#ニュース

★静かなる年末年始(10)「賀状で読む総選挙」

★静かなる年末年始(10)「賀状で読む総選挙」

   ことしの年賀状は書き出しを「謹賀新年」とはしなかった。昨年からの新型コロナウイルスが感染拡大する中で決して「おめでたい年を迎えた」などとは自身の気持ちとして言えないとこだわったからだ。その代わりに、「希望が持てる新年でありますように」と記した=写真・上=。では、果たして2021年(令和3年)は希望が持てる年になるのだろうか。いただいた年賀状からことしを読んでみる。

   菅内閣を皮肉った賀状をいただいた=写真・下=。大学時代の同級生で、元雑誌社の編集長。「麻生太郎(副総理)81歳! 二階俊博(幹事長)82歳! あ~あ。老人はもういいよ。若い政治家はいないの? と思ったら、いつのまにか私も高齢者で今年67歳に。」との自虐的な内容には笑える。「中身スカスカの『スカ総理』は73歳とイラストも添えている。

   共同通信社が12月5、6日に実施した全国電話世論調査(回答は固定電話524人、携帯電話519人)によると、菅内閣の支持率は50%で、前回11月から12.7ポイント急落した。政府の新型コロナウイルス対策は「評価しない」が55%。感染防止と経済活動のどちらを優先すべきか尋ねたところ「どちらかといえば」を含め「感染防止」を挙げたのは計76%に上った(12月6日付・共同通信ニュースWeb版)。

   内閣支持率が下がり続ければ、おそらく解散・総選挙は近い。それはいつか。以下憶測だ。コロナ禍の感染拡大で勢いづいている今の状態では3月、4月の総選挙は無理だろう。むしろこの時期はワクチン接種がピークを迎えている。ワクチン効果の評判が広がれば、世論の安心感と政府への評価が高まる。その絶妙なタイミングを狙えば、解散・総選挙は7月の東京オリンピック(21日競技開始、23日開会式)前の5月か6月ではないだろうか。

   賀状を手にして、狡猾な老人政治家たちが考えそうなシナリオを描いてみた。自らも老人政治家たちの腹を探ろうする年代に入った。
 
⇒2日(土)夜・金沢の天気  くもり時々ゆき

☆静かなる年末年始(9)「初夢に東京五輪」

☆静かなる年末年始(9)「初夢に東京五輪」

   2021年(令和3)元旦の初夢は、なんと「東京オリンピック」だった。テレビを見ている自分がいて、そのテレビのモニターには国旗を掲げた選手団が次々と入場行進してくる。なぜか、ニュースキャスターの辛坊治郎氏が選手団について「最近のロシアでは・・」「インドでは中国に対し・・」などと時事解説を行っている。それを違和感なくじっと見ている自分の姿だった。ふと目覚めて時計を見ると、午前2時33分。再び寝込んだが、夢の続きを見たかどうかは覚えていない。

   きょうのブログは初夢が正夢になってほしいと願いつつ書いている。知人と話していても、「このままだとオリンピックの開催は無理だろう」との声をしばしば耳にするようになってきた。政府の新型コロナウイルス対策担当の西村・経済再生担当大臣は自らのツイッター(12月30日付)の動画で「新型コロナウイルスの感染がこれ以上拡大すれば緊急事態宣言も視野に入る」と述べている。コロナ禍の拡大は止まず、ウイルスの国内感染はきのう国内で初めて4000人を超えて4188人と過去最多となった(12月31日付・NHKニュースWeb版)。暗雲が垂れ込める正月を迎えた。

   起死回生、頼みのワクチン接種はどうなのか。アメリカやイギリスなどではすでに一部で接種は始まっているが、日本ではアメリカの製薬大手ファイザーのワクチンの承認申請が行われていて、早くて2月中に承認されるかどうか結論が出る見通し(12月28日付・同)。このニュースを見て、開催国の日本がこの対応の遅さで果たして選手団を迎えることができるのだろうか、と思ってしまう。

   CNNニュースWeb版日本語(12月31日付)によると、アメリカ国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長がインタビューで、4月初めからワクチンを広範囲に行き渡らせることが可能となり、人口の70%から85%が接種を受ければ集団免疫を獲得でき、ウイルスの感染拡大を抑え込むことができる。初秋までにはかなり正常に近い状態に戻れるとの見通しを示している。「ワクチン先進国」のアメリカでこのスケジュール感だ。

