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☆FIFAワールドカップ日本惜敗 メディア報道あれこれ

☆FIFAワールドカップ日本惜敗 メディア報道あれこれ

   FIFAワールドカップ・カタール大会トーナメント戦での日本戦の報道を見ていて、一番悔しい思いをしたのは新聞メディアではないだろうかと憶測した。何しろ、クロアチア戦は日本時間の6日深夜の戦いだったが、締め切りを延長すればなんとか6日付の朝刊に対戦結果を掲載できた。しかし、PK戦にまでもつれ込んだために締め切り時間に間に合わず、ひと晩明けたけさの朝刊で各社が一斉に報じることなった=写真=。

   もちろん、きのうは夕刊での記事掲載もあったが、夕刊の購読世帯数は少なく、大手紙の場合は夕刊を発行していない地域エリアもある。そのため、きょうの朝刊で本編掲載のような紙面づくりをせざるを得なかった。

   スペイン戦は日本時間で今月2日午前4時にキックオフ、終了は午前5時53分だった。この時間は朝刊配達の時間でもあり、最初から結果の掲載は見送ったのだろう。そしてクロアチア戦は6日午前0時にキックオフ。通常の試合ならば、前後半それぞれ45分、ハーフタイムの15分を含めて午前1時45分には試合は終わる。これだったら紙面に間に合う。

   ところが、トーナメント戦では必ず勝敗をつけるルールがある。今回は延長戦で前後半各15分の試合が行われ、それでも決着がつかずPK戦で勝敗をつけことになった。6日付の地元紙の朝刊は「日本1-1で延長へ」と伝えている。逆算すれば、午前1時50分ごろまで締め切りを待ったが、延長戦となってはこれ以上は待てないと判断したのだろう。結局、クロアチア戦の終了は午前2時43分だった。新聞社の周辺のごく一部地域でしか結果を朝刊に掲載できなかったのではないか。新聞メディアの限界がここにある。 

   一方で、数字を稼いだのはテレビ局だった。ロイター通信Web版(6日付)によると、6日未明にフジテレビが中継したクロアチア戦の平均世帯視聴率は関東地区で34.6%、関西地区で33.1%だったことが、ビデオリサーチの調査(速報値)で分かった。瞬間最高視聴率は関東が38.3%、関西が36.8%だった。2日早朝に同じくフジテレビが生中継したスペイン戦は、午前5時から午前6時10分までの日本が逆転した試合後半中心の平均世帯視聴率は28.7%だった。

   ネット中継も数字を稼いだ。全64試合を日本で無料生中継しているテレビ朝日系のABEMAでは、ドイツ戦の視聴者数が1000万人、コスタリカ戦は1400万人、スペイン戦は1700万人、そしてクロアチア戦は延長前半時点で2000万人を突破した(6日付・日刊スポーツWeb版)。

   新聞、テレビ、ネットの特性がFIFAワールドカップを通じて浮き出た。新聞メディアが時代遅れと言っている訳ではない。新聞は試合の多様な解説記事を掲載している。テレビにもネットにも追随できないコンテンツではある。

⇒7日(水)夜・金沢の天気    くもり

★マスメディアは数字にこだわる

★マスメディアは数字にこだわる

   記事やニュースの見出しで数字を見ない日はない。きょうの新聞紙面をチェックすると、一面で「海外協力隊 高まる関心 北陸の説明会応募2.3倍」(北陸中日新聞)と報じている。JICA調べで、北陸3県の説明会の応募累計は68人に上り、2019年春より2.3倍の多さだという記事だ。さらに同じ一面で「災害時トイレ『不足』39% 県庁所在地など 自治体備蓄に限界」(同)は大規模災害に使えるトイレが、金沢市など県庁所在地と政令指定都市の51市のうち39%にあたる20市が「不足する恐れがある」と調査で分かったという内容だ。

   他紙でも、「著作権料 過去2番目の徴収額 昨年度1167億円 JASRAC 配信・サブスク伸びる」(朝日新聞)など。NHKニュースWeb版も「“1.5度”の気温上昇『今後5年間に起きる可能性 50%近く』」「『集中豪雨』の頻度 45年間で2倍余増」と見出しで数字が踊っている。

   では、なぜ記事では数字を多用するのか。ジャーナリズムの鉄則は「形容詞は使わない」ことにある。形容詞は主観的な表現であり、言葉に客観性を持たせるには、数字を用いて言葉に説得性を持たせる。たとえば「高いビル」とはせず、「20階建てのビル」と数字で表現する。上記の「可能性50%近く」は「可能性大いにあり」などと表現はしない。

   先に金沢大学の在任中は特任教授として「メディア論」を講義したが、数字を使っての客観的な表現方法は学生たちにとっては新鮮だったらしく、「小さいころからうまい形容詞を使うとほめられたが、確かに新聞では形容詞を見たことがない。でも、形容詞を使わない文章って難しそうだ。大学の論文でも形容詞は使わないですよね、目が覚めました」などと感想があった。​

