#ズーノーシス

☆冬の北陸「冬眠しているはず」のクマが住宅地に出没

☆冬の北陸「冬眠しているはず」のクマが住宅地に出没

   師走も後半に入り、クマは冬眠に入っているものと考えがちだが、そうではないらしい。きょう午前、金沢市に隣接する白山市の住宅地で70代の女性が住宅敷地内でクマと遭遇し襲われ、顔面や左腕を負傷した。午後にも高齢の男性と60代の女性が襲われ、合せて3人がけがを負ったと地元メディア各社が伝えている。夕方、3人を襲ったクマは駆除されたものの、別のクマが隠れている可能性があり、引き続き警察や猟友会などが周辺を捜索している。

   現場は山中ではなく、いわゆる田園地帯の住宅街で、近くに鉄道や幹線道路が走る。クマの行動域は25㌔から100㌔がテリトリーとされているが、ドングリなどのエサが不作のときのはさらに行動範囲を拡大することで知られる。石川県生活環境部自然環境課がことし8月中旬から9月上旬にかけて実施した「ツキノワグマのエサ資源調査」によると、ブナの実は金沢市は「豊作」「並作」だが、周辺の白山市地域では「凶作」や「大凶作」のところもある。冬眠時期にもかかわらず、エサを求めてクマが徘徊しているのだろうか。

   ことし1月から県に寄せられたクマの目撃・痕跡情報は309件、冬眠時期に入った今月も目撃情報が15件におよんでいる。懸念されるのは人身事故だけでない。UNEP(国連環境計画)がまとめた報告書に「ズーノーシス(zoonosis)」という言葉が出てくる。新型コロナウイルスの発生源として論議を呼んでいるコウモリなど動物由来で人にも伝染する感染病を総称してズーノーシス(人畜共通伝染病)と呼ぶ。欧米を中心に感染が懸念されている天然痘に似た感染症「サル痘」、エボラ出血熱や中東呼吸器症候群(MERS)、HIVなどこれまで人間が罹ってきた感染症はズーノーシスに含まれる。

   ズーノーシスに感染したクマなどの野生動物が今回の人身事故のように人里や住宅街に頻繁に入ってくることで、日本でも「ズーノーシス」が起きるのではないか。新たな感染症がもたらされるかもしれない。

   話は冒頭に戻る。自身事故を起こしたクマは冬眠しないのか、あるいは冬眠を一時中断したのか。「クマは冬眠する」という概念は吹き飛んだのではないか。

⇒16日(土)夜・金沢の天気    あめ

★クマなど野生動物が出没 懸念される人への感染問題

★クマなど野生動物が出没 懸念される人への感染問題

   最近、クマが街に出没したとのニュースが多い。きょう20日の朝刊によると、19日午前8時半ごろ、石川県加賀市の国道305号沿いにある観光施設「月うさぎの里」に体長が1.6㍍ほどのクマが厨房裏口から侵入した。開店前で客はおらず、従業員らは事務室に避難した。その後、警察や地元の猟友会などが来て館内や周囲を捜索したがすでにクマは屋外に逃げていた。館内ではテーブルが倒され、イスにはひっかき傷があった。ふんも散らばっていた。同市内ではことし4月からこれまでに37件のクマの目撃情報が寄せられていて、例年の倍近い。   

   クマは場所を選ばない。これまで金沢市内でもいろいろなところに出没している。金沢の野田山は加賀藩の歴代藩主、前田家の墓がある由緒ある墓苑だ。市街地とも近い。7月の新盆や8月の旧盆のころ、クマはお供え物の果物を狙って出没する。なので、「お供え物は持ち帰ってください」との看板が随所に立てられている=写真=。

   クマは街の中心街にも出る。兼六園近くの金沢城公園で、たびたび出没していたことから、捕獲用のおりを仕掛けたところ体長1㍍のオスがかかったことがある(2014年9月)。周辺にはオフィスビルなどが立ち並ぶ。

   山から人里に下りてきているのはクマだけではない。金沢の住宅街にサル、イノシシ、シカが頻繁に出没するようになった。こうした野生動物は本来、奥山と呼ばれる山の高地で生息している。ところが、エサ不足に加え、中山間地(里山)が荒れ放題になって、野生動物が奥山と里山の領域の見分けがつかずに人里や住宅街に迷い込んでくる、とも言われている。あるいは、野生動物が人を恐れなくなっている、との見方もある。

