#トランプ大統領

★ツイッターに始まり、ツイッターに終わる

★ツイッターに始まり、ツイッターに終わる

         けさのNHKニュースで、アメリカの議会下院はトランプ大統領の罷免を求める弾劾訴追の決議案を賛成多数で可決したと伝えている。今月6日に暴徒化したトランプ氏支持者らが連邦議会議事堂に乱入した事件を巡って、トランプ氏の言動が騒乱を煽ったとして「反乱の扇動」にあたるとして、民主党が弾劾訴追の決議案を議会下院に提出していた。訴追後、議会上院で有罪か無罪かを判断する弾劾裁判が開かれるが、トランプ氏の大統領任期は今月20日までなので、裁判が開かれる場合は退任後になる可能性もある。このニュースで浮かんだ言葉が「ツイッターに始まり、ツイッターで終わる」だった。

   ツイッター社は今月8日、トランプ氏の個人アカウントを永久停止にしたと発表した=写真・上=。同社が問題にしたのはトランプ氏が同日投稿した2つの言葉だった。「“The 75,000,000 great American Patriots who voted for me, AMERICA FIRST, and MAKE AMERICA GREAT AGAIN・・・」「“To all of those who have asked, I will not be going to the Inauguration on January 20th.”」

   同社の発表文によると、再度の連邦議会議事堂への暴徒の乱入が予想され、緊張が続いていることから、「The 75,000,000 great American Patriots(7500万人の偉大なアメリカの愛国者)」という呼びかけは議事堂の占拠への支持を表明しているとも解釈され、また、20日のバイデン大統領の就任式へのトランプ氏の欠席は就任式での暴力行為を企てている者を後押ししかねない、と同社は解釈した。これらのツイートが 「Glorification of Violence」 ポリシーに違反していると判断し、永久停止を決めたとしている。

     ツイッターをはじめSNSを政治の舞台で活用したのは、トランプ氏だった。2017年1月の大統領就任前からゼネラル・モーターズ社やロッキード社、ボーイング社などに対し、ツイッターで雇用創出のために自国で製造を行えと攻撃的な「つぶやき」を連発した。ホワイトハウスでの記者会見ではなく、140文字で企業に一方的な要望を伝えるという前代未聞のやり方だった。その後、トランプ氏を見習って世界の政治家たちが使い始めた。

   印象に残るのは、2019年6月29日、大阪でのG20に参加したトランプ氏がツイッター=写真・下=だ。韓国訪問の際に南北軍事境界線の非武装地帯(DMZ)を訪れることを明らかにし、「While there, if Chairman Kim of North Korea sees this, I would meet him at the Border/DMZ just to shake his hand and say Hello(?)!」(意訳:北朝鮮のキム主席がこれを見たら、握手してあいさつするためだけでも南北軍事境界線DMZで彼と会うかも?!」とツートした。すると、翌日30日午後3時45分、DMZでの電撃的な第3回米朝首脳会談が実現した。ツイッターを外交にも利用するトランプ氏のスゴ技に世界は驚いた。

   アカウントが永久停止になった週明け11日のアメリカ株式市場でツイッター社の株が一時12%急落し、時価総額が50億㌦近くも吹き飛んだ。株価はその後は6%安で推移した。ツイッター上でトランプ氏のフォロワーは8800万人に上っていた。同社をはじめ今後SNSに対する規制が強まるのではないかという懸念も広がった(1月12日付・ロイター通信Web版日本語)。

   おそらく、トランプ氏が破天荒にツイッターを使わなければその存在価値も高まらなかっただろう。そして、存在価値が高まったがゆえに使用規制のポリシーをつくらざるを得なくなった。そのポリシーにトランプ氏は縛られてしまった。

⇒14日(木)午前・金沢の天気    あめ

☆トランプ大統領、冥土の道連れ

☆トランプ大統領、冥土の道連れ

   CNNニュースWeb版日本語(10日付)をチェックしていると、驚きのニュースがあった。アメリカ民主党のペロシ下院議長は、トランプ大統領による核攻撃命令などが起きる事態を懸念し、軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長と協議したことを明らかにした。ベロシ議長は、行動などが不安定な大統領が軍事的な敵対行動に踏み切ったり、(核ミサイルの)発射コードへのアクセスや核攻撃を命令したりするのを阻む予防措置をミリー氏と話し合ったと語った。