   予定通り東京オリンピック競技が始まると想定すれば7月21日(開会式は23日)がスタートだ。それに先立って、日本で行われる国際大会や強化合宿に参加する国外の選手が5月以降で続々と入国してくるだろう。予定通り開催するには4月中にはコロナ禍をなんとか収めなければ間に合わない。逆算すれば、3月と4月に国内での接種を広範囲に行い、集団免疫を獲得しておく必要があるのではないだろうか。

   菅総理は元旦の年頭所感でこう述べている。「コロナ危機は、国際社会の連帯の必要性を想起させました。我が国は、多国間主義を重視しながら、『団結した世界』の実現を目指し、ポストコロナの秩序づくりを主導してまいります。そして、今年の夏、世界の団結の象徴となる東京オリンピック・パラリンピック競技大会を開催いたします。安全・安心な大会を実現すべく、しっかりと準備を進めてまいります」(総理官邸公式ホームページ)

   総理の所感とは裏腹にコロナ禍の猛威は世界に迫る。感染力が強いとされる変異種化したウイルスがイギリスや南アフリカ、フランス、イタリアなど17の国・地域で広まり、日本政府は今月末までオリンピック選手を含めて入国制限をする措置をとった(12月31日付・NHKニュースWeb版)。各国の選手団そのものが結成されるのかどうか、どう克服して開催するのか。総理が述べているように、人類の「団結した世界」をぜひ実現をしてほしい。今から出かける初詣ではそう願いたい。

(※写真は、元旦の床の間に飾った「鶴と亀」の掛け軸と、正月飾り)

⇒1日(金)午前・金沢の天気    くもり時々ゆき

★静かなる年末年始(8)「冬将軍と向き合う」

★静かなる年末年始(8)「冬将軍と向き合う」

   大晦日の雪景色が広がる。自宅周囲では正午過ぎに15㌢の積雪があり、きょう午後から元旦にかけてさらに「数年の一度の大雪」になるとの予報。大雪をともなった寒さが厳しい冬、まさに「冬将軍」の到来だ。

   北陸の人々は、長期予報で「ことしは暖冬」と伝えられていても、冬将軍の訪れに備えて自家用車のタイヤをスタッドレスに交換し、自宅では庭の雪吊りの備えを怠らない。たとえ期間は短くとも、冬将軍は必ずやってくるからだ。

   逆に、冬将軍が来ないと雪すかし(除雪)をしなくて楽なのだが、別の不安感もよぎる。暖冬だったある年に久しぶりに雪が降った。そのときのご近所さんとの会話だ。「ようやく降りましたね」と声がけすると、「もうちょっと降ってもらわんと心配やね」だった。北陸人にとっては降るべき時に降ってもらわないとこれからのシーズンで異常気象が起きるのではないかと不安が募るのだ。

  この季節感覚はなんだろう。北陸は四季がはっきりとしているからだと考える。日常の暮らしに季節の風景の変化があり、雪や雨の多少や温度や湿度の高低差がある。視野と肌感覚が実に敏感になっているのだろう。

  北陸人は粘り強いとか、めげないなどと評価されることがままある。「冬来たりなば春遠からじ」(イギリスの詩人シェリー『西風に寄せる歌』より)は北陸ではこの時節によく使われる言葉だ。辛いことがあっても辛抱しよう、そのうち良いことがあると心に言い聞かせながら耐え忍ぶ。季節感覚がそのような精神風土を育んでいるのかもしれない。

          ところで、民放テレビで気象ニュースを視聴していると、キー局の気象予報士が「吹雪で見通しが悪くなりますので、不要不急の外出は控えてください」といったコメントを繰り返している。新型コロナウイルスの感染を意識したようなコメントに聞こえ、違和感が残る。吹雪であっても小学生は学校に通っている。雪国で暮らす者にとっては余計なお世話と言いたくなる。言うのであれば、「スノータイヤに履き替えていない車での外出は控えてください」だろう。コメントに現場感を持たせてほしいものだ。雪国の人々は冬将軍と向き合って暮らしているのだ。

