#タンス預金

☆2023卯年・飛躍の年に ~経済~

☆2023卯年・飛躍の年に ~経済~

   景気が良いときは、市場にお金が回り、経済全体が活性化するというこれまでの常識が崩れている。何しろ、経済の活性化は人件費と物価などが同時に値上がりしたものだが、現在のインフレと呼ばれている状況は物価だけが高騰している。これは一時的に新型コロナウイルス感染(パンデミック)により世界経済がロックダウン状況に見舞われたものの、その後、世界が同時に経済活動を再開したことによるモノの供給不足ともいわれる。これが物価に跳ね返っている。

            ~キャッシュレス経済と「タンス預金」の話~

   アメリカのFRBの金融引き締めやインフレ懸念を背景に、世界の利は上昇傾向にある。日銀は先月20日に一転して金融緩和策を修正し、長期金利の変動幅の上限を0.5%程度に引き上げた。これが「黒田サプライズ」となり、株価が下がり為替が円高に変動した。日本の経済はこれからどうなるのか。

   一つ注目しているのが、市場金利の上昇と住宅ローン金利、そして住宅価格だ。すでに建築資材などの価格が一斉に上がっている。当然、新築住宅を中心に価格は高くなっている。さらに、大手銀行などは住宅ローン金利を今月から引き上げる。変動型の金利は据え置いたものの、将来変動金利が上がるリスクもある。「家は人生最大の買い物」との言葉がある通り、価格と住宅ローンが上がれば、購入や新築を考えている人々は二の足を踏むだろう。これが日本の景気にってマナイナ要因になるかもしれない。

   ただ、2023年という年には経済的な異変が起きるかもしれない。以下、勝手な憶測だ。50兆円ともいわれる「タンス預金」がどう動くか、だ。というのも、2024年度から1万円札のデザインが福沢諭吉から渋沢栄一に、5千円札は樋口一葉から津田梅子に、千円札は野口英世から北里柴三郎になる。1984年に聖徳太子から福沢諭吉になったので、40年ぶりだ。この新札発行前にタンス預金が住宅投資などに動けば、経済効果に寄与するかもしれない。また、新紙幣発行にともなう、金融機関のATMやCD、さらに自動販売機の改修や買い替えに投入されるコストを考えると、これも経済効果だ。

   ただ、キャッシュレス経済はこれからさらに進むだろう。現金は匿名性が高く、決済情報が記録として残らないためにマネーロンダリングの温床とまで言われ、EUやスウェーデン、シンガポールなどではすでに高額紙幣を廃止する流れとなっている。ひょっとして、日本でも来年の新札が最後の1万円札になるかもしれない。正月の放言ではある。

(※写真は、国立印刷局東京工場で2021年9月1日に行われた新一万円札の印刷開始式の模様=国立印刷局公式ホームページより)

⇒1日(土)夜・金沢の天気     くもり時々あめ

☆日本は途上国へと退化していくのか

☆日本は途上国へと退化していくのか

   このところの政治や経済、社会の動きを見ていると、日本は途上国へと退化しているような気がしてならない。こんなことが民主政治なのかと不信感を抱いたのが18歳以下の10万円相当の給付問題だ。11月9日に自民・公明両党が現金とクーポンを組み合わせて給付実施することで合意。それから国会での紆余曲折を経て、3パターンの給付方法(現金10万円の一括給付、現金5万円を2回給付、現金5万円とクーポン5万円分を2回に分け給付)にたどり着く。民意は明らかに現金10万円の一括給付だったが、この議論に1ヵ月以上も費やしている。民主政治は妥協の産物ではない。

   その間、外交問題は棚上げされた。来年2月の北京オリンピックについて、アメリカが問題を提起した「外交的なボイコット」をどうするかの議論だ。中国・ウイグル族への強制労働や、女子プロテニスの選手が前の副首相から性的関係を迫られたと告白した後に行方がわからなくなった問題、香港における政治的自由や民主化デモへの弾圧など、中国の人権状況に対して国際的な批判は強い。日本政府は中国からの招待の有無にかかわらず、政府代表団の派遣をどうするのか。岸田総理は「国益の観点からみずから判断していきたい」(12月7日付・NHKニュースWeb版)を繰り返している。国益で人権問題を判断するという言葉は、はたして自由民主主義国家の政府の長の言葉だろうか。

   日本は世界第3位のGDPを誇る経済大国とされているが、いつまでそれが続くのだろうか。人口の少子・高齢化は日に日に高まっている。人口が減る中で経済規模を維持していくことは難しい。さらに、労働者1人当たりの生産性も高齢化で簡単ではない。GDPや企業の競争力などの指標を見ても、日本はすでにG7に相応しい地位ではない。「世界競争力年鑑2021年版」(IMD=国際経営開発研究所)での日本の順位は31位と停滞が続いている。