   上記のCNNニュースに自身が注目したのは、別のニュースとの連鎖反応だった。BloombergニュースWeb版日本語(9日付)を読んでいて、北朝鮮の金正恩委員長が5-7日に開催した党大会への報告で、アメリカを「最大の主敵」「戦争モンスター」と呼び、より高度な核技術の追求などを通じて、アメリカの脅威に対する防衛力を絶えず強化する必要があると述べた。核兵器の小型・軽量化と大型核弾頭の製造推進、1万5000㌔射程内の戦略的目標に命中させ破壊する能力の向上を目指す方針も表明。固体燃料を用いる大陸間弾道ミサイル(ICBM)と原子力潜水艦の開発、衛星による情報収集能力強化にも言及した。

   3年前のあの時に時代は戻ったと連想した。2017年7月28日、北朝鮮が打ち上げたICBMはアメリカ西海岸のロサンゼルスなどが射程に入るものだった。北は同年9月3日に6回目の核実験を実施し、同15日には弾道ミサイルを日本上空に飛ばした。それをトランプ大統領が国連総会の演説(同19日)で「ロケットマンが自殺行為の任務を進めている」と演説した。それ以前には、アメリカ太平洋軍のハリス司令官は同じ年の4月26日、アメリカ下院軍事委員会公聴会で、北朝鮮に関して「アメリカは先制攻撃の様々な選択肢がある」と述べ、原子力空母カールビンソン率いる空母打撃群が北朝鮮を攻撃できる射程内に入ったことも明らかにした(2017年4月27日付・朝日新聞ニュースWEB版)。

   その後、トランプ氏と金氏による米朝首脳会談は2018年6月12日(シンガポール)、2019年2月28日(ハノイ)、同年6月30日(板門店)で3回行われたが、北の非核化の交渉は進まなかった。トランプ氏にとっては外交の失敗事例でもある。そして、本人は「この交渉でロケットマンがさらにつけあがった」と悔いているのではないだろうか。

   トランプ氏の大統領任期は1月20日正午までとされる。冥土の道連れに、アメリカを「最大の主敵」「戦争モンスター」と呼んだ金氏に核攻撃を仕掛けるのではないかとペロス氏は懸念しているのではないだろうか。以下憶測だ。仮に、トランプ氏が軍に核攻撃を命令したとして、それが軍によって阻まれた場合、金氏へのピンポイント攻撃、つまり「斬首作戦」を命令する可能性がある。斬首作戦が実行されるとして、作戦に使用されるのはステルスヘリコプター「ブラックホーク」だろう。この機を使うのは新月で夜が真っ暗闇となる日。直近の新月の日は今月13日だ。

   この機を使った斬首作戦で知られるのがオバマ政権下で実行された、オサマ・ビン・ラディンに対して行った2011年5月2日のバキスタンでの攻撃だ。この日は新月の前夜だった。以上は連想ゲームのような話だ。

⇒11日(月)朝・金沢の天気   

★コロナ禍後に吹き荒れる増税の嵐

★コロナ禍後に吹き荒れる増税の嵐

   最近の世界のニュースを見ていると、世界のそれぞれの価値観がむき出しになっている。アメリカの連邦議会議事堂にトランプ大統領の支持者が乱入する事態が発生し、議会では民主・共和両党からトランプ氏の大統領の罷免を求める声が上がっている。閣僚や政権高官も相次いで辞任を表明しており、任期終了まで残り13日となる中、トランプ氏の孤立化が進んでいる (1月7日付・ロイター通信Web版日本語)。 

   アメリカではかつて、テレビ局に選挙などの政治的な扱いに報道の公平性を課すフェアネスドクトリン(The Fairness Doctrine)があった。しかし、TVメディアの多局化とともに、言論の多様性こそ確保されなければならず、フェアネス性を課すことのほうがむしろ言論の自由に反するとの司法判決(連邦最高裁)により、1987年にファネスドクトリンは撤廃された。これ以降、大統領選では対立候補を誹謗、中傷するネガティブ・キャンペーンがTVメディアも巻き込んで行われるようになる。対立候補にダメージを与える上では有効だが、有権者や国民に対立感情を煽ることにもなった。トランプ支持者による連邦議会議事堂への乱入はそのシンボリックな事件ではないだろうか。

   香港の警察は、国家政権の転覆を狙ったとして、香港国家安全維持法(国安法)違反の疑いで、議会にあたる立法会の民主派の前議員や民主活動を次々と逮捕している。6日と7日の両日で55人に上る(1月8日付・NHKニュースWeb版)。民主派は暴動を起こしたり煽ったりわけではない。選挙を通じて議会の主導権を勝ち取ることは香港の憲法にあたる基本法に守られている権利でもある。異なる意見を持つ者が国安法に触れるという中国の価値観が香港に定着するのは時間の問題かもしれない。

