を公平に扱っていない」と不満を口にしていた。そしてきょう、「キャップを深くかぶって黒いマスクでマフラーをつけていた」杉本氏が金属バットを持って議会事務局に現れ、議長に面会を求めた。ただならぬ気配を察した議会事務局は警察に通報した。議会棟のロビーで杉木議長と杉本氏は10分ほど面会。その際に脇にバットを置いたため、市職員が隙を見てバットを取り上げた。駆け付けた警察官は任意同行を求めたが、杉本氏は「素振りなどの運動をするために持っていた」と警察の要請を拒否。警察は迷惑防止条例違反で午前11時20分ごろ現行犯逮捕した。

   確かに、キャップを深くかぶって黒いマスクでマフラーした男が金属バットを持っていれば、市議と分かっていても、周囲を不安に陥れる。おそらく、過去に無用にバットを振り回し周囲を威嚇するような行為があったのだろう。市役所の職員の対応はその経験則ではないかと察する。50分の出来事だった。

(※写真は、七尾市議会がある七尾市役所庁舎)

⇒10日(木)夜・金沢の天気    くもり

★「尖閣」をめぐる次なる狙い

★「尖閣」をめぐる次なる狙い

   きのう24日、来日した中国の王毅外相、茂木敏充外務大臣の共同記者会見の様子をテレビで見ていて、多くの視聴者は「日本はなめられたものだ」と憤ったのではないだろうか。茂木氏は「尖閣周辺の日本の立場を説明し、中国側の前向きな行動を強く求めた」と話したのに対し、王氏は「ここで一つの事実を紹介したい。真相が分かっていない一部の日本の漁船が絶え間なく釣魚島の水域に入っている。中国側としてはやむを得ず非常的な反応をしなければならない。敏感な水域における事態を複雑化させる行動は避けるべき」と。つまり、尖閣周辺の主権を侵害しているのは日本側だと、堂々と会見で述べていた。

   王氏の来日の目的はこれだと察した。当初は、中国の人権問題をめぐって日本は「日米豪印戦略対話(QUAD)」を推進する立場でもあり、それを切り崩すための来日が目的かと推測した。ではなく、「尖閣をめぐる宣戦布告」が目的だったと、この発言で直感した。では、次に中国が打ってくる戦術はなんだろう、と考える。日本の漁民によって中国の主権が侵害されているとの論法なので、おそらく中国側は尖閣に漁民を住まわせるための住居地をつくる。そして、通信機器や沿岸の整備を行い漁業の基地化を進めて既成事実化していくのではないだろうか。

   中国は南シナ海の南沙諸島で「九段線」と称して広大な海域の領有権を主張し、人工島の建設を進めその主張を既成事実化しようとしている。同じ論法を今度は尖閣諸島で展開する布石ではないだろうか。ただし、軍事基地にすると、アメリカを刺激するので漁業基地化だ。菅総理は今月12日、バイデン次期大統領との電話会談で、「バイデン次期大統領からは、日米安保条約第5条(アメリカの対日防衛義務)の尖閣諸島への適用についてコミットメントをする旨の表明があった」と述べていた。日米安保条約第5条をにらんで漁業基地化するというのが中国側のシナリオではないだろうか。

   日本の首都で堂々と尖閣の領有権を主張したのだから。あとは粛々と次なる一手を打つだけだ。日本は新型コロナウイルスと東京オリ・パラの対応に追われている。そのうち大震災も発生するだろう、今が先手を打つチャンスと読んでいるのだろう。実にしたたかな、日本をなめた外交ではある。

   外務省公式ホームページに掲載されている内閣官房領土・主権対策企画調整室の資料=写真=によると、1919(大正8)年冬、中国・福建省の漁船が尖閣沖で遭難して魚釣島に漂着した。その際、尖閣に住んでいた日本人の住民は中国漁民を救護した。当時の中華民国駐長崎領事は翌1920年5月に感謝状を贈ったが、そこには「日本帝国沖縄県八重山郡尖閣列島」と記されている。100年前の史実である。