   かつて、日本は「一億総中流」と言われたが、その言葉を最近すっかり聞かなくなり、代わって「貧困」をよく目にする。厚生労働省の「国民生活基礎調査」(2019年版)によると、2018年の貧困線(等価可処分所得の中央値の半分)は127万円で、これ以下の「相対的貧困」の世帯の割合は15.4%と記されている。今後、独り暮らしの高齢世帯などが増えていく。貧困率はさらに高まっていくだろう。暗い話ばかりになってしまった。

   ただ、反転する可能性はある。それは「資源」があるからだ。2000兆円におよぶ個人金融資産が眠っている。日本全国に張り巡らされた光ファイバーなどのデジタル通信網がある。このブログで何度か述べたように、日銀が主導するデジタル法定通貨を実施することだ。2024年から新一万円札は「渋沢栄一」に変わるが、これを機に札や硬貨ではなく、デジタル通貨にしてはどうか。タンスに眠ったままとなっている金融資産を吐き出させ、消費を回す絶好のチャンスではないだろうか。この機を逃せば、日本は本格的に途上国へと退化するのではないかと思えてならない。

⇒15日(水)夜・金沢の天気       くもり

☆「渋沢栄一」もいいが、むしろデジタル通貨

☆「渋沢栄一」もいいが、むしろデジタル通貨

        「現行の日本銀行券が使えなくなる」などを騙(かた)った詐欺行為(振り込め詐欺など)にご注意ください・・・。財務省が公式ホームページで呼びかけている。高齢者を狙い、「いまの1万円札が使えなくなるので、お宅にお邪魔して引き取ってあげましょう」などと、新紙幣の発行に便乗した詐欺が横行するかもしれない、あるいはすで横行しているかもしれない。新聞・テレビのメディア各社は新紙幣の印刷が今月1日から国立印刷局で始まったと報じている。(※写真は、国立印刷局東京工場で1日に行われた新一万円札の印刷開始式の模様=国立印刷局公式ホームページより)

   財務省と日銀が新紙幣の発行を発表したのは2019年4月だった。2024年度から1万円札のデザインが福沢諭吉から渋沢栄一になる。1984年に聖徳太子から福沢諭吉になったので、40年ぶりだ。5千円札は樋口一葉から津田梅子に、千円札は野口英世から北里柴三郎に。新しいお札はなんとか拝むことできるが、次なる40年後の新紙幣の発行時にはおそらく自身(現在、60代後半)はこの世にはいない。まだ手にしてはいないが、2024年度のお札が最後になるのかと思うといとおしくもなる。冗談はさておき、では、財務省と日銀はなぜ新札の発行を繰り返すのか。

   実は、ドルはもっと頻繁だ。アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)は1996年に発行した100㌦紙幣を2013年に新しくしている。ただ、このときは、ベンジャミン・フランクリンの肖像画はそのままに、背景のデザインを変更している。偽造を難しくするため、中央には青い3Dの帯を入れ、「100」の文字とインク壺の図柄には、傾けると色が赤銅色から緑色に変わる特殊なインクを使っている(2013年10月8日付・CNNニュースWeb版)。

   アメリカとの比較は単純にはできないが、アメリカは偽造防止を、日本の場合は「タンス預金」対策ではないかと、自身はうがった見方をしている。45兆円もあるといわれる「タンス預金」、とくに脱税目的のものをあぶりだすメリットがある。多額の旧札が銀行などに持ち込まれることになれば、銀行を通じて国税がチェックに入る。

   もう一つはタンス預金を吐き出させることによる経済効果だ。日銀の統計によると、家庭や企業に出回る紙幣・貨幣は2020年末に約123兆円分。単純計算だと国民1人平均100万円弱。うち1万円札の流通量を年末ごとに比べると、近年は2~4%台の増加だったが、昨年は15年末以来の5%超の高い伸びになった(2021年2月21日付・朝日新聞Web版)。新札の発行を発表してからタンス預金の札束が動き始めているのだ。その視線で周囲を見渡すと、面白い現象が見える。ドイツ製などの海外の高級車が身の回りに最近増えているのに気づかないだろうか。

   ここからは憶測だ。財務省と日銀が描いている未来の通貨は「デジタル通貨」だろう。デジタル通貨にすれば、すべてのデジタルマネーの履歴やストック先などが把握できる。税金面での調査やマネーロンダリングの監視、金融犯罪などに対応できるという側面もあるだろう。実際、デジタル通貨では先行している中国は「デジタル人民元」の実証実験を始めている。「中国では脱税やマネーロンダリング、資本流出等が課題となっており、これをコントロールしたいとの狙いがあるのではないか」(2020年11月30日付・ロイター通信Web版日本語)との見方だ。

