#デジタル法定通貨

☆民主主義と経済のデジタル化が「日本沈没」を救う

☆民主主義と経済のデジタル化が「日本沈没」を救う

   前々回のブログ「☆日本は途上国へと退化していくのか」の続き。ことし9月に発足したデジタル庁の公式ホームページをチェックすると、牧島かれんデジタル大臣の記者会見(17日付)が動画で掲載されている。主な内容は、ワクチン接種の電子証明書アプリについて、今月20日午前中からスマートフォンでのダウンロードが可能になるとの見通しを示した。これによって、国内外の出入国の手続きの際に必要な書面の証明書(コロナパスポート)は必要なくなり、イベント会場などで求められてもスマホでOK ということになるとの説明だった。確かに便利ではあるが、単にアナログを補完しているだけの話で、大臣の説明からデジタル活用の本質が見えて来ない。

   デジタル大臣の言葉として期待したいことは、ぜひ総務省と組んで選挙を「デジタル投票」にしてほしい。そして、日銀と組んで「デジタル法定通貨」を使えるようにしてほしいということだ。デジタル投票の場合は、投票アプリに入り、マイナンバーカードをスマホにかざし、パスワードを入力することで本人確認をし、投票画面に入る。デジタル法定通貨による支払いも同じ要領だ。

   投票も通貨もポイントはマイナンバーカードなのだが、政府は普及を優先させている。先月、ニュースでマイナンバーカードの普及を図るために総務省はカードの取得などの段階に応じて最大2万円分のポイントを付与する制度を創設する費用として1兆8000億円を今年度の補正予算案に計上する方針を示した(11月25日付・NHKニュースWeb版)。発想が逆ではないか。お金をデジタル通貨にすると国が発表すれば、大人も高齢者も子どもも必死になってマイナンバーカードを取得するようになる。大切なのは普及ではなく、必然ではないか。デジタル投票は民主主義のデジタル化であり、デジタル法定通貨は経済のデジタル化だ。この発想がなければ国のデジタル化は進まない。逆に民主主義と経済のデジタル化が進めば、本格的なデジタル社会(Society5.0)が訪れるのではないか。

   Society5.0は、2016年に策定された国の「第5期科学技術計画」の中で用いられ、狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(Society2.0)、工業社会(Society3.0)、情報社会(Society4.0)に続く、日本の未来社会の姿として提唱するものである。何もしなければ途上国へと退化する、進めば未来先進国へと進化する。日本の進むべき道は後者しかない。このようなことを、ぜひデジタル大臣が提言してほしい。

⇒17日(金)夜・金沢の天気     あめ時々あられ

☆日本は途上国へと退化していくのか

☆日本は途上国へと退化していくのか

   このところの政治や経済、社会の動きを見ていると、日本は途上国へと退化しているような気がしてならない。こんなことが民主政治なのかと不信感を抱いたのが18歳以下の10万円相当の給付問題だ。11月9日に自民・公明両党が現金とクーポンを組み合わせて給付実施することで合意。それから国会での紆余曲折を経て、3パターンの給付方法(現金10万円の一括給付、現金5万円を2回給付、現金5万円とクーポン5万円分を2回に分け給付)にたどり着く。民意は明らかに現金10万円の一括給付だったが、この議論に1ヵ月以上も費やしている。民主政治は妥協の産物ではない。

   その間、外交問題は棚上げされた。来年2月の北京オリンピックについて、アメリカが問題を提起した「外交的なボイコット」をどうするかの議論だ。中国・ウイグル族への強制労働や、女子プロテニスの選手が前の副首相から性的関係を迫られたと告白した後に行方がわからなくなった問題、香港における政治的自由や民主化デモへの弾圧など、中国の人権状況に対して国際的な批判は強い。日本政府は中国からの招待の有無にかかわらず、政府代表団の派遣をどうするのか。岸田総理は「国益の観点からみずから判断していきたい」(12月7日付・NHKニュースWeb版)を繰り返している。国益で人権問題を判断するという言葉は、はたして自由民主主義国家の政府の長の言葉だろうか。

   日本は世界第3位のGDPを誇る経済大国とされているが、いつまでそれが続くのだろうか。人口の少子・高齢化は日に日に高まっている。人口が減る中で経済規模を維持していくことは難しい。さらに、労働者1人当たりの生産性も高齢化で簡単ではない。GDPや企業の競争力などの指標を見ても、日本はすでにG7に相応しい地位ではない。「世界競争力年鑑2021年版」(IMD=国際経営開発研究所)での日本の順位は31位と停滞が続いている。