   こうなると、懸念されるのは人身事故だけでない。UNEP(国連環境計画)がまとめた報告書に「ズーノーシス(zoonosis)」という言葉が出てくる。新型コロナウイルスの発生源として論議を呼んだコウモリなど動物由来で人にも伝染する感染病を総称してズーノーシス(人畜共通伝染病)と呼ぶ。野生動物との接触度が増えると感染リスクが高まる、という内容だ。欧米を中心に感染が広がった天然痘に似た感染症「サル痘」、エボラ出血熱や中東呼吸器症候群(MERS)、HIVなどがズーノーシスに含まれる。

   クマやサル、イノシシなどの野生生物が住宅街にこれだけ頻繁に入って来るようになると、日本でもズーノーシスが発生するのではないか。けさのニュースを読んで、そんなことを懸念した。

⇒20日(木)午前・金沢の天気    くもり時々はれ

★クマに注意、ズーノーシスに警戒

★クマに注意、ズーノーシスに警戒

    新聞を読むと、このところ毎日のようにクマの目撃情報が掲載されている。きょう19日付でも石川県内のかほく市、津幡町、羽咋市の4ヵ所に現れている。記事によると、羽咋市のある小学校では集団で登下校し、屋外活動は中止、市は防災行政無線で付近住民に注意喚起し、警察署と登下校時にパトロールしている。

   石川県自然環境課が今年4月下旬に行った調査で、県内10ヵ所の山林のうち、8ヵ所でクマのエサとなるブナの実が凶作だった。このことから、県は大量出没の危険があると判断し、今月10日付で人身被害を未然に防止するための「出没警戒準備情報」を発表した(石川県公式サイト「ツキノワグマによる人身被害防止のために」より)。県内では2020年、クマに襲われる人身事故が立て続けに発生して1年間で15人が負傷した。この事態を受け、県はブナの実のなり具合を調べる調査をこれまでの6月と8月の年2回に加え、昨年から4月にも花のつき具合などを調べている。また、県内の各市町では独自に捕獲用の檻を設置するなど対策を進めている。

   山から人里に下りてきているのはクマだけではない。金沢の住宅街にサル、イノシシ、シカが頻繁に出没するようになった。エサ不足に加え、中山間地(里山)と奥山の区別がつかないほど里山が荒れ放題になっていて、野生動物がその領域の見分けがつかず、人里や住宅街に迷い込んでくる、とも言われている。里山の過疎化で人がいなくなり、野生動物たちは山から下りてきて作物を狙い始めている。

   懸念されるのは人身事故だけでない。UNEP(国連環境計画)がまとめた報告書に「ズーノーシス(zoonosis)」という言葉が出てくる。新型コロナウイルスの発生源として論議を呼んでいるコウモリなど動物由来で人にも伝染する感染病を総称してズーノーシス(人畜共通伝染病)と呼ぶ。人間の活動が野生動物の領域であるジャングルなどの山間地に入れば、それだけ野生動物との接触度が増えて、感染リスクが高まる、という内容だ。最近、欧米を中心に感染が懸念されている天然痘に似た感染症「サル痘」、エボラ出血熱や中東呼吸器症候群(MERS)、HIVなどこれまで人間が罹ってきた感染症はズーノーシスに含まれる。

   少々乱暴な言い方になるが、日本でも「ズーノーシス」が起きるのではないか。ズーノーシスに感染した野生生物が人里や住宅街に頻繁に入ってくることで、新たな感染症がもたらされるかもしれない。

⇒19日(木)夜・金沢の天気      はれ

★静かなる年末年始(6)「人と社会の基礎疾患」

★静かなる年末年始(6)「人と社会の基礎疾患」

   働き盛りの50代でも高血圧症や高脂血症、糖尿病などの基礎疾患があると、午後3時ごろに呼吸が荒くなり、容体が急変し、その90分後には亡くなるものなのか。これが新型コロナウイルスの怖さなのか。今月27日に亡くなった国会議員、羽田雄一郎氏の死亡が連日メディアで報じられている。自らも高血圧症であり、他人事ではないと感じている。高血圧症の場合は急性心不全という突然死の恐怖がつきまとうが、今回、ウイルスがどのように基礎疾患に作用して人を死に至らしめたのかぜひ解明してほしい。

   話は変わる。この一年で「社会の基礎疾患」というものを感じさせたのはクマの街中での出没だった。ことしは全国的にクマの出没が多発したが、石川県だけでも目撃・痕跡情報は1077件(12月21日現在)。金沢市がもっとも多く296件、以下小松市252件、加賀市197件と続く。クマによる人身被害も10件15人に上っている。出没が多発した3市は医王山や白山麓にあり、冬眠前にクマが食べるドングリの実が凶作だったことから人里に下りてきたのが原因とみられる。県では自宅庭のカキの果実を摘んでおくなどの対策を呼び掛けている。