⇒25日(水)夜・金沢の天気    くもり

☆小さなコーブ(入り江)の話

☆小さなコーブ(入り江)の話

         久しぶりにこの人の名前が目に留まった。リチャード・オバリー氏、和歌山県太地町でのイルカ保護活動家だ。報道によると、最高裁は、オバリー氏が退去強制処分の取り消しを求めた訴訟で、国の上告を受理しない決定(11月17日付)を下した。オバリー氏は2016年1月、成田空港から観光目的で入国しようとしたが、上陸手続きで「活動内容が不明」として認められず、異議申し立ても退けられた。同年2月に退去強制の処分を受け出国。2019年10月の1審で東京地裁は「漁業関係者への嫌がらせを入国目的としていた疑いがあるというのは困難だ」と指摘、2審の東京高裁も支持した(11月18日付・産経新聞Web版)。

   イルカをめぐる保護活動か、漁業者への嫌がらせか。自身は2011年5月5日のゴールデンウイークに家族と和歌山県南紀を観光で訪れた折に太地町に赴き、現場を見に行ったことがある。当時の率直な感想は「嫌がらせ」だ。イルカ保護活動を職業にしている、というイメージだった。そのときの様子を再現してみる。

   訪れたのは5月5日午前10時ごろ。追い込み漁が行われている小さな入り江へ行く=写真・上=。イルカが網にかかっており、翌日市場が再開するので漁業関係者が網からイルカを外して解体処理場に運んでいた。その様子を橋の上からオバリー氏が見ていた=写真・下=。もう一人の外国人が沿岸で漁の様子をカメラ撮影していた。和歌山県警の警官も数人いて、周囲にはちょっとした緊張感があった。

   「嫌がらせ」と感じた場面は近くの漁協の前でのことだ。外国人数人がいて、漁協前で停まった車から漁師風の男性がおりると近寄り、たどたどしい日本語で「イルカ漁をやめてほしい」とお札を数枚差し出していた。男性は無視して漁協に向かった。漁協の前に車が停まるたびにそれが繰り返されていた。物理的な阻止行動ではない。今回の裁判官とすれば、漁師が無視すればよいだけの話で「嫌がらせ」ではないとの印象かもしれない。

   問題はお金をちらつかせながら「イルカ漁をやめろ」という行為だ。「板子一枚、下は地獄」とよく漁師が言うように、漁は危険を伴う職業だ。現実に、1878年(明治11)クジラを追った船団が沖に流され遭難した100人以上が亡くなっている。その慰霊碑が立っていて、今でも慰霊参拝が続けられている。自然への恐れや畏怖の念を抱きながら、それでも太地の人たちは海からの恵みを得ようと歴史を刻んできた。そこにオバリー氏らが突然やってきて、金をやるからイルカ漁を止めろと活動しているのである。地元の漁師たちにとって、迷惑な話で「嫌がらせ」と感じても不思議ではない。

   オバリー氏が主役となって撮影された映画『ザ・コーヴ』は2010年にアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞した。それ以来、イルカの保護運動の活動家にとって、太地町は悪名をはせ、オバリー氏はヒーローになった。世界の支持者から寄付金が集まり、裁判にも勝った。81歳、まだまだ頑張るつもりだろう。

   和歌山で生まれ、博物学者であり、生物学者(特に菌類学)であり、民俗学者の南方熊楠。その一生を記した著書(神坂次郎著『縛られた巨人 南方熊楠の生涯』)を読んだことがある。熊楠はクジラの塩干しを炭火であぶって、よく酒を飲んだと著書にあった。この塩干しが食べたくなり、太地町の商店から「鯨塩干」を取り寄せたことがある。オーブンで5分間ほどあぶって口にすると、スルメイカの一夜干しのあぶったものと歯触りや味がそっくりだった。

   熊楠が現代に生きていたら、オバリー氏をどう評しただろうか。頭に血が上ると口撃が止まらない悲憤慷慨(こうがい)の性格で徹底して対峙したか、あるいは妙に気が合って酒を酌み交わしたか。