   アメリカや香港の民主主義は岩盤だと世界は認めてきた。それが崩れ始めている。それも土砂崩れの様相を呈している。では、日本は安泰なのか。

   IMFが昨年10月に公表した報告書で、日本政府の債務残高は10月時点のGDP比で266%とアメリカの2倍、日本に次ぐイタリアでは161%だ。日本のダントツの数値を世界はどう解釈するか。債務残高が増えて、このまま少子化が進めば一体誰が返済するのか、日本国債の大暴落を世界は予感しているのではないだろうか。

   コロナ禍で多額の予算を費やした日本政府は来年度から手荒な税収対策を強行してくるだろう。たとえば、40兆円以上ともいわれる「タンス預金」を吐き出させることによる課税もある。2024年度に1万円、5千円、千円の紙幣(日本銀行券)の全面的な刷新が行われる。多額の旧札が銀行などに持ち込まれることになれば、国税がチェックする。翌年2025年度からは旧札と新札の交換で手数料を取る。また、新札発行を機にデジタル法定通貨へと舵を切ることなるだろう。政府が銀行での預金分しかデジタル通貨と交換しないと発表した時点で、タンス預金は一気に消費へと回る。これをもくろんで消費税の増税を行うのではないか。

   さらに、400兆円以上ともいわれる企業の「内部留保」への課税だ。アメリカや台湾、韓国ではすでに実施されている。日本でも資本金1億円以上の同族会社の内部留保増加額には10-20%の課税がされている。これを、すべての企業を対象に実施する。ニュースで伝わる銀行の合併による再編とデジタル庁新設の本来の目的はこの布石だと読んでいる。財源難に陥る政府は、巧妙かつ手荒く、そしてやみくもに増税を行う。大混乱を招きながらも国家財政の維持を図るだろう。歴史は繰り返される。

⇒8日(金)夜・金沢の天気    くもり

★静かなる年末年始(2)「高くつくXmasプレゼント」

★静かなる年末年始(2)「高くつくXmasプレゼント」

          12月25日は「クリスマス」というイメ-ジが日本だけでなく世界で定着していて、いまや宗派を超えてキリストの生誕日の祝いの日なのだと思っていた。ところが、きょう届いたメールマガジンを読んでいて、「12月25日はキリストの誕生を祝う日であって、誕生日ではありません」(月刊ニューメディア)と。新約聖書では、キリストの生まれた日を特定しておらず、「Christmas」はChristがキリスト、masはミサ(礼拝)のこと。世界のキリスト教国ではキリストの降誕を祝う日で、ミサで静かに迎えるのが本来だそうだ。

   これはクリスマスのプレゼントなのだろうか。BBCニュースWeb版(12月24日付)=写真・上=によると、アメリカのトランプ大統領は23日、元選対本部長のポール・マナフォート受刑者ら側近29人に恩赦や刑の減免を与えた。前日にはイラクで民間人十数人を殺害し有罪となった軍事請負業者にも恩赦を与え、国連などから批判されている。 トランプ氏はマナフォート受刑者(資金洗浄罪などで有罪)のほか、すでに禁錮刑の執行を免除した盟友ロジャー・ストーン元被告(連邦議会への偽証罪で有罪)、娘婿ジャレド・クシュナー氏の父親など26人に対して、恩赦を与えた。そのほか、3人について刑の執行を免除した。刑の執行免除は有罪判決の取り消しを意味しない。    

   中国批判で知られる「蘋果日報(アップル・デイリー)」創業者の黎智英(ジミー・ライ)氏は今月2日に詐欺罪で逮捕・起訴され、11日には外国勢力と結託して国家の安全に危害を加えたとして香港国家安全維持法(国安法)に違反した罪で起訴され、裁判が始まっていた。香港の高裁は23日、黎氏が申請していた保釈を認めた。保釈金は1千万香港㌦、日本円で1億3000万円で、保釈中は自宅からの外出のほか、メディアの取材を受けたりSNSで発信したりすることが禁じられる(12月23日付・NHKニュースWeb版)。高額な保釈金、クリスマスプレゼントにしては高くついた。

   安倍前総理の後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会の費用補填問題で、東京地検特捜部は24日、政治資金規正法違反(不記載)容疑などで告発された安倍氏を嫌疑不十分で不起訴処分とした=写真・下、25日付朝刊各紙=。一方、政治資金収支報告書に計約3022万円を記載しなかったとして、同法違反罪で後援会代表の公設第1秘書を略式起訴とし、一連の捜査を終結した(12月24日付・共同通信Web版)。安倍氏はきょう25日午後、衆院議院運営委員会の公開の場でいきさつを説明する。不起訴処分と国会での釈明の場、これは安倍氏にとって最高の「クリスマスプレゼント」ではないだろうか。