   山から人里に下りてきているのはクマだけではない。金沢では住宅街にサル、イノシシ、シカが頻繁に出没している。エサ不足に加え、中山間地(里山)と奥山の区別がつかないほど里山が荒れ放題になっていて、野生動物がその領域の見分けがつかず、人里や住宅街に迷い込んでくる、とも言われている。繰り返しになるが、里山の過疎化で人がいなくなり、野生動物たちは山から下りてきて作物を狙い始めた。

   過疎化だけではない。日本人の「自然離れ」もあるのではないだろうか。かつて、里山は木材や山菜などを調達する資源の場として、また、保水など環境保全の場として森を利用してきたが、その意識が薄らいでいる。また、文化資源としての利用も欠けている。川遊びや森を利用した遊びの文化が、地方でも少なくなっているのではないだろうか。子どもたちの「自然離れ」が進めば、近未来の里山はさらに奥山と化して、人里に野生動物の出没も増えることは想像に難くない。

   UNEP(国連環境計画)がこのほどまとめた報告書に「ズーノーシス(zoonosis)」という言葉が出てくる。新型コロナウイルスの発生源として論議を呼んでいるコウモリなど動物由来で人にも伝染する感性病を総称してズーノーシス(人畜共通伝染病)と呼ぶ。人々の生産活動が野生動物の領域であるジャングルなどの山間地に入れば、それだけ野生動物との接触度が増えて、感染リスクが高まる、という内容だ。エボラ出血熱や中東呼吸器症候群(MERS)、HIVなど、これまで人間が罹ってきた感染症はズーノーシスに含まれる。

   以下、少々乱暴な言い方になる。日本では今後、逆のズーノーシスが起きる可能性が高まっているのではないか。人々が自然から離れ、これまで手入れしてきた里山を放置して荒らすというのはある意味で「社会の基礎疾患」とも言える。放置が広がれば野生動物の領域がそれだけ広がり、人里や住宅街に接近することになる。切るべき樹木など伐採することで中山間地=里山を保全するなど行政の政策として「手当て」をしなければ、野生動物が新たな感染症をもたらすことになるかもしれない。

⇒29日(火)午前・金沢の天気     くもり

★日本も例外ではない「ズーノーシス」の接近

★日本も例外ではない「ズーノーシス」の接近

   「ズーノーシス(zoonosis)」という言葉を初めて知った。UNEP(国連環境計画)がこのほどまとめた報告書に出てくる。新型コロナウイルスの発生源として論議を呼んでいるコウモリなど動物由来で人にも伝染する感性病を総称してズーノーシス(人畜共通伝染病)と呼ぶそうだ。新型コロナウイルスの感染症やエボラ出血熱、中東呼吸器症候群(MERS)、HIV、ライム病といったこれまで人間が罹ってきた感染症はズーノーシスに含まれる。

   では、なぜズーノーシスが繰り返されるのか、UNEPのインガー・アンダーセン氏らが報告書=写真=をまとめた。以下、UNEP公式ホームページで掲載されているダイジェスト版「Preventing the next pandemic: Zoonotic diseases and how to break the chain of transmission」(次なるパンデミックの防止:人獣共通感染症と伝染の連鎖を断ち切る方法)から以下引用する。

   低・中所得国では毎年200万人がズーノーシスである炭疽病、牛結核、狂犬病で死亡している。これらの国々は家畜への依存度が高く、野生生物に近い地域社会である。その原因は人の生産活動にある。肉の生産量は50年間で260%増加し、農業生産も強化された。大規模な耕作地や灌漑、ダムなどの農業インフラを拡張したものの、同時に野生生物の空間を犠牲にした。その結果、人と野生動物は近くなり、ズーノーシスとも密接になってきている。

   野生生物の領地やその他の天然資源の過剰な開発をやめ、持続可能な農業を行うことで、土地の劣化を逆転させ、生態系の健全性を守るための投資が必要、と提言している。

   これを読んで、日本ではまったく逆のズーノーシスが起きる可能性が高まっているのではないかと感じた。たとえば、金沢でも人里や住宅街にクマやサル、イノシシ、シカが頻繁に出没している。ドングリなどのエサ不足に加え、里山と奥山の区別がつかないほど里山や耕作放棄地が荒れ放題になっていて、クマ自身がその領域の見分けがつかず、人里や住宅街に迷い込んでくる、とも言われている。

   ズーノーシスに感染したこれらの野生生物が街中を徘徊することを防げるだろうか。

⇒9日(木)夜・金沢の天気    くもり