⇒19日(木)夜・金沢の天気     はれ

★数字の裏読み、深読み、独り歩き

★数字の裏読み、深読み、独り歩き

    数字には納得できるものと納得できないものがある。さらに納得できたとしても、「さらに裏の潜むもっと大きな数字もあるだろう」と思わせるものもある。日本と中国の相互意識を探る第16回日中共同世論調査(実施=言論NPO、中国国際出版集団)の結果だった。17日付のNHKニュースWeb版の記事を引用しながら数字を読んでみる。

    調査は9月と10月に18歳以上を対象に行われ、日本は全国で1000人、中国は北京や上海など10都市で1571人からの回答をもとにしている。記事によると、中国に「良くない」という印象を持つ日本人は前回に比べ5ポイント増の89.7%に上った。その理由として、中国公船などによる「尖閣諸島周辺の日本領海や領空の侵犯」が同6ポイント増の57.4%で最も多く、以下、「国際的なルールと異なる行動」49.2%、「南シナ海などで行動が強引・違和感」47.3%で、中国による一方的な海洋活動が対中感情を悪化させている。設問はメディアで報道される内容に沿っている。

   一方、中国人で日本に対する印象が「良くない」と答えたのは52.9%で前回と横ばいだった。「良くない」理由は、「侵略の歴史 きちんと謝罪・反省せず」74.1%、「魚釣島・周辺諸島『国有化』で対立」53.3%、「米国と連携し包囲しようとしている」19.7%となっている。良くない印象の理由の設問はおそらく中国側が独自に作成したものだろう。その設問の内容は国内での反日教育をベ-スにしたものや、2012年9月に日本が尖閣諸島を国有化したこと、経済圏構想「一帯一路」のシーレーンをめぐる動きなど、いわゆる国策をベースにしたものだ。

   以下は深読み、裏読み、憶測である。「89.7%」をどう読むか。率直に中国で独り歩きをする危険な数字ではないだろうか。その大前提には中国人と日本人ではまったく情報は共有されないという事情がある。たとえば、日本人が「良くない」とする一番の理由である中国公船の尖閣周辺での航行について、日本で大きな問題となっていることは中国では報じられていないだろう。つまり、なぜ「良くない」のか理解されない。

   今回のアンケート調査の数字は中国でどのように報じられるのだろうか。憶測だが、「中国嫌いの日本人は89.7%」「日本嫌いの中国人は52.9%」の表現だろか。すると、「なぜ中国嫌いの日本人が多いのだ」と、今度は数字が独り歩きをして、逆に中国での反日感情を煽る可能性も出てくる。あるいは、数字は政治的に利用されることもあるだろう。

   折しも、「自由で開かれたインド太平洋」のもと日本、アメリカ、インド、オーストラリアの4ヵ国の海軍と海上自衛隊がインド近海での共同訓練を行っている。中国とすれば、格好の「口撃」材料だろう。「中国嫌いの日本人89.7%が敵に回っている」とプロバガンダにされる、かもしれない。

⇒18日(水)朝・金沢の天気     はれ

★動物たちの反乱

★動物たちの反乱

   前回のブログで霊長類学者、河合雅雄氏の講演について述べた。河合氏らの共著に『動物たちの反乱』がある。タイトルが面白い。今まさにその時代が到来しているのかもしれない。街中に出没するツキノワクマ、農作物を食い荒らすニホンザル、市内でゴミをあさるイノシシなど、動物たちがヒトに「反乱」を起こしているのか。ここからは空想の世界が入り混じる。

   動物たちの反乱は身近に起きている。きょう大学から一斉メールが届いた。「高病原性鳥インフルエンザに対する対策について」との文科省からの通知の転送だ。添付ファイルに「野鳥との接し方」がある。以下引用。「野鳥の糞が靴の裏や車両に付くことにより、鳥インフルエンザウイルスが他の地域へ運ばれるおそれがありますので、野鳥に近づきすぎないようにしてください。 特に、靴で糞を踏まないよう十分注意して、必要に応じて消毒を行ってください」。自家用車を駐車場に停めておくと、鳥のフンがフロントガラスについていることがある。これまでテッシュペーパーで拭いて、水をかけて洗っていたが、触れないようさらに用心が必要だ。鳥たちの「フン爆撃」か。処置としては、ガソリンスタンドの洗車機で洗うのベストだろう。1回450円だ。