⇒25日(金)朝・金沢の天気    あめ

★トランプ大統領、コロナショック

★トランプ大統領、コロナショック

   このニュースで驚いているのは中国かもしれない。ニューヨークタイムズは速報で伝えている。「Trump’s Virus Symptoms Appear Mild So Far」。新型コロナウイルスに感染したトランプ大統領の症状は今のところ軽度だ、と。トランプ氏は陽性の検査結果を受けて風邪のような症状を呈している。マイク・ペンス副大統領と他の当局者は、陰性の結果を出ている。いよいよ、コロナ禍がホワイトハウスにまで攻めてきた。

   気になるのは感染ルートだ。ニューヨークタイムズは記事の中で「The Secret Service sustained a coronavirus outbreak at its training facility in Maryland in August, weeks before President Trump was infected, evidence of growing infections at the agency responsible for protecting the president.」と述べている。シークレットサービスは、トランプ氏が感染する数週間前の8月にメリーランド州の訓練施設でコロナウイルスのアウトブレイクを起こしており、大統領のガードに責任を持つ機関で感染が拡大していた。

   トランプ氏は自身のツイッター(2日付)で、「Tonight,@FLOTUS and I tested positive for COVID-19. We will begin our quarantine and recovery process immediately. We will get through this TOGETHER!」(今夜、@FLOTUS(大統領夫人)と私は、新型コロナウイルス感染症の検査で陽性と診断された。ただちに隔離と回復のプロセスに入る。共に乗り越えていく!)

   先月には「われわれはこの疫病を世界に振りまいた国、中国の責任を追及しなければならない。中国政府、そして事実上、中国に操られているWHOは、ヒトからヒトへの感染を示す証拠はないという偽りの宣言をした」(9月22日)と息巻いていた。今回、自身が感染したことで中国に対する矛先がさらに先鋭化していくのではないか。

   そして、あと1ヵ月後に迫ったアメリカ大統領選。対立候補のバイデン氏とのテレビ討論などはどう展開していくのか、目が離せない。

⇒2日(金)夜・金沢の天気     はれ

☆中秋の名月なれど、世に暗雲漂う

☆中秋の名月なれど、世に暗雲漂う

   今夜は「中秋の名月」を雲の切れ間から見ることができた=撮影:午後6時35分=。名月をめでることができる幸福感はこの上ない。というのも、北陸は天候が変りやすく名月を拝めないことがままあるからだ。芭蕉の句がある。「名月や北国日和定なき」(『奥の細道』)。今夜は中秋の名月を期待していたけれど、あいにく雨で拝むことができなかった。本当に北国の天気は変わりやすい。福井・敦賀で詠んだ句とされる。

   中秋の名月は時代劇のドラマでよく使われるカットだ。大事件、裏切り、画策、謀反、旗揚げなど大きな出来事の前触れのシーンなどで、犬の鳴き声、ススキの穂とともに名月が浮かんで出てくる。今の時代もそう変わりない。

   東京証券取引所できょうシステムトラブルが起こり、終日すべての株式の取引が停止した。午前中にこのニュースを知って、ハッカーの仕業かと疑ったが、そうではないらしい。取引所ではシステムトラブルに対応するためにバックアップシステムを備えていたようだが、なぜバックアップに切り替えることができなかったのか、解明してほしい。あす(2日)は午前9時から通常通り売買を行う見込みのようだが、原因が分からない、バックアップシステムが機能しない証券取引所に誰が信頼を置くだろうか。東京は国際金融都市を目指しているが、シンガポールに取引の拠点を移す投資家が続出するのではないだろうか。日本の沽券(こけん)にかかわる問題だろう。

           日銀金沢支店がきょう発表した短観(公式ホームページ)によると、北陸の経済見通しがよくない。北陸の334社の回答によると、景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を差し引いた指数は、「全産業」の数値でマイナス37ポイントだった。マイナスは4期連続。前回6月調査のマイナス39ポイントよりいくぶん改善しているものの、企業の景気判断はきびしい状態が続いている。

