#デジタル化

★オンライン「初診OK」恒久化の是非

★オンライン「初診OK」恒久化の是非

   今月初め、かかりつけの病院に行くと待合室に「【重要】定期通院をされている方へ 電話による診療について」の貼り紙=写真=がしてあった。オンライン診療のお知らせだった。5月に行ったときには貼ってはなかった。医師からも「予約していただければ、電話でもOKですよ」と。で、次回はさっそくオンライン診療を利用することにした。

   これまでは、医師は血圧を測って、最近の様子を聞いて、いつもの薬を処方していた。これからは、自身で測った血圧の数値と、「とくに変わりありません」と電話で医師に伝えるだけだ。その後、病院からのFAXが指定する薬局に届き、自身は薬を取りに行くことになる。通院する時間が省け、何より、待合室での新型コロナウイルス感染への気遣いもなくなる。病院でのオンライン診療はコロナ禍以前でもOKだった。

   それのオンラン診療が大きく変わろうとしている。厚労省は特例措置として、新型コロナウイルスの院内感染などを防ぐため、ことし4月から電話やタブレット端末などを活用したオンライン診療での初診を容認している。ただし、期限は感染が収束するまでと決められていた。それを特例ではなく、いつでも初診はオンランでOKとする動きだ。菅内閣では特例措置を恒久化に向けて動き始めているのだ。

   報道によると、今月6日の政府の経済財政諮問会議では、民間議員がオンライン診療の「特例措置の恒久化」を提言。翌7日の規制改革推進会議でも当面の審議事項にオンライン診療を盛り込んで、「デジタル時代に合致した制度として恒久化を行う」と明記した。

   これについては、患者目線とズレがあると感じる。政府はデジタル化のために「初診もOK」と考えているようだが、患者側としては、やはり初診は医師に症状をしっかりと伝え、診療をしてほしい。もちろん、オンライン初診OKであったとしても、患者側が足を運べばよいだけの話なのだが。医師としても、触診など対面より得られる情報は少なく、誤診につながるのでNGだろう。リスクが高すぎる。

   さらに、医療側にすれば、検査料や管理料などが取れなくなるので収入減となり経営の問題にもなるだろう。さらに、患者になりすまして薬を不正に入手するといった犯罪の温床になるのではないか、といったことにも思いをめぐらしてしまう。デジタル化推進のためにオンラインで「初診もOK」の動きはどうもすっきりしない。後味が悪い。

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★いつでも誰でもどこででも日銀のデジタル通貨

★いつでも誰でもどこででも日銀のデジタル通貨

   このブログでも何度か取り上げてきた中央銀行が発行するデジタル通貨について、きのう日銀が欧米の中央銀行との共同研究報告書を公表した。日銀の公式ホームページをのぞくと、来年2021年度から実証事業を始めるとある。いよいよデジタル法定通貨が経済のコアとして浮上してきた。

   このブログで、政府と日銀はアフターコロナの政策として、2024年に予定している新札発行をデジタル通貨へと舵を切るのではないかと憶測してきた。以前から紙幣や硬貨は非衛生的だとの指摘があり、新型コロナウイルスの感染拡大にともなって一気にキャッシュレス化が進んだ。もちろん紙幣や硬貨を粗末にするという意味ではない。  

   以下、日銀ホームページの共同研究報告書から引用する。日銀は、現時点でデジタル法定通貨(Central Bank Digital Currency、以下CBDC)を発行する計画はないと前置きしながしなら、決済システム全体の安定性と効率性を確保するよう準備する、としている。CBDC役割について、1.現金と並ぶ決裁手段の導入、2.民間決裁サービスのサポート、3.デジタル社会にさわしい決済システムの構築、の3点を上げている。

   現金に対する需要がある限り、現金の供給についても責任をもって続けていく。CBDCが発行されると、民間企業や金融機関によるデジタル通貨と競合し、民間の活力を損なう懸念もある。たとえば、銀行預金からの引き出しが容易になって金融危機時に銀行経営が揺らぎやすくなるといったことも想定され、そうした事態が起きないよう民間決裁サービスをサポートする。

   CBDCが持つべき特性をまとめている。現金や預金などとの交換性や現金払いやスマホ決済のような決済時の容易さ(ユニバーサルサービス)、取引の即時決済性といった強靱性、セキュリティを上げている。つまり、現金のように「誰でも使える」「安心して使える」「いつでも、どこでも使える」との位置づけだ。

   日銀は21年度の早い時期に実証実験を始め、1.中央銀行と民間事業者の協調・役割分担のあり方、2.CBDCの発行額・保有額制限や付利に関する考え方、.3.プライバシーの確保と利用者情報の取扱い、4.デジタル通貨に関連する情報技術の標準化のあり方などの点について検討を進めていく、としている。

   菅内閣が進めるデジタル化の促進はまさに日銀のこの動きと連動するものだろう。これと選挙のデジタル投票が同時に進めば、日本のデジタル化は政治と経済の両面でかなり加速するのではないだろうか。

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