#トランプ関税

☆桜散らす春の嵐 トランプ関税は「終わりの始まり」なのか

☆桜散らす春の嵐 トランプ関税は「終わりの始まり」なのか

金沢で風雨が吹き荒れている。気象庁によると、寒冷渦がきょう15日にかけてに西日本から東日本に進み、この時期としては強い寒気が流れ込んでいる。近所の神社ではこの風雨で桜の花が舞い散り、境内は桜の花びらの絨毯のようになっていた=写真は金沢市の地黄八幡神社、午前11時ごろ撮影=。まさに桜散らす春の嵐だ。きょうが桜の見納めとなりそう。

話は変わる。どこか似たようなストーリーだ。韓国の尹錫悦大統領が発した「非常戒厳」の宣布(2024年12月3日)とアメリカのトランプ大統領が発した「相互関税」のことだ。似たようなストーリーのその1は「いきなり」と「急ブレーキ」だ。尹氏は政府の方針に反対し続ける最大野党「共に民主党」を国政をマヒさせる「反国家勢力」と指弾し、戒厳令を出して国会などに軍や警察を投入した。国会が2時間半後に戒厳令の解除を要求する決議案を可決し、その後に解除された。

トランプ大統領が仕掛けた相互関税という「貿易戦争」もいきなりで、世界的にショックを与えた。カナダとメキシコを除くほぼ全ての国・地域に適用する一律10%の基本税率と、アメリカの貿易赤字額が多い60ヵ国・地域に適応する上乗せ税率で構成される関税で、日本時間の9日午後1時すぎに発動した。ところが、発動からわずか13時間で、トランプ氏は上乗せ税率を中国を除いて90日間停止すると発表した。当面はベースラインの10%を適用する。それにしても、発動した直後に急ブレーキだ。この背景には、アメリカ国債の投げ売りなど、金融市場が不安定になったことが理由とみられる。この関税をめぐって、アメリカだけでなく各国の株式市場が乱高下するなど世界経済は大混乱に陥った。

似たようなストーリーのその2は「終わりの始まり」だ。尹錫悦氏の非常戒厳の宣布をめぐり、憲法裁判所は今月4日、弾劾訴追された尹氏の罷免を8人の裁判官の全員一致で決定した。憲法裁は、戒厳令は違憲で国会に対する軍の投入などについても違法かつ重大だと認めた。尹氏は即時失職し、60日以内に大統領選が行われる。大統領が弾劾・罷免されたのは2017年3月の朴槿恵氏以来2人目となった。

トランプ氏の「終わりの始まり」は国民の信頼を失ったことだ。今月2日に相互関税をかけると公表したとき、トランプ氏は「2025年4月2日はアメリカの『Liberation day(解放の日)』として永遠に記憶される」と演説し、関税実施の大統領令に署名した。それが90日間の停止となった。アメリカの政治的評価とすれば、これは「ブリンクマンシップ(brinkmanship)の失策」と映るだろう。ブリンクマンシップは「瀬戸際外交」と訳され、たとえば核兵器の使用も辞さないという印象で圧力をかけて外交交渉などで優位に立とうとする政治手法を指す。今回の貿易戦争ではブリンクマンシップで強気に出たトランプ氏が「いったん中止します」と振り上げた拳(こぶし)を下したのだから、アメリカ政治としては失策と映る。

関税措置をめぐり、今月17日から日本とアメリカの交渉がワシントンで始まる。トランプ氏が仕掛けた貿易戦争、これからどう展開していくのか。春の嵐は当分やみそうもない。

⇒15日(火)午後・金沢の天気    風雨

★踏めず歩めず、桜舞い散る花道 「世の中は三日見ぬ間の桜かな」

★踏めず歩めず、桜舞い散る花道 「世の中は三日見ぬ間の桜かな」

満開の桜が散り始めている。金沢市内の桜の並木道を行くと、花びらがひらひらと舞っていた。淡いピンクの花びらが積もり、桜の花道になっている=写真=。並木路を前に進もうとしたが、二の足を踏んだ。これまで楽しませてくれた花を靴で踏むことになんとなく躊躇したのと、ひらひらとはかなく散る姿が我が人生のようにも思えて、踏んで歩くことにためらいを感じた次第。踏めず歩めず、結局、回り道をした。