   アメリカ大統領選挙に向けたトランプ大統領とバイデン氏のテレビ討論会(9月29日)を視聴したが、トランプ氏がバイデン氏や司会者の発言を何度も遮って持論を主張していた。そのたびに、司会者が「ルールを守ってください」と発言を制止するシーンがあった。一方のバイデン氏も相手を「うそつき」や「最悪の大統領」と述べて、討論会どころか非難や中傷の合戦だった。子どもたちには決して見せたくない、荒れた討論会だった。これが民主主義の総本山とされるアメリカの現実なのだろうか。情けない思いがしてリモコンをオフにした。

   香港ではきょう、中国の建国記念日にあたる国慶節に合わせて、民主派の団体が毎年行っているデモ行進を計画したが、警察は新型コロナウイルスの感染防止を理由に認めなかった。しかし、SNSなどで中国や香港の政府に対する抗議活動が各地で呼びかけられ、このうち香港島の中心部では多くの人が集まり「香港の独立を」「香港の自由を守ろう」などと声を上げた(10月1日付・NHKニュースWeb版)。戦いをあきらめない人々も今夜の中秋の名月を眺めているだろうか。

⇒1日(木)夜・金沢の天気    はれ

★「家を愛する人のように、核兵器は手放さない」

★「家を愛する人のように、核兵器は手放さない」

   きょう16日午後の臨時国会で菅義偉氏が総理大臣に指名され、その後に内閣が発足する。日本のメディアはいつものように新しい内閣の顔ぶれをめぐって連日しのぎを削っていたが、アメリカのメディアは、「ウォーターゲート事件」を暴いたことで知られるジャーナリストのボブ・ウッドワード氏の新刊『RAGE』(今月15日発売)をめぐってしのぎを削っていた。トランプ大統領に対し18回(昨年12月5日-今年7月21日)のインタビューを重ね、北朝鮮との非核化交渉をはじめ、新型コロナウイルスの感染拡大の問題についての内幕を聞き出している。11月3日の大統領選を控えているだけに、メディア各社は発刊前にこの暴露本に注目したようだ。

    CNNはウッドワード氏から取材の音声テープの一部を入手し、今月10日付のCNNニュースWeb版日本語で報じている。ことし2月上旬のインタビューでは、トランプ氏は新型コロナウイルスは「非常に驚きだ」と語り、インフルエンザの5倍以上の致死性がある可能性を指摘していた。ところが、公の場でトランプ氏は当時、新型コロナウイルスは「いずれ消える」「全てうまくいく」と主張していた。この矛盾点について、ウッドワード氏が、トランプ氏が非常事態宣言を出した数日後の3月19日のインタビューで尋ねると、トランプ氏は「常に控えめに扱いたいと思っていた」「今でも控えめに扱いたいと思う。パニックを引き起こしたくないからだ」と答えた。

   9月10日のホワイトハウスでの記者会見で、ウッドワード氏へのインタビューについて、記者からもこの矛盾点を突かれ、トランプ氏は以下にように答えている。「 I want to show a level of confidence and I want a show strength as a leader」(ホワイトハウス公式ホームページ)。コロナ禍と向き合うために、国のリーダーとして災禍を克服する自信を見せたい、リーダーとしての実力を見せたいという思い当然だ。被害の大きさを隠そうとしたのは、「This is China’s fault. (中国の過ちだ)」と述べた。

   ウッドワード氏の古巣でもあるワシントン・ポスト紙は、トランプ氏がウッドワード氏に語った北朝鮮の金正恩党委員長についての人物評を紹介している=写真=。その中で面白い下りがある。「Trump told Woodward that he evaluates Kim and his nuclear arsenal like a real estate target: “It’s really like, you know, somebody that’s in love with a house and they just can’t sell it.”」(9月9日付・ワシントン・ポストWeb版)。意訳すると、金氏と核兵器の関係は家主と不動産の関係と似ていると評した。それは、家主が自分の家を気に入っていると売却したくてもできないのと同じだ、と説明した。

   トランプ氏と金氏は「完全な非核化」をめぐって、3度の首脳会談(2018年6月12日、2019年2月28日、同5月30日)を持ったが、トランプ氏は非核化を完全に反古された状態だ。トランプ氏はその経緯を分かりやすく説明しようと、ウッドワード氏に不動産取引での例えを述べたのだろう。核兵器に愛着がある金氏に核の放棄を説得するのは容易でない、と。いかにも不動産事業家でもあるトランプ氏らしい。 

⇒16日(水)朝・金沢の天気     くもり

★ブログで描いた「安倍総理」の14年~下

★ブログで描いた「安倍総理」の14年~下

   安倍総理の14年を振り返ってみると、日本とアメリカのある意味で新しい関係をつくったことは安倍氏のレガシーだろう。オバマ大統領が広島市の原爆死没者慰霊碑を訪れ献花し、安倍総理がハワイの真珠湾で慰霊したことはそのシンボリックな出来事だった。以下、ブログで描いた「安倍総理」の14年の続き。