   動物たちの「敵陣突破」作戦も顕著になってきた。環境省は今年4-9月のクマの出没件数が全国で1万3670件に上り、2016年度以降の同時期で最多だったことを明らかにした(10月26日付・共同通信Web版)。石川県では687件(ことし1月-11月10日現在)に上り、9月11日には「ツキノワグマの出没注意情報」を発令した。さらに、クマとの遭遇に備えて「ヘルメットの着用やクマ撃退スプレーの携行」、さらに、「林道での人身被害を防止するため、自動車から降りる際にはクラクションを数回鳴らしてから降りる」ことを勧めている。 まさに、戦闘態勢だ。

   動物たちの「兵糧攻め」も続いている。農水省公式ホームページの統計によると、平成30年度の野生鳥獣による農作物の被害額は158億円に上った。種別の被害金額は、シカが54億円、イノシシが47億円、サルが8億円だ。被害の7割をこの3種が占めた。被害面積ではシカによるものがおよそ4分の3だ。被害額としては6億円の減少(前年比4%減)だが、被害量が49万6千㌧で前年に比べ2万1千㌧も増加(対前年4%増)している。

   海外では「人心のかく乱」「新兵器」も繰り出している。デンマークでは、毛皮を採取するための家畜のミンクから変異した新型コロナウイルスが見つかり、人への感染が確認されたとして、政府は国内の農場で飼育されるミンク1700万匹を殺処分にする方針を明らかにした(11月7日付・NHKニュースWeb版)。その後、デンマーク政府は国内で飼育されている全ミンクの殺処分を義務付けるとした命令を撤回した(同11日付・CNNニュースWeb版日本語)。一方、イギリスの保健大臣は、変異種が世界中に広まれば「重大な結果」がもたらされると警告、毛皮用のミンク飼育を国際的に禁じる必要があると示唆した(同・時事通信Web版)。エレガントなミンクの毛皮とコロナ禍の間で揺れる人々の心を嗤うように「かく乱」が続く。

   中国では動物たちが「新兵器」を繰り出した。NHKの報道によると、中国甘粛省の蘭州市当局は記者会見(今月5日)で、去年7月から8月にかけて「ブルセラ症」の動物用のワクチンを製造する地元の製薬工場から菌が漏れ出し、周辺住民など6620人が感染したことを明らかにした(11月6日付・NHKニュースWeb版)。ブルセラ症は犬や牛、豚、ヤギなどが細菌に感染して引き起こされる病気で、人が感染すると発熱や関節の痛みなどの症状が出る(同)。

   問題は感染経路だ。厚労省公式ホームページによると、人から人への感染は極めてまれで、感染動物の乳製品や肉を食べた場合での感染が一般的という。コロナウイルスでは、武漢市の細菌研究所の近くに市場があり、動物実験で廃棄されたものが市場に出回ったと当時うわさされた。今回も同じ展開か。動物たちの策略に人はうまく乗せられたのか。

⇒13日(金)朝・金沢の天気    はれ

★「領域外」に立ち入るということ

★「領域外」に立ち入るということ

   先日金沢市内の卯辰山公園近くの道路の入り口に看板がかかっていたので乗用車を停めると、「園内でクマが出没しました!」との注意書きだった=写真=。「7月22日」と記されているが、1ヵ月余り前の6月3日にも卯辰山山ろくの人家密集地にクマが出没し、7時間にわたる「大捕物劇」がニュースになっていた。いつまたクマが出没するかもしれないと考えると、金沢の紅葉の名所の一つでもあるものの、市民は敬遠するだろう。いつもならこの季節、バーベキューでにぎわうのだが。

   クマの暴走が止まらない。先月10月29日朝、小松市の小学校のグラウンドに1頭が入り、隣りにある高校の敷地内に逃げ込んだ。午前9時前に猟友会のメンバーが猟銃で駆除した。高校では15分遅れで授業を開始した。現場は市街地だ。小松市ではきょう1日に同市で実施される全国高校駅伝競走大会県予選について、一般道路を走るルートから陸上競技場のトラックを周回する方式に急きょ変更した。発着点付近でクマ出没が相次いだためだ。石川県自然環境課のまとめによると、ことしに入ってクマの目撃情報は502件(10月27日現在)で、うち小松市が133件ともっとも多く、次いで金沢市の118件だ。