「世の中は三日見ぬ間の桜かな」は江戸時代の俳人・大島蓼太の句だが、桜は三日見ないと変わるように世の中も移り変わりが早いことのたとえとしてよく引用される。この1週間で世の中が大きく動いたことと言えば、「トランプ関税」ではないだろうか。

アメリカのトランプ政権による相互関税は、カナダとメキシコを除くほぼ全ての国・地域に適用する一律10%の基本税率と、そのうちアメリカの貿易赤字が大きい約60ヵ国・地域に適用する上乗せ税率で構成される。相互関税は日本時間の9日午後1時すぎに発動した。ところが、発動からわずか13時間で、トランプ大統領は相互関税上乗せ分を中国を除いて90日間停止すると発表した。ただし、一律10%の基本税率は実施される。発動した直後に急ブレーキ、この背景にいったい何が。

取り沙汰されているのが、株式や通貨に加えて安全資産とされたアメリカ国債まで売られる「トリプル安」が発生したこと(メディア各社の報道)。とくに米国債の売却が加速することはトランプ政権にとって予想外のことだった。そこで金融市場の動きをいったん落ち着かせる意味で、中国を除いて90日間停止の措置に出た。その後、さらに米中の報復関税が激化する。トランプ政権は10日、中国に対する相互関税の税率を84%から125%に引き上げた。中国からの合成麻薬の流入を理由に課している20%と合わせて、追加関税は累計145%になる。これに対し中国は11日、アメリカに対する追加関税を125%に引き上げるという報復措置を発表、きょう12日に発動させている。

相互関税について各国は今後、トランプ政権と個別交渉に入る。日本は今月17日、赤沢経済再生担当大臣がアメリカ側との直接交渉に出向く。トランプ大統領はアメリカにおける大量の輸入車について、日本を「最大の輸入元の国の一つ」と名指し、「日本にはアメリカ車がない」「日本はアメリカ車を受け入れない」とやり玉に挙げている(3月12日・ホワイトハウスで記者団に)。踏めず歩めずの厳しい交渉になるのだろうか。

⇒12日(土)午後・金沢の天気    はれ

★「天空の城」のように夜桜に浮かぶ金沢城 世の騒々しさとは別世界の風景

★「天空の城」のように夜桜に浮かぶ金沢城 世の騒々しさとは別世界の風景

きのうは夜桜を見学に金沢城に出かけた。前回(きのう)ブログでは午前8時ごろに撮影した金沢城石川門の櫓と桜だったが、同じ場所の夜の風景はまったく異なる=写真=。撮影は午後7時ごろだったが、ライトアップされた金沢城が桜の満開の上に浮かんで見え、まるでアニメ映画『天空の城ラピュタ』のようなイメージだ。そして、夜の見物客が昼間より圧倒的に多い。金沢城石川門と隣接する兼六園の観桜期における無料開園は夜間の見学(午後9時30分まで)も可能となることから、夜の兼六園を見るために訪れる市民や観光客が多いのだろう。ちなみに、無料開園は当初4月2日から8日までだったが、ソメイヨシノの満開が遅れたことから今月13日まで延長となっている。

話は変わる。おさらいになるが、アメリカのトランプ政権による相互関税は、カナダとメキシコを除くほぼ全ての国・地域に適用する一律10%の基本税率と、そのうちアメリカの貿易赤字が大きい約60ヵ国・地域に適用する上乗せ税率で構成される。相互関税は日本時間の9日午後1時すぎに発動した。ところが、発動からわずか13時間で、トランプ大統領は相互関税の措置を90日間停止すると発表した(メディア各社の報道)。

停止措置の対象となったのは、相互関税に対する報復措置をとらずに問題の解決に向けて協議を要請してきた日本などの国・地域に対して。ただし、一律10%の基本税率は実施される。発動したばかりの相互関税を90日間停止する判断の背景にいったい何が起きているのか。