 広島の平和記念公園とハワイの真珠湾で新たな日米関係築く

【2016年5月26日付「★ギリギリの共同会見」】 伊勢志摩サミット(G7首脳会議)を前に、アメリカのオバマ大統領と安倍総理による首脳会談が始まったのが昨夜9時40分。そして両氏が共同記者会見に臨んだのは10時43分だった。会見が終了したのは11時32分だった。日をまたぐ直前まで記者会見を実施したのは、沖縄のアメリカ軍属の男による女性の遺体遺棄事件について、首脳として何とかサミットが始まる前にけじめをつけておきたかったのだろう。ある意味でギリギリ間に合ったと、政府関係者は胸をなでおろしているかもしれない。以下、共同記者会見の様子を=写真・「NHKニュース」=をテレビで見ていてのメモだ。

  オバマ大統領は、広島訪問は第二次大戦で亡くなったすべての人を追悼し、核兵器のない世界という共通のビジョンを再確認し、アメリカと日本の同盟を強化する機会となるだろうと、述べた。また、安倍総理は、オバマ氏による広島訪問の決断を心から歓迎していると述べた。核兵器使用国(アメリカ)のリーダーが戦争被爆国で犠牲となった市民に哀悼の誠をささげるのは、核兵器のない世界へ大きな力となると述べた。記者の質問で、シカゴ・トリビューンの記者からハワイのパールハーバー訪問の可能性を問われ、安倍氏は「現在私がハワイを訪問する計画はない」と言い切った。

【2016年5月28日付「★大統領か役者か」】 17時37分、オバマ氏が広島市の平和記念公園の原爆死没者慰霊碑を訪れ、献花に臨んだ。安倍総理と並んで献花するのかと思っていたが、そうではなく、まずオバマ氏が献花し、その後に安倍氏が続いた。オマバ氏は頭を献花の後に頭を下げずに黙祷を、安倍氏は献花の後に頭を下げて黙祷をささげた。頭を下げての黙祷は日本では当たり前なのだが、アメリカではこれが原爆死没者に対する「謝罪」と映るのだろう。もし、安倍氏とオバマ氏が2人同時に献花し黙祷をささげたら、片や頭を下げる姿、片や下げない姿がくっきりと対比される。すると、映像的な印象度として、オバマ氏の姿は日本では良くないものになる。献花にあたっては、日本とアメリカで随分と打ち合わせ、計算されし尽くされたのだと中継映像を視聴しながら感心した

【2016年12月6日付「★パールハーバーとソウル」】 昨夜(5日)午後6時50分ごろだったと思う、ニュース速報に感動した。安倍総理が今月26、27日にハワイのパールハーバー(真珠湾)をオバマ大統領と訪れ慰霊するというニュースだった。このニュースに接した多くの日本人は、5月に被爆地・広島を訪れたオバマ氏への返礼の訪問と感じたのではないだろうか。

  日本の現職総理がパールハーバーを訪れるのは初めてで、オバマ氏とともに犠牲者を慰霊し、これが最後となる首脳会談も行うという。総理は「二度と戦争の惨禍を繰り返してはならないという未来に向けた決意を示したい」と首相官邸で記者団に語っていた。謝罪ではなく、あくまでも未来志向なのだ。

【2019年5月26日付「☆シンゾーとドナルドのレアアース談義」】 この写真を見て感じたことは、お笑いコンビのようだ、と。写真は総理官邸のツイッター(26日)で公開している。安倍総理と(右)とトランプ大統領(左)が千葉県のゴフル場で自撮りした写真だ。とくに、安倍氏の顔がなんとなく、あの芸能人っぽく見える。アメリカのCNNニュース(日本版)は「外務省によれば、昼食は米国産の牛肉のダブルチーズバーガーだった。トランプ大統領は相撲観戦も行った。優勝した力士には、トロフィーの上部に翼を広げたワシをあしらった『トランプ杯』も贈呈した」と。米国産の牛肉のダブルチーズバーガーとあえて取材して伝えているところがアメリカのメディアらしい。

  1ヵ月後の「G20大阪サミット」(6月28、29日)では、習氏も日本を訪れる。トランプ氏とすれば、今後中国との貿易交渉で浮上するであろう「レアアース問題」に先手を打ちたいと考えるのは当然だろう。ひょっとして、米中の「レアアース問題」が日本の新たなビジネスチャンスとして浮上してくるかもしれない。冒頭のにっこり笑った2人の笑顔に次なる可能性が。