   ただ、メディアは数字にこだわりすぎではないかと最近思うことがある。連日紙面で掲載されている「新型コロナウイルス感染者数」だ。都道府県別に累計の感染者数、増えた数、死者数の累計を掲載。地方紙はさらに各市町ごとの総数と増えた数、治療の患者数などを別表で掲載している。NHKも東京の感染者数を連日速報で伝え、それぞれのローカル局も地元の感染者情報を伝えている。

   メディアが発する数字は気になるものだ。しかし、政府はウイルス対策の「まん延防止等重点措置」に関し、東京や大阪、石川など18都道府県への適用を3月21日をもって全面解除している。が、新聞メディアは以降もずっと毎日だ。そこまで数字の掲載にこだわる意義はどこにあるのだろうか。1週間ごとの累計でもよいのではないか。ひょっとして、メディア各社も仕舞いのタイミングを見計らっているのかもしれない、が。

⇒30日(月)夜・金沢の天気   くもり

☆「ニュースは知識のワクチン」とは言うものの

☆「ニュースは知識のワクチン」とは言うものの

   きのうテレビで午後のニュースを視聴していて違和感を感じた。東京都の新型コロナウイルスの感染状況についての民放のニュースだった。「インドで蔓延する変異種について、中学校でクラスターが発生し、海外リンクのない感染者も増えていることから、都は、スクリーニング検査などの監視体制を強化する考えです」とのワンセンテンスで意味が分からない言葉が2つあった。「海外リンク」と「スクリーニング検査」だ。

   その後、ネットで「新型コロナウイルス」と検索して調べてみた。「海外リンク」は海外の感染者などとの接触という意味だ。また、「スクリーニング検査」は感染者の中でウイルスの遺伝子変異の有無を判別をする検査を指す。東京都の小池知事がインタビューや会見で述べた言葉であれば、「また、小池カタカナ語が出た」と受け流すこともできるのだが、アンウンサーが読むニュースとして相応しい言葉遣いかと問えば、明らかに「NG」だろう。

   新聞とテレビのニュースを担当した経験で、「テレビのニュースは小学5年生が分かる言葉で」「新聞は中学2年生が理解できる記事を」と叩き込まれた。それは今も変わらないだろう。そのポイントは難しい漢字やカタカナ言葉を安易に使わず、分かりやすい言葉でニュース原稿を作成するということだ。

   そもそも、ニュースって何だ。「ニュースは知識のワクチン」という言葉がある。新型コロナウイルスや悪性のインフルエンザなどが流行する恐れがある場合、予防接種でワクチンを打っておけば、免疫がついて病気にかからない。それと同じように、まちがった情報やうわさにまどわされないために、普段から新聞やテレビのニュースを読んだり見たりすることで、間違えのない判断ができるようになる。なので、ニュースそのものが理解できなければ意味がない。

   冒頭の話に戻る。2つの言葉がすでに日常でも使われているのであればニュース原稿の言葉として問題はないだろう。ただ、記者が書いた原稿をニュースデスクがチェックしたのだろうか。あるいは、担当したアナウンサーが「この言葉、分かりにくくありませんか」と記者やデスクに問い合わせをしなかったのだろうか。ひょっとして、テレビ局の報道フロアで通用している業界用語なのだろうか。

⇒11日(金)午後・金沢の天気    はれ

☆海外観客を断念、メディアも規制対象か

☆海外観客を断念、メディアも規制対象か

            報道によると、東京オリンピック・パラリンピックの大会組織委員会と政府や東京都、それにIOCなど5者による会談が開かれ、現在のコロナ禍の状況では海外から日本への自由な入国を保証することは困難だとして、海外からの観客の受け入れを断念することが決めた。一方で、東京大会の観客の上限については来月改めて方向性を確認し、その後も柔軟に対応していく(3月20日付・NHKニュースWeb版)。会談はオンライン形式で橋本大会組織委員会会長、丸川五輪担当大臣、小池都知事、IOCのバッハ会長らが参加した。

  組織委の発表文によると、世界の新型コロナウイルスの感染状況は変異株の出現を含めて厳しい状況が続いており、世界各国で国境をまたぐ往来が厳しく制限されている状況下では、今年の夏に海外から日本への自由な入国を保証することは困難だと説明。「すべての参加者及び日本の国⺠にとって、⼀層確実に、安全で安心な大会を実現するための結論」だとした(同)。

   大会組織委員会によると、すでに海外で販売されたチケットの枚数はオリンピックが60万枚、パラリンピックが3万枚に上り、これらのチケットは今後、払い戻しされる。ちなみに、国内で販売されたチケットはオリンピックが448万枚、パラリンピック97万枚となっていて、大会の観客の上限については来月改めて方向性を確認し、その後も柔軟に対応していくとしている。