⇒31日(木)午後・金沢の天気    ゆき 

★静かなる年末年始(6)「人と社会の基礎疾患」

★静かなる年末年始(6)「人と社会の基礎疾患」

   働き盛りの50代でも高血圧症や高脂血症、糖尿病などの基礎疾患があると、午後3時ごろに呼吸が荒くなり、容体が急変し、その90分後には亡くなるものなのか。これが新型コロナウイルスの怖さなのか。今月27日に亡くなった国会議員、羽田雄一郎氏の死亡が連日メディアで報じられている。自らも高血圧症であり、他人事ではないと感じている。高血圧症の場合は急性心不全という突然死の恐怖がつきまとうが、今回、ウイルスがどのように基礎疾患に作用して人を死に至らしめたのかぜひ解明してほしい。

   話は変わる。この一年で「社会の基礎疾患」というものを感じさせたのはクマの街中での出没だった。ことしは全国的にクマの出没が多発したが、石川県だけでも目撃・痕跡情報は1077件(12月21日現在)。金沢市がもっとも多く296件、以下小松市252件、加賀市197件と続く。クマによる人身被害も10件15人に上っている。出没が多発した3市は医王山や白山麓にあり、冬眠前にクマが食べるドングリの実が凶作だったことから人里に下りてきたのが原因とみられる。県では自宅庭のカキの果実を摘んでおくなどの対策を呼び掛けている。

   山から人里に下りてきているのはクマだけではない。金沢では住宅街にサル、イノシシ、シカが頻繁に出没している。エサ不足に加え、中山間地(里山)と奥山の区別がつかないほど里山が荒れ放題になっていて、野生動物がその領域の見分けがつかず、人里や住宅街に迷い込んでくる、とも言われている。繰り返しになるが、里山の過疎化で人がいなくなり、野生動物たちは山から下りてきて作物を狙い始めた。

   過疎化だけではない。日本人の「自然離れ」もあるのではないだろうか。かつて、里山は木材や山菜などを調達する資源の場として、また、保水など環境保全の場として森を利用してきたが、その意識が薄らいでいる。また、文化資源としての利用も欠けている。川遊びや森を利用した遊びの文化が、地方でも少なくなっているのではないだろうか。子どもたちの「自然離れ」が進めば、近未来の里山はさらに奥山と化して、人里に野生動物の出没も増えることは想像に難くない。

   UNEP(国連環境計画)がこのほどまとめた報告書に「ズーノーシス(zoonosis)」という言葉が出てくる。新型コロナウイルスの発生源として論議を呼んでいるコウモリなど動物由来で人にも伝染する感性病を総称してズーノーシス(人畜共通伝染病)と呼ぶ。人々の生産活動が野生動物の領域であるジャングルなどの山間地に入れば、それだけ野生動物との接触度が増えて、感染リスクが高まる、という内容だ。エボラ出血熱や中東呼吸器症候群(MERS)、HIVなど、これまで人間が罹ってきた感染症はズーノーシスに含まれる。

   以下、少々乱暴な言い方になる。日本では今後、逆のズーノーシスが起きる可能性が高まっているのではないか。人々が自然から離れ、これまで手入れしてきた里山を放置して荒らすというのはある意味で「社会の基礎疾患」とも言える。放置が広がれば野生動物の領域がそれだけ広がり、人里や住宅街に接近することになる。切るべき樹木など伐採することで中山間地=里山を保全するなど行政の政策として「手当て」をしなければ、野生動物が新たな感染症をもたらすことになるかもしれない。

⇒29日(火)午前・金沢の天気     くもり

★静かなる年末年始(4)「水際の変異種コロナ」

★静かなる年末年始(4)「水際の変異種コロナ」

       変異種化した新型コロナウイルスがイギリスなど世界各国で確認されていることから、政府はあす28日から、外国人の新規入国を来月末まで停止すると発表した(内閣官房公式ホームページ・新型コロナウイルス感染症対策26日付「水際対策強化に係る新たな措置」)。政府間で合意している11の国・地域(中国、韓国、台湾、タイ、ベトナム、シンガポール、マレーシア、ミャンマー、カンボジア、ラオス、ブルネイ)の在留資格のあるビジネス関係者や教授職・留学生などについては例外的に新規入国を認める、としている。

         「水際対策強化」と銘打った措置だが、すでに後手ではないだろうか。そもそも、上陸する直前に防ぐことを「水際作戦」などと言ったりする。厚生労働省は今月26日に、イギリスから帰国したパイロットの男性と家族の女性(2人は東京在住)の変異種の感染を確認したと発表している。もう、国内で人から人への変異種の感染が初まっている。「水際対策強化」というのであれば、イギリスで変異種の感染が確認された時点で措置すべきではなかったろうか。イギリスは今月19日、ロンドンを含むイングランド南東部の大部分が対象に大規模なロックダウン(都市封鎖)に入った。日本も本来、このタイミングで措置すべきだった。1週間遅い。