【2020年4月7日付「★緊急事態宣言で問われる非日常性のこと」】 安倍総理はきのう緊急事態宣言に先立って緊急経済対策会議を開き、午後5時50分から記者団に説明した。事業規模については「コロナウイルス感染の経済に与える甚大な影響を踏まえ、過去にない、強大な規模となるGDPの2割にあたる事業規模108兆円の経済対策を実施する」と述べた(6日付・NHKニュースWeb版)。緊急事態宣言は全国ではなく、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県に出される。期間もゴールデンウイーク最終日の5月6日までをめどするようだ。海外のようなロックダウン(都市封鎖)は行わない。

【2020年8月29日付「★辞任表明、安倍総理のレガシーは何だ」】  会見ではいつも使っているプロンプターを今回使っていなかった。ということはコメントは会見直前まで練られていた。あるいは、予定していたコメントを直前になって大幅に書き換えた、のどちらかだろう。側近が辞任表明を知らなかったとのコメントを会見後に寄せているので、おそらく後者だろう。
 
⇒31日(月)朝・金沢の天気     くもり

★アメリカ大統領選挙とSNSの確執

★アメリカ大統領選挙とSNSの確執

   SNSのすごさを感じたのは、ある意味でトランプ大統領だった。ツイッターによる攻撃、いわゆる「ツイ撃」で名をはせた。2017年1月の大統領就任前からゼネラル・モーターズ社やロッキード社、ボーイング社などに対し、雇用創出のために自国で製造を行えと攻撃的な「つぶやき」を連発した。ホワイトハウスでの記者会見ではなく、次期大統領がツイッターの140文字で企業に一方的な要望を伝えるという前代未聞のやり方だった。

   大統領就任から今でも昼夜を問わず発信し続けている。世界を驚かせたのは、2019年6月30日の米朝首脳会談だった。トランプ氏のツイッターがきっかけだった。G20サミットで大阪に滞在していたトランプ氏が6月29日付のツイッター=写真・上=で、「もし金正恩委員長がこれを見ているなら、非武装地帯(DMZ)で握手してあいさつする用意がある!」。翌日それが板門店で実現した。両氏がツイッターのユーザーだったから実現した外交と賞賛され、「世界最大のオフ会だ」などと国際的なニュースとして流れた。両者は会談ではなく面会との位置づけだ。

   このところ、SNSとトランプ氏の関係性が良くない。ことし8月6日にツイッター社はトランプ陣営のアカウント「@teamtrump」による投稿を一時的に禁止した。新型コロナウイルスに関連して、トランプ氏が「子どもはこの感染症に対してほぼ免疫がある」と発言したトランプ氏のFOXニュースのインタビュー映像が投稿され、同社は害を及ぼす恐れのあるウイルス関連の偽情報に相当するとして削除した。フェイスブックも同様な措置をした(8月7日付・BloombergニュースWeb版日本語)。

   それに以前の7月28日にもトランプ氏がリツイートした「新型コロナウイルスには治療法がある」と主張する映像投稿について、ツイッター社は内容に誤りがあるとして削除している(7月29日付・NHKニュースWeb版)。映像では、トランプ氏が自ら服用を公表したマラリアの治療薬について、服用を勧める内容があり、ツイッター社は「投稿に関する規約に反する」として削除した(同)。

   この背景には、トランプ氏とSNSとの確執がある。トランプ氏はSNS企業などを保護する法律を撤廃するか効力を弱める法律を導入すると表明し、ことし5月28日に大統領令に署名している(5月28日付・ロイター通信Web版日本語)。同26日にツイッター社がトランプ氏の郵便投票に関するツイートが誤解を招くとして、読者にファクトチェック(真偽確認)を促す警告マークを表示したことに対し、トランプ氏は言論の自由への弾圧として反発していた。

   アメリカのSNS企業は通信品位法(CDA:the Communications Decency Act )230条に基づき、利用者の投稿内容について免責されるという法的保護を受けている。つまり、SNS企業は、基本的には違法な投稿を掲載したことの責任を問われない、その一方で、ヘイトスピーチなどのコンテンツは独自にファクトチェックの規定を設けて規制している。大統領署名は行われたものの、今のところ具体的な規制はない。単なる脅しの署名だったのか。 