   しかし、日銀は「現時点でデジタル通貨を発行する計画はない」という立場だが、第1段階の実証実験を1年程度かけて行い、その結果も踏まえ、実現可能性を検証するための「第2段階」に移る方針をとっている(2021年2月20日付・NHKニュースWeb版)。コロナ禍の日常の変化で、人が触ったものには触らないという行為が定着し、現金を手にすることに違和感を持つ人も多くなっている。カード払いなどのキャッシュレス化も進んでいるが、デジタル通貨を進める絶好のタイミングではないだろうか。

⇒2日(木)夜・金沢の天気     くもり   

★コロナ禍後に吹き荒れる増税の嵐

★コロナ禍後に吹き荒れる増税の嵐

   最近の世界のニュースを見ていると、世界のそれぞれの価値観がむき出しになっている。アメリカの連邦議会議事堂にトランプ大統領の支持者が乱入する事態が発生し、議会では民主・共和両党からトランプ氏の大統領の罷免を求める声が上がっている。閣僚や政権高官も相次いで辞任を表明しており、任期終了まで残り13日となる中、トランプ氏の孤立化が進んでいる (1月7日付・ロイター通信Web版日本語)。 

   アメリカではかつて、テレビ局に選挙などの政治的な扱いに報道の公平性を課すフェアネスドクトリン(The Fairness Doctrine)があった。しかし、TVメディアの多局化とともに、言論の多様性こそ確保されなければならず、フェアネス性を課すことのほうがむしろ言論の自由に反するとの司法判決(連邦最高裁)により、1987年にファネスドクトリンは撤廃された。これ以降、大統領選では対立候補を誹謗、中傷するネガティブ・キャンペーンがTVメディアも巻き込んで行われるようになる。対立候補にダメージを与える上では有効だが、有権者や国民に対立感情を煽ることにもなった。トランプ支持者による連邦議会議事堂への乱入はそのシンボリックな事件ではないだろうか。

   香港の警察は、国家政権の転覆を狙ったとして、香港国家安全維持法(国安法)違反の疑いで、議会にあたる立法会の民主派の前議員や民主活動を次々と逮捕している。6日と7日の両日で55人に上る(1月8日付・NHKニュースWeb版)。民主派は暴動を起こしたり煽ったりわけではない。選挙を通じて議会の主導権を勝ち取ることは香港の憲法にあたる基本法に守られている権利でもある。異なる意見を持つ者が国安法に触れるという中国の価値観が香港に定着するのは時間の問題かもしれない。

   アメリカや香港の民主主義は岩盤だと世界は認めてきた。それが崩れ始めている。それも土砂崩れの様相を呈している。では、日本は安泰なのか。

   IMFが昨年10月に公表した報告書で、日本政府の債務残高は10月時点のGDP比で266%とアメリカの2倍、日本に次ぐイタリアでは161%だ。日本のダントツの数値を世界はどう解釈するか。債務残高が増えて、このまま少子化が進めば一体誰が返済するのか、日本国債の大暴落を世界は予感しているのではないだろうか。

   コロナ禍で多額の予算を費やした日本政府は来年度から手荒な税収対策を強行してくるだろう。たとえば、40兆円以上ともいわれる「タンス預金」を吐き出させることによる課税もある。2024年度に1万円、5千円、千円の紙幣(日本銀行券)の全面的な刷新が行われる。多額の旧札が銀行などに持ち込まれることになれば、国税がチェックする。翌年2025年度からは旧札と新札の交換で手数料を取る。また、新札発行を機にデジタル法定通貨へと舵を切ることなるだろう。政府が銀行での預金分しかデジタル通貨と交換しないと発表した時点で、タンス預金は一気に消費へと回る。これをもくろんで消費税の増税を行うのではないか。

   さらに、400兆円以上ともいわれる企業の「内部留保」への課税だ。アメリカや台湾、韓国ではすでに実施されている。日本でも資本金1億円以上の同族会社の内部留保増加額には10-20%の課税がされている。これを、すべての企業を対象に実施する。ニュースで伝わる銀行の合併による再編とデジタル庁新設の本来の目的はこの布石だと読んでいる。財源難に陥る政府は、巧妙かつ手荒く、そしてやみくもに増税を行う。大混乱を招きながらも国家財政の維持を図るだろう。歴史は繰り返される。

⇒8日(金)夜・金沢の天気    くもり