   そもそも論だが、パンデミックとして広がった背景には、中国の旧正月の春節の大型連休(1月24日から)で日本を含め世界中に中国人観光客が訪れた。春節の前、1月20日、中国の習近平国家主席は武漢におけるコロナ禍の感染情報を直ちに発表するよう関係部門に直接指示を出した。習主席の指示は「感染拡大に関する情報を直ちに発表し、科学的な予防知識を広めるよう」と求めたものだった。それは、春節での海外渡航を全面的に禁止するものではなかった。 

          習主席の指示を受けた中国の衛生当局は1月24日、武漢での患者数が830人、死者は25人に達したと発表した。WHOは同23日の緊急会合で、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言は時期尚早との判断を下した。同月14日にWHOは武漢の新型コロナウイルス感染症で、主に家族を中心として限定的なヒトからヒト感染が起こっている可能性があり、広範囲なアウトブレイクが発生する可能性があることを指摘していた(国立感染症研究所公式ホームページ)にもかかわらず、である。

       日本で認められた新型コロナウイルスの発症例は、武漢に滞在中に発熱があり、1月6日に帰国した日本人男性が同15日になって陽性と確認された。感染第一例目となった。WHOに対しては翌日16日に国際保健規則に基づいて症例の発生を通告した。その後、春節の旅行で東京を訪れていた武漢に住む40代の中国人男性が、同22日になって東京都内の医療機関を受診したところ、肺炎の兆候がみられたため入院、24日に感染が確認された。

   これまでブログで述べてきた新型コロナウイルス感染をたどたってみると、パンデミックになるべくしてなったと思えてならない。春節に始まったパンデミックは止まない。(※写真は厚生労働省公式ホームページより)

⇒27日(日)夜・金沢の天気     くもり

☆静かなる年末年始(3)「略奪の方程式」

☆静かなる年末年始(3)「略奪の方程式」

   それにしても不思議だ。映画『劇場版 鬼滅の刃』の大ヒットで興行収入が歴代2位などとメディア各社が報じているが、これと新型コロナウイルスの関連性を取り上げているメディアを見たことがない。20代の感染がまん延しているのに、「上映を禁止すべき」といった論調が見当たらないのはなぜだろう。素朴な疑問だ。

   このブログで何度も中国漁船による日本海のEEZ(排他的経済水域)の大和堆での違法操業によるスルメイカの乱獲問題を取り上げてきた。その数量は、国立研究開発法人水産研究・教育機構によると、中国漁船が15万㌧を漁獲していると推計している。これは、日本漁船による昨年度の漁獲量の10倍以上に当たる(10月15日付・日刊水産経済新聞Web版)。中国側の漁船団は、漁業権は北朝鮮から購入したもので、その中には大和堆も含まれていると北朝鮮の主張をタテに取り、違法操業を続けるだろう。これが中国による、スルメイカの「略奪」の方程式ではないだろうか。

   中国に「略奪」される資源はこれだけではない。大手繊維メーカー「東レ」の子会社が中国に輸出していた炭素繊維が、長年にわたって許可なく中国国内のほかの企業に流出していたことがわかり、経済産業省は外国為替法に基づいて警告し、再発防止と輸出管理の徹底を求めた。炭素繊維は鉄よりも軽くて丈夫で、航空機や自動車などに幅広く使われていて、高性能な製品は軍事転用も可能なため輸出の際には国の許可を取り輸出先や使いみちを厳しく管理する必要がある。経済産業省は、東レの子会社に対して行政指導の中で最も重い警告を行い、再発防止と輸出管理の徹底を求めた(12月22日付・NHKニュースWeb版)。

   そして、日本の領土も「略奪」のターゲットだ。11月24日、来日した中国の王毅外相、茂木敏充外務大臣の共同記者会見=写真、外務省公式ホームページ=で、茂木氏は「尖閣周辺の日本の立場を説明し、中国側の前向きな行動を強く求めた」と話したのに対し、王氏は「ここで一つの事実を紹介したい。真相が分かっていない一部の日本の漁船が絶え間なく釣魚島の水域に入っている。中国側としてはやむを得ず非常的な反応をしなければならない。敏感な水域における事態を複雑化させる行動は避けるべき」と。つまり、尖閣周辺の主権を侵害しているのは日本側だと堂々と会見で述べたのだ。   