   本来入るはずのないところに入る、本来入るべきところでないのに入る、それが問題だ。何もクマの話だけではない。菅内閣の総理補佐官に共同通信社の論説副委員長だった人物が10月1日付で就任したことが議論を呼んだ。いわゆる、権力をチェックする側のジャーナリストが一転して政権内部に入ってよいのか、と。政治部時代に菅総理と知り合い、また、同郷(秋田県)でもあった。総理からの要請を受けての就任で、政策の評価・検証をするポジションのようだ。

   ジャーナリストとして政権側に入ってよいものかどうか、本人が苦悶したであろうことは想像に難くない。以下は憶測だが、現在59歳、来年60歳という年齢が決断のきっかけだったかもしれない。ジャーナリストであっても、政治家であっても、経営者であっても、年齢というものを区切りに辞す、転職するなど別の世界を選択する。それを「人生の転機」と考えるものだ。ましてや、今回のように声がかかれば、「ご縁」、あるいは「運命」と位置付けてその道に入るだろう。

   今回、「ジャーナリストが政権側に身を売るのか」「それまでの政権批判は一体何だったのか」などとの手厳しい意見が身内からもあっただろう。ただ、ジャーナリストは多様である。菅総理に共感を持ちながら政権の有り様を質すジャーナリストもいる(「田原総一朗公式サイト」9月25日付コメント)。批判を覚悟しての政権入りであり、それも人生の貴重な選択肢だ。ただ、菅総理は人使いが荒そうなので、本人が問われるのはむしろこの先だろう。

⇒1日(日)朝・金沢の天気    はれ

★コロナに負けず、「RE:START」金大祭

★コロナに負けず、「RE:START」金大祭

           大学の一斉メールでうれしい案内が届いた。新型コロナウイルスの影響で開催が危ぶまれていた金大祭を実施することになったとの通知だった。ただし、開催期間は今月31日と1日の2日間で、参加者はことしの新入生に限定、そして場所も屋内運動場(体育館)となる。かなり「3密」を意識したものだ。それでも、開催することに意義があると学生たちが大学当局と綿密な交渉で実施にこぎつけたようだ。以下、実行委員会のメッセージを紹介する。

                      ◇ 

   今年の金大祭は、角間キャンパス体育館を会場に、パフォーマンスステージとサークル・部活説明会を開催します。新型コロナウィルス感染症が拡がる中で全国的に学園祭が中止にされています。金大祭も開催が危ぶまれましたが、大学側との交渉の末に開催にこぎつけることができました。

   今年の統一テーマは「RE:START~雨にも負けず、風にも負けず、冬の寒さにもコロナにも負けず~」。参加団体からの公募で選びました。巷では”withコロナの時代”と言われますが、私たちは困難に負けず新しい時代を自分たちの手でつくりだしていこう、という思いで今年の金大祭を実現します。

   現在金沢大学では対面授業が再開され、課外活動も本格的に始まっていますが、この4月以降は誰も予想出来なかった困難の連続でした。普段であれば、サークル・部活勧誘の声で賑わうキャンパスから学生の姿が消え、新入生歓迎の様々な行事も行うことができませんでした。学生文化が危機的な状況に置かれた中で、私たち金大祭参加団体は力を合わせて金大祭を開催する術を一から模索してきました。例年とは大きく異なる形にはなりますが、参加団体の団結によって金大祭を実現できることを嬉しく思います。

   今年は、パフォーマンスステージに15団体、サークル・部活説明会に44団体が参加します。例年金大祭に参加している団体は勿論、今年はじめて参加する団体も多くあります。また、本サイトにおいてサークル紹介を行う団体もあります。コロナの影響があるなかでも、新入生を歓迎する場として・学生文化を発信する場として、盛大に実現します。新入生の皆さん、ぜひご期待ください!    第57回金大祭本部実行委員会

⇒26日(月)夜・金沢の天気     くもり