   橋本氏は会見で、「東京大会はこれまでとは全く異なる大会となるが、アスリートが卓越したパフォーマンスを持って、人々の心を動かす本質は変わらない。今の時代にふさわしい方法で人々をつなぐことができるよう、具体的な仕掛けの検討も進める」と述べた。また、丸川氏は記者団に対し、「IOC、IPCの方からは全面的に日本側の判断を支持するというコメントがあった」と発言。国内の観客については新型コロナの変異株の状況がどうなるか分からないとした上で、「4月に判断することになる」と述べた。

   海外からの観客を断念したとなれば、テレビ中継や新聞などメディアによる五輪報道が欠かせない。来月になれば、東京ビックサイトに設営されたIBC(国際放送センター)にIOCから放送権を得たRHBs(Rights Holding Broadcasters)と呼ばれる放送メディアが続々と準備のために東京にやって来る予定だ。

   気になるのは、海外メディアの取材陣も規制対象とするのだろうか。仮にそうなると、IOCに放映権料を払っているテレビメディアは降りるだろう。困るのはIOCだ。そして、国際世論がまた大騒ぎとなる。

⇒20日(土)夜・金沢の天気       あめ

★同時配信というローカル局のチャンス

★同時配信というローカル局のチャンス

           DX(デジタル・トランスフォーメーション)が叫ばれているが、一番出遅れているのか民放ではないかと考えることがある。なぜなら、放送と通信(ネット)の同時配信がいまだに進んでいないからだ。そのネックの一つとなっていた著作権問題では道筋が見えてきたようだ。放送番組のインターネット同時配信の著作権問題について、文化庁著作権分科会のワーキングチームはきのう(11月30日)、ネット配信の著作権の処理については放送と同等に扱うべきとする報告書案をまとめた。          

   現状、著作権は放送と通信(ネット)では「平等」ではないという現実がある。たとえば、テレビ局が番組に曲を使う場合、実演家(演奏者・歌手・俳優)やレコード会社に事後報告でよいが、ネットでの使用の場合は事前許諾が必要となる。ただし、作詞家や作曲家には双方とも事前許諾が必要だ。このため、NHKは民放に先行してことし4月から1日18時間の同時配信の運用を始めているが、番組をネットに同時送信するため、わざわざ事前許諾を求めている。その権利処理が行えない場合には曲をカットしたり、差し替えをする、業界用語で「ふたかぶせ」の対応を迫られている。

   事前の著作権許諾の作業だけでもスタッフの配置が必要なためにコストもかさむことは想像に難くない。さらに、出演料なども地上波のみから、ネット配信もということになれば、値上げが必然となるだろう。NHKの2020年度インターネット活用業務実施計画(1月15日付)によると、今年度から同時配信を進めるために設備費や放送権料などにかかわる費用として54億円を計上している。

   仮に著作権問題がある程度軽減されたとして、民放の同時配信が進むかと問えば、さらに、別の大きな問題もある。一つはCMだ。テレビ離れが進んでいるといわれる若者たちがスマホやタブレットでテレビを視聴できる環境をつくったとして、局側がスポンサーにCM料を地上波に上乗せして払ってくれと言えるだろうか。地上波でのCM料は視聴率という目安があるが、同時配信でのネット上のCM料の目安はいまだ確立されてはいない。スマホやタブレット上の競争相手はテレビ局ではない、動画コンテンツは無限にある。

   もう一つは県域問題だ。ローカル局には放送法で「県域」というものがあり、放送免許は基本的に県単位で1波、あるいは数県で1波が割り与えられている。1波とは、東京キー局(日本テレビ、テレビ朝日、TBS、フジテレビ、テレビ東京)の系列ローカル局のこと。逆に言うと、スマホやタブレットで東京キー局の番組を視聴できれば、同じ系列局のローカル局の番組は視聴されなくなるかもしれない。

   このように書くと、民放、とくにロ-カル局には夢も希望もないような表現になる。が、個人的には同時配信に踏み切ることでローカル局にはチャンスが生まれると言いたい。ここからは持論だ。ローカル局が自社制作番組をネット配信をすることで、首都圏や遠方の他県に住む出身者など新たな視聴者層を開拓できるのではないだろうか。「ふるさと」をアピールできる。出身者でなくても、金沢・能登・加賀ファンをつかむことができる。

   できれば、金沢からリアルな情報を発信する動画配信サービスのサイトを石川県内の民放4局が共同出資でつくってほしい。それも、日本語と英語で構築できないだろうか。能登、金沢、加賀の県内各地のケーブルテレビ局も巻き込んで、「KANAZAWAチャンネル」をつくり、観光・ツーリズムを発信する。これまでの規制にとらわれない、新たなパラダイムがテレビ局に求められているのではないだろうか。今回の著作権の緩和はそのスタートだと解釈している。

⇒1日(火)夜・金沢の天気    はれ時々くもり