   中国は南シナ海の南沙諸島で「九段線」と称して広大な海域の領有権を主張し、人工島の建設を進めその主張を既成事実化しようとしている。王氏の発言は、同じ論法を今度は尖閣諸島で展開する布石だろう。日米安保条約第5条(アメリカの対日防衛義務)の尖閣諸島への適用をにらんで、「漁業基地化」するというのが中国側のシナリオではないだろうか。

   日本の首都・東京で堂々と尖閣の領有権を主張したのだから、中国側としては粛々と次なる一手を打つだけだ。日本は新型コロナウイルスと東京オリ・パラの対応に追われている。今が先手を打つチャンスと読んでいるのだろう。

⇒26日(土)朝・金沢の天気    あめ

★静かなる年末年始(2)「高くつくXmasプレゼント」

★静かなる年末年始(2)「高くつくXmasプレゼント」

          12月25日は「クリスマス」というイメ-ジが日本だけでなく世界で定着していて、いまや宗派を超えてキリストの生誕日の祝いの日なのだと思っていた。ところが、きょう届いたメールマガジンを読んでいて、「12月25日はキリストの誕生を祝う日であって、誕生日ではありません」(月刊ニューメディア)と。新約聖書では、キリストの生まれた日を特定しておらず、「Christmas」はChristがキリスト、masはミサ(礼拝)のこと。世界のキリスト教国ではキリストの降誕を祝う日で、ミサで静かに迎えるのが本来だそうだ。

   これはクリスマスのプレゼントなのだろうか。BBCニュースWeb版(12月24日付)=写真・上=によると、アメリカのトランプ大統領は23日、元選対本部長のポール・マナフォート受刑者ら側近29人に恩赦や刑の減免を与えた。前日にはイラクで民間人十数人を殺害し有罪となった軍事請負業者にも恩赦を与え、国連などから批判されている。 トランプ氏はマナフォート受刑者(資金洗浄罪などで有罪)のほか、すでに禁錮刑の執行を免除した盟友ロジャー・ストーン元被告(連邦議会への偽証罪で有罪)、娘婿ジャレド・クシュナー氏の父親など26人に対して、恩赦を与えた。そのほか、3人について刑の執行を免除した。刑の執行免除は有罪判決の取り消しを意味しない。    

   中国批判で知られる「蘋果日報(アップル・デイリー)」創業者の黎智英(ジミー・ライ)氏は今月2日に詐欺罪で逮捕・起訴され、11日には外国勢力と結託して国家の安全に危害を加えたとして香港国家安全維持法(国安法)に違反した罪で起訴され、裁判が始まっていた。香港の高裁は23日、黎氏が申請していた保釈を認めた。保釈金は1千万香港㌦、日本円で1億3000万円で、保釈中は自宅からの外出のほか、メディアの取材を受けたりSNSで発信したりすることが禁じられる(12月23日付・NHKニュースWeb版)。高額な保釈金、クリスマスプレゼントにしては高くついた。

   安倍前総理の後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会の費用補填問題で、東京地検特捜部は24日、政治資金規正法違反(不記載)容疑などで告発された安倍氏を嫌疑不十分で不起訴処分とした=写真・下、25日付朝刊各紙=。一方、政治資金収支報告書に計約3022万円を記載しなかったとして、同法違反罪で後援会代表の公設第1秘書を略式起訴とし、一連の捜査を終結した(12月24日付・共同通信Web版)。安倍氏はきょう25日午後、衆院議院運営委員会の公開の場でいきさつを説明する。不起訴処分と国会での釈明の場、これは安倍氏にとって最高の「クリスマスプレゼント」ではないだろうか。

⇒25日(金)朝・金沢の天気    あめ

☆静かなる年末年始(1)「WHOの忖度コロナ禍」

☆静かなる年末年始(1)「WHOの忖度コロナ禍」

   きょう24日、大学当局から新型コロナウイルス対策として、「静かな年末年始」を要請する通達がメールで届いた。そのポイントは2つ。1)「飲食は、家族、いつもの仲間と」。飲食は家族、いつもの仲間と短時間で開催し、隣の席との間隔の確保や、会話時のマスク着用など、基本的な対策を徹底すること。2)「帰省は、慎重に検討を」。帰省については、慎重な検討を要請する。特に発熱などの症状がある場合は帰省を控えること。どうしても帰省が必要な際は「三密」回避を含め基本的な感染対策を徹底する。また、大人数での会食を控え、高齢者への感染につながらないよう注意すること。要は、忘新年会は避け、帰省もしない方がよい、と。