「Bloomberg」web版日本語(10日付)などによると、この背景にあるのは、株式や通貨に加えて安全資産とされている国債まで売られる「トリプル安」がアメリカで起きているようだ。米国債はもともと安全資産とされ、経済危機時には世界マネーが入り込んで価格は上がる(国債利回りは下落する)。ところがこのところ売却のスピードが加速していてる。中国が関税への報復措置として米国債を売却しているとの可能性に言及する専門家の分析を紹介している。トランプ政権は、中国には追加関税を125%に引き上げると発表していて、両国のあいだの応酬はさらに激しさを増していくのだろう。

「トランプ関税」騒動は止まない。貿易戦争だけでなく、先のトリプル安のように株式や通貨、国債までもが攻撃材料となり、金融戦争へと展開していくのか。前回ブログでも述べた、1930年6月にアメリカが制定した高関税を導入する「スムート・ホーリー法」が世界貿易を停滞させ、世界恐慌をさらに拡大するという逆効果を招いた。その二の舞となるのか。

⇒10日(木)夜・金沢の天気     あめ

☆花束を投げる、柔道家を投げる 絶妙に風刺を込めたバンクシー作品

☆花束を投げる、柔道家を投げる 絶妙に風刺を込めたバンクシー作品

アメリカのトランプ大統領が「解放の日(Liberation day)」と称して今月2日に世界各国からの輸入品に対して「相互関税」をかけると公表して以来、金融市場が荒れている。週明けのきょう7日も東証日経平均で2900円超下げで一時3万1000円を割り込んだ。メディア各社の報道によると、アメリカの相互関税に対して、中国もアメリカからのすべての輸入品に34%の追加関税をかけると発表していて、関税の応酬が世界経済の急激な減速につながるのではないかとの警戒感が市場関係者に広がっているようだ。

「弱気相場」に陥るのは2020年3月以来ではないだろうか。当時、新型コロナウイルスのパンデミックによる景気後退の懸念が広がった。ニューヨークの株価指数「S&P500」の下落率が7%を超えると自動的に売買を停止する「サーキットブレーカー(Circuit Breaker)」が何度か作動し、3月23日にはダウが1万8591㌦にまで下がり、東京株式も3月19日に1万6552円にまで下落した。今回の「トランプ関税」がもたらす不安定な値動きはいつまで続くのか。

先日(5日)金沢のデパートで開催されている「バンクシー新作版画展」の鑑賞に行ってきた。バンクシーは公共空間にスプレーと型紙で作品を描き去るストリートアーティストで知られ、正体が謎に包まれていることから、「覆面のパロディ画家」とも称されている。展示会場に入ると、主催者(「サロン・ド・ヴェール株式会社」)のスタッフから声をかけられ、何点かの作品の解説をいただいた。

チラシに掲載されている作品「FLOWER THROWER」=写真・上=は、野球帽を反対に被り、バンダナで顔を隠した男が花束を投げる様子が描かれている。2003年にパレスチナとイスラエルを分断する分離壁が建設された時に、反対する暴徒が火炎瓶を投げる描写がモチーフとされる。それをバンクシーは花束を投げるという描写に仕立てた。そのことによって、火炎瓶(暴力)よりも、花束(愛)を投げて戦えというポジティブなメッセージを作品に込めた、との解説だった。

もう一つ、これは面白いと思ったは作品「JUDO」=写真・下、チラシより=。柔道少年が大人の柔道家を投げるシーンが描かれている。2022年11月にウクライナの首都キーウ近郊にある街で発見された作品という。同年2月に始まったウクライナ侵攻でロシアは世界から批判にさらされることになる。プーチン大統領は柔道家としても知られる。少年がウクライナで大人の柔道家がロシアと見立てると、この絵は「ロシアに負けるな」というウクライナに対する応援メッセージが読み取れる。

バンクシーは大量生産や消費社会、そして時事性のある事柄を風刺してきたアーティストだ。そのバンクシー作品を堪能させてもらった。今月13日まで金沢エムザで。

⇒7日(月)午後・金沢の天気    はれ