   ツイッター社がトランプ氏のツイートをチェックして事実確認を求める立場に置かれている。ところが、トランプ氏にすれば、政治はディール(取引)の世界で、SNSはその一つの道具に過ぎない。11月の大統領選が本格的に始まれば、対立候補を誹謗中傷するネガティブ・キャンペーンがヒートアップする。2016年の大統領選では、クリントン陣営は「トランプはKKK(白人至上主義団体クー・クラックス・クラン)と組んでいる」とキャンペーンを張り、トランプ陣営は「クリントンは錬金術師だ」と映画までつくり相手陣営を激しく攻撃した=写真・下=。アメリカの選挙風土は​相手の落ち度を徹底的に責める、まさにデスマッチではある。

   このデスマッチ化する大統領選挙で、ツイッター社などのSNS企業のファクトチェック方針はどこまで通用するのか。熾烈な選挙風土の中では単なる「きれいごと」と有権者から無視されるのか。あるいはSNSがこうした選挙風土を変革するのか。SNS時代におけるアメリカ大統領選挙の見どころのポイントではある。

⇒25日(火)夜・金沢の天気      はれ

★2020秋の胸騒ぎ~下

★2020秋の胸騒ぎ~下

          石川県に住む者として 残念なニュースが流れている。県内の私立大学の20歳の男子学生がきょう放送予定の日本テレビ系番組『24時間テレビ』について、放送当日に「武道館でサリンをまく」とツイッターに投稿したとして、警視庁に威力業務妨害の疑いで逮捕された(8月21日付・共同通信Web版)。同番組の開催場所はこれまで武道館だったが、ことしは改修工事のため国技館に変更されているので本人が場所を勘違いした可能性もある。警察は悪質な嫌がらせとみて動機を調べている(同)。

    トランプ大統領の北朝鮮への次なる一手は

           本人にとって悪ふざけのつもりでSNSで投稿したとしても、それがいったんアップロードされれば公の場の犯罪となる。警察庁の報告書「令和元年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」によると、スマホやPCを使った犯罪は8267件で、上記のような脅迫は349件に上る。ちなみに、8月20日付「2020秋の胸騒ぎ~上」で述べた詐欺は977件だ。これは推測だが、今回の逮捕はおそらくテレビ局編集セクションにあるサイバーリサーチのチームが発見して警察に届けたのではないだろうか。メディア各社はサイバー空間でのトレンドやトラブルなどをニュースのネタ拾いのため細かくチェックしている。

   話は逸れたが、日本海側に住んでいるとどうしても考えてしまうのが、北朝鮮をめぐる情勢だ。南北首脳会談の「板門店宣言」で建設された北南連絡事務所が6月16日に爆破され、世界に衝撃が走った。アメリカと北朝鮮の首脳会談もこれまで3回開かれたが、成果は得られなかった。こうなると、トランプ大統領が2017年の9月の国連総会の演説で金正恩党委員長を「ロケットマン」と呼んだあのころに戻るのではないか、と危惧する。そうなると北朝鮮への斬首作戦が現実味を帯びる。斬首作戦は金委員長へのピンポイント攻撃のことだ。

   北の動向をつぶさに報じている「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」の公式ホームページに、7月7日付で「トランプ大統領のお悔やみ書簡の意味」と題した動画がアップされている。書簡はトランプ大統領が拉致被害者の横田めぐみさんの母・早紀江さんに宛てた、死去した夫・滋氏への弔意を込めたもの=写真=。書面は英文だが、協議会の訳を引用すると、「早紀江さんと滋さんの弛まない活動によって、北朝鮮による拉致問題は日本と米国にとって優先課題であり続けています」「(アメリカは)めぐみさんを必ずご自宅に連れて帰るというこの重要な任務を続けます」と大統領としての決意表明を感じさせる。

   金氏を見限ったトランプ氏の次なる一手が「めぐみさんを必ずご自宅に連れて帰る」ということ、すなわち拉致被害者の救済のために斬首作戦に打って出るということを意味していないだろうか。トランプ氏が指示するとすれは、大統領選挙が行われる晩秋の11月3日までだ。アメリカによる斬首作戦で知られるのは、オバマ政権下で実行されたオサマ・ビン・ラディンに対して行ったバキスタンでの攻撃(2011年5月2日)がある。

   もし斬首作戦が現実になれば、国内は騒乱状態になり大量の難民が船に乗ってやってくる。ガソリンが切れたり、エンジンが止まった船の一部はリマン海流に乗って能登半島などに漂着する。無事漂着したとして大量の難民をどう受け入れるのか、武装難民だっているだろう。その影響は計り知れない。日本海側に住むが故の胸騒ぎではある。

⇒22日(土)午前・金沢の天気     はれ時々くもり