   確かに2020年の年末、そして2021年の年始はこれまでとはまったく異なった「静かなる」年越しになるだろう。そこで、このブログでは「静かなる年末年始」として題して、この一年を振り返り、そして来年を占ってみたい。

   このブログで「新型コロナウイルス」という言葉を初めて用いたのはことし1月20日付だった。「中国・武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎について、当初は感染が限定的という報道だったが、それが直近の報道だと人から人への感染に広がっているようだ。深刻さを物語るように、中国で肺炎患者が増えていることを受けて、WHOの事務局長が22日にスイスのジュネーブで緊急の会合を開くことになったと報じている。まるで、パンデミック(pandemic)、世界的な感染の広がりを示唆する動きではないのか。」と述べた。

   自慢する訳ではないが、パンデミックはそのときオリジナルな言葉として使った。その後、WHOのテドロス事務局長が「パンデミックと表現できるとの判断にいたった」とパデミック宣言を表明し世界に注意を呼びかけたのは3月11日だった=写真・BBCニュースWeb版=。当時、中国にとどまらずイタリアや韓国、イランなど世界の広範囲に拡大し、世界で感染者数が12万人、死者は4380人に上っていた。

   WHOは1月31日付の公式ホームページ「WHO declares the new coronavirus outbreak a Public Health Emergency of International Concern.」(WHOは新型コロナウイルスの発生を国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態として宣言する)と注意喚起はしていた。この時点でパンデミック宣言をしていば状況が違っていただろう。なにしろ、中国では1月24日から旧正月の春節の大型連休に入り、日本を含め世界中に中国人観光客が訪れ、コロナ禍が世界に拡散したのだ。

   このとき、テドロス事務局長のコメントも悪評を買った。新型の病気が過去にないほどの大流行につながっている。だが、中国の対応も過去にないほど素晴らしい。中国の尽力がなければ中国国外の死者はさらに増えていただろう。中国の対応は感染症対策の新しい基準をつくったともいえる」「この理由で緊急事態を宣言する。中国への不信感を示したわけではない」「私は先日中国に渡航し、習近平国家主席のリーダーシップを目の当たりにした。他の国も見習うべきだ。中国国外の感染者数が少ないことについて、中国に感謝しなければいけない」(1月31日付・日経新聞Web版)。WHOによる中国への忖度(guesswork)が世界に暴露されたこの一年だった。

⇒24日(木)夜・金沢の天気    くもり時々あめ

★著作権を手玉に取る

★著作権を手玉に取る

   著作権ビジネスを手玉に取った「おいしい」手口だとこの記事を読んだ人は思ったのではないだろうか。NHKニュースWeb版(12月22日付)によると、東京・渋谷区の音響会社に勤めていた男性が日本テレビの朝のニュース番組の音響効果を担当し、自身が創作した楽曲を平成27年(2015)から2年余りの間、番組で合計1900回余り放送したと虚偽申請をし、JASRAC(日本音楽著作権協会)から7400万円余りを不正に受け取っていた。男性は自らの楽曲の著作権管理をJASRACに委託契約していた。

   どうして男性がいとも簡単に大金を手にできたのか、JASRACとテレビ局の著作権契約の内容を調べてみる。JASRACは民放とNHKから年間で260億円余りの著作権料を徴収している。両社の契約は2015年当時、放送事業収入の1.5%を著作権料として支払うことで局側は楽曲が使い放題という包括契約をJASRACと結んでいた。JASRACにとっても、テレビ局はある意味で公的機関なので徴収がしやすいというメリットがある。

   男性が目をつけたのはまさにこの局側が楽曲が使い放題という包括契約にある。番組に使った楽曲について局側はJASRACに毎月報告する。JASRAC側は基本的に「放送収入の1.5%」の徴収枠組みが決まっているので報告内容に関して本当に使用されたのかどうかの精査は必要はない。ここに盲点がある。音響効果を担当した男性が自ら創作した楽曲を使用したとしてテレビ局に報告すれば、テレビ局はそのままJASRACに報告。JASRACはテレビ局の報告をもとに権利料を楽曲の制作側に支払うことになる。