   かつて、日本は「一億総中流」と言われたが、その言葉を最近すっかり聞かなくなり、代わって「貧困」をよく目にする。厚生労働省の「国民生活基礎調査」(2019年版)によると、2018年の貧困線(等価可処分所得の中央値の半分)は127万円で、これ以下の「相対的貧困」の世帯の割合は15.4%と記されている。今後、独り暮らしの高齢世帯などが増えていく。貧困率はさらに高まっていくだろう。暗い話ばかりになってしまった。

   ただ、反転する可能性はある。それは「資源」があるからだ。2000兆円におよぶ個人金融資産が眠っている。日本全国に張り巡らされた光ファイバーなどのデジタル通信網がある。このブログで何度か述べたように、日銀が主導するデジタル法定通貨を実施することだ。2024年から新一万円札は「渋沢栄一」に変わるが、これを機に札や硬貨ではなく、デジタル通貨にしてはどうか。タンスに眠ったままとなっている金融資産を吐き出させ、消費を回す絶好のチャンスではないだろうか。この機を逃せば、日本は本格的に途上国へと退化するのではないかと思えてならない。

⇒15日(水)夜・金沢の天気       くもり

★コロナ後の社会・経済の構造変化とは

★コロナ後の社会・経済の構造変化とは

   証券会社の知り合いから一冊のリポートが送られてきた。手書きの添え状にこう書かれていた。「コロナ禍、人のマインドが180度変わり、日本にとって良い変化が起きているように感じております」と。リポートのタイトルは「日本:コロナ後の世界~マクロ経済・社会構造に予想される変化」。このテーマに関心があったのでさっそく読んでみる。果たして、「良い変化」かどうか。

   リポ-トは証券会社のチーフエコノミストによる分析だ。リポートではコロナ禍による日本と世界の価値観の転換を4つの視点で述べている。1)人の動きに関わる様々な変化、2)広義の社会保険機能の強化、3)国境・県境など「境界」の存在価値の上昇、4)効率第一主義の見直し、についてだ。

   1番目の人の動きに関わる変化は顕著だ。「ソーシャルディスタンス」というという言葉が当たり前のように使われるようになった。この視点でリポートでは、これまで国や自治体が推進してきた「コンパクトシティ」という、人口を中心市街地に集積するという政策は見直しが必要になってくるかもしれない、と述べている。また、人が動くことによって付加価値が生み出されてきた観光や文化・芸術などの施設では、その場に行くなくても、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)といったデジタル技術の進化でより実感が増すかもしれない。観光やエンターテイメントの分野も変わるかもしれない。

   2番目の広義の社会保険は多様な解釈を提案している。これまで福祉国家としての日本では、医療や介護の「高齢者中心」の社会保障だったが、これからは生活保護や雇用保険といったセーフティネットの拡充にも力点が注がれる。これによって、日本は北欧型の高福祉・高負担モデルに接近していく可能性があると指摘している。国民の合意が大前提だが、さらなる消費増税に向かうことにも。また、企業の経営理念は利益優先の株主重視から、消費者や社員、社会の安全を重視するステークホルダー重視へと切り替えが始まりそうだ。

   3番目の国境・県境など「境界」の存在価値では、マイナス材料としては、出入国や国境検疫の高いハードルが続き、旅行業や宿泊などのサービス産業にも影響が出てくる。一方で、境界をつくることで域内の住民の安全を守るという発想は、自治体の連携による広域行政、あるいは都道府県を超えた道州制といった自治体再編の動きを加速させるもしれないと指摘している。

   4番目の効率第一主義の見直しでは、在庫と供給網の在り方を問うている。ジャスト・イン・タイム型の在庫を極端に圧縮する生産体制や、コンビニに見られる小量高頻度配送は自然災害にその弱さを露呈している。さらに、企業価値は投資と株主還元というこれまでの「アメリカ型」の姿勢から、内部留保の蓄積と並行して一定の手元流動性を手元に置く「日本型」の企業財務が再評価されるかもしれない。以上は、野村證券「ANCHOR REPORT」(5月12日号)=写真=からの引用である。

   これに自己流の予想も加えてみたい。5月24日付のブログでも紹介したが、コロナ禍で日常の変化がある。それは「人が触ったものには触らない」という衛生観念が共有されている。ドアノブやエレベーターのタッチボタンのほか、紙幣や硬貨も非衛生的だと指摘は以前からあった。この意識変化によってキャッシュレス化がさらに進むとみている。さらに、国がデジタル法定通貨の実現に向けて動く可能性が見えてきた。2024年に予定している新札発行を、デジタル法定通貨へと舵を切るのチャンスではないだろうか。「デジタル円」の可能性がコロナの後押しで加速する。そんなふうに憶測している。

⇒2日(火)夜・金沢の天気      はれ