   記事によると、JASRACが男性に支払った著作権使用料は1900回で7400万円なので、1回の使用料が3万9千円となる。2年余りで1900回の使用だから、朝のニュース番組が毎日放送されたとして仮に延べ800日と計算して、1回の放送につき、2.4回の使用料が発生したことになる。実際は1回しか使用していなくても、2回と記載することは可能だっただろうし、ゼロ回でも1回と記載することも可能だったろう。放送ごとに毎日チャリンチャリンと現金が降って来た。

   この一件が露見したのは日テレ側の内部告発ではないだろうか。同じ楽曲を流し続ければ、視聴者は聴き飽きる。以下は憶測だ。日テレの番組担当ディレクターが直接本人に、あるいは、男性が所属していた会社の担当者に「そろそろ番組に使う楽曲を変えてほしい」と指示したが、男性は変更しなかった。それを不審に感じた日テレ側が調査すると、その楽曲は男性自らが創ったものと分かった。そこで、報告書の使用回数を改めて調査すると合計で1900回と記載されていた。番組の映像はデータベースとして保存されているので、それをチェックすると、実際の使用回数は報告書記載の4分の1ほどと分かった。そこで、日テレがJASRACに虚偽の記載報告があったと通告したのではないだろうか。以上はあくまでも憶測だ。

   手玉に取られたJASRACは男性が所属した会社に対し、実際の放送分と虚偽の申告分を差し引いた5500万円の賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。男性は著作権者であり社員だったが、この場合社員としての不正にあたり、JASRACとしては男性が所属する会社に賠償を求めた。

⇒23日(水)夜・金沢の天気     はれ

☆ネットやSNSにルールの枠組みがじわりと

☆ネットやSNSにルールの枠組みがじわりと

   ネット広告の勢いはすさまじい。電通がまとめた「2019年 日本の広告費」によると、広告費は6兆9381億円で8年連続のプラス成長だった。中でも、インターネット広告費が初めて2兆円超え、テレビ広告費を上回りトップの座に躍り出た。テレビ広告費(1兆8612億円)は対前年比97.3%と減少した。ことしはコロナ禍で、ネット広告費の拡大に拍車がかかるでのではないだろうか。一方で、いわゆる「誇大」や「虚偽」を思わせるネット広告も散見する。これに国が実態調査に動き出すというニュースがあった。

   共同通信Web版(12月20日付)によると、 「アフィリエイト」と呼ばれるネットの成果報酬型広告をめぐり、消費者庁が広告主や広告作成者、仲介会社を対象に大規模な実態調査に乗り出すことが同庁関係者への取材で分かった。広告作成は副業目的の個人400万-500万人が担い、市場規模は右肩上がりで3000億円と活況を呈している。一方で虚偽、誇大広告といった不正も多く、ネット広告のルールづくりや規制強化に活用する狙いのようだ。

   ネット広告をめぐるトラブル相談は国民生活センターのまとめによると、2019年で8万9千件と過去最多になった。ネット広告の構図はこうだ。広告主(販売店)がアフィリエイトの仲介会社(ASP)に依頼する。ASPはさらにアフィリエイター(広告作成者)に依頼する。アフィリエイターが作成した広告サイトやブログを見て消費者が商品を申し込むと、APSは広告主から中間マージンを得て、その中からアフィリエイターに報酬を支払う。

   問題はこのネット広告でトラブルが発生した場合だ。景品表示法では広告主が処分の対象になる。すると、広告主は「アフィリエイターが勝手に書いた」と言い逃れするケースが出てくる。さらに、消費者庁がASP側に是正を促しても、APS側は「アフィリエイターのメールアドレスしか知らない」と放置するケースもあるという(同)。

   消費者庁は野放しの状態から法的なルールづくりへと今後具体化していくだろう。また、総務省は、SNS上のひぼうや中傷による深刻な被害を防ぐため、投稿した人に関する情報開示を迅速に進められる新たな裁判手続きの創設を決めた。裁判所は被害者から申し立てを受ければ投稿者の情報を開示するかどうかを判断し、SNSの運営会社や接続業者に命令を出すことになる(12月21日付・NHKニュースWeb版)。ネットやSNSをめぐるルールの枠組みがじわりと絡まって来た。

⇒21日(月)夜・金沢